東方小妖録【完結】   作:puc119

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高校生のとき朝、私の机の上に緑色のホットケーキが置いてありました

「誕生日プレゼントだぜ」

最高の笑顔を見せてくれた、あの友人のことは忘れません
私の誕生日から3ヶ月ほどたった、ある夏の日の思い出です




第2話~緑でつなぐ物語~

 

 

「起きます」

 

 目が覚めると、気持ちの良い朝だった。窓からオレンジ色の朝日が差し込みなんとも清々しい気分になる。

 他人はそれを夕日と呼ぶらしいけど。

 

 うん、いつもより12時間ほど早い起床だね。

 

 早起きは三文の徳という言葉がある。三文というのは現代でいう百円と少しくらい。俺の睡眠のため3文は犠牲となったんだろう。

 

 良いことをした後というのは、とても清々しい気持ちになるよね。

 気分もいいし。

 ここはもう一眠りといきましょうか。

 

 おやすみなさい。

 

「あら、起きたのね」

「……おはようございます」

 

 起こされた。

 気持ちよく寝られなかった。

 

「『おはよう』なんて時間じゃないけれどね」

 

 えーりんがいい笑顔で応えてくれた。世間一般では、この笑顔のことを苦笑いとかいうらしい。

 

 苦さと甘さを合わせ持つ……まるでミルクコーヒーのようだ。

 なんて思ったりした。

 

 意味わからん。

 

「それで……」

「うん?」

「僕はこれからどうなるんでしょうか?」

 

 監獄はちょっと勘弁して欲しい。かと言って、精神病院も嫌だなぁ。捕われるのは遠慮したいし、俺なんかが捕まったところで助けてくれるヒーローはどこにもいない。

 そして何より、せっかくの第二の人生、俺は自由に生きたいんだ。

 

 わがままだろうか?

 わがままフェアリーアカモでポン。

 

 ちょっと古いか、それになんだよアカモって。

 

 

「これから貴方には、私のあ~……助手をしてもらうわ」

 

 今、何か言いかけてたね。たぶん、奴隷とかだろう。そりゃあ、アレだ。今にも泣きそうだ。

 反抗? そんなものできるわけがない。

 

 そしてそう言ってから、えーりんは俺の方へ一歩近づいてきた。

 

 こら、そんなに近づかれるとビックリするでしょうが。手とか握るぞ。

 

「?」

 

 それでもって、なんかえーりんが右手を出してきた。

 はて、これはどういう意味だろう。

 

「握手よ。知らないの? 因みに、貴方に拒否権はないわ」

 

 ふむ、それなら仕方ないね。

 とは言え、こちらもその意見には全会一致で可決だ。

 

「不束者ですが、よろしくお願いします」

 

 

 握った手は柔らかかった。

 

 わぁ~、女の子の手にぎっちゃったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、僕は何をすればいいんですか?」

 

 リビングみたいなところで、改めて聞いてみた。

 

「そうね。夕御飯をお願いできるかしら? あと別に敬語はやめてもいいわよ」

 

 ――上手く使えないみたいだしね。

 

 なんてえーりんが言った。

 ほっとけ、どうせ語彙力なんてありませんよ。

 

「後ろ向きに善処します」

「前は向かないの?」

「どうせ見えませんし」

 

 まぁ、名前も思い出せないのだから、後ろだって見えていないってのが現実。現実はいつだって辛いものなのだ。

 

 

 

「どうして、僕を助手なんかにしようとしたんですか?」

 

 夕飯の準備をしながら、俺は聞いた。

 

「いきなり現れた赤に興味があったのよ。それに能力持ちは珍しいし、しかも不老の存在。大きな理由はそこね」

 

 あれ? 俺が不老だなんて言ったっけ?

 てか、ようは実験動物ってことだよね、それ。俺の第二の人生はとんでもないことになってしまいました。

 

「じゃあ、夕御飯ができたら呼んでね」

 

 なんて言って、えーりんは隣の部屋に行ってしまった。

 よーし、作るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で……これは何?」

「夕御飯です」

 

 我ながら頑張ったと思う。一生懸命作りました。

 

「料理の説明をお願いできるかしら?」

「はい、左からクッキー・マドレーヌ・ホットケーキとなります。デザートにプリンも用意してあります」

 

 スポンジケーキ作ろうとしたけどやめておくことに。時間かかるし、あれ。

 

「質問してもいいかしら?」

「どうぞ」

「料理のチョイスはまあ、いいとして……どうして、このホットケーキは緑色なのかしら?」

「誕生日プレゼントです」

 

 ついでに最高の笑顔もプレゼントだ。

 

「……誰の誕生日よ」

 

 むぅ、1/365にかけてみたのは失敗だったか。

 

「……とりあえず、食べましょうか」

「はい」

 

 

 味は良かったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、貴方の能力の確認だけど……あの珍妙な格好になって、お腹をポコポコ叩いて、炎をまといながら体当たりをする能力ってことでいいかしら?」

 

 よろしいわけがないでしょうに。

 珍妙って……珍妙って……まぁ、珍妙か。

 

「いえ、あれは能力の一部です。1/650くらいです」

「はい? えっ? ……1/650?」

「はい、と言っても今使えるのは、その半分もありませんが」

 

 進化してないもんね。仕方ないね。

 進化するにはレベル上げが必要なんです。

 

 そう言えば、どうやったらレベルって上がるのかな? この世界にポケモンがいれば上がるだろうけど……東方の世界にポケモンはいるのだろうか。

 

「それでも多いわよ」

 

 ――まるで出鱈目ね。

 

 なんて、ため息しながらえーりんがつぶやいた。

 うん、まぁ、多いよね。

 名前くらいなら全部覚えているけど、全ての種族値なんて、とてもじゃないけど覚えきれないもん。

 

 

 

 その後は実際に能力を使って見せることに。

 

 『フシギダネ』の場合。

 背中に大きな芽が付き、緑色のパーカー姿だった。

 

 『ゼニガメ』の場合。

 甲羅を背中に背負って、青色のパーカー姿。

 

 ゼニガメの姿から人間の姿に戻ったとき、妙に体が重くなる感覚。

 なんだ? これ。

 

 『ポッポ』の場合。

 背中から翼が生え、後ろが茶色で、前が白っぽいパーカー姿になった。おお、これは飛べそうだ。

 

 パーカー姿は諦めた。全身タイツとかよりはマシだもの。パーカー姿ならまだまだ可愛いもの。きっと。

 

 そして、ポッポの姿から人間の姿に戻ったとき、猛烈な目眩に襲われ倒れた。

 

「っ!! 赤!!」

 

 遠くでえーりんの声がした。

 姿は見えない。

 なるほど、これが『めのまえが まっくらに なった!』ってやつか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きます」

 

 起きた。

 今度は本当に朝だった。

 

 う~ん、昨日は寝てばかりの一日になっちゃったね。

 それにしても、なんだかお腹が重い。そんなことを思いながら、少しだけ体を起こす。

 

 

 えーりんだった。

 

 

「っーーーー!!」

 

 

 うわぁ!! ビ、ビックリした。

 

 え? えっ……なにこれ? ど、どう言う状況ですか?

 

 そりゃあ、俺だって――

 朝起きたら女の子が隣で寝てたらいいな~とか。

 親方ぁ!! 空から女の子が!! とかならないかな~って思ったよ。

 

 でも、実際に起きちゃあダメなんであって。

 こういうのは妄想だからいいんであって。

 こうなっても、俺にはそんな勇気はないわけで……

 

 えっ、え? ……どうしよ、これ。

 

 お、起こした方がいいのかな?

 

 いや、でも寝てるとこ起こすのも……

 

 とかなんとか、うだうだと考えているとえーりんが起きた。

 

 

「んっ……ああ、良かった。起きたのね」

 

「あぅ、あぅ……」

 

 パニックです。

 ど、土下座でしょうか? とりあえず土下座すればいいのでしょうか!?

 

「おはよう」

 

 えーりんが言った。

 

「おお、おはょぅござます……」

「なに、どもっているのよ」

「べ、べつにど、どもってませんよ?」

 

 へ、平常運転だ。僕はいたって正常です。

 

「ふふっ、そうね」

 

 そんな俺の様子を見てえーりんは可愛らしく笑った。

 この笑顔を見ることができただけでも良しとしよう。……なんちて。

 

「……ごめんなさいね」

 

 

 えーりんがぽそりと呟いた。

 謝られた。

 

 きっと昨日のことだと思う。

 

 べつに謝ることなんてないんだけどなぁ。俺が調子に乗ったのも悪いんだし。

 しかし、それではあちらのメンツが立たないのだろう。本当に面倒くさいと思うけれど、人間関係とはそう言うものなのだ。

 

 ふむ……

 

「朝食を、お願いできますか? どうも、お腹がへってしまって」

 

 ホントは腹なんて減ってない。そういう体質になったのだし。

 

「わかったわ。準備できたら呼びに来るわね」

 

 どうやら意味は伝わってくれたと思う。

 えーりん頭よさそうだもんね。

 

 

「ありがとう」

 

 

 どういたしまして。

 

 

 そして、えーりんは朝食の準備にいった。

 ふむ、今日もいい日になりそうだ。

 

 

 

「ああ、そうだ。貴方の寝顔、可愛かったわよ」

「…………」

 

 

 そんなえーりんのセリフには何も返せなかった。

 ここで、『君の寝顔も可愛かったよ』

 

 な~んて返せれば、とか思ったりして。

 

 

 まぁ、俺には当分無理そうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 何ですか、これ?」

 

 目の前には味噌汁・焼き魚・サラダ・少しの漬物と緑色のホットケーキ。

 

「誕生日プレゼントよ」

 

 最高の笑顔だった。

 

 






やはり、一番最初に書いた作品と言うのには、なかなかに愛着があります
こうやって読みかえすと、ちょいと恥ずかしいですね

修正箇所が多くて大変

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