東方小妖録【完結】   作:puc119

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第22話~今日の天気は~

 

 

 綿月家に新しい家族が増えてから、この家も随分と賑やかになった。しかもその相手は私が一番会いたかった相手なのだ。嬉しくないわけがない。

 八意様と一緒に暮らしたことのある唯一の人物で、しかも月夜見様ともつながりがある。月夜見様は彼のおかげで今の私たちがいる。と言っていたけど、どういう意味なのかしら? 今度、彼に聞いてみようと思う。

 

 彼はとても表情豊かで見ていて飽きない。小さなことでも、とても喜んだり悲しんだりした。……本当によく笑う人だった。それはとても、億を超える年月を生きてきたとは思えない落ち着きさだけど……

 

 月夜見様のお言葉もあって、彼はこの家で暮らすことになったのだけど、彼はそのことが少々気に食わないらしい。たま~に、自分の姿を鏡で見てため息をついている姿を見かけた。

 その後、ウサ耳を引っ張ったりしてもう一度ため息をつく。そんな行動が面白いから私は動画に撮って楽しんだ。その動画は依姫にも好評だ。あの娘もなんだかんだで、赤のことを気に入っているらしい。

 それにしても赤はウサ耳が嫌なのかしら? 似合っていると思うのだけど。

 

 彼は一人で外出することが許されていないため、誰かと一緒でないといけない。私は依姫と違って普段やることがないから、よく彼と一緒にお出かけするけれど、私が誘うと毎回嬉しそうについて来てくれる。まさにペット。そして、彼にとって月の都は物珍しいのか、いつもいつも本当に楽しそうだった。

 ただ、少し目を離すとすぐに何処かへ行ってしまい、迷子になってしまうのは困ったもの。しかも、彼は迷子になっても気にしないらしく、迷子になった後も楽しそうに月の都を散策していた。

 一度、迷子になった彼が表の月へ出かかっていたときは本当に焦った。いや、ホント、どうしたらそんなことになるのよ……

 あまりにも、迷子になるから彼の首に首輪をつけて、そこに私たちの家の住所と連絡先を書いたプレートを吊るすようにした。

 

 そして、首輪をつけようとすると彼が――

 

「首輪だけは! 首輪だけはやめてください!」

 

 と言っていたが、無視してつけた。

 彼はとても嫌がっていたけれど……首輪に嫌な思い出でもあるのかしら?

 

 

 そんなある日、お風呂上がりでかなり薄着な状態の私が彼と遭遇したことがあった。

 私の姿を見た瞬間彼が『キャー!!』とか言って逃げ出した。それが面白かったから、その姿のまま彼を追いかけたら彼は『キャーキャー』言って必死に逃げる。

 

 そんな鬼ごっこを依姫に見られて怒られたけれど、面白かったから良しとしよう。私は満足だ。

 それから暫く、彼が私を避けるようになったのは傷ついたけれど。

 

 あとは一緒に桃を食べたり、お話したりなんかして過ごしている。彼の表情を見ているだけで私は充分楽しかった。

 

 

 

 

 彼と一緒に生活し始めて何年経っただろうか? もう随分と長い時を過ごしてきたと思う。

 そんなとある夜のこと。ちょっと、からかってみようかなぁと思って彼の部屋に訪れたけれど彼がいなかった。

 その後、家の中を探したけれど彼はいない。

 

 まさかと思って家の外へ出ると彼はいた。もう、何やってるのよ。なんて声をかけようとしたとき――彼の表情を見て、出かけていた言葉が、消えた。

 

 それはとても透明な表情だった。

 長い時間一緒に生活してきたけれど、彼のこんな表情は見たことがない。何を考えているのかはわからない。

 たぶん、宙に浮かぶ地上を見ていたのだと思う。何を想い彼が地上を見ているのかがわからない。

 

 彼に近づいて行くと、私に気づきこちらを向いた。

 

「あれ? お姉さんじゃないですか。ダメですよ、夜ふかしは。お肌の天敵ですよ~」

 

 なんて、今までしていた表情が嘘だったかのように、彼は笑った。

 

 

 貴方は何者なの……?

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 この家に住むペットが新しく増えた。ソイツは地上の人間のくせして、寿命もなく穢れもなかった。そして、私を見つけると必ず声をかけてきて、いつもくだらない話をする。

 

 鬱陶しいけれども、アイツと話をしていると何故か時間の進みが早い。それはアイツの能力かもしれない。

 

 私は訓練があったりして忙しいから、アイツと関わることは豊姫様と比べるとかなり少なかったと思う。

 それでも、一緒に料理をしたりはした。嫌だったけれど。

 アイツの料理センスは絶望的。けれども、何故かお菓子だけはやたらと上手く作る。私より上手かったのには腹が立った。

 

 アイツは私のことを『ゴキブリさん』と呼んでいる。私には『ゴキブリ』が何なのかわからないけれど、すごく馬鹿にされている気がした。それにアイツを見ていると無性に心がざわつく。ホント、迷惑な奴だ。

 

 そう言えば、最近使えるようになった私の能力で、アイツの波長を読み取ろうとしたことがあった。けれども、アイツの波長を読み取ることがなぜかできない。波長がブレてしまって読めなかった。

 

 いつも楽しそうに笑っているけれど、何を考えているのかがわからない。

 本当に不思議なやつだと思う。

 

 

 

 アイツがこの家に来てから何年経っただろうか? 朝食を食べているとき、地上から妖怪たちが攻めてきたという連絡が入った。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 それは、依姫やレイセンたちと朝御飯を食べている時のことだった。

 

 いつものことだけど、彼はいない。彼と一緒に食事を取ることは、ほとんどなかった。まぁつまり、いつも通りね。

 

 そんないつも通りの朝だった。地上から妖怪たちが攻めて来た。と言う連絡が入ったのは。

 

 その連絡を聞くと依姫はすぐに行ってしまった。

 私はゆっくりとさせてもらうことにしよう。

 

 依姫が行けば大丈夫。だってあの子、卑怯なくらい強いんだもの。それに地上と月では文明に差がありすぎる。玉兎たちだけでも充分でしょうしね。

 

 そして、昨日彼が作ってくれた桃のロールケーキをのんびり食べていると、また連絡が入った。

 予想通り、妖怪たちの鎮圧はほぼ完了。後は、この侵略の首謀者を捕まえるだけらしい。

 それにしても、どうやってこの月まで来たのかしら? まあ、それも後で聞けばいいか。

 

 そんな感じで私がのんびりしていると、彼が来た。

 

「あれ? お姉さんしかいないんですか?」

 

 いつも通りの調子で彼が言ってきたので私は答えた。

 

「そうなのよ、どうも地上から妖怪が攻めてきたみたい。でも今は鎮圧完了したし、あとは妖怪の頭を捕まえるだけらしいわよ」

「へ~、流石月ですね。でも、その妖怪の頭やっているやつって、どんなんでしょうね? 月まで来るなんて普通じゃできないでしょうに」

 

 なんて彼が聞いてきたので、私が――

 

「なんか見るからに胡散臭そうで傘を持った女性の妖怪らしいわよ」

 

 と答えた。

 

「胡散臭い……それに傘……?」

 

 私の答えを聞くと彼は呟き、少しだけ考えたような仕草をして出て行ってしまった。

 ちょ、ちょっと、どうしたのよ?

 そんな彼を私は慌てて彼を追いかけた。

 

「赤、何処へ行くのかしら?」

 

 家の外まで来て漸く彼に追いつく。ホント、どうしたと言うのか。

 

「あ~お姉さん。どうやら今日は雨っぽいから家にいた方がいいですよ」

 

 そう彼は言った。

 雨? いや、今日は雨を降らせる予定はないはずだけど……何かの比喩かしら?

 

 何を言っているのよ。なんて彼に言おうとした時だった。ポツリと私の顔に――雫が落ちてきた。

 

「え……なんで?」

 

 私の口から間の抜けた声が零れ落ちる。

 

 そしてカランという音がして、彼についていたはずの腕輪が地面に落ちた。

 

「ほら~雨降ってきちゃったじゃないですか。あ、そうだ。これもお返ししますね」

 

 そう言って彼はウサ耳とプレートを外して私に渡した。

 

 ちょ、ちょっと待って? なに? どういうこと? どうして腕輪が……?

 いきなりのこの状況に、頭がついて来ない。普段ならそれなりの早で回ってくれる頭でも、全く理解することができなかった。

 

 雨は激しさをまし豪雨となった。

 そしていつの間にか彼の姿も変わっている。

 

 赤い線の入った青色の服を来て、背中から2本の鰭。

 そして、完全に彼の姿が変わった瞬間、彼から馬鹿げているほどの力が溢れ出した。それは、立っているの辛いほどの巫山戯ている力。

 

 な、何なの……妖力でも神力でも霊力でもないこの力は?

 知らない。私はこんな力を知らない……

 

「あ、赤! 何処へ行くの?」

 

 なんとか声を出す。

 

 雨が痛い。

 

 

「俺、もう帰らなくちゃ。それに助けないとかな。そりゃあ、色々とあったけれどアイツは……」

 

 

 ――俺の友達だしさ。

 

 そう言って、いつものように笑った彼は行ってしまった。

 私はその姿を見ることしかできない。体が動いてくれないのだ。

 

 彼が行ってしまったあと雨はやんだ。さっきの雨が嘘だったかのように、宙は晴れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 妖怪たちの殲滅はほぼ完了。

 後は目の前にいる、この胡散臭い妖怪を捕らえるだけですね。

 

 どうやらこの妖怪はお姉様と似た能力を持っているらしく、その能力を使って月まで来たみたいです。

 まあ、今は機械によって作られた結界のおかげで、その能力は使えないみたいですが。さて、そろそろ終わりにしましょうか。

 

 そう思ったときでした。信じられないほどの力を月の都から感じたのは。なんでしょうかこの力は?

 

 

「フフッ。やはり月にいましたのね。ホントどれだけ探したことか……」

 

 妖怪が口を扇で隠しながら言いました。

 得体の知れない力がこちらの方へ近づいてくるのがわかる。そして、降るはずのない雨が。

 

 

「あ、妹さんだ。ここにいたんですね~」

 

 聞きなれた声がしました。姿は変わり、巫山戯てるほどの力を感じますが――

 

「赤……なのですか?」

「そうですよ。ん~、申し訳ないんですけど、その前にいるやつを見逃してはくれませんかね? 一応、俺の友達なんですよ。ソイツ」

 

 やはりこの力の源は赤のようですね。まさか、これほどの力を隠し持っていたとは……

 

「……それは、できません」

 

 得体の知れない力に倒れそうになるがなんとか答える。

 

「ま、そりゃそうですよね……はぁ、うしっ! 今まで本当にお世話になりましたっ!」

 

 ――っつ。来る!

 

 身の危険を感じた私は、今できる最大の力をこの身に降ろしました。今の私にできる限り最大の力を。

 

「愛宕様」

 

 全て焼き尽くすことのできる、神殺しの炎を腕に纏い準備。

 それは、地上ではまず見ることのできない炎。

 

 これが、今の私にできる限界。

 

「愛宕さんで炎ですか……はぁ、神様殺しの神様なんでしょうね。それ」

 

 ぽそりと私まで届いた赤の声。

 そんな彼に一気に近づき、私は炎の腕を振り下ろしました。

 

「『しおふき』」

 

 けれども、そんな赤の言葉が聞こえると、私へ向けて大量の水が……

 ああ、やはりダメですか。……まるで次元が違いますね。これは、また鍛え直しです。

 

 大量の水は結界を作っていた機械も巻き込み全てを飲み込みました。

 

「やりすぎちゃったかな? 『なみのり』で良かったかも……あ、おい! 待て紫! 一人だけ逃げようとすんな!! 俺も、俺も連れて行ってくれ……ふぅ。じゃーねー妹さん。お姉さんとゴキブリさんにもヨロシク伝えといてくだいさいな。機会があったr……」

 

 そして赤は、中途半端な挨拶を残して消えてしまいました。

 

 本当、不思議な人です。

 不思議で、自分勝手で……なにより愛おしい……

 

 

「行っちゃったわね」

 

 倒れている私にお姉様が声をかけてきました。

 

「そうですね……良かったのですか?」

 

 私はなんとか起き上がってから言いました。

 

「はぁ、いいわけないじゃない。だって彼は大切な私たちの家族なんだもの。ホント勝手よね」

 

 全く……同意見です。

 

 それから少しの間、赤が帰って行った地上を私は見つめていました。あの星にはいったい何があるのでしょうか?

 

「赤にとって、この月は狭すぎたかもしれないわね」

 

 お姉様がそう呟きました。

 はい。そうかもしれませんね……

 

 ん~……さて、そろそろ行きましょうか。

 

「お姉様、行きますよ。大量の報告書が私たちの帰りを待っています」

「帰りたくないわね……」

 

 ホント、同意見です。

 

 今度はもう少し強くならないと。もう、彼を放さないだけの力をつけないと……

 いつか、また会える日は来るのでしょうか? その日が楽しみです。

 

 






というわけで、初の主人公視点なしなお話でした
カッコイイ主人公を書きたかったのですが、ダメですね
これはヒドイかもしれません……

主人公がなったポケモンは、まぁ多分わかると思います
伝説ポケ初登場ですね


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