東方小妖録【完結】   作:puc119

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ハーレム物とか憧れます

書けませんが……




第23話~急所に当たった~

 

 

「むぎゃ」

 

 痛い。

 そんななんとも格好悪い声を出しながら、地面へ落とされた。全く……せっかく助けてあげたのだからもう少し丁重に扱ってほしい。

 

 んでここは……どこだろうか?

 

 紫の能力を使って月から逃げ出してきたわけだけど、ここがどこなのかわからない。たぶん、地球だとは思うけど……

 

 目の前には立派な日本家屋が見える。そして――桜、桜、桜。

 

「これは、すげえな……」

 

 思わず声が出る。大量の桜の木に圧倒された。ホント綺麗だね。

 

 うん? でも、あの木だけ咲いてない。あれも桜の木だとは思うんだけど……

 

 

「綺麗でしょ? ここの桜は」

 

 

 うわぁ! ビ、ビックリしたな、もう。

 桜に見蕩れていたせいで全く気がつかなかった。あと、いきなり声をかけないでください。急に声をかけられるとびっくりしてしまうのです。

 

「えと、お嬢さんはどちら様で? ああ、僕は赤というものです」

 

 考えると俺って不法侵入者だよね。怒られそうだな。てか紫は何やってんだよ、はよ来なさい。

 

「私は西行寺幽々子。ここ白玉楼の主で亡霊よ」

 

 主で亡霊? 幽霊みたいなものなのかな? でも足があるぞ。

 え、えと、般若心経とか唱えたほうがいいのかな? いや、まぁ、覚えてないんだけどさ。

 

「赤、貴方のことは紫から聞いているわよ。紫の友人だそうね」

 

 ありゃ、俺のこと知ってるんだ。紫から聞いたってことは幽々子も紫の友人なんだろうか。

 いたんだ、友人。都市伝説かと思ってた。おっとりした感じの美人さんなのに、どこで道を間違えたのやら……

 

 

「ねえ、赤。ちょっと……」

 

 

 ――死んでみない?

 

 なんて、とても良い笑顔で幽々子に言われた。いきなりすぎる。

 

 ……ああ、この感じは紫の友人だわ。死ぬことのどの辺が『ちょっと』なのだろうか……

 

 

「ダメよ、幽々子。赤は私の大切な友人なのだから」

 

 どう反応すれば良いのか迷っていると、やっと紫が出てきた。遅いじゃないですか。あと“ちょっと”で死ぬところだったんだぞ。

 

 それにしても、“大切な”ねえ……何を企んでいるのやら。

 

「そう、それは残念ね」

 

 幽々子はそう言っていたけれど、残念そうには見えなかった。たぶん、さっきの発言はちょっとしたジョークだったのだろう。そうであってほしい。お願いだから。

 

「私は疲れから休むことにするわ。幽々子、赤を暫くの間お願いね」

 

 そう言って紫はすぐに消えてしまった。

 ああ、また置いていかれた……連れて行ってくれてもいいじゃないか。まぁ、帰る場所なんてないけどさ。

 

 行かなきゃいけない場所はあるけど。

 

「そう言うことらしいわよ。赤、これから暫くの間よろしくね」

 

 そう幽々子は言った。

 こちらこそ――

 

「不束者ですがよろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 この白玉楼には幽々子と半人半霊(なんだそりゃ?)でぶっきらぼうな庭師さんの二人しかいないらしい。こんなに広いのにもったいないね。

 

 俺はやることがなかったから、ボーっと桜を見ていた。うん、すごく綺麗だ。

 

 桜、西行と聞くとあの有名な歌人が頭に浮かぶ。

 

『願はくは 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月の頃』

 

 歌通り、桜の木の下で眠りについた彼の人生は幸せだったのだろうか? 何故かそんなことが気になった。

 

 

「もう夜よ。赤はホントに桜が好きなのね。昼間からずうーっと見ているじゃない」

 

 幽々子が声をかけてきた。夜桜というのも良いのもだしね。ちょいと暗いから、ライトアップとかしてくれると嬉しいんだけどなぁ。

 ライトアップされた夜桜はよりいっそう綺麗に見えるもの。

 

「なあなあ、幽々子。1本だけ咲いていない木があるけれど、なんであの桜は咲いてないのさ?」

 

 咲いていない桜の木がどうしても気になって、幽々子に聞いてみた。立派な木だし咲けばさぞ綺麗なんだと思うけど……

 

「う~ん、それが私にもわからないのよね。枯れてはいないみたいなんだけど」

 

 へ~、あんなんでも枯れてないのか。光合成もできなそうな色しているのに。木の下に根粒菌でも埋まっているんかねぇ。

 

 桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる! だったかな。ま、咲かないコイツの下には何もいないだろうけど。

 

「どう? 桜で一杯」

 

 片手にお酒を持ち、幽々子はそう言った。

 嬉しいお誘い。もちろん。いただきます。まぁ、俺は団子より花のが好きだったりするんだけどさ。

 なんて贅沢なことを思ってみたり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白玉楼で暮らさせてもらって4日。

 

「やっと、体の調子が戻ってきたわ」

 

 紫が現れた。

 白玉楼では幽々子や庭師さんとお喋りしたり、桜を見たり、幽々子と一緒にお酒を飲んだりした。ここまでゆっくりとさせてもらったのは久しぶり。

 

「赤、そろそろ行きますわよ。それとも、もう少しゆっくりしていく?」

「いや、もういいよ」

 

 これ以上はダメな気がする。悪い予感はよく当たるのだ。

 

「あら、赤はもう行っちゃうの? いいのよ遠慮なんてしなくても」

 

 幽々子が言った。

 

「遠慮なんてしてないさ。でもさ、そろそろ行かなくちゃ。会わないといけないやつもいるしね」

 

 幽香とかえーりんとか幽香とか諏訪の国の神様達とか幽香とか。

 

 ああ、うん……やっぱ、もうちょっとゆっくりしてこうかな。

 だってなんか色々と怖いもん。

 

「そう、じゃあ行きなさいな。来年の春にでも、また一緒に桜を見ましょ」

 

 ん~来年か……それは、ちょいと早い。そんなに見たら飽きちゃうよ。

 

「うーん。そうだなぁ、あの咲かない桜が咲いたときにでも呼んでよ。そんときにでもまた会おうぜ」

 

 ま、それ以外のときでも来るかも。ヤバイとき匿ってくれると助かります。

 

「……そうね。そのときは呼ばせてもらうわ」

 

 幽々子は笑って言った。けれども何故か紫は複雑な顔をしていた。

 そのことが何故か少しだけ気になった。

 

 

 さて後は――

 

 

「行くのか小僧」

 

 

 俺から見れば庭師さん、あんたもじゅうぶん小僧だけどね。ま、そういう意味じゃないんだろう。

 

「ねぇ、庭師さん。あの桜ってさ……」

「咲かんよ。永遠にな」

 

 でしょうね。

 ……なんとなくだけどわかってた。きっと紫の表情はそういうことなんだろう。

 何を仕掛けてあるのか知らないけれど、問題だけは起こさんようにね。

 

「ん、じゃあね。庭師さん」

「ああ、じゃあな小僧」

 

 お世話になりました。

 どうか元気に暮らしてくださいな。

 

 

「挨拶はすんだかしら? そろそろ行きますわよ」

「うん、大丈夫。んで、どこへ行くのさ?」

 

 紫の家とかかね。……嫌だなぁ、なんか汚そうだし。紫が掃除をするのとか想像できんもん。

 

 

「……そうね。あの花妖怪の所にでも行きましょうか?」

「ごめん、幽々子。もうちょっとお世話にn「冗談よ」なんなのさ……」

 

 いや、幽香の所へは行くよ。

 行かせてもらいますよ。

 でも今じゃないのだ。嫌なことは後まわー……じゃあなくて、楽しみは最後にとっておくタイプなのだ。

 

「私はやらなければいけないことがあるから忙しいのよ。だから適当な場所まで送るわ。その後は貴方に任せますわ」

 

 適当な場所ねぇ。

 

「ん、じゃあよろしく頼むよ」

 

 さて、行きますか。短い間ですが大変お世話になりました。またいつか会える日までどうかお元気で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぎゃ」

 

 痛い。

 だから、もう少し丁寧に送ってください。

 

 

 さてさて、と。

 

 ん~と、ここ……諏訪の神社前だよね。諏訪の国か~懐かしなぁ。1000年ぶりくらい?

 ちょうどいいし、ちょっと寄っていこうかな。ちょっとだけ。具体的に言えば諏訪子に会わない程度に。

 

 勝手知ったる神の家。途中で道草をしながらも、本殿目指して歩き始めた。

 

「あ、参拝の方ですか? こんにちは」

 

 そうして神社に着くと、掃除をしていた巫女さんが俺のことに気づいた。

 

「こんにちは。まぁ、参拝かな」

「そうですか、それではこちらです」

 

 巫女さんは俺の言葉を聞くと、嬉しそうにして俺を案内してくれた。流石に本殿には案内してくれなかったけど。

 

 拝殿前まで行き軽くお辞儀。ああ、しまった。賽銭がないわ。う~ん、さっき拾ったこの綺麗な石でいいか。石を賽銭箱に入れ、鈴を鳴らす。それで二礼二拍。

 そして最後の一礼のときに願い事を。

 

 あれ? そう言えば、ここの神様って何ができるんだ? う、う~ん……ま、何でもいいか。

 

『明日も晴れますように』

 

 そんなお願い事をした。

 うん、これできっと明日の天気も大丈夫だろう。明日の天気は頼んだぞ、神奈子に諏訪子。

 

 

「……もう少し違う願いはなかったのかい?」

 

 目の前に神奈子が現れた。

 その辺に落ちていた石一つで現れるとは、随分と安い神様だ。

 

「えっ……どうして神奈子様が?」

 

 巫女さんの声が後ろからしたけれど、とりあえずは無視して、俺は神奈子に言った。

 

「『世界が平和でありますように』とかのが良かった?」

「はぁ、もうなんでもいいよ」

 

 む、なぜため息をする。立派な願いじゃあないか。

 

 

「神奈子」

 

「ん?」

 

「ただいま」

 

「ん……おかえり」

 

 そう言って神奈子は笑ってくれた。

 さてさて、挨拶もすんだし……帰るか。じゃね、神奈子。また会おうぜ。

 

「赤、何処へ行くのさ? ほら本殿に行くよ」

 

 ――諏訪子にも会ってもらわないと。

 

 なんて声がしたけど、よく聞こえなかった。聞かなかった。

 

 

 そして、本殿の方から轟音がした。

 

 

 あぁ、やっぱり今回もダメだったよ……

 

 

「赤ー! 久しぶりー!!」

 

 

 小さな神様の頭突きが腹に直撃した。

 俺の目の前は真っ暗になった。

 

 

 






西行法師は1190年に亡くなったそうですので、幽々子さんが西行法師の娘だとすると矛盾してしまいますね

このお話の月面騒動はちょうど千年ほど前という設定です


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