東方小妖録【完結】   作:puc119

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第閑話~そんな人生を歩んできました~

 

 

「なあ、幽香。アイツって今どこにいるの?」

 

 幽香の用意してくれたお茶に口をつけながら聞いてみる。どうしてなのかは分からないけれど、何故か無性にお茶が怖い。

 

「アイツってのはあの緑の娘のことかしら?」

 

 首を傾げながら幽香が聞いてきた。

 

「うん、そうだよ。全く何処へ行ってるんだか……」

 

 せっかく帰ってきたというのに、淋しいじゃんか。

 

「やっぱりちょっと入れ過ぎたかしら……あの娘なら今は地底にいるはずよ」

 

 うん? 地底ですか? なんでまたそんな場所に……

 観光でもしているのだろうか。ああ、そう言えば確か勇儀も地底にいるんだっけかな。久しぶりに俺も会いたいな。会ってくれるかは分からないけれど……あれ? こんなこと前に考えなかったっけ? 気のせいかな。

 まぁ、考えても仕様が無いね。

 

 むぅ、地底、か……ちょいと遠いな。地底の入口って何処にあったかな。

 

「あっ、そういえば幽香……髪、伸びたんだね」

 

 くせのある緑髪は昔見たそれよりも、少しだけ長く見えた。

 

「え、ああ、うん。そ、そうね。伸ばしてみたわ」

 

 あら? なんだか幽香反応がよろしくないのだけど……なんだろう、もしかして俺の気のせいだったのかな。

 

「え、えと、あの娘の迎えに行くの?」

「うん、まあね。放って置くと何をするかわかんないし。幽香も一緒に行く?」

 

 できれば道案内をしてもらいたいのだけど。

 

「そうね……いえ、私はやめておくわ。十分楽しませてもらったし。たまには二人でのんびりしてあげなさい。あの娘も貴方の帰りをずっと待っていたわよ」

 

 あら、一緒に行ってはくれないのか。無理矢理でもついて来ると思っていたのに。

 

 てかアイツも、帰りを待っていたのならちゃんと家にいなさいよ。

 

「了解。まぁ、のんびりと迎えに行ってくるよ」

 

 辿り着けるかなぁ。

 ん~、まぁ、最悪紫に頼んで送ってもらうか。

 

「んじゃ、出かけるとするよ。この手錠とってもらって良い?」

 

 流石に付いたままじゃ邪魔です。

 

「ん。わかったわ……」

 

 なんて、幽香は言い俺に抱きついてきた。

 ななな、なにをしやがりますか!?

 

 そして、首には違和感が。

 

「あの……幽香? この首輪は?」

 

 手錠はとってもらえたけど、何か違うのがまた付いた。

 

「その首輪は目印。だってそうでもしないと、赤はまた何処かへ行ってしまうでしょう? 大丈夫、今度は何処へ行こうが連れ戻してあげる」

 

 そう言って幽香は優しく微笑んだ。

 勝手にこの首輪をちぎったら怒られるかな? ポケモンになればできないこともないと思うけれど……

 ん~まぁ、これくらいは仕様が無いのかな。俺だって本当に申し訳なかったと思っているんだ。

 

「ああ、地底へは博麗神社から行けるわよ」

 

 おろ? そうなの? それは知らなかった。確か、俺のいた時はそんなのなかったと思う。

 

「うん、わかった。よしゃ、それじゃ行くとするよ」

「うん、行ってらっしゃい。あと……」

 

 急に、しゅんとしてしまった幽香。アイツのことでの何か問題でもあったのかね? まぁ、アイツの性格を考えるとしょっちゅう問題を起こしていそうだけど。

 

「アイツがどうかしたの?」

「あの娘のことお願いね。あの娘はたぶん……」

 

 ああ、そういうお話か。うん、大丈夫だよ。それくらい分かっているし、心の準備くらいはできているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 こいしが地霊殿から姿を消してから数日。

 全く、どうしてあの子はすぐにふらふらと何処かへ行ってしまうのかしら……放っておいても大丈夫だとは思うけれど、やっぱり不安はある。

 

 ……あの子の心が読めたら楽だったのに。

 

 『覚』という種族のせいで周りから嫌われてしまい、心を閉ざす。こいしの気持ちだって分からないでもないけれど、もう少し落ち着いていて欲しい。

 

 なんとなく胸元にある第三の目を見つめると、また一つため息が溢れた。もし、この目がなかったら私の生き方も変わっていたのかもしれない。それはどんな生活だったのだろうか。

 今の生活に不満はないけれど、どうしてもそんなことを考えてしまう。

 

 私の悪い癖だ。

 

 あの緑の彼女のように、私ももっと明るい性格だったら良いのに。私が心を読むことのできない数少ない人で、大切な友人である彼女のように……

 

 

 そんなことを考えながら、地上へとつながる穴を抜け、博麗神社へ。

 地上へ来るのも久しぶり。あの子がいてくれれば良いのだけれど……

 

 博麗神社へ着くと、博麗の巫女と見たことのない男の人が縁側でお茶を飲んでいた。あれは誰だろうか。

 

 昔と比べて、この神社に妖怪が集まることは少なくなった。その分、人間の参拝客は増えたらしいけれど。

 

「あら、さとりさんじゃないですか。今日はどうされました?」

 

 博麗の巫女が私に気付き声をかけて来た。

 第三の目を向け、そんな巫女の心を読む。相変わらずこの巫女は珍しく私のことを嫌ってはいないみたい。心の綺麗な女性だ。

 

 そのまま、第三の目を隣に座っていた男の子へと向けた。

 ……この人はどうなのだろうか。

 

 その時だった。

 巫山戯ている量の声が頭の中へ響いた。

 

「おい、ファイヤーあれやれよ。に ら み つ「うるせーこのホームレスが! 発電所追い出され「うおおおおお! メガ進化あああ「おい! またガルーラが暴れだし「無理だって! 俺達はまだメガ進化できな「キモクナーイ「いや、お前の色違いとかもう」――なにコレ、声が止まらな――「やめて差し上げ「フレアドライブウウウ! 「ま~た、ブースたんが妄想を「大文字で良いじゃん「XYで撃てるようになったよ! おめで「まぁ、俺達は使えないんだけどな「アンノーンが勝てる方法を全力で考えようぜ! 「いや、あいつは無理だろ「正直負ける方が難しいよな「やめろよ! アンノーンのやつ泣いて「ピッカ! 「ちくわ大明神「おい、今のだ「うわ「ちょっ「っつー! 「ああ、皆今日も元気だな」――頭が……割れる――「ピッッカヂュ「だから「いや、そ「なぁ「眼鏡オバヒが「黙れよマルス「身代わりっ「それは「君は、今! 「科学の力っ「で、でた「強いポケモ「絶対に「しまった「ウーハー「エフェクトガー「結局、僕が「ヌケニンがサメハダーに勝てる方法を「いや無理だろ」

 

 響く……響く……何十、何百、何千、何万もの声が……

 

 そして、私はその場に倒れてしまった。

 なんとか視線を上げ、原因となっている少年を見る。貴方は……何者なのですか?

 

「おい、巫女さん! 倒れちゃったぞ! え? えっ医者か? 医者を呼ぶか!?」

「お、落ち着いてください赤さん。とりあえず母屋へ運びましょう」

 

 ああ、いえ、大丈夫です。

 少し、驚いただけですから。ただ――

 

「あの……私の視界に入らないでもらえますか?」

 

 私はそう少年に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「あの……私の視界に入らないでもらえますか?」

 

 急に倒れと思ったら、女の子にものすごいことを言われた。

 

「い、生きててすみません……」

 

 俺が何をしたのか分からないけれど、とにかくショックだった。

 桃色の髪の毛に、胸元には目のようなもの。たぶん、人間ではないんだろう。巫女さんは『さとり』と呼んでいたかな。

 そんな人にどうしていきなり罵られなければいけないんだろう……

 

「あ、いえ。失礼しました。もう……大丈夫です」

 

 女の子は起き上がりそう言った。しかし、視線は合わせてくれない。

 

「さとりさん、本当に大丈夫ですか? 少し休んだほうが……」

 

 巫女さんが言った。『さとり』ってことは、やっぱり覚の妖怪なのかな? いや、流石にそのまますぎるか。

 

「いえ、本当に大丈夫です。少し混乱してしまっただけです。それで……貴方は?」

 

 さとりちゃんが俺に聞いてきた。

 やはり、目は合わせてくれない。

 

「名前は赤。人間ではないよ。君は?」

「……そうでしたか。先程は失礼しました。私は古明地さとりです。地霊殿の主で覚の妖怪です」

 

 そう言って、さとりちゃんは俺に謝った。どうやら優しい性格のようだ。

 地霊殿って……なんだっけかな。何処かで聞いたことがあるけれど。そして、覚の妖怪、ねえ。

 つまりこの娘は――

 

「んと、もしかしてさっき倒れたのって俺の心を読んだから?」

「……はい」

 

 ああ、やっぱりそうだったんだ。アイツらうるさいからなぁ……まぁ、仕方ないね。

 

『え? 何? 俺らの声聴いてるの』

 

 俺の中が騒がしくなった。

 

『み、見られてりゅううううう!』

『き、緊張しちゃうな!』

 

 本当に黙っててください。

 

『ばかやろー、落ち着けお前ら。これはチャンスだぞ! エロい妄想だ。今すぐ全員でエロい妄想をするんだ!』

 

 おい、やめろ馬鹿ども!

 

『ハッ! その手があったか!!』

 

 そんな手なんてねーよ。

 お前らが馬鹿なことやると、俺が嫌われちゃうでしょうが。

 

「……そんな状態でどうして、貴方は正気でいられるのですか?」

 

 さとりちゃんが聞いてきた。

 どうしてって言われてもねぇ。もう慣れたとしか、言いようがないんだけど。そもそも俺が正気であるかどうかがもう怪しい。

 

「貴方は……いったい……」

 

 さあ? 俺って何者なんだろうね。

 

 

 

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