魔法少女リリカルはにゃーん様   作:沢村十兵衛

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第4話 はにゃーん様、御帰宅

ジュエルシードの魔物をプレッシャーのみで撃破したはにゃーん様には最早不要だったのだろう……

不思議なフェレットから貰った綺麗な赤い宝石、はにゃーん様はそれをお取りになった瞬間、それが何なのか、そしてどうすれば自分の忠実なる僕となるのかを理解した。

見事魔法少女はにゃーん様へと変身を遂げたはにゃーん様は左手で杖をクルクルと回しながらその使い勝手を見る、狙うは電柱の頂に留まる一羽の鴉。クルクルと回していた杖をピタリと止めて鴉へ向け、頭の中で無数の弾丸がどの様に疾駆するのかイメージし……カッと目を開く。

「行け……ファンネル!」

〈Funnel Shutter〉

「ギャーッ!!」

可愛らしい魔法の杖から放たれたピンク色の六つの弾丸は小刻みにその軌道を変えながら一羽の鴉を包囲しつつ猛進し、逃げ出す暇すら与えずこれを撃滅させた。

だがはにゃーん様にとって予想外だったのは、幾らか威力をセーブしたつもりが爆発の威力が大き過ぎて留まっていた電柱どころかその側にあるブロック塀まで吹き飛ばしてしまったこと。

「あの………これは……」

「加減をしくじったか……逃げるぞ、ユーノ」

「あっ、ちょっ!?」

どうやらはにゃーん様は、魔法少女としてはまだまだ未熟者だったようです。

* * *

『逃げ切ったか……ん?二人分の気配……』

門を開く前に感じる人の気配。

流石に夜中に抜け出してそれをみすみす見逃してくれるほど、兄上も姉上も甘くはないらしい……

ここは大人しく叱られるのが得策か……

門を開ける前にふっ、と息を吐き、堂々と門戸を開く。

当然、なのはを挟むように両脇には恭也と美由希の姿があり、恭也はこんな夜更けにお出かけか?、となのはを詰問する。

「ごめんなさい、あのフェレットがどうしても気になって……」

「その肩に乗ってる奴が?可愛いじゃん!きっとお母さんも気に入るよ!」

「それは否定出来ないが……全く、次はこんな事するんじゃないぞ」

「ごめんなさい、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

「さっ、なのはも早く入って寝な。明日も学校なんだから……」

「はーい」

美由希に促されてなのはは家へ入り、美由希は恭也とフェレットを弄りながら入る。

この家族はやはり自分には勿体無いぐらい優しい、せめてこの家族だけは壊さないようにしたい……

暖かい家庭に帰れるとは、どの時代においても良いことなのだ。

 

「さて……説明して貰おうか?」

恭也等からユーノを取り戻し、部屋に入ったはにゃーん様は鍵を掛けるなり早速事の顛末をユーノから聴くことにした。

「はい、えっと……名前はユーノ・スクライアといって、とある世界で発掘調査を生業としていました」

「発掘調査……若いな……」

「ええ、まあ一族で発掘調査を生業としてるので……」

「続けろ」

ユーノがいうには、発掘したジュエルシードは全部で二十一個、元々は持ち主の願い事を叶える宝石だったという。しかしその性質は非常に不安定で、ちょっとした拍子に願い事を叶えてしまったり、無差別に周囲の動物などの願いを叶えてしまうなど取り扱いに難の有る品物。

なので当然、ユーノはそれを使おうとは露にも思わず発掘したジュエルシードは全て船に載せて運んで貰うことにした。

しかし運悪く、そのジュエルシードを輸送中の時空航行艦が不慮の事故で撃沈、輸送中だったジュエルシードはバラバラに散らばってしまった、そうだ。

これを発掘してしまった責任として、ユーノは単独で回収しようとこの地球、この海鳴にやってきたらしい。

だがジュエルシードの暴走は思った以上に凄まじく、一個目を回収したあたりでこの通り力尽きてしまったそうだ。

「あと五日もすれば力は戻りますので、その時まで協力していただけるだけで良いんです!」

「ほぉ……」

「もちろん、タダでとは言いません!あとできっちりお礼は充分にしますから……」

「子供の貴様が充分な謝礼とな?笑わせてくれる。それに貴様一人でこの事態は収拾がつくのか?」

「それは……ですが、これ以上ご迷惑は……」

「貴様一人死ぬだけでこの事態が終わるならそれで構わん、だがそのためにこの地球がダメになったら、貴様は死んでいった者達にどう詫びるのだ!」

「それは……その……」

「ならば大人しく助けを乞うがいい、私は協力してやる」

「……分かりました。ジュエルシードを回収するために協力して下さい!お願いします!」

「良いだろう、手を貸してやる」

これは余りに滑稽な茶番だ。

かつてダブリンにコロニーを落とし、歴史の大罪人に名を連ねることとなったこの私が地球存亡の危機に立ち上がる……嘗ての私なら余りの可笑しさに笑っているだろう。

今の私はごく普通の小学生、なのでこの子供に手を貸す事もないハズなのだ。

しかし、汚染が進むあの地球を見てしまえば、そしてこの美しい姿の地球を見てしまえば手を貸さずにはいられない。

シャアがダカールで叫んだ通り、美しい地球を残したいのなら、自分の欲求を晴らすだけに地球に寄生虫のようにへばりついていて良い訳がないのだ。

「さて、今日はもう遅い。私は眠るからお前も寝るんだな……」

 

はにゃーん様の戦いは、幕を上げたばかりだ……


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