う~む、体が重いし、どうにも調子が悪い。こりゃあ、長期戦は無理かねぇ。
まぁ、でもどうせ最後なんだ、それなら少しだけ頑張ってみようじゃあないか。
『つよい ポケモン よわい ポケモン そんなの ひとの かって ほんとうに つよい トレーナーなら すきな ポケモンで かてるように がんばるべき』
なんて有名なセリフがある。
このセリフを聞いたときの感動は忘れない。
けれども、やっぱり強いポケモンていうのは存在するんだ。相手が出してきた瞬間絶望するような、忘れたくても忘れることのできないポケモンはいる。
相手と自分の力の差を見せつける。
初代から変わらず頂点に君臨し続けるポケモン。
No.150 タイプはエスパー。
一発で終わらせてやんよ。
ポケモンを頭の中でイメージ。
髪は白くなり、頭に白い耳がつく。
紫色の長い尻尾。
そして白いパーカー。
『ミュウツー』
タイプ:エスパー
性別:?
レベル:100
性格:ひかえめ
持ち物:エスパージュエル
とくせい:プレッシャー
HP:354
こうげき:230
ぼうぎょ:279
とくこう:378
とくぼう:216
すばやさ:359
技:サイコブレイク・はどうだん・だいもんじ・シャドーボール
6VでCS全振りのフルアタ型。
おおー、体が軽い。
ふふっ、今なら何でもできそうだ。
「あ、赤様……なのですか?」
藍がこちらを向き、驚いたように尋ねた。そう言えば、藍にポケモンの姿を見せたこととかなかったね。
幼女がこちらに気づいた。
「貴様……誰だ?」
とりあえずその幼女と同じ高さまで飛び上がる。
「誰だろうと関係ないさ、来なよお嬢ちゃん。力の差を見せつけてあげる」
そして、そんなセリフ。
これでも一生懸命格好つけてみたつもり。
「……誰に口を利いているのかわかっているの? 今日はこんなにも良い月が出ているのだし――本気で殺してあげる」
お嬢ちゃんはそう言って、どこからか槍を取り出し突っ込んできた。
アイテム:エスパージュエル発動。
「『サイコブレイク』!!」
「起きます」
むぅ、体中がギシギシだ。
一匹しか使ってないのになぁ……
昨晩の勝負は普通に俺が勝った。確一でした。
勝負が終わるとあの幼女は気絶してしまい、どうすっかなぁとか思っていたら、チャイナ服を着た美人さんが着て引き取ってくれることに。
んで、どうやら吸血鬼がこの幻想郷を支配しようとしていたらしく、その親玉があの幼女だったらしい。つまり俺は知らない内に幻想郷の危機を救ったってことになる。いや~、良いことした後は気持ちいいね。
てか、幻想郷の危機だってのに紫は何をやっていたんだか……
そろそろ藍に逃げられるぞ。
さて、そろそろ出発しようかね。
そんなことを思い、出かける支度をして家を出ることに。
この家にも随分とお世話になった。
ありがとうございました。
向かう先は博麗神社、理由は外の世界に行くため。
どうやら、もう限界らしいのだ。
1996年2月に『ポケットモンスター 赤・緑』は発売される。
幻想郷と言う場所は、忘れられた者達の集まる場所。
そんな幻想郷は俺がいて良い場所じゃない。俺がいられるような場所じゃない。
博麗神社へと続く長い階段を上りながら、幻想郷での思い出に浸る。う~ん。楽しかった……のかな?
階段を上り終えると、小さな巫女さんがいた。
「あら、参拝客とは珍しいわね」
参拝客じゃないけどね。だいたい博麗神社って何の神様を祀ってあるんだよ。
初めましてこんにちは、と言おうと思ったら小さな巫女さんが倒れた。
ええー!?
い、いや、違うぞ。俺は何もしてないからね。
小さな巫女さんを母屋まで運び、布団の上に寝かせた。う~ん、これじゃあ帰りたくても帰れない。
どうすっかね。できれば早く目を覚ましてほしいのだけど。
「あら、赤が博麗神社にいるなんて珍しいわね。って、霊夢! どうしたの!?」
紫が現れたと思ったら、急に騒ぎ出した。全く、大の大人が情けない。少しは落ち着きなさいな。
ん? でも、れいむ? ……ああ、そっか。この子が博麗霊夢か。
俺の知っている霊夢は、赤色の巫女服を着ていたと思ったけど……まぁきっとこの子があの博麗霊夢なんだろう。
「なんか急に倒れたんだけど、風邪とかかねぇ?」
こっからじゃ、お医者さんまで遠いしどうしようか……ああ、紫が連れていけばいいのか。ホント、便利な能力だよねぇ。
「これは……」
おや? 紫さんったら随分と真剣な顔をしていますよ?
「どうしたのさ? お医者さんの所へ連れて行かなくても良いの?」
ほら、せめて薬くらい飲ませないと。
「……病気ではないわ。医者に見せても無駄でしょうね」
ありゃ、そうなの?
それならなんなのだろうか。雰囲気的に寝不足とかではなさそうだ。
「んじゃあ、なんなのさ?」
「この子は歴代の博麗の巫女の中でも、飛び抜けた霊力を持っているわ。だから私もこの子を博麗の巫女に選んだ。でも霊力が多すぎた。一人の人間が抱えられる限界を越しているわ。あと、数日が限界でしょう……」
あらあら……いきなりシリアスな感じになっちゃったな。少しは伏線くらい張っておいてほしかった。
「紫の能力でなんとかできないの?」
ほら、良い感じに境界を弄ってさ。
「無理よ。流石の私でもこの子の中の世界を広げることはできないわ」
「……そっか」
世界ねぇ。
世界……か。
「なぁ、紫。この子の名前ってなんて言うんだ?」
さっき聞いたけど確認のため、ね。
「名前? ダメよ。貴方にこれ以上背負わせるわけにはいかないもの」
「霊夢……この子、博麗霊夢って言うんだよな?」
俺が知っている数少ない東方Projectのキャラの一人。
確か、この娘が主人公……なんだよな。
「っ! どうして名前を?」
いや、あんた自分で言ってたからね? 今はそんなに驚く場面じゃないからね?
うん……たぶん、良い機会なんだろう。
さてさて、ちゃんと会うのは何年ぶりだろうか?
「ねぇ、ちょっと赤。聞いてい――」
紫の声が遠くなり始めたのがわかる。
意識を沈め、自分の奥へと進む。奥へ、奥へ、奥へと進み扉の前までたどり着いた。
扉をゆっくりと開け、中にいる彼女に挨拶。
やぁ、久しぶりだね。
『久しぶりじゃな』
そだね、こうやってちゃんと会うのは一億年ぶり以上になるのかな? んでさ、お願いがあるんだけど……
『わかっておる、あの人間の小娘を助ければ良いのじゃろ?』
おお、やたら物分りがいいじゃないか。
『そりゃ、お主を通して見ていたからな』
まぁ、そりゃそうか。
んじゃあ、ちょっと外へ出てきてもらえる?
あ、いきなり暴れたりしないでね。
『あい、わかった。久しぶりの娑婆なんじゃ、せいぜい楽しませてもらうよ』
む、娑婆とは失礼な。別に束縛していたわけではだろうに。
ああでもしなければ、彼女を助けられなかったのだ。
『わかっておるよ』
そう言って彼女は笑った。
「ちょっと! 赤!」
うわっ、何さ? んもう、そんなに叫ばなくてももう聞こえるよ。
「紫、ちょっと友達を連れてくるけどいい?」
「は? 何を言って……」
「いよっしゃーーー! 外の世界じゃーーー! 復活なのじゃーーーーー!」
彼女が現れた。
……あれ? コイツってこんなテンション高かったっけ? 俺の記憶が正しければもっとクールな感じだった気が……
「いや、お主の中にずっといたせいじゃな」
ああ、なるほど。まぁ、確かに、俺の中のやつらは皆テンション高いしね。
そう言った彼女は、一億年以上前に見た姿と全く変わら……あれ?
「……お前、なんか縮んでね?」
「だってわしの体はもう無いもん。それでせっかくだから、お主好みの大きさにした」
し、失礼な。俺はもっとグラマラスなお姉さんの方が好みです。
「はいはい、そうじゃのー」
……なんという棒読み。
棒読みちゃんか、お前は。ゆっくりしていってね!
「な、なんなの貴方は? どうしてそんな妖力を……」
うん? 紫の様子がおかしいですぞ。
俺は元々そういうのを感じないからわからないけれど、彼女の妖力が強すぎるのか。まぁ、一億年以上生きた妖怪だもんね。そりゃあ、それなりの妖力くらいは持っているのだろう。
ほら、もうちょっと力を抑えなさい。
「そんなことを言われても、久しぶりなせいで上手く制御できんのじゃ」
“のじゃ”じゃない、“のじゃ”じゃ。ちょっと可愛いと思うけどなんとかしなさいよ。話が進まないでしょうが。
「わっかたよ、ほれ、これで良いじゃろう?」
彼女がそう言って暫くすると、漸く紫が落ち着いてきた。何だよできるじゃん。
「だって、わし天才じゃし」
「お前、さっきからキャラがぶれすぎだろ……」
扱いに困る。
「……それで? 赤は何をしようと言うのかしら?」
ようやっと、紫が喋ってくれた。
「俺の世界を霊夢に移す。そうすれば霊夢は助かるだろ?」
なんせ、一万以上の存在を抱えていた世界なんだ。
「……確かに霊夢は助かるわ。けれどもそうやって移すの? それに、そんなことをしたら貴方は……」
まぁ、俺の存在は限りなく薄くなるだろうね。
皆からは見えなくなるだろうし、気配すらほとんど感じなくなるだろう。もしかしたら、そのまま消えるかもしれない。
「移すのは、そこの相棒にやってもらう……できるよな?」
「当たり前じゃ」
流石です。
「貴方の存在が消えるのよ?」
紫が言った。
「わかってるよ、そんくらい。大丈夫だって、ちょっと霊夢が死ぬまで貸しておくだけだし。それに……」
――外の世界が俺を呼んでいるしね。
そう俺は言った。
たぶん、ちょうど良い機会なんだろう。どうせこの幻想郷には、当分帰って来られないんだ。
「俺が消えたあと、お前はどうすんの?」
流石にお前を俺の中に戻すのは厳しいのだけど。そんな余裕なんてないだろうし。
「ん? わしか? そうじゃな……お主の住んでいた家を借りることにするよ。この小娘からお主の世界を回収しないといけんしな。それにお主だって数百年もすれば帰って来るのじゃろ? だったら待っているよ」
そっか、そりゃあは助かる。
でも、あんまり問題とかは起こすなよ?
「大丈夫じゃ……たぶん」
ああ、これはダメだろうな。
「んじゃあな、紫。今までお世話になった。ま、千年もしないうちに帰ってくるよ」
たった千年。
そんなのあっと言う間だ。
「本気で言っているの?」
「俺はいつだって本気だよ」
「……どうして、霊夢のためにそこまでするのかしら?」
紫が聞いた。
「だって、俺が一番最初に出会ったキャラだしな」
俺は答えた。
たぶん、今までで一番上手く笑えていたと思う。
つまり俺がこの東方Projectの世界を知ったきっかけ。
一方的な恩返し。偽善、エゴ。まぁ、何とでも言ってくださいな。
「え? どういう……」
紫の声がした。そんな紫の言葉には笑って返事の変わり。
さてさて、んじゃあ任せたよ相棒。
「ん、任されたよ相棒」
そんな言葉を交わした瞬間――俺の体から何かが抜けていくのがわかった。次第に意識は薄れていく。
どうやら今度こそゆっくり寝られそうだ。
雨の日だったと思う。
もしかしたら晴れていたかもしれない。
不治の病だったかもしれない。
交通事故だったかもしれない。
死にかけの女の子を救うためだったかもしれない。
けれども、今となってはどうでもいい。
ただ、確かなことは一人の青年が、この世界から消えたということ。
はい、最終話でした
どうでしょうか? 一応、彼女の説明やらもあるので、もう一話投稿する予定ですがこれが最終話となります
サブタイトルの~緑がつなぐ物語~の緑は彼女のことです
第2話とは違い、ホットケーキは関係ありません
吸血鬼の幼女はレミリアさんです
戦闘シーン全カットな理由は、そっちの方がカッコイイと思ったからです
けっして面倒だったからではありません
想像できなかったから、とかではありません。
なんちて
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