高校生のとき朝、私の机の上に緑色のホットケーキが置いてありました
「誕生日プレゼントだぜ」
最高の笑顔を見せてくれた、あの友人のことは忘れません
私の誕生日から3ヶ月ほどたった、ある夏の日の思い出です
「起きます」
目が覚めると、気持ちの良い朝だった。窓からオレンジ色の朝日が差し込みなんとも清々しい気分になる。
他人はそれを夕日と呼ぶらしいけど。
うん、いつもより12時間ほど早い起床だね。
早起きは三文の徳という言葉がある。三文というのは現代でいう百円と少しくらい。俺の睡眠のため3文は犠牲となったんだろう。
良いことをした後というのは、とても清々しい気持ちになるよね。
気分もいいし。
ここはもう一眠りといきましょうか。
おやすみなさい。
「あら、起きたのね」
「……おはようございます」
起こされた。
気持ちよく寝られなかった。
「『おはよう』なんて時間じゃないけれどね」
えーりんがいい笑顔で応えてくれた。世間一般では、この笑顔のことを苦笑いとかいうらしい。
苦さと甘さを合わせ持つ……まるでミルクコーヒーのようだ。
なんて思ったりした。
意味わからん。
「それで……」
「うん?」
「僕はこれからどうなるんでしょうか?」
監獄はちょっと勘弁して欲しい。かと言って、精神病院も嫌だなぁ。捕われるのは遠慮したいし、俺なんかが捕まったところで助けてくれるヒーローはどこにもいない。
そして何より、せっかくの第二の人生、俺は自由に生きたいんだ。
わがままだろうか?
わがままフェアリーアカモでポン。
ちょっと古いか、それになんだよアカモって。
「これから貴方には、私のあ~……助手をしてもらうわ」
今、何か言いかけてたね。たぶん、奴隷とかだろう。そりゃあ、アレだ。今にも泣きそうだ。
反抗? そんなものできるわけがない。
そしてそう言ってから、えーりんは俺の方へ一歩近づいてきた。
こら、そんなに近づかれるとビックリするでしょうが。手とか握るぞ。
「?」
それでもって、なんかえーりんが右手を出してきた。
はて、これはどういう意味だろう。
「握手よ。知らないの? 因みに、貴方に拒否権はないわ」
ふむ、それなら仕方ないね。
とは言え、こちらもその意見には全会一致で可決だ。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
握った手は柔らかかった。
わぁ~、女の子の手にぎっちゃったよ。
「それで、僕は何をすればいいんですか?」
リビングみたいなところで、改めて聞いてみた。
「そうね。夕御飯をお願いできるかしら? あと別に敬語はやめてもいいわよ」
――上手く使えないみたいだしね。
なんてえーりんが言った。
ほっとけ、どうせ語彙力なんてありませんよ。
「後ろ向きに善処します」
「前は向かないの?」
「どうせ見えませんし」
まぁ、名前も思い出せないのだから、後ろだって見えていないってのが現実。現実はいつだって辛いものなのだ。
「どうして、僕を助手なんかにしようとしたんですか?」
夕飯の準備をしながら、俺は聞いた。
「いきなり現れた赤に興味があったのよ。それに能力持ちは珍しいし、しかも不老の存在。大きな理由はそこね」
あれ? 俺が不老だなんて言ったっけ?
てか、ようは実験動物ってことだよね、それ。俺の第二の人生はとんでもないことになってしまいました。
「じゃあ、夕御飯ができたら呼んでね」
なんて言って、えーりんは隣の部屋に行ってしまった。
よーし、作るか。
「で……これは何?」
「夕御飯です」
我ながら頑張ったと思う。一生懸命作りました。
「料理の説明をお願いできるかしら?」
「はい、左からクッキー・マドレーヌ・ホットケーキとなります。デザートにプリンも用意してあります」
スポンジケーキ作ろうとしたけどやめておくことに。時間かかるし、あれ。
「質問してもいいかしら?」
「どうぞ」
「料理のチョイスはまあ、いいとして……どうして、このホットケーキは緑色なのかしら?」
「誕生日プレゼントです」
ついでに最高の笑顔もプレゼントだ。
「……誰の誕生日よ」
むぅ、1/365にかけてみたのは失敗だったか。
「……とりあえず、食べましょうか」
「はい」
味は良かったらしい。
「さて、貴方の能力の確認だけど……あの珍妙な格好になって、お腹をポコポコ叩いて、炎をまといながら体当たりをする能力ってことでいいかしら?」
よろしいわけがないでしょうに。
珍妙って……珍妙って……まぁ、珍妙か。
「いえ、あれは能力の一部です。1/650くらいです」
「はい? えっ? ……1/650?」
「はい、と言っても今使えるのは、その半分もありませんが」
進化してないもんね。仕方ないね。
進化するにはレベル上げが必要なんです。
そう言えば、どうやったらレベルって上がるのかな? この世界にポケモンがいれば上がるだろうけど……東方の世界にポケモンはいるのだろうか。
「それでも多いわよ」
――まるで出鱈目ね。
なんて、ため息しながらえーりんがつぶやいた。
うん、まぁ、多いよね。
名前くらいなら全部覚えているけど、全ての種族値なんて、とてもじゃないけど覚えきれないもん。
その後は実際に能力を使って見せることに。
『フシギダネ』の場合。
背中に大きな芽が付き、緑色のパーカー姿だった。
『ゼニガメ』の場合。
甲羅を背中に背負って、青色のパーカー姿。
ゼニガメの姿から人間の姿に戻ったとき、妙に体が重くなる感覚。
なんだ? これ。
『ポッポ』の場合。
背中から翼が生え、後ろが茶色で、前が白っぽいパーカー姿になった。おお、これは飛べそうだ。
パーカー姿は諦めた。全身タイツとかよりはマシだもの。パーカー姿ならまだまだ可愛いもの。きっと。
そして、ポッポの姿から人間の姿に戻ったとき、猛烈な目眩に襲われ倒れた。
「っ!! 赤!!」
遠くでえーりんの声がした。
姿は見えない。
なるほど、これが『めのまえが まっくらに なった!』ってやつか。
「起きます」
起きた。
今度は本当に朝だった。
う~ん、昨日は寝てばかりの一日になっちゃったね。
それにしても、なんだかお腹が重い。そんなことを思いながら、少しだけ体を起こす。
えーりんだった。
「っーーーー!!」
うわぁ!! ビ、ビックリした。
え? えっ……なにこれ? ど、どう言う状況ですか?
そりゃあ、俺だって――
朝起きたら女の子が隣で寝てたらいいな~とか。
親方ぁ!! 空から女の子が!! とかならないかな~って思ったよ。
でも、実際に起きちゃあダメなんであって。
こういうのは妄想だからいいんであって。
こうなっても、俺にはそんな勇気はないわけで……
えっ、え? ……どうしよ、これ。
お、起こした方がいいのかな?
いや、でも寝てるとこ起こすのも……
とかなんとか、うだうだと考えているとえーりんが起きた。
「んっ……ああ、良かった。起きたのね」
「あぅ、あぅ……」
パニックです。
ど、土下座でしょうか? とりあえず土下座すればいいのでしょうか!?
「おはよう」
えーりんが言った。
「おお、おはょぅござます……」
「なに、どもっているのよ」
「べ、べつにど、どもってませんよ?」
へ、平常運転だ。僕はいたって正常です。
「ふふっ、そうね」
そんな俺の様子を見てえーりんは可愛らしく笑った。
この笑顔を見ることができただけでも良しとしよう。……なんちて。
「……ごめんなさいね」
えーりんがぽそりと呟いた。
謝られた。
きっと昨日のことだと思う。
べつに謝ることなんてないんだけどなぁ。俺が調子に乗ったのも悪いんだし。
しかし、それではあちらのメンツが立たないのだろう。本当に面倒くさいと思うけれど、人間関係とはそう言うものなのだ。
ふむ……
「朝食を、お願いできますか? どうも、お腹がへってしまって」
ホントは腹なんて減ってない。そういう体質になったのだし。
「わかったわ。準備できたら呼びに来るわね」
どうやら意味は伝わってくれたと思う。
えーりん頭よさそうだもんね。
「ありがとう」
どういたしまして。
そして、えーりんは朝食の準備にいった。
ふむ、今日もいい日になりそうだ。
「ああ、そうだ。貴方の寝顔、可愛かったわよ」
「…………」
そんなえーりんのセリフには何も返せなかった。
ここで、『君の寝顔も可愛かったよ』
な~んて返せれば、とか思ったりして。
まぁ、俺には当分無理そうです。
「え? 何ですか、これ?」
目の前には味噌汁・焼き魚・サラダ・少しの漬物と緑色のホットケーキ。
「誕生日プレゼントよ」
最高の笑顔だった。
やはり、一番最初に書いた作品と言うのには、なかなかに愛着があります
こうやって読みかえすと、ちょいと恥ずかしいですね
修正箇所が多くて大変
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