俺はリザードン、ナギさんはエアームドに乗り、夕日と風を浴びながらポケモンセンターに向かっている。カントー地方の風も新鮮で良かったが、やっぱり俺はホウエン地方の風が好きだ。
「そういえばレイ、さっきの男の子は誰だい?ほら、同い年くらいの」
「ああ、タケシのことですか。カントー地方で旅してるときに出会ってそのまま一緒に行動するようになったんですよ」
タケシとの出会いを話すと長くなる。また今度の機会に話そう。ふと、横を見ると夕日に照らされてより一層輝いているナギさんの顔が見えた。やっぱり美人だ・・・一度見てしまうと目が離せなくなってしまうほどに。
「どうした?私の顔に何かついているか?」
「いえ、ちょっと見惚れていました」
まずい。ついつい本音が漏れてしまった。
「すまない、風の音で聞こえなかった。もう一度言ってくれ」
「い、いえなんでもありません」
よかった、聞こえていなかったらしい。ありがとう、風。でも、声が聞こえなくなるほど強い風吹いてたかな?
「そうか。ほら、ポケモンセンターが見えてきたぞ」
そう言うと、エアームドは降下していく。リザードンもそれに続く。待ってろよグライオン、もうすぐポケモンセンターだ。ドンカラスのふいうちを喰らってかなり弱っていたから心配だ。
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「(まさか君から"ふいうち"を喰らうとはな。驚きのあまり咄嗟に聞こえないフリをしてしまった。フッ・・らしくないな)」
ナギの顔は夕日によって?赤く染まっていた。
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「では、グライオンとドンカラスをお預かりします。今日はもう遅いので明日以降、ポケモンを引き取りに来てください」
「「お願いします」」
俺とナギさんはジョーイさんにグライオンとドンカラスを預け、治療をお願いする。さっき確認したらグライオンは思ったより元気で安心した。明日にはいつも通りになっているだろう。
そして、俺たちはポケモンセンターを後にして家へ向かう。すっかり暗くなってしまったな。俺の家はポケモンセンターから歩いて2、3分と言うところだ。わざわざリザードンに乗っていく距離では無い。少し歩くと、ナギさんが口を開いた。
「突然だがレイ、ミサトとは仲良くやっているか?」
「え、まあそれなりに」
突然なんだろう?暗くてナギさんの顔がよく見えないが、声を聞く限り、少し元気がないように思える。
「気を悪くしたら申し訳ないが、君たちの両親はすでになくなっているだろう?」
「はい」
そう、母は俺が5歳の時に、父はその三年後にどちらも病気で亡くなっている。今は二人ともおくりびやまで眠っている。
「君の父親が亡くなった時、君はまだ8歳、ミサトは12歳だ。当時、近所の人たちは心配して君たちを援助しようとしたが、彼女はそれを断った。おそらく、姉である自分が弟を責任持って育てないといけないと思ったんだろう。そして、彼女は六年間誰の手も借りずに君を育ててみせた。彼女は自分ではなく君のことを第一に考えて暮らしてきたんだ。私の言いたいことはわかるかい?」
あの姉さんが俺のために?確かに父さんが亡くなってから6年間姉さんと二人だけで暮らしてきた。家事はほとんど姉さんがやってくれていた。そして、弟である俺はいつの間にかそれが当たり前だと思っていた。でも考えてみれば当時は姉さんもまだまだ子供。なのに俺は・・・
「・・・はい。俺は6年間姉さんに育てられた後、旅に出た」
「君が旅に出たことを否定するわけでは無い。ただ、ミサトがどれだけ君のことを大事に思っているか分かって欲しかったんだ。この三年間彼女は一人だった。だから、私はよく夕食に誘ってもらったよ。彼女は普段弱音を吐かないが、酔っ払って寝てしまった時はいつも寝言で君の名前を呼んでいたよ」
知らなかった。姉さんがそんなに俺のことを思ってくれていたなんて・・・いや知ろうとしなかった。家族であることに甘えていた。そして孤独にさせてしまった。最低だ。自分に腹が立って、思わず歯をくいしばる。
「急にこんな話をしてすまない。彼女も君に心配をかけさせないように振舞っていたはずだ、気づかないのも無理はない。」
ナギさんはそう言ってくれるがこの話を聞いてなお、今まで通り自分勝手に生きていくなんて俺にはできない。これからは姉さんと二人で暮らして、少しずつ恩返ししていこう。
いつの間にか梯子の前まで来ていた。梯子を登り、つり橋を渡る。そして、たった一人の家族が待つ家の中に入る。
「ただいま、姉さん!」
「(レイのやつ、俺がいることを忘れてないか?)」
**********
「「「「いただきます」」」」
今日の夕飯はカレーだ。どうやら姉さんとタケシの自信作らしい。俺はスプーンでカレーをすくい、口へ運ぶ。ん!こ、これは・・・
「う、うまい!」
「ああ、絶品だ!」
うまい、うますぎる。あまりの美味しさにスプーンが止まらなくなる。ナギさんも次々と皿のカレーを減らしていく。ナギさん、スタイル良い割に結構食べるんだな。
「カレールーはタケシ君の手作りなのよ」
カレールーって作れるものなのか。確かに市販のものと違って俺好みの味だ。タケシ、お前プロのシェフになれるんじゃないか?
「へぇー、タケシ君は料理が上手なんだな」
「いや〜そう言ってもらえると嬉しいです」
ナギさんに褒められてタケシはデレデレする。相変わらず美人には目がないやつだ。
「そうだレイ、旅の話聞かせなさいよ」
「ああ、もちろん」
俺は姉さんとナギさんに3年間の旅について話した。タケシとの出会い、カントーのジムを制覇したこと、ナナシマと呼ばれる島で修行をしたこと・・・長く話しているうちにカレーを食べ終えてしまった。
「カントーのジムバッジを全て集めたのか!やるじゃないか」
そう言ってナギさんは俺の背中をドンッと叩く。褒められるのは嬉しいけど、そんなに強く叩かれるとカレーを戻しそうだ。
「え、ていうことはポケモンリーグに出場したの?」
姉さんは食い気味に質問する。
「いや、その時はポケモンを6体持っていなかったから出場できなかった」
えっと確か当時ははまだ3体しか持っていなかったかな?もったいないことをしたと今でも思う。でも、そのおかげで多くの時間をナナシマでの修行に費やすことができた。
「あら、せっかく晴れ舞台に出れたのに」
「(ミサトさん・・・少し、ほんの少しだけど残念そうな表情を浮かべていた。ポケモンリーグはテレビでも放送される。レイの勇姿を見たかったのかもな・・)」
「あ、そうだ!レイ、ホウエンのバッジを集めてホウエンリーグに出場しなさいよ」
姉さんがひらめいたように言う。なるほど、それも面白いかもしれない。いやいや、そしたら姉さんと一緒に暮らすことができないじゃないか。それではダメだ。
「何浮かない顔してんの。まさか私を置いて旅に出ることに後ろめたさを感じてるんじゃ無いでしょうね」
ギロッと鋭く俺を睨む。心を読まれたのは今日で何回目だろう?俺ってそんなに考えていることが顔に出てしまうのだろうか?
「私のことなんか気にしなくていいのよ。あなたが成長する姿を見ることが私にとっての幸せなの。一つの場所に留まってはいけないわ」
「で、でも・・・」
せっかくさっき姉さんに恩返しすると決意したのに当の本人にそう言われるとその決意も揺らいでしまう。困った俺はナギさんを見る。
「まあ、ミサトがそう言っているならいいんじゃないか。それにホウエンを旅するならいつでもヒワマキシティに帰って来れるさ」
そうか!カントーと違ってホウエンなら帰りたい時にここに帰って来れる。俺が成長することが姉さんにとっての幸せなら、ホウエンでさらに強くなることで姉さんに恩返しすればいい。
「わかった。バッジを集めてホウエンリーグに出てみせるよ。そういうことだタケシまたついてきてくれるか?」
「ああ、もちろんだ!」
タケシは元気よく返事する。カントーではこいつに世話になった。今度は俺がホウエンを案内してやろう。
「あ、私もついて行っていいか?」
「「「・・・え?」」」
ナギさんの一言に三人とも呆気にとられる。
「あの、今なんて言いました?」
「私もレン達の旅に同伴させてもらえないかと言ったんだ」
聞き間違いではなかった。ナギさんが俺たちと一緒に旅をする?冗談?いや、ナギさんはそういうタイプではない。
「え、ど、どうして?」
姉さんが混乱しながらもナギさんに問う。俺もそれは聞きたい。
「そうだな、理由は色々あるが新鮮な体験をしてみたいと言うのが一番大きいな」
なるほど、ナギさんは3年間ヒワマキシティのジムリーダーを務めている。 長い間同じような生活をしていたら刺激を欲しくなるのも当然だろう。ん?
「じゃあジムリーダーはどうするんですか?」
今度は落ち着いて俺が問う。
「ああ、それなら心配ない。ミサトに新たなジムリーダーになってもらうことにした。手続きももう済んでいる」
ね、姉さんがジムリーダー!?
「は?」
姉さんがフリーズした。どうやら姉さんも知らなかったらしい。
「当たり前だろ?今初めて言ったんだからな。私の後を引き継ぐのはミサトしかいないと思っている。」
本人の許可なくジムリーダーを任せるなんてナギさんもなかなかひどいことするな〜。でも、裏を返せばそれだけ姉さんを信頼しているってことだ。確かに姉さんは強い。ヒワマキにいた頃俺も何度も勝負したが、勝率は3、4割ってところだ。
「・・・済んだことはしかたないわ。ナギにはいろいろ世話になったからね。特別よ。」
落ち着きを戻した姉さんがそう答える。嫌そうにしてるけど、親友から頼られてなんだかんだ喜んでる様子だ。
「恩に着るよ、ミサト。」
**********
日付が変わって午前9時。パッとしない天気の中俺、ナギさん、タケシはヒワマキを旅立とうとしている。
「それじゃあ行ってくるよ」
「ジムは任せたぞ」
「短い間でしたがお世話になりました」
「3人とも気をつけていってらっしゃい」
姉さんに挨拶をして119番道路に出る。最初の目的地はキンセツシティだ。もちろん鳥ポケモンに乗っていくなんてことはしない。自分の足で歩くことで心身ともに鍛えられるからね。少し歩くとお天気研究所が見えた。電光掲示板に今日の天気予報が流れている。
"曇り/雨 降水確率80%"
雨が降るのかーなるべく早めにキンセツシティに到着したいな。さらに歩くとナギさんの身長より高い草が一面に生えていた。ナギさんが言うには、これを超えなければ目的地には行けないらしい。
「はぐれないように気をつけましょう。俺が先頭に行くので二人はその後に続いてください」
「「わかった」」
意を決して草の壁に入っていく。思ったより進みにくいな。気を抜いたら足が引っかかって転んでしまいそうだ。俺たちは慎重に草をかき分けて進む。すると突然、何かにぶつかった。
「ん?なんだこれ?」
「どうした?」
「何か見えない壁があるんだよ」
俺がそう答えるとタケシは自分の手で確認し、本当だと呟いた。ナギさんの方を見ると何か知っていそうな顔をしていた。
「ナギさん、これ何なんですか?」
「これはポケモンだよ。それも複数いる。百聞は一見にしかずだ。一度引き返そう」
ナギさんに従って俺たちは草の壁の入り口まで戻った。
「この辺の民家の人なら"あれ"を持っているはずだ」
ナギさんはそう言うと、家の前で薪割りをしている20代前半の男性に声をかけた。"あれ"とはなんのことだろう?
「すいません。デボンスコープを貸してもらえませんか?」
「ああ、いいですよ。ちょっと待っててくださいね。おーいデボンスコープを持ってきてくれ」
男性が家の中に向かって言うと、はーいという返事が聞こえた。デボンスコープ?デボンコーポレーションと関係があるのだろうか。しばらくすると家の中からVRゴーグルのようなものを持った女性が出てきた。おそらくこの男性の妻だろう。
「そうだ!これを貸す代わりと言ってはなんですが、僕たちとダブルバトルをしていただけないでしょうか?あなたたちが勝ったらこれを差し上げましょう。負けてもお貸しはするので安心してください」
どうする?とナギさんは俺たちに尋ねる。ダブルバトルの経験ができるなら俺にとってもおいしい話だ。
「俺は構いませんよ」
「なら僕が審判をやりましょう」
「決まりだな。その勝負受けて立ちます!」
**********
俺たちは少し移動して広い場所へ出た。横には湖がある。ナギさんとのタッグバトルは初めてだな。戦うならナギさんがよく知っているポケモンが良いだろう。そうなると選択肢は一つ、
「任せたぞ!リザードン!」
「ガォー」
「頼むぞ!オオスバメ!」
「ズバァ」
ナギさんはオオスバメを出す。しかも色違いだ。このオオスバメとは小さい頃一番多く戦った。おそらくナギさんのポケモンの中で俺がよく知っているのはこいつだろう。
「出てこい!ルンパッパ!」
「ルンパァ」
「お願い!シャワーズ!」
「シャーワァ」
ルンパッパとシャワーズか。タイプ相性ではリザードンが不利だが、くさタイプを含むルンパッパもそれは同じ。
「それではリザードン、オオスバメ対ルンパッパ、シャワーズによるダブルバトルを行います。はじめ!」
「先手必勝、リザードン!ルンパッパにエアスラッシュ!」
「ルンパッパ、まもるだ」
空気の刃がルンパッパを襲うが、塞がれてしまう。
「シャワーズ!リザードンにハイドロポンプよ!」
「オオスバメ、フォローしろ!ぼうふう!」
攻撃後のリザードンにすかさずハイドロポンプを打つが、オオスバメのぼうふうによって軌道が変わり外れる。あの2人、勝負を挑むだけあってダブルバトルに慣れているな。オオスバメのフォローがなければ危なかった。
「今度はこっちから行くよ。ルンパッパ、オオスバメにれいとうビーム!」
「でんこうせっか!」
オオスバメはでんこうせっかでルンパッパのれいとうビーム躱し、そのままルンパッパへ向かっていく。
「シャワーズ!オーロラビーム!」
虹色の光が発射されるが、加速しているオオスバメには当たらず、ルンパッパにでんこうせっかが直撃する。
「リザードン!シャワーズにエアスラッシュ!」
今度は空気の刃がシャワーズにヒットする。2体の水ポケモンは同時に倒れこむ。よし。この調子でいけば勝てるぞ。
「速くて鋭いでんこうせっかだ。よく育てられている」
「リザードンのエアスラッシュも強烈だったわ。でも、勝負はこれからよ」
強烈な攻撃を喰らった割には余裕そうだな。何か秘策でもあるのだろうか?
ポタッ。頭の上に水が落ちてくる。次第にその量と威力は増していき、ザーッと地面を叩きつけるように降る。
「さあ!本領発揮といこうか!」
こんな駄作にお気に入り登録をしてくれた方々ありがとうございます!一週間に一話を目標にしていきたいですが、次回の投稿は遅れそうです。申し訳ありません。