東方小妖録【完結】   作:puc119

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第14話~ああ、思い出した。ジト目だ~

 

 

 少しだけ、自分のことを話してみようと思う。

 

 昔から自分の感情を伝えることが苦手だった。そのことを意識しだした頃だろうか、自分の中に俺とは違う自分がいることに気がついた。

 ソイツはいつも笑っていて、上手く笑えない俺の代わりに笑ってくれた。

 

 それからだったと思う。沢山の自分と出会った。

 怒っているやつや、泣いているやつ色々な自分と出会った。

 

 俺はソイツらを全員受け入れた。

 だってそうだろう? もしコイツらを俺が受け入れなかったのなら、誰が受け入れてくれるって言うんだ。

 

 少なくとも、この頃はまだ人間でいられたんじゃないかなぁって思う。

 

 そして、この世界に転生して初めて能力を使ったとき、また新しい自分と出会った。今までの自分とは姿が違った。臆病な自分だった。

 でも、いくら姿が変わろうがコイツは俺なのだから受け入れた。

 

 その瞬間からだろう。俺が人間をやめたのは。

 

 それから意地っ張りな自分、勇敢な自分、控えめな自分なんかにも出会ったけれど、今まで通り全員受け入れた。

 

 彼女との旅を始めたとき、俺は自分に枷をして、彼女との旅が終わったとき枷を外した。自分は人間に戻ることができないとわかったから。枷なんていらなかったかもしれない。

 

 そして、一人になった。

 

 新しいポケモンになる度に新しい自分と出会った。

 具体的に言えば……約650種類の姿の自分と25種類の性格、30種類の個性を持った自分たちだった。数えるのは諦めた。10000は軽く越えていたと思う。

 

 もちろん全員受け入れた。

 

 人間からは素晴らしい勢いで外れていったけれど、結局妖怪になれることはなかった。そんな自分が狂っていることくらいわかっている。

 わかりきっている。

 

 

 いつの頃だっただろうか、笑い方を忘れた。

 

 う~ん、ちょっと違うかな。正しくは、どういう場面で笑えばいいのかわからなくなった。

 自分の中に笑っているやつはいたけれど、ソイツはいつも笑っていたから参考になんてならなかったもの。

 

 泣き方を忘れた。

 怒り方を忘れた。

 喜び方を忘れた。

 悲しみ方を忘れた。

 感情の伝え方がわからなくなった。

 感情の表し方がわからなくなった。

 

 一人だけで過ごした時間があまりにも長すぎた。

 

 久しぶりに人間を見たとき襲われたが、まぁ仕方がなかったと思う。そのときの俺はよっぽど酷い外面をしていたのだろうから。

 

 人間じゃないのは俺の方だ。

 

 人間になろうとしました。

 人間になれませんでした。

 

 だから彼女は消えました。

 

 妖怪になろうとしました。

 妖怪にもなれませんでした。

 

 だから俺は狂いました。

 元々狂っていたかもしれません。

 

 人間のふりをしようとしました。

 人間のふりが上手くできませんでした。

 

 妖怪のふりをしようとしました。

 妖怪のふりも上手くできませんでした。

 

 生きていてもしょうがないと思いました。

 

 沢山の人間や神様、妖怪と出会えました。

 

 死んでもしょうがないと思いました。

 

 もう少しだけ頑張ってみようと思いました。

 

 

 そりゃあ、俺は少しおかしいんだと思う。たぶん狂っているんだろう。

 でもさ。まぁ、いいじゃん別に。どうせ皆狂っているんだろ?

 

 えーりんだって、神様だって、鬼だって俺から見れば皆狂ってる。でも皆楽しそうに生きていたじゃん。

 ならいいんじゃないの? 狂っているやつが狂っているように振舞う義務なんてないんだから。

 

 はい、言い訳終わり。

 

 

「だからさぁ、紫。そりゃあ今まで上手く生きてこられたなんて思ってはいないけれど、俺は楽しく生きてきたよ。それでいいじゃん」

「貴方は『楽しい』なんて思ってはいないのではなくて?」

「そんなことはいいんだ。周りから見れば楽しそうにしていたはずなんだから」

 

 俺の感情なんて知らん。そんなもの遠い遠い昔に置いてきてしまったのだから。

 

「そんな俺でも、まだ式にしたいだなんて言ってくれるのかな?」

 

 貴方はそんな俺を受け入れてくれますか?

 

「もちろん」

 

 即答された。

 ああもう、かっこいいねぇ……ホント。それに比べて俺はうだうだとかっこ悪い。これじゃあ、まるで人間みたいだ。

 

 ふむ。

 

「ん~じゃさ、式なんて堅っ苦しいこと言わずにさ……」

 

 そう言ってから俺は右手を差し出した。

 

「?」

 

 こてりと首を傾げる紫。

 

 握手だよ。知らないの?

 

「お友達から始めようぜ」

 

 俺は今、ちゃんと笑えているだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな紫との出会いから幾年か経った。

 

 紫はいきなり現れたかと思うと、軽~く雑談して直ぐに何処かへ行ってしまう。何がしたいのだろうね。

 

 今日も今日とて諏訪を目指して一人旅をしていると、また紫が現れた。なぜ俺の居場所がわかる。ストーカーなんじゃないか? 変態だな、変態。

 

「ご機嫌よう、赤」

「こんにちは、紫。んで、今日はどしたの?」

「今日もお話に来ただけよ」

 

 うん、わかってた。いつも通りだね。

 それにしても紫は俺以外に話し相手はいないのだろうか? まぁ、友達少なそうだけど。だって、コイツなんか胡散臭いんだもん。そんなんじゃあ、友達になろうとする奴は少ない。

 でも、俺は優しいからそんな紫が相手でもちゃんとしてあげるのだ。

 

「……失礼なことを考えているでしょ」

 

 そう言って紫は俺を……んと……あれ? なんて言うんだっけ? 上目遣いじゃなくて……白目を向くだったけかな?

 まぁ、それでいいか。何か違う気もするけど。

 

 そう言って紫は俺に白目を向けてきた。

 

「いやいや、そんなこと考えてないって。ただ紫って友達いなそうだな~って思っただけだよ」

「それが失礼なことなんだけど……」

 

 紫のため息が聞こえた。

 

「今まで聞かなかったけれど赤、貴方はどこを目指して旅をしているの?」

 

 うん? 言ってなかったかな。

 

「諏訪の国を目指してるんだよ。お世話になった場所だからね」

 

 諏訪子はちょっと怖いけれど、まぁ大丈夫でしょう。たぶん、きっと、そうであったらいいなぁ……

 

「諏訪? でも前に会ったときよりも遠ざかっているわよ?」

「……いや、ちょっと寄りたい場所があってね」

「こんな山奥に?」

「も、もちろんだぜ」

「へ~どんな場所かしらね」

 

 そう言って紫はクスクスと笑った。

 

 ふぅ、なんとか誤魔化しきれたか。危なかったぜ。

 

 なんちて。

 

 すみません。道がわかりません。見栄張ってごめんなさい。ただの迷子です。

 

「いいんだよ。別に急いでいるわけじゃないから」

「そうね」

 

 相変わらずクスクスと紫は笑っている。ホントよく笑う女の子なことで。

 

「良いことを教えてあげようかしら?」

 

 紫が言った。

 

「遠慮します」

 

 俺が答えた。

 

 紫が? 良いことを? 俺に? んなこと、ありえないわな。

 

「即答って貴方……」

 

 そう言って紫はまた白目を向けてきた。

 

「いや、だってどうせ良いことじゃあないんだろう? どうせ、俺が苦しむのをスキマから見て笑うんだろ?」

 

 お酒を片手に持ったりしてさ。

 

「……貴方が私をどう思っているのかわかったわ。かなり傷ついたけれど」

 

 そう言って紫は落ち込んだように見えた。見えてしまった。そんな紫に少しばかりの罪悪感。

 

 いやいや、いやいや。やめろ、やめとけって。ただの演技だ、絶対罠だって。

 俺の中で警報が鳴り響いた。

 

「えと……その……ごめん。もしよければその良いことってやつを教えてくれないかな?」

 

 ああ、ダメだ。これ絶対見た目麗しい女の子に蹴られて気絶するやつだわ。パターン入ったわ。フラグ立ったわ。

 

「フフフッ。初めから素直にそう言えばいいのに」

 

 紫は笑顔だったと思うけれど、その笑顔は見ないようにした。できればこの現実も見たくなかった。

 ホント、勝手に動いてくれる体だよ。

 

「この道を真っ直ぐ行った先にとても綺麗な花畑があるわ」

 

 ん? 花畑……? あれ、な、なんだか本当にいい話っぽいぞ。

 

「花畑って何の花が咲いてるのさ?」

「さぁ、名前はわからないわ。ただ、太陽のような花だったわね」

 

 う~ん、太陽のような花ねぇ。

 季節的にはヒマワリなのだろうけど、あれって今の時代にはないよなぁ。じゃあ、蒲公英とかかな。

 ヒマワリと同じ菊科だし。まぁ、それも行ってみればわかるか。

 

「んじゃあ、明日になったら行ってみるよ。今日はもう暗いし」

 

 花畑気になります。

 

「道、間違えないでね」

 

 間違えるか! と胸張って言えない自分が悲しい。

 

 さあて、今晩はどうやって過ごすかな。なんて考えていると紫が瓢箪と盃を取り出してきた。

 

「一杯どうかしら?」

 

 いただきます。

 

 空に輝く月が綺麗な夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きます」

 

 ぬ……少しばかり頭が重い。どうやらいつの間にか寝ちゃったらしい。

 紫はすでにいなかった。

 

 何もされてないよね?

 

 そして朝のストレッチをしてからゆっくりと歩き出した。確かこの道で合っていたはず。

 

 

 

 太陽がちょうど真上に登った辺りだろうか。やっと目的の場所に着いた。流石に迷子にはなりませんでした。

 

 その場所にあったのは――

 

「うわぁ……スゲェ……」

 

 圧倒されるようなヒマワリ畑だった。

 

 なんでこの時代にヒマワリがあるのかしらないけれど、とにかく綺麗だった。本当に綺麗だった。今度紫と会ったらお礼を言っておこう。

 

 ヒマワリと言えばフィボナッチ数列がどうのこうのと言う話があるけれど、俺には理解できなかったなぁ。

 とかそんなどうでもいいことを考えながら、ボーっとヒマワリを見て過ごしていた。

 

 それは、そんなときだった。

 

 

「いくら私が妖気を当てようが全く動じない貴方は何者かしら?」

 

 

 後ろから声がした。

 日傘と緑色の髪が特徴的な女性だった。

 

 

 ああ、この感じ知ってるわ。

 パターン入ったね。どうやら、フラグ回収のお時間っぽいですよ~

 

 いや、ホントどうすっかなぁ。

 

 






生き物というのは寿命があるため、種族繁栄を目指して色々と頑張っているわけですが、ほぼ寿命のない妖怪たちは何を目指して生きているんでしょうね?

特にこの話の主人公は妖怪でも人間でもないわけですので、何の為に生きているのか気になります
まぁ、きっと何も考えてないのでしょうね。アイツ

感想・質問何でもお待ちしております

なんかあとがきっぽいことを書けた気がします
気のせいですか?
気のせいですね

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