東方小妖録【完結】   作:puc119

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第閑話~この狭い幻想郷の何処かで~

 

「起きます」

 

 どうやら疲れは完全に抜けたわけではないらしく、何処か体が重かった。それに体を動かす気にもなれない。

 

 目が覚めても周りに誰もいない。

 仕方が無かったのかな? 話したいことや一緒にやりたかったことが沢山あった。できれば消えないで欲しかった。

 

 一緒に過ごした時間は長かったけれど、接した時間が少なすぎる。アイツも勝手だよなぁ。どうせなら俺も連れて行けってんだよ。

 

 

 はぁ……ホント、これからどうすっかね……

 

 

「久しぶりね。赤」

 

 声がした。

 そちらを見る気になれなかった。

 

「や、久しぶりだね。紫」

 

 顔を向けることもなく、適当に言葉を返してみた。

 ん~……此処って地底だよね。良いのかな紫は此処に来て。

 

「あの娘は?」

 

 紫が言った。

 さぁ、今頃何をやっているんだろうね?

 

 死んだ者の魂は冥界へと誘われる。でもアイツみたいに、初めから死んでいるような奴ってどうなるんだろうか?

 

「逝ったよ」

 

 暴れるだけ暴れて、好き勝手に色々言って、消えていった。

 

 そう言えば紫は以前から聞いていたんだよな。きっと幽香がついて来なかった理由や、あのセリフはそう言うことだったんだろう。

 

 あ~……何もやる気が起きない。

 

「そう……それで赤はこれからどうするつもり?」

 

 何をすれば良いか、何をしなければいけないのか……そんなこと俺にはわかんないよ。今は旅をする気にもなれないし、誰かと会う気にもなれない。

 脱力、無気力。

 

 消えても人に迷惑をかけるとは、アイツもなかなかな奴だ。

 

「ホント、どうすっかな~……ねぇ、どうすれば良いと思う?」

 

 もういっそのこと、10年ほどこうやって寝ていようかな。それに何の意味もないけど……

 

「とりあえず起きなさい。私はあの娘と赤の詳しい関係を知らないけれど、そうやって寝ていることが正解だとは思えないわ」

 

 まぁ、そりゃあそうだよね。うん、それじゃあとりあえず起きるとしようか。

 そろそろ進まなければいけないんだろう。相変わらず、何処へ向かって進めば良いのわからないけどさ。

 

 少しだけ重い体を動かして立ち上がり、紫を見て俺は言った。目も疲れているせいか、紫の姿も上手く見えない。

 

「アイツ何か言ってた?」

「貴方の面倒を見るようには言われたわ」

 

 なんじゃそりゃ。面倒を見てもらわなければいけないほど、子どもではないつもりだけど……一人でも生活はできるし、家もある。

 そう言えば幽香ってこれからどうするんだろうか? また一緒に生活するのかな?

 

「別に面倒は見てもらわなくても、大丈夫だよ? 普通に生活できるし」

「……たぶん、あの娘が私に頼んだのは、そう言うことではないと思うの。貴方の心が壊れないようにとかそう言う意味だと思う」

 

 うん? 心が壊れないように?でも俺って……

 

「心なら最初から壊れてるよ?」

「そう言うことではないわ」

 

 そう言うことではないらしい。

 

「ん~……よくわからないな。どういうことなのさ?」

「はぁ」

 

 ため息をつかれた。

 仕様が無いじゃん、わかんないんだもん。わからないものは、わからないのだ。

 

「確かに赤の心は、最初から壊れているわ。今も貴方の心の境界は操ることができないし……でもね、そう言うことじゃないの。赤にとって、あの娘の存在はとても大きなものだった。それが消えたということは、貴方が考えている以上に大きなことなのよ?」

 

 つまり、さらに俺の心が壊れないようにするってことなの? 別に大丈夫だと思うけどな~。

 まぁ、確かにアイツが消えたのは寂しいけどさ。

 

「もしかしたら、気づいていないみたいだから言うけれど……赤、貴方今泣いているわよ」

 

 ……俺が、泣いている?

 

「いや、それはおかしい」

「おかしいも何も実際、泣いているわ」

 

 顔に手を当ててみる。

 わずかに手が濡れた。

 

 いや、だって俺泣き方とかもう知らないんだよ? なんで……どうして?

 

「呆れた。本当に気づいていなかったのね……それだけあの娘の存在が大きかったってことでしょう。どう? これで分かったかしら? 今の貴方はとても不安定なの」

 

 涙が止まらない。

 止め方がわからない……

 

「え? これってどうすれば治るの?」

 

 こんなこと一度もなかったのに。

 いや、あっても俺が気づいていなかっただけなのか?

 

「本当はあの娘のことを忘れるのが一番だと思うけれど、そんなことをしたら余計に壊れそう。そうね……これからゆっくりと、あの娘が空けていった穴を埋めていくしかないでしょうね」

 

 なんだか随分と面倒くさいことになった。

 どうやら自分で思っているよりも事態は深刻……なのかな?

 

「とりあえず、何かを始めて見たらどう? あの謎の果物を売るのでも、農作をするでも何でも良いと思うわ」

 

 つまり何かをして、気を紛らわせろってことなんだろう。それはアイツを忘れろってことなんだろう。

 

 ん~またバナナを売っても良いけれど、どうせなら新しいことを始めたいな。農作は何かをやりながらでもできるし……他にできることって何かあったかな。

 

 ポケモンになれば色々とできるけれど、色々な人の役に立ちたい。

 

 うん……よし、決めた。

 

「そうだね。じゃあ……」

 

 人と人とを繋げるようなこと、離れてしまった人達をもう一度繋ぐようなこと。そんなことをしたくて俺は選んだ。

 

 ついでに、勝手に消えたアイツを探してみよう。

 文句の一つでも言わなければ気がすまん。

 

 冥界だろうが、あの世だろうが、転生していようが、違う物語だろうが必ず見つけて文句を言ってやる。

 

「……確かに面白そうな仕事ではあるけれど、幻想郷は狭いのだし、仕事なんてほとんどないと思うわよ?」

「良いよ、お金が欲しくてやるわけじゃないんだし。楽しければそれで良い」

「そう、それなら応援はしてあげるわ。まぁ、頑張りなさい」

 

 さてさて、決めたは良いけれど、これからどうやっていこうかね。全く仕事がなかったらどうしようか……

 まぁ、その時はその時なのかな。

 

 あれだけ流れていた涙はいつの間にか止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これで止まっていた物語は漸く動き出してくれた。

 

 少年の仕事は人々を繋ぐこと。

 この狭い幻想郷で切れた繋がりを戻すこと。

 

 

 これで、心の壊れた少年のお話はきっと終わり。

 

 この少年が赤い帽子を被り皆から『郵便屋』と言われるのは、きっとまた別のお話。

 

 






あ~……漸く閑話も終わりましたね

いかにも続きがあるように書きましたが、ただの打ち切りかもしれません

な~んてね

まぁ、もし続きがあったとしても新しいお話になりそうですので、『東方小妖録』はこれで完結です


感想・質問は無理して書いてもらわなくても私は大丈夫です
あれば嬉しいですが……

では、またいつかお会いしましょう
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