東方小妖録【完結】   作:puc119

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第18話~せっかくだから~

 

 

 どうもこんにちは。赤と申します。今日も今日とて元気に働いております。

 

 うん? かぐや姫ですか? そりゃあもちろん、見に行きましたとも。

 わざわざ主人から休みをもらって、朝早くから屋敷の前に並ぶ。お偉いさんたちから『なに、あの格好。ダッサーい』的なこと言われ続けて数時間。やっと屋敷の中へ入れてもらえた。

 しかし、かぐや姫は簾みたいなので顔を隠していて、顔を見ることなんてできやしない。なんじゃこれ……とか思っていると、周りの貴族さんたちが一生懸命自慢話を始めたり、貢物を送ったりと、なんともよくわからない空間になった。

 

 何が見た目麗しいだ。顔見えねーじゃん。

 

 俺が何も話さないのを疑問に思ったのだろう。かぐや姫が俺に『お前はなんかないのか?』みたいに聞いてきたから俺は――

 

「いや、なんもありませんよ」

 

 と言ってその場から立ち去った。後ろの方から貴族さんたちが俺のことを馬鹿にしている声が聞こえたけれど、とくに気にならなかった。ホント、無駄な時間を過ごした。

 

 それが今から数ヶ月前のできごと。

 あれ以来かぐや姫の所へは行っていない。面倒だし。

 お客さんの話してくれたことによると、かぐや姫の所へ通っているのはもう5人しかいないらしい。5人もいることに驚いたけど……普通なら諦めるだろうに。

 詳しい名前は忘れたけれど、その5人っていうのは、『石』と『車』と『右』と『大きいの』と『中ぐらいの』だったと思う。そして、なんか知らんけど、その5人にはかぐや姫から難題を出されたらしい。そう言えば竹取物語ってそんな話だったね。

 

 そんなことを思いながら店の前を掃除していると、立派な牛車が店の前にとまった。

 中からいかにも貴族ですって感じの男性が出てきて――

 

「茶と団子を頼む」

 

 と言ってきた。

 

「はい、かしこまりました」

 

 店の中へ行き、主人に報告。

 

「主人。貴族っぽいのが来ましたよ。お茶と団子だそうです」

「貴族?」

「はい。こんな店に何のようですkあ痛っー! ……んもう、言葉の綾じゃないですか」

「ん? ありゃあ、中納言石上麻呂様だな。赤、これを持って行ってくれ」

 

 ああ、中ぐらいの人か。

 ほいほい、了解でーす。なんて主人に言ってからお茶と団子を貴族の元へ運んだ。

 

「お待たせいたしました。お茶と団子になります」

「ん、いただこう」

 

 そう言って食べ始める中ぐらいの人。

 

「なかなか、美味いな。ここの団子は」

 

 だよねー。主人の腕は本物ですから。

 

「ありがとうございます。今後ともご贔屓に。石上麻呂様は確か、かぐや姫から難題を出されているとお聞きしたのですが、どうでしょうか調子の方は?」

 

 この人はどんな難題だったっけかな? こんなことになるのなら、もうちょっと勉強すればよかったよ。

 

「それがな、私に出された難題は燕が産む子安貝なのだが、一向に見つからん。今も下の者共に探さしてはいるがな」

 

 ああ、燕の子安貝かぁ……もうドンマイとしか言い様がない。てか、貴族さんにしては意外とフレンドリーだ。貴族ってもっとこう……お堅いイメージだったんです。

 

「そうですか。それは大変そうで……こちらは応援の気持ちです。どうぞお食べください」

 

 そう言ってから団子をサービス。だって、この人の未来を考えるとねぇ……

 

「む、気がきくな。ありがたくいただくよ」

 

 なんて言って中ぐらいの人は美味しそうに団子を食べた。いい人なんだけどな~

 ふむ……明日にでも、もう一度かぐや姫の所へ行ってみるかな。今度は顔くらい見られるだろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、手土産に団子を持ってお昼を過ぎたころかぐや姫の屋敷へ行った。

 屋敷の前に中ぐらいの人がいたので挨拶。

 

「こんにちは」

「む、お前は昨日の茶屋の者じゃないか。昨日は馳走になったな。今日はどうしたぞ?」

「いや、私もかぐや姫を一目でいいから見たくなりましたので。昔と比べて待つことも少なそうですし」

「はははっ。そうか、では一緒に行くか」

 

 そんなことを話しながら、中ぐらいの人と一緒に屋敷の中に入っていった。ホント、いい人だと思う。

 

 

 かぐや姫のいる部屋に通されると中にはすでに4人いた。ご苦労なことで。

 そして、かぐや姫は相変わらず顔を隠していた。まだ隠しているんですか……はぁ、これじゃあ来た意味ないね。

 

 そんなことを考えていると貴族さんたちの自慢話タイムが始まる。もう少しで難題が解けそうだとか、蓬莱山は見つけたから後は探すだけだとか。いや、あんた偽物作らせてるだけじゃん。

 中ぐらいの人も一生懸命アピールしていた。頑張れ、頑張れ。

 

 そんな感じで面会時間は終了。よく話す人たちだ。下顎と上顎のぶつかり放題ですね。

 

 今日は最後まで残っていたけれど、結局かぐや姫の顔を見ることはできなかった。あ~あ、もう夕方ですよ。団子は渡していない。帰ったら一人で食べよう。ホント何しに来たんだか……

 

 さて、帰るかと思ったら俺だけかぐや姫に止められた。はて、なんですか?

 

「貴方は以前も来られたお方ですわね?」

「はぁ、そうですけど」

「ふふっ、やっぱり。今日も残念そうなお顔でしたわ」

 

 だって、顔見えないんだもん。ホント、何しに来たんだか。

 

「貴方の顔を見に来たのですけどね。見られなかったのですから、そりゃあ残念ですよ」

「そんなに私の顔を見たかったのかしら?」

 

 そう言ってかぐや姫が簾を上にあげた。

 

「どうでしょうか? 私の顔は?」

 

 綺麗だった。

 よく昔の物語に書かれているお亀顔だったら、笑い転げているか逃げ出していたけれど。とにかく綺麗だった。

 

 

「おお、お綺麗ですね」

 

「…………」

 

「?」

 

「…………えっ? それだけ?」

 

 

「美しいですね?」

 

 

「一緒じゃないの! しかもなんで疑問形なの!?」

 

 えっ……ええ……いきなり怒り出した。な、なんだって言うのさ。どうして怒られているのか全くわからない。

 

「もっと……こう、なんか言うことが他にあるでしょ!?」

「あ、忘れてました。団子食べます?」

「違う! そうじゃない! あとお団子はいただくわ」

 

 違ったらしい。なんだと言うのだ。

 因みに、あっ美味しいとか言って渡した団子は全部取られた。俺の分はないらしい。悲しいね。

 

「はぁ~、もう。和歌でもいいから詠んでみなさいよ」

 

 むぅ、やたら上から目線だな。

 

 しかし、和歌か、和歌ねぇ……いや、詠めないよ。詠んだことないよ。んと……和歌って短歌のことだよね。五七五七七の。

 

「吹くからに 秋の草木を しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ」

 

 訳はわかりません。これくらいしか知りません。

 

「上手い! やたら上手いけれど意味がわからない! だって今詠む歌では絶対ないもの!」

 

 どうやらお気に召さなかったようで……残念だ。

 そんなことをして、このワガママ姫とギャーギャー騒いでいるうちに夜は更けていった。

 

 

 

「そう言えば貴方はなんて言う名前なの?」

 

 ホント、今更ですね。

 

「赤っていう名前だよ」

 

 敬語はやめました。敬うつもりなど微塵もないし。

 

「ん~? 赤? どっかで聞いた気がするけど……まぁ、いっか。それで赤はこの後どうするの?もうだいぶ外は真っ暗だけど」

「帰るよ。明日も仕事あるし」

 

 随分と長居してしまった。それもこれもこの姫様のせいだ。

 

「いや、危ないでしょ。鬼とかに攫われちゃうわよ?」

 

 もう慣れたから大丈夫です。鬼に攫われるのも、紫に攫われるのも慣れた。経験者は語ることができるのです。

 

「ん、良いこと思いついたわ!」

 

 絶対良いことじゃないに100万ペリカ。

 

「赤、此処に住みなさい」

 

 ほら見なさい。言わんこっちゃない。

 

「いや、だから仕事がね」

「ただの居候でしょ? こんな絶世の美少女が言っているのだから素直に聞きなさいよ」

 

 いや、美少女は認めるけど、言ってることめちゃくちゃだぞ。

 

 その後なんとかこの姫様を説得しようとしたけれど、ダメでした。だってコイツ『じゃあ私がその主人を説得する』とか言い出すんだよ? 本当にやめてください。

 

 結局その日はこの屋敷に泊まることとなった。そんないきなり住むようになった俺を翁夫婦は優しく迎え入れてくれた。ありがとうございます。

 

 

 次の日の朝、主人の所へ行き、事情を説明した。

 そんな俺に主人は――

 

「……そうか、まぁ頑張れよ」

 

 と言って俺を励まし。

 

「これから寂しくなるなぁ……」

 

 なんて言って笑っていた。

 

 うん……本当にお世話になりました。

 

 

 

 

 

 その日からかぐや姫の屋敷での生活が始まった。生活といっても姫様の話し相手になったり、翁夫婦の手伝いをしたり、ほぼ毎日来る中ぐらいの人と話をしたりして過ごしているだけ。

 

 そんなある日こと、かぐや姫が俺に言った。

 

「赤にも難題を出すことになったわ」

 

 ちょっと何を言っているのかわからなかった。

 

「……お世話になりました」

「ちょっ、待ちなさいよ」

 

 何ですかもう。てか難題? 別に俺は求婚とかしてないんだけど……そんな気など微塵もないし。

 

「それがね、あの貴族たちが私たちは難題を出されているのに、何も出されていない赤が私の側にいるのはおかしいって言ってきたのよ。それで向こうが勝手に難題も用意してきたわ」

「なんじゃそれは……」

 

 だったら翁夫婦にも難題が用意されているのだろうか?

 いや、まぁ、ないか。

 

「それでその難題の内容だけど」

 

 あ、俺がその難題に挑戦することは確定なんですね。拒否権とかないんですね。

 

「都から見える山を越えたところに花畑があるのは知ってる? そこでは四季を通して様々な花が咲いているらしいわ。その花畑でこの時期にしか咲かない太陽のような珍しい花があるの。その花を持ってこいだって、あーあとその花畑には恐ろしい妖怪もいるそうよ」

「断ったらどうなんの?」

「都中に赤が弱虫のヘタレだって広まるでしょうね」

 

 でしょうね。

 

 はぁ、花、太陽、恐ろしい妖怪ねぇ……

 

 何故か首の辺りが締め付けられた気がした。

 

 






どうしましょうか

主人公の未来が真っ黒です

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