サンリオ・サーガ   作:鈴木遥

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イルミナント〜光のパレード〜

数十年前、一番最初の『ピューロズ』が、地球に降り立った時。

その再現だという演目、戯曲『イルミナント』

開幕3時間前を控え、地球と惑星サンリオ、両惑星の政府関係者が来賓として到着。

 

一般観客の入場も始まり、いよいよ会場内は、『イルミナント』を待ち構える人々であふれかえる。

ステージパフォーマンスのリーダー、三原は、心底不機嫌だった。

 

「畜生!!空の奴、心底ムカつく野郎だぜ!!」

 

どんなにいびっても凹みもせずに業務に励み、時たま自分に歯向かいさえする。

度重なる嫌がらせの効果もなく、入社してたった二年で、自分以上の業績を上げ、あのトール・J・長谷川から直々に、首席ダンサーたちの護衛隊長を任されるとは……。

 

「我が愛しのユウちゃんの幼馴染かなんか知らんが、良い気になりやがってェ・・・!!」

 

このままでは、空が自分に命ずる立場に逆転するのも、時間の問題だ。

 

「まっぴらごめんだ!!野郎の顎で遣われるくれえなら、こんな会社さっさとオサラバするぜ!」

 

衣装に着替えながら毒づく三原。

彼一人しか、更衣室にはいない。

 

当然ながら、彼の愚痴は誰一人にも聞こえていない。

 

はずだった……。

 

「本当に、それでよろしいんですか?」

 

一度は空耳だと心の中で整理した『その声』。

 

「本当はあなたが、この楽園を牛耳るべきでしょう?」

 

距離感、そして、そのねっとりした声の感触のあまりの生々しさと言い、今度のは明らかに空耳ではない。

 

「誰だ!!?」

 

立っていたのは、スーツ姿の男だった。

 

「警備の人か、何でこんなとこに……。」

 

冷静に考えると、キャスト以外の職員がここへ入って来ること自体おかしいのだが、三原は特段ツッコまなかった。

 

「警備……そうですね、でもそうじゃない。」

 

「何、何の話だ。」

 

「まあいいじゃありませんか。今日私は、アナタにいいお話を持ってきたのです。」

 

「マルチ商法の類だったら……。」

 

お断りだ、そう言いかけて三原は、口をふさがれた。

とても人間とは思えない、茶色いごつごつしたできものだらけの手に。

ミイラのように細く、ツメはおとぎ話に出てくる魔女の様に細長い。

 

しわしわの見かけからは想像もつかない腕力で、三原を押さえつけている。」

 

「ぅ……ぐっ!!」

 

「声を出さないで下さいよ。長谷川が来たら分が悪いじゃないですか。」

 

その存在が、アップルキングダムと国際連合、両組織からマークされていた、悪魔を自称する犯罪集団である事など、三原は知る由もない。

 

「ご安心ください。悪い話じゃありませんよ。ねェ?三原政二さん………。」

 

すくみ上がり、身動き一つとれない三原の耳元に、悪魔が甘い言葉を囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語は、スポットライトが照らし出されると共に、ジョージ増田他、クラウン・カンパニーの商人たちが、不思議なライトを売りつけるところからスタートする。

 

 

ピカピカ光る不思議な玩具 買わなきゃ損

 

どんな時でも守ってくれる 信じて頂戴

 

そう!今ならばチャンス! お買い得チャンス!

 

これさえあれば 幸せ!ハッピー!

 

少し強欲だか憎めない商人たちに、ピューロズたちが正しい道を教え、心を改めた商人たちと宇宙同盟を結ぶ。 というストーリーだ。

 

一部の人には、実はこのライト、ピューロランドの物販で売っていたような気がしていた。いくらだっただろうか?

 

 

 

出番が来る前の舞台裏で、空とキティが雑談を交わしていた。

 

 

「あ!ねー空くん!私あれ欲しー!」

 

「キティ、言っちゃ悪いがあれには特に魔法とかがかかってねーぜ?惑星サンリオにある玩具より、全然つまんねーと思うけどな。」

 

「そんな事どーでもいーよ! だって私、初めて地球に降り立ったんだよ?思い出たくさん欲しいじゃん!」

 

「確かにそれは分かる。だけど俺はこの後忙しいんだよな〜……そうだ、ダニエルに頼みな。」

 

「ほえ?ダニエル?」

 

「ああ。 俺達裏方はこの後もいろいろ 仕事あるけど ピューロズと地球のキャストは、演目が終わればひとまず時間ができるからな。」

 

「うん!」

 

苦肉の策といえばそうだったが ダニエルとの、この気まずい雰囲気を、一刻も早く何とかしたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じく舞台裏で待機しているダニエルのもとに、キティは意気揚々と向かった。

 

「ダ〜ニエルっ!」

 

驚かせようと後ろから抱きつくが、ダニエルはピクリともしない。

 

「なに……。」

 

「後で一緒に売店回ってくれる?」

 

「ごめん。無理。」

 

「なんでよ〜。」

 

ダニエルの声はまるで絞り出したように低く、さっきからキティとまるで目を合わせようとしない。

 

「何で怒ってるの?」

 

「逆に君は怒ってないのか!?」

 

初めてダニエルは大きな声を出した。

 

しかしそれはキティへというより、むしろ自分への怒りだった。

 

「僕があの時、君一人を脱出ポットで放り出したりしたから、この星で一人寂しい思いをして……天音さんが来てくれなかったらどうなってたか……。」

 

自分を責めるように呟くダニエル。だが、キティは首をかしげていた。

 

「何で怒るの?」

 

「だから君を危険な目に……。」

 

「危ないと思って真っ先に私を逃がしてくれて、上手く船も逃げきれて、私は地球で空君に拾われて、またここへ集まれた。

ダニエルがいなきゃこうはならなかったんだし、褒められるべきだよ。違う?」

 

ダニエルは改めて、己の愚かさを自覚した。

 

理解したようで全く分かっていなかったのだ。

 

キティという女性の、彼女の本当の懐の深さを……。

 

 

 

「まさか、それずっと気に病んでたの?真面目なんだからー。」

 

キティは茶化したように笑った後、ダニエルの首に手をまわして抱き締めた。

 

「大丈夫。ダニエルの想人(フィアンセ)は頑丈なんだから。あなたを置いて遠い異郷で死んだりしません。

お分かり?」

 

「うん。ごめん……。」

 

「えへへ。素直でよろしい。」

 

「いつも素直だよーだ。」

 

拗ねたような返事を返すが、その顔はもう機嫌を取り戻していた。

 

 

 

二曲目 宇宙はメリーゴーランドが始まる。空とユウの出番だ。

 

「行くよ、空。」

 

「おうよ。」

 

惑星サンリオのバックダンサーたちと共に、大道芸やマジック、ダンスを披露する。

宇宙をかけるメリーゴーランドの様に、しなやかに知恵の樹の周囲をめぐるダンサーたち。

 

空とユウのコンビは、幾つものショーをこなし、ともに視線を越えてきたが為に、 互いのパフォーマンスの支え方をよく理解している。

 

その完成度の高さは、長谷川にダンサー親衛隊を命じられる所以だ。

 

空のジャグリングが決まったこと、ユウのリボンダンスが 観客の熱を上げた。

 

「腕上げたか。」

 

「空もね。」

 

互いに見つめ合い、サムズアップを交わす二人。

知恵の樹の真下に移動すると、 出番が間近に迫ったキティとダニエルを、ステージへ導く準備をする。

 

二曲目の終了と共に、アナウンスが入る。

 

『さァいよいよ!宇宙王子&姫君(スペースプリンスアンドプリンセス)の登場です!

 

 

 

キティ&ダニエル!』

 

 

 

皆の 夢かなえよう

 

 

 

 

 

キティ!!!!

 

 

ダニエル!!!!!

 

 

 

合唱と共に、空が合図を出す。

 

「出番だぜ?二人共。」

 

傍にあったペガサスの模型にまたがり、二人はそれぞれの方向から知恵の樹の真下に降りる。

 

構造的には、天井裏からである。

 

降下しながら、二人の合唱曲『ひとつの夢』がスタート。

 

 

 

 

 

キティ: たったひとつの 小さな種も

 

ダニエル: いつか きれいな 花に

 

キティ&ダニエル たったひとつ 小さな夢 素敵な世界 作る

 

キティ: かがやいて 心

 

ダニエル:つつまれて 愛に

 

キティ&ダニエル: あふれ出す まぶしい 命

 

ダニエル: 夢の向こう

 

キティ: いつの日か

 

ダニエル: 会えるはずさ

 

キティ: きらめく

 

キティ&ダニエル 笑顔 に

 

キティとダニエルの挨拶に始まり、トシキ・カドマツによる生演奏。

 

それに合わせてポチャッコ、マロンクリーム、 プリン、ケロッピ、バツマル達出席ダンサーの この日のために練習してきたダンスを披露。

 

地球の道化師たちによる、マジック、サーカスのショーを経て、 締めは全ての種族を交えたダンスパフォーマンスである。

 

最前列の来賓席から、バックの立ち見席に至るまで、 広場全体を熱気と大興奮に包む。

 

魔法道具『ヒートリング』を使った火の輪くぐりや、 キティたちが入場の時にその背中に乗った魔法生物ペガサスの空中遊泳ショー。

 

高難易度のプログラムを次々にクリアしながら、BGM もいよいよ終盤に近づく。

 

この一幕の成功、 予定通り無事に訪れる閉幕を、会場にいた誰一人として疑うことがなかった。

 

恐るべき闇の足音が、すぐそばまで近寄っていることにさえ気付かずに……。

 

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