ハーレム物とか憧れます
書けませんが……
「むぎゃ」
痛い。
そんななんとも格好悪い声を出しながら、地面へ落とされた。全く……せっかく助けてあげたのだからもう少し丁重に扱ってほしい。
んでここは……どこだろうか?
紫の能力を使って月から逃げ出してきたわけだけど、ここがどこなのかわからない。たぶん、地球だとは思うけど……
目の前には立派な日本家屋が見える。そして――桜、桜、桜。
「これは、すげえな……」
思わず声が出る。大量の桜の木に圧倒された。ホント綺麗だね。
うん? でも、あの木だけ咲いてない。あれも桜の木だとは思うんだけど……
「綺麗でしょ? ここの桜は」
うわぁ! ビ、ビックリしたな、もう。
桜に見蕩れていたせいで全く気がつかなかった。あと、いきなり声をかけないでください。急に声をかけられるとびっくりしてしまうのです。
「えと、お嬢さんはどちら様で? ああ、僕は赤というものです」
考えると俺って不法侵入者だよね。怒られそうだな。てか紫は何やってんだよ、はよ来なさい。
「私は西行寺幽々子。ここ白玉楼の主で亡霊よ」
主で亡霊? 幽霊みたいなものなのかな? でも足があるぞ。
え、えと、般若心経とか唱えたほうがいいのかな? いや、まぁ、覚えてないんだけどさ。
「赤、貴方のことは紫から聞いているわよ。紫の友人だそうね」
ありゃ、俺のこと知ってるんだ。紫から聞いたってことは幽々子も紫の友人なんだろうか。
いたんだ、友人。都市伝説かと思ってた。おっとりした感じの美人さんなのに、どこで道を間違えたのやら……
「ねえ、赤。ちょっと……」
――死んでみない?
なんて、とても良い笑顔で幽々子に言われた。いきなりすぎる。
……ああ、この感じは紫の友人だわ。死ぬことのどの辺が『ちょっと』なのだろうか……
「ダメよ、幽々子。赤は私の大切な友人なのだから」
どう反応すれば良いのか迷っていると、やっと紫が出てきた。遅いじゃないですか。あと“ちょっと”で死ぬところだったんだぞ。
それにしても、“大切な”ねえ……何を企んでいるのやら。
「そう、それは残念ね」
幽々子はそう言っていたけれど、残念そうには見えなかった。たぶん、さっきの発言はちょっとしたジョークだったのだろう。そうであってほしい。お願いだから。
「私は疲れから休むことにするわ。幽々子、赤を暫くの間お願いね」
そう言って紫はすぐに消えてしまった。
ああ、また置いていかれた……連れて行ってくれてもいいじゃないか。まぁ、帰る場所なんてないけどさ。
行かなきゃいけない場所はあるけど。
「そう言うことらしいわよ。赤、これから暫くの間よろしくね」
そう幽々子は言った。
こちらこそ――
「不束者ですがよろしくお願いします」
この白玉楼には幽々子と半人半霊(なんだそりゃ?)でぶっきらぼうな庭師さんの二人しかいないらしい。こんなに広いのにもったいないね。
俺はやることがなかったから、ボーっと桜を見ていた。うん、すごく綺麗だ。
桜、西行と聞くとあの有名な歌人が頭に浮かぶ。
『願はくは 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月の頃』
歌通り、桜の木の下で眠りについた彼の人生は幸せだったのだろうか? 何故かそんなことが気になった。
「もう夜よ。赤はホントに桜が好きなのね。昼間からずうーっと見ているじゃない」
幽々子が声をかけてきた。夜桜というのも良いのもだしね。ちょいと暗いから、ライトアップとかしてくれると嬉しいんだけどなぁ。
ライトアップされた夜桜はよりいっそう綺麗に見えるもの。
「なあなあ、幽々子。1本だけ咲いていない木があるけれど、なんであの桜は咲いてないのさ?」
咲いていない桜の木がどうしても気になって、幽々子に聞いてみた。立派な木だし咲けばさぞ綺麗なんだと思うけど……
「う~ん、それが私にもわからないのよね。枯れてはいないみたいなんだけど」
へ~、あんなんでも枯れてないのか。光合成もできなそうな色しているのに。木の下に根粒菌でも埋まっているんかねぇ。
桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる! だったかな。ま、咲かないコイツの下には何もいないだろうけど。
「どう? 桜で一杯」
片手にお酒を持ち、幽々子はそう言った。
嬉しいお誘い。もちろん。いただきます。まぁ、俺は団子より花のが好きだったりするんだけどさ。
なんて贅沢なことを思ってみたり。
白玉楼で暮らさせてもらって4日。
「やっと、体の調子が戻ってきたわ」
紫が現れた。
白玉楼では幽々子や庭師さんとお喋りしたり、桜を見たり、幽々子と一緒にお酒を飲んだりした。ここまでゆっくりとさせてもらったのは久しぶり。
「赤、そろそろ行きますわよ。それとも、もう少しゆっくりしていく?」
「いや、もういいよ」
これ以上はダメな気がする。悪い予感はよく当たるのだ。
「あら、赤はもう行っちゃうの? いいのよ遠慮なんてしなくても」
幽々子が言った。
「遠慮なんてしてないさ。でもさ、そろそろ行かなくちゃ。会わないといけないやつもいるしね」
幽香とかえーりんとか幽香とか諏訪の国の神様達とか幽香とか。
ああ、うん……やっぱ、もうちょっとゆっくりしてこうかな。
だってなんか色々と怖いもん。
「そう、じゃあ行きなさいな。来年の春にでも、また一緒に桜を見ましょ」
ん~来年か……それは、ちょいと早い。そんなに見たら飽きちゃうよ。
「うーん。そうだなぁ、あの咲かない桜が咲いたときにでも呼んでよ。そんときにでもまた会おうぜ」
ま、それ以外のときでも来るかも。ヤバイとき匿ってくれると助かります。
「……そうね。そのときは呼ばせてもらうわ」
幽々子は笑って言った。けれども何故か紫は複雑な顔をしていた。
そのことが何故か少しだけ気になった。
さて後は――
「行くのか小僧」
俺から見れば庭師さん、あんたもじゅうぶん小僧だけどね。ま、そういう意味じゃないんだろう。
「ねぇ、庭師さん。あの桜ってさ……」
「咲かんよ。永遠にな」
でしょうね。
……なんとなくだけどわかってた。きっと紫の表情はそういうことなんだろう。
何を仕掛けてあるのか知らないけれど、問題だけは起こさんようにね。
「ん、じゃあね。庭師さん」
「ああ、じゃあな小僧」
お世話になりました。
どうか元気に暮らしてくださいな。
「挨拶はすんだかしら? そろそろ行きますわよ」
「うん、大丈夫。んで、どこへ行くのさ?」
紫の家とかかね。……嫌だなぁ、なんか汚そうだし。紫が掃除をするのとか想像できんもん。
「……そうね。あの花妖怪の所にでも行きましょうか?」
「ごめん、幽々子。もうちょっとお世話にn「冗談よ」なんなのさ……」
いや、幽香の所へは行くよ。
行かせてもらいますよ。
でも今じゃないのだ。嫌なことは後まわー……じゃあなくて、楽しみは最後にとっておくタイプなのだ。
「私はやらなければいけないことがあるから忙しいのよ。だから適当な場所まで送るわ。その後は貴方に任せますわ」
適当な場所ねぇ。
「ん、じゃあよろしく頼むよ」
さて、行きますか。短い間ですが大変お世話になりました。またいつか会える日までどうかお元気で。
「むぎゃ」
痛い。
だから、もう少し丁寧に送ってください。
さてさて、と。
ん~と、ここ……諏訪の神社前だよね。諏訪の国か~懐かしなぁ。1000年ぶりくらい?
ちょうどいいし、ちょっと寄っていこうかな。ちょっとだけ。具体的に言えば諏訪子に会わない程度に。
勝手知ったる神の家。途中で道草をしながらも、本殿目指して歩き始めた。
「あ、参拝の方ですか? こんにちは」
そうして神社に着くと、掃除をしていた巫女さんが俺のことに気づいた。
「こんにちは。まぁ、参拝かな」
「そうですか、それではこちらです」
巫女さんは俺の言葉を聞くと、嬉しそうにして俺を案内してくれた。流石に本殿には案内してくれなかったけど。
拝殿前まで行き軽くお辞儀。ああ、しまった。賽銭がないわ。う~ん、さっき拾ったこの綺麗な石でいいか。石を賽銭箱に入れ、鈴を鳴らす。それで二礼二拍。
そして最後の一礼のときに願い事を。
あれ? そう言えば、ここの神様って何ができるんだ? う、う~ん……ま、何でもいいか。
『明日も晴れますように』
そんなお願い事をした。
うん、これできっと明日の天気も大丈夫だろう。明日の天気は頼んだぞ、神奈子に諏訪子。
「……もう少し違う願いはなかったのかい?」
目の前に神奈子が現れた。
その辺に落ちていた石一つで現れるとは、随分と安い神様だ。
「えっ……どうして神奈子様が?」
巫女さんの声が後ろからしたけれど、とりあえずは無視して、俺は神奈子に言った。
「『世界が平和でありますように』とかのが良かった?」
「はぁ、もうなんでもいいよ」
む、なぜため息をする。立派な願いじゃあないか。
「神奈子」
「ん?」
「ただいま」
「ん……おかえり」
そう言って神奈子は笑ってくれた。
さてさて、挨拶もすんだし……帰るか。じゃね、神奈子。また会おうぜ。
「赤、何処へ行くのさ? ほら本殿に行くよ」
――諏訪子にも会ってもらわないと。
なんて声がしたけど、よく聞こえなかった。聞かなかった。
そして、本殿の方から轟音がした。
あぁ、やっぱり今回もダメだったよ……
「赤ー! 久しぶりー!!」
小さな神様の頭突きが腹に直撃した。
俺の目の前は真っ暗になった。
西行法師は1190年に亡くなったそうですので、幽々子さんが西行法師の娘だとすると矛盾してしまいますね
このお話の月面騒動はちょうど千年ほど前という設定です
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