東方小妖録【完結】   作:puc119

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第閑話~ここから先は修羅の道~

 

 

「ご、ごめん」

 

 目の前には食べ物まみれの女性たち。

 いや、ホント、どうして紫はこの場所に落としたのさ……お願いだから勘弁して下さい。

 

「赤……なの?」

 

 まず、えーりんがそんな言葉を落した。

 あ、ども。お久しぶりです。

 

「ひ、人違いじゃないでしょうか?」

 

 とりあえず全力でとぼけてみる。

 どうせダメだろうけれど、やるだけやってみなきゃわかんない。

 

「私が貴方を見間違えるわけがないでしょ? 本当に……本当に久しぶりね」

 

 ダメでした。

 知ってました。

 

 顔面に味噌汁のかかったままのえーりん。

 それはきっと感動的な再会。けれども、芳醇な味噌の香りが全てをぶち壊していた。やだ、何この人、味噌臭い。

 いや、口には出さないけどさ。

 

 せっかく是非曲直庁から帰ってきたのに、また行くハメになる。しかも今度は裁かれる側だ。

 最高の笑顔をした映姫が即決で『地獄逝きです』と言ってくれる場面が簡単に想像できるね。ちょっと映姫で遊びすぎたね。

 

「えと……うん。お久しぶりです。えーりん」

 

 えーりん以外の人達の様子を見ると、輝夜もゴキブリさんも、お茶碗を持ったまま固まっていた。てか何でゴキブリさんがえーりん達と一緒にいるの? 前まで月にいたのにね。

 

 そしてもう一人ゴキブリさんと同じウサ耳の女の子がいた。こちらは誰でしょうね? この女の子も月から来たのかねぇ?

 

「……とりあえず、台から降りて」

 

 輝夜に言われた。

 

「あっ、はい」

 

 素直に従ってそれで正座。なんだか懐かしい気分だ。

 

 さてさて、そんなことより此処は何処なんでしょうね? たぶん幻想郷の中ではあると思うけど……

 

「それで、どうして赤が此処に?」

 

 えーりんが聞いてきた。

 うん、どうしてだろうね。俺もどうしてこうなっちゃったのかな~って思ってたところだよ。

 

 それにしても、さっきから皆の視線が痛い。一刻も早くお家に帰りたいです。ちゃんと家が残っているのか怪しいけど。

 

「第三の人生を謳歌しに?」

「いや、知らないわよ」

 

 難易度はベリーハードらしいです。

 出オチも良いところ。

 

「とりあえず、私たちは着替えてくるから、赤はそこで待っていなさい」

 

 逃がしては……くれませんよね。それくらい知ってます。だって人は成長するのだから。

 

 むぅ、ホントどうしてこうなってしまったんだろうね。

 

 やだなぁ、えーりんとか昔のこと絶対怒ってるじゃないか。何を言われるのやら……と、そんなことを考えていると、白くてモフモフした奴らが近づいてきた。

 長い二つの耳。どうやら兎さんのようです。膝の上にピョコピョコ乗って来た兎をひたすらモフってみる。俺も『エルフーン』にでもなって一緒にモフモフしようかな。それなら同じモフモフ仲間になれる。

 自分で言っててあれだけど、意味わかんないね。

 

 それにしてもこいつら焼いて食べたら美味しそうだ。すき焼きにして食べたい。まぁ、俺は食事とかいらないんだけどさ。

 

 兎たちをひたすらモフっていると、漸くえーりんたちが帰ってきた。

 さぁ、判決の時間だ。てか、皆さっきと同じ服なんだね。えーりんに至ってはあの頃と同じ服じゃん。本当にその服が好きなんだね。

 

 そして、だ。

 

「あの……輝夜? その手に持っているウサ耳は何ですか?」

 

 あら、やだ。なんだかどっかで見たことのあるデザインなんですが……

 てか何故、お前がそれを持っている。

 

「これ? ペットの証。此処に住みなさいよ赤。永琳も良いって言っていたし、どうせ帰る場所だってないでしょ?」

 

 なんで月人は人をすぐにペットにして、ウサ耳を付けたがるんですかね? 嫌だよ、一度付けたらなかなか取れないんだもん、そのウサ耳。

 

 それに今は自分の家だってあるのだ。アイツのせいで、また畑を作り直すっていう仕事が俺には待っている。

 

「ん~残念だけど今は帰る場所があるんだ。たぶん、あいつも待ってると思うし」

 

 あの相棒、意外と寂しがり屋だし帰ってあげないと。

 

「赤は本当にあの娘と一緒に暮らしていたのね……」

 

 えーりんがぽそりと呟いた。

 おろ、アイツのこと知ってるんだ。アイツがまだ生きていた頃には会ったことないと思うけれど……

 まぁ、どっかで顔くらい合わせることもあるのかな?

 

「え……それって、あの緑の化物のこと? あんなのといてあんた大丈夫なの?」

 

 ゴキブリさんの台詞。『あんなの』って……何か酷い呼ばれ方されているけど、アイツ何かしたのかな?

 

「今までだってずっと一緒にいたし、別に大丈夫だよ」

 

 たまに暴れるけど、止められないわけでもないし。基本的にはただの生意気な女の子だ。

 

「それで、結局赤は私たちと一緒に生活をしないってことかしら?」

 

 ウサ耳を持ったまま輝夜言った。

 

 とりあえず、その物騒なブツを放しなさい。ウサ耳とかそういうのは、もっと可愛い女の子が付けるものでしょ。

 俺なんかが付けたところで、誰も喜ばないのだ。

 

「まぁ、うん。そうだね。いろんな場所にも行ってみたいし」

 

 だって此処にいると、監禁される未来しか見えないんだもん。えーりんこわい。

 

「本当に?」

「本当に」

 

 輝夜の問いかけに俺がそう答えると、輝夜は

 

 ――そう、残念ね。

 

 と、呟き。

 

「永琳、お願い」

 

 なんて言った。

 うん? 何が始まるんですか?

 

 えーりんの様子を見ると、こちらもまた何処かで見たような腕輪を持っていた。

 

 ……ああ、これはダメなやつだ。

 

「えと……あの……その腕輪は?」

 

 月での生活を思いだす。あの姉妹は今も元気で暮らしてるのかなぁ。そうだと嬉しいけど。

 

「赤も見覚えがあるでしょう? あの時は貴方に効かなかったみたいだけど、あれから色々と改造したから今度はちゃんと効くはずよ」

 

 腕輪を持ったまま、こちらにジリジリと近づいてくるえーりん。

 何でこの人こんな笑顔で迫ってくるの? すごく怖いんですが……ちょっ、ちょっと待ってって。落ち着いて話し合おうよ。

 きっと俺たちには一度冷静になる時間が必要なんだ。

 

 こちらも逃げるように後ずさり。

 けれどもついに、壁の隅へと追い詰められた。絶体絶命。壁際だけど崖っぷち。

 

 

 ……むぅ、仕方がない、か。

 久しぶりだしレベルは低めでいこう。

 

 頭の中でポケモンをイメージ。

 先端が白いみがかった大きな茶色い尻尾と大きな耳。

 首には白のマフラー。

 そして最後に茶色のパーカー。

 

『イーブイ』

 

タイプ:ノーマル

性別:♂

レベル:1

性格:おくびょう

持ち物:きあいのたすき

とくせい:にげあし

HP:12

こうげき:6

ぼうぎょ:6

とくこう:6

とくぼう:6

すばやさ:7

技:こらえる・じたばた・まもる・でんこうせっか

6 VでAS:全振り

 

「っーー! 何をするつもり?」

 

 えーりんが言った。

 大丈夫、別に乱暴したりするわけじゃないから。レベルも1だし。

 

 んじゃ、まそういうことで、俺は逃げさせてもらおうかな。

 

 技は選ばず、『にげる』を選択。

 

 よしゃ、すたこらさっさだぜー。

 全力でえーりんたちの傍を抜けて逃げ出す。

 

「ちょっと待ちなさい赤!」

 

 えーりんが何かを言った。

 特性のおかげで、逃げられないなんてこともない。申し訳ないけれど、さっさと行かせてもらおう。

 

 本当は話したいこととか沢山あるけれど、それはまた今度。

 

 だってなんだか恥ずかしいじゃん。

 大丈夫、きっと時間はいっぱいあるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 えーりんたちの家を出ると、竹林が広がっていた。

 

 これは……絶対迷うな。確実に迷子になる自信がある。

 

 右も左も同じ景色。

 はぁ……こんな場所が幻想郷にあったんだ。それとも俺のいない間にできたのかな? 竹って成長するの早いし。

 

 歩いてこの竹林を抜けられる気がしなかったから、とりあえず飛ぶことにした。伝説のポケモンになっても良かったけれど、疲れるから『ポッポ』になって飛び上がる。

 

 竹を越え上へ上へ。

 上空まで行くと改めて竹林の広さがわかった。すっげーなこれ。どうやら飛んで正解だったようだ。

 

 遠目には人里が見えた。あれから何年も経ったのに、なんだか昔と変わってなさそう。

 どうやら幻想郷の時の流れは、俺が思った以上に遅いみたいだ。難しいことはわからないけれど、たぶんこれで良いんだろう。

 

 

 そして、空を飛ぶこと数分。漸く我が家を発見した。

 

 けれども……あれだ、様子がおかしい。

 いや、家はちゃんとあるんだよ。それに畑がないのだって知ってた。

 

 だけど――

 

「な~んで、大量のヒマワリが家の周りに咲いているんでしょうね?」

 

 たぶん、頭の中の何処かでは理解できている。でも、そのことを深く考えようとはしてくれない。

 

 

 家の前に降りて改めて確認。

 お日様の方向に顔を向け、元気に咲いたヒマワリたち。

 

 うん、すごく綺麗なヒマワリです。

 

 

「どう綺麗でしょ? 貴方のために咲かせたのよ、赤」

 

 誰かの声が聞こえた。

 

 彼女が幻想郷にいることは知っていたし、聞いていた。けれども身体の震えが止まらない。

 

 一難去ってまた一難。

 いや、ホント、どうしよう……

 

 

 

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