東方小妖録【完結】   作:puc119

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第3話~蹴らないで下さい~

 

 

 たった一日だけど、あれから俺とえーりんの距離は一気に縮まったんだと思う。

 

 この世界に来て二日目、本格的にえーりんの雑用としての生活が始まった。本当なら料理は俺が全部用意するはずだったけど、如何せん俺は菓子類しか作れない。

 結局、基本はえーりんが作って、俺はおやつとかデザートを作るときだけ。あ、でも俺だって、カップラーメンなら自信はあるぞ?

 

 そんな生活をしていて、分かったことがいくつもある。

 

 この世界は、俺の知っている東方Projectの世界よりも、未来もしくは過去に存在しているということ。

 

 その確かめのため、えーりんに

 

「えーりんって何歳?」

 

 的な質問をしたら怒られた。

 女性に年齢の質問はタブーだそうです。

 

 あと、えーりんも能力を持っていて『あらゆる薬を作る程度の能力』と言うらしい。だから、その『程度』ってなにさ?

 

 また、えーりんはこの世界でお偉いさんらしく、会議とかで家を空けることが頻繁にあった。その間、俺は一人ぽっち。さみしいね。

 

 

 俺の能力に関係することでは――

 

 今のところ、一日になることできるポケモンの種類は、基本的には三匹が限界。長い休憩を入れれば、四匹目までいける。

 まぁ、倒れちゃうんだけどさ。

 さらに、これは『ヒトカゲ』や『ポッポ』など弱いポケモンの場合で、『ミュウツー』みたいに強いポケモンだと一匹で限界らしい。もちろんブッ倒れた。

 

 最初の一年は倒れてばかりだったせいか、えーりんにはかなり迷惑をかけたと思う。一ヶ月ほど監禁されたりもした。エーリン、コワイ。

 

 また、俺たちの住んでいる街の外には妖怪達が沢山いるらしい。会話できるやつはほとんでいなかったけど。

 

 この街は結界みたいなやつで覆われていて、妖怪が襲って来ないようにしているんだってさ。人間の姿だと問題ないけど、ポケモンの姿で結界を通ろとしたら、一発で意識を持っていかれた。マジ勘弁。

 

 それとレベル上げも一応やってはいる。どうやら、ポケモンを倒さなくてもレベルは上がるみたいだった。

 街の外に出て、弱そうな妖怪を見つけたら、背後から最大火力の技を打ち込む。……ちょっとずるいけど仕方ないね。真正面から戦って勝てる気しないし。

 

 そして、コツコツと頑張ったおかげか――

 

 『ヒトカゲ』は『リザード』に。

 『フシギダネ』は『フシギソウ』へ。

 『ポッポ』は『ピジョン』となった。

 

 タケシくらいなら倒せると思う。カスミはちょっと厳しいくらいかな。

 

 そして、えーりん以外の知り合いも少しだけ増えた。

 

 それはセコセコとレベルを上げているときだった。緑の着物を着た女性が声をかけてきたのは。

 

 それが、俺と彼女の初めての出会い。いつか、俺ではない誰かが語る物語の一部の始まり。

 

「良い天気じゃな」

「お、おぅ」

 

 そんな彼女の第一印象は『何か痛い人』。いや、だって『じゃな』とかないでしょ。見た目、若い女性が『じゃな』だよ?

 

 その時の会話はそれだけ。その彼女はいつの間にか消えていた。

 

 それからも、彼女と会うことは多々あった。でも、会話はいつも一言、二言で終わり。

 彼女が何者で何をしたいのかはわからない。アイツは最初からそんな奴だった。

 

 

 そんな生活を何年かしてきた。

 そしてとある日、実験器具を俺が洗っていると、えーりんが――

 

「月に行く予定が決まったわ」

 

 なんて言ってきた。

 ああ、えーりん研究のしすぎでついに頭が……なんて、哀れみの視線を送っていたら蹴られた。痛い。

 

 んもう、どっかの神様といい、最近の女性はすぐ蹴る。あの緑色の彼女にも蹴られそうだ。

 

 どういうことなのか詳しく聞いてみると――

 えーりん曰く、地上では『穢れ』を完全に取り除くことができない。だから、『穢れ無き大地』である月に移住するんだって。

 

 そんなこと言われても、正直よくわかんなかった。難しい話は苦手。

 

 

「普通に生活していたら知っているはずなんだけど……」

 

 失礼な。それだと俺が普通に生活してないみたいじゃないか。

 そんな会話をしてからえーりんは一枚の紙を渡してくれた。

 

「?」

「貴方の乗る船の番号と出発時間よ。まぁ、私と同じなんだけどね」

 

 なるほど、俺も月へ行っても良いのか。

 しかし、『月』ねぇ。なんか、とんでもないことになっちゃったなぁ。そもそも月で生活ってできるのかな。

 

 

 その後、いつものようにレベル上げをしていたら、またあの彼女と会った。

 

「十日後じゃ」

 

 彼女が言った。

 

「何が?」

 

 俺は聞いた。

 

「わしら妖怪が人間達を襲う日」

 

 彼女が答えた。

 

「して、お主はどうするのじゃ?」

 

 

 ――人間から外れた者よ。

 

 

 彼女の言葉は、よく響いた。

 

「……さぁてねぇ。その日になったら考えるよ。でも、どうして十日後なのさ?」

「その日、人間どもはこの地を去る。それを止めるためじゃ。浮き足だっている人間どもの隙をつき、滅びぬ程度に殺す」

 

 妖怪が存在するには、人間の存在が不可欠。つまりはそういうことなのだろう。

 

 そして、そんなことより――

 

「ちょ、ちょい待って。どうしてお前のような妖怪が、人間が月に行く日を知っているんだ?」

「いや、普通に生活していればわかるじゃろ」

 

 ……マジですか?

 俺って何やってたんだろう。

 

「ではな、十日後を楽しみにしている。お主の答えも含めてな」

 

 ふむ。

 

「……中央広場」

「うん?」

「中央広場で待っているよ」

「心得た」

 

 そして、いつものように彼女は消えた。

 

 十日後、かぁ……さてさて、どうしたもんかねぇ。

 

 

 

 そこから十日、準備を少ししたくらいで、あとはいつも通り過ごした。妖怪が攻めてくることは誰にも言っていない。

 えーりんにもだ。

 

 あの日から、レベル上げをしていても彼女に会うことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして十日後。

 

「赤、迎えが来たわ。行きましょう」

 

 さて、そろそろ行かなきゃいけない時間なんだろう。少しだけ頑張らなきゃいけない時が来た。これまで随分とのんびり生きてきたけれど、ここらでちょいと頑張ってみようじゃあないか。

 

 頭の中でポケモンをイメージ。

 

「赤?」

 

 『フシギソウ』になった俺をえーりんが不思議そうに見てきた。

 

 えと、ほら……大事な場面だからツッコミは無しで。

 

「『ねむりごな』」

「っ!!」

「おやすみなさい。良い夢を」

 

 眠らせたえーりんを、迎えに来た人に渡す。

 

「えーりんをお願いね」

「……赤様はどうなさいますか?」

「もう少しだけブラブラしているよ」

「八意様がお怒りになりますよ」

 

 それは嫌だなぁ。えーりんって怒るとすごく怖いんだ。でも、今はきっと俺が頑張らないといけない場面なんだろう。

 せっかく新しい世界へ来たのだから、自分なりに頑張ってみたいんだ。それが正解なのかはわからない。でもまぁ、間違ってはいないんじゃかな。

 

「えーりんにさ『ありがとう』と『ごめんなさい』と『お世話になりました』って伝えといてもらえる?」

「……承りました」

「ありがと」

 

 そこまで会話をしたところで爆音が響いた。どうやら妖怪たちが動き出したらしい。

 

 さてさて全面戦争の始まりだ。

 そんじゃ、行きますか。

 

「どちらへ?」

「でぇとの約束」

 

 そう言って俺は『フシギソウ』から『ピジョン』になり約束の場所まで飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い天気じゃな」

 

 約束の場所まで行くと既に彼女がいた。

 待たせちゃったかな。女性を待たせてしまうとは俺もまだまだだ。

 

「ああ、そうだな」

 

 今度はどもらず言えて一安心。

 

「して、お主の答えを聞こうか」

 

 『正義の敵は悪ではなく、また別の正義だ』って言葉があったと思う。

 その言葉を聞いて、ああ、なるほどなぁ。なんて思った。

 

 でも、俺はそうは思わない。思いたくはない。

 

 だって、正義の敵が正義なら、悪の敵もまた別の悪ってなりそうだもの。それに、正義の敵は悪であった方が気持ちがいい。

 気持ちってのは大切なんだ。きっと何よりも。

 

 じゃあ、今回の場合、人間と妖怪どちらが『正義』で、どちらが『悪』なんだろうね。

 

 でも、やっぱり俺は悪が良いかな。ほら、悪の組織とか憧れる年頃なんです。

 

 そんなことを考えながら、俺は『人間の姿』に戻った。

 

「……それがお主の答えか」

 

 来いよ妖怪。ボッコボコにしてやんよ。

 

 

 

 本日、三匹目のポケモンをイメージ。

 火力だけなら、今の俺の中では最大なはず。

 

 炎の出る尻尾と鋭い爪。

 頭から伸びる龍を思わせる角。

 忘れちゃいけないオレンジパーカー。

 

 うん、『ヒトカゲ』よりは凛々しくなったかな。今ならカスミだって倒せると思う。

 

『リザード』

タイプ:炎

性別:♂

レベル:24

性格:いじっぱり

持ち物:炎のジュエル

とくせい:もうか

HP:69

こうげき:63

ぼうぎょ:40

とくこう:45

とくぼう:43

すばやさ:65

技:つるぎのまい・みがわり・フレアドライブ・おんがえし

 

 6Vで努力値はAS極振り。

 これが俺にできる限界。

 

 俺の姿が変わってすぐ、彼女が突っ込んできた。

 あらぁ、素早さはあちらの方が上か。

 

 そんな彼女の攻撃を避けられるわけもなく、ボディにいいのを一発。

 

「かはっ……」

 

 押しつぶされた肺から空気が抜け、口から変な声が出た。

 めちゃくちゃ痛い。

 

 

 いやいや、これくらい耐えてくれよ。

 

 ……耐えろって

 

 

 耐えやがれ!!

 

 

 

「っと……」

 

 残ったHPはもう1/6もない。それでも、なんとか耐えてくれた。

 こんな状態の俺じゃ、もう一発は流石に耐えられないだろう。そして使えるポケモンもこれが最後。

 

 だからこれが、最初で最後の一発。

 

 特性:もうか発動

 アイテム:炎のジュエル使用

 

 喰らえや、今打てる中でいっちゃん美味いのを。

 

 

「『フレアドライブ!!』」

 

 

 炎を纏った体で彼女へ叩き込み吹っ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お主の技、なかなかに効いたぞ」

 

 普通に起き上がった。

 てか、全然効いてなくないですか?

 

 いやいや、マジかよ。ホント勘弁して欲しい。それこそレベルが違う。

 

 そして、反動のダメージ。あ~……まぁ、耐えられないわな。

 

 HPが赤ラインを越え0となり、人間の姿へ。かろうじて意識は飛んでないもののフラッフラだ。

 

「じゃあの。生きていたらまた会おうか」

 

 あ~あ、もう。きっびしいね、ホント。たぶん、彼女を行かせたら、この戦い人間が負ける。

 ここの人間は妖怪を舐めすぎだ。

 

 でも、これもしょうがないのかねぇ。一応、俺だって頑張ってみた。自分の限界までは頑張ってみたけど、ダメだっただけ。

 

 それならしょうがない……のかな?

 

 この街に思い出なんかほとんどない。人間が負けようが妖怪が負けようが、どっちだって良い。

 知り合いだってえーりんくらいだ。

 

 ああでも、そっか……もし、この彼女を行かせてしまったら、えーりんも困るよなぁ。

 それに何より、俺がえーりんに怒られる!!

 

 

 う~ん。

 よおし、やる気が少し出た。だって怒られるのやだもん。最近のえーりん凄い怖いしさ。

 

 正義になんてなれないけれど、泥だらけで汚らしい、這いつくばって生き延びる悪にでもなってやろうじゃないか。

 

 

 本日、四匹目のポケモンをイメージ。

 とっくに限界なんて越えている。

 

 それでもやらなきゃあいけないんだ。

 

 体が白い綿で覆われた。

 肩には緑色の手みたいなのが伸びる。

 パーカーの色は白だった。

 

『モンメン』

タイプ:草

性別:♂

レベル:1

性格:ゆうかん

持ち物:きあいのタスキ

とくせい:いたずらごころ

HP:11

こうげき:5

ぼうぎょ:6

とくこう:6

とくぼう:6

すばやさ:5

技:やどりぎのたね・みがわり・がむしゃら・まもる

 

 

 なんとか立ち上がる。

 彼女が気づく。

 

「なんじゃ、まだやるのか? 次は殺すぞ」

 

 

 

「……いやね、そりゃもうフラッフラで、今にも倒れそうだ。足は痛いし、手は上がらない、眼球運動ですら辛い――つまり、絶好調だ」

 

 

 

 反撃返し。

 

 

 






緑の彼女はレベル54の『ハクリュー』くらい

あと1レベルで『カイリュー』に進化です
それは、この世界ではかなりの強さっぽいです

さてさて、主人公どうするんでしょうね

わかる人にはすぐわかるオチですけど……

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