東方小妖録【完結】   作:puc119

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第8話~運に任せて~

 

 

 湖に近づくにつれ、どうにも騒がしくなってきた。そして、湖の真ん中辺りで戦っている二柱を発見。

 

 飛び交う弾幕、降り注ぐ木柱、突き出る土柱。

 

「うわぁ……きれいだなぁ……」

 

 俺が? 今から? あそこに?

 いやいや、無理無理。流石に死んじゃうって。これはもう諦めて帰っちゃおうかな。

 

 

 ……さてさてと、そんな冗談はいいとして戦況を確認。予想通り諏訪子はかなりキツそうだった。それに対して八坂神はまだまだ余裕そう。

 よしゃ、さっさと行かないとね、また彼女に怒られそうだし。

 

 移動していると、諏訪子に今までとは違う動きがあった。諏訪子が鉄っぽい輪で八坂神を拘束。

 

 おおー、やるじゃん諏訪子。と思ったが様子がおかしい。

 拘束していた輪がボロボロと崩れ落ちていった。

 

 そして大技を打ち込もうとしていたのか、諏訪子に隙が。

 

「あっ……ヤバくないっすか」

 

 思わず声が出る。そしてその隙を八坂神が見逃す訳もなく……木柱が諏訪子に直撃した。

 

 

 

 

 

 

 落ちてきた諏訪子を、できるだけ優しく受け止める。

 

 ホント軽いなコイツは。この軽い体に、どれだけの思いを詰め込んでいるんだろうね……

 

 

「あ、れ……なんで……赤がいるの?」

 

 いつもの元気さが全くなく、弱々しい諏訪子の声。

 助けに来たつもりだったんだけどさ、ちょっと間に合わんかった。ごめんな。

 

「ごめんね……わたし勝てなかったよ……」

 

 ――くやしいなぁ。

 

 なんて泣いてるような、笑っているような声で諏訪子がポソリと言った。

 

「……諏訪子、ちょっと手出して」

 

 ――手?

 

 そう言って、諏訪子は弱々しくも、その手をあげてくれた。んで、その手に俺の手を合わせる。

 

 ほい、バトンタッチ。

 

 ここまでが諏訪子の戦い、ここからは俺の戦い。お前はちょっと休憩してろ。

 

 諏訪子を安全な場所まで運び、神様に効くかどうかはわからないけれど一応『かいふくのクスリ』を使っておいた。ないよりはマシなはず。

 

 その間、八坂神は特に何もしてこなかった。いやぁ、やさしいね。

 

「なぁ、八坂の神様、諏訪子ってこのあとどうなるの?」

 

 答えなんてわかっていたけど、もしかしたらね。

 

「洩矢の神には死んでもらう。それで妖怪よ、今度は何の用だ?」

 

 ああ、やっぱダメだったか。ま、わかってたことだけどさ。それに、それに大切なのはこれからだ。

 

「交渉かな……ん~、殺さないってことはできないんかねぇ?」

「無理だ」

「んじゃあさ、俺が貴方と勝負して勝ったら、諏訪子は殺さないでもらえる?」

 

 まぁ、ヤダって言っても無理やり言うこと聞かせるんだけどさ。

 

「はっあんたが、私に勝てるとでも? 今朝のことを忘れたのかい?」

「いやぁ、あの時は本気じゃなかったんだ」

 

 なんて言い訳してみたり。とは言え、一応今朝よりは強いはず。あの時はレベル50だったもん。

 まぁ、レベルを100にしたところで、八坂神に勝てるかはわからないけどさ。神様相手にどこまで通じるのやら。

 

「負け犬の遠吠えにしか聞こえんな」

 

 一度負けたって次勝ちゃあいいんだ。チャンスがあるのなら何度だって挑んであげるよ。

 

「来いよ、勝ち豚。ボッコボコにしてやんよ」

「……妖怪風情が舐めるなよ」

 

 こんないい雨が降っているんだ、負ける気がしない。

 さあ、リベンジマッチといこうか。

 

 

 

 

 『キングドラ』

 

 優秀なタイプと特性を持つ。

 種族値も平均的に高く、雨パーティーにおける絶対的なエース。

 

 伝説のポケモンを使用可能なバトルですら、コイツが猛威をふるうことがある。そんな伝説に最も近い、非伝説ポケモン。

 

 

 

「エクスパンデッド・オンバシラ」

 

 八坂神の声がした。

 ああ、あの木柱って御柱だったのか。昔は御柱に乗って街中を回ったものです。それはもうどれほどに昔のことだろうか。懐かしいなぁ。

 

 さてさて、そんなもの喰らいたくもない。御利益とかある気がしないし。それに今ばかりは素早さなら負けないんだぜー。

 

「『ハイドロポンプ』!」

 

 自分でも感動するくらい大きな水流を八坂神に向けてぶっ放した。

 んで、八坂神にドカーン。

 

「なっ! はやっ!!」

 

 いよっしゃー! 直撃いったー!

 ふふん、どうよタイプ一致眼鏡雨ポンの威力は。等倍程度ならだいたいの敵を吹き飛ばしてくれる技なんです。

 

 そんなことして、喜んでいたら空か大量の御柱。本日の諏訪は雨時々、御柱。こりゃあ、大変だ。

 まぁ、避けられるわけもなくそれが直撃。

 

 い、痛い……

 

 でも、耐えた。だからまだ戦える。

 

 八坂神を見るとあちらはボロボロ。さ、流石は雨グドラさん。例え、神様相手だろうとその威力はすごいです。

 

 さぁ、ラスト一発。

 さくっと終わりにしましょうか!

 

「負けられるかあああ!」

 

 八坂神の咆哮が轟く。空には視界を埋め尽くす量の御柱。

 おお……さっきの倍近い数の御柱が……

 

 でもさ。負けられんのは……負けたくないのはこっちも同じ。

 そんじゃ、またね、大和の神様。サクッと倒して大和の国へ帰ってもらおうじゃないか。

 

 

 

 

「いっったれぇーーー『ハイドロポンプ』!!」

 

 

 

 

 

『あいての かなこには あたらなかった。』

 

 

 

「……はい?」

 

 水流が明後日の方向へ飛んでいった。

 そして空から大量の御柱が――

 

 いや、ホント、勘弁してほしい……

 

 さっきよりもさらに多い御柱なんて、避けられるわけもなく直撃。もちろんHPは0です。

 

 湖に叩き落されたけど、もう動けない。

 物理的にも精神的にも沈んでいく中、『なみのり』で良かったじゃん。とか、お墓は海の見える丘にして欲しかったなぁとか思った。

 

 この人生、上手くいかないものだね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きmうわぁぁあああっ!」

 

 目を覚ますと、諏訪子の顔が目の前にあった。

 ビ、ビックリしたぁ……

 

 諏訪子も諏訪子で驚いたらしく。きゃあああ。とか、あーうー。とか言ってる。

 

 とりあえず落ち着いて状況確認。いつも通りの神社と、いつも通りの諏訪子。

 

 そしてなにより――

 

 諏訪子も俺も生きているみたいだ。

 

 もっと詳しいことを知りたいから、諏訪子に聞こうとしてみたけど、顔を赤くして「あーうー」言ってて、話にならなそう。

 

 なんなんだコイツは、やたらカワイイな。思わず抱きしめてあげたくなる。いや、そんな勇気はないけどさ。臆病者なんです。

 

 

 そんなことをしていると八坂神が現れた。うっわ、何でこの神様がいるのですか? いや、まぁ、そりゃあいるか。あの戦いで俺たちは負けたのだし。

 

「どうも騒がしいと思ったら、起きたのかい」

「……おはようございます。えと、どうして八坂の神様が?」

「神奈子でいいわよ、そうだね。そのへんも含めて説明するか」

 

 えっ、神様を呼び捨てでいいんですか?

 

 諏訪子? コイツはまた別のお話。

 

 神奈子から話を聞くと、俺が湖に落ちたあと、神奈子も力尽きて湖に落ちたらしい。それで、ちょうどよく目を覚ました諏訪子が、俺と神奈子を救出したんだと。

 いや~、神奈子も助けるとは、諏訪子って優しいんだな。

 

 それから、半日ほどで神奈子は目覚めたらしく、これからのことを話し合ったんだって。一応、戦争自体には神奈子が勝ったのだから、この国を治めるのは神奈子ってことになった。

 

 しかし、ここで問題が発生。

 

 新しい神様を、諏訪の国の人々は受けいれようとしなかった。どうやら諏訪子のことが恐ろしかったみたい。

 えっ? 違う? 諏訪子じゃなくてミシャグジさま?

 

 ふ~ん、よくわかんないや。

 

 まぁ、そんな理由から、表向きは神奈子が信仰されるけれど、実際は諏訪子が信仰されるということになった。

 意味わからん。

 他にも、洩矢から守矢になったりだとか、色々と変わったらしいけど、話が難しくてわからなかった。

 

 俺が倒れている間にそんなことがねぇ……

 

 ふむ、神様も大変なんだね。とか考えているとーー

 

「さて、赤、あんたに言っておきたいことがある」

 

 ありゃ? なんで神奈子が俺の名前を知ってるんだ? 諏訪子が教えたんかな。

 

「ん~、なにさ?」

「もし、赤が私に勝てたのなら、諏訪子の命を取らないという約束だったわね?」

「うん、まぁそうだったね」

 

 な~んか、嫌な感じがする。

 

「結果として、私と赤は引き分けに近かったわけだ。しかし、諏訪子の命は取っていない。これじゃあ少々、不公平だと思わないかい?」

 

 いや、思わん。

 とかホントは言いたいけど、言ったら怒られそうだからやめておく。

 

 それにしても不公平ねぇ。ん~と……あれ? でも諏訪子への信仰がいるからとか、なんとか言ってなかったっけ? つまりは、神奈子だって諏訪子に死んでもらったら困るんじゃ……

 う~ん、よくわかんないや。

 

 まぁ、でも諏訪子が生きてるんだ。それだけで十分か。

 

「言いたいことはなんとなくわかった。んで、俺は何をすればいいのさ?」

 

 腕、一本寄こせとか言われたらどうしようか……

 まぁ、そのくらいで済めばいいけど。諏訪子の命に比べれば安いものだ。

 

「あんたには100年ほど私の下で雑用をしてもらう」

 

 はい?

 

「えっ……そんだけ?」

「は? えっ、いや100年だぞ?」

 

 いやいや、100年だけでいいの? 100万年とかの間違えじゃなくて?

 

 ん? いやちょっと待て、落ち着くんだ、俺。これはチャンスだ。幸いにして、神奈子にとって100年というのは長いらしい。

 

 つまり、『本当は100年も雑用をするのは嫌だけど、まぁしょうがないか』

 

 という雰囲気を出せば、この罰ゲームはたった100年で終わる。ふふん、完璧だ。

 つまり俺の演技力を見せつけるときが来たわけだな。

 

 

「うわー、100年もざつようするのは大へんだな。でも、しょーがないか」

 

 

 ……う、う~ん、おかしい、イメージしてたのとだいぶ違う。

 もっとこう、さらっと言う予定だったんだ。こんなことになるのなら練習しておけば良かった。

 

 

「ま、まぁ。本人が良いって言うのなら……これから100年よろしく頼むよ」

 

 神奈子が言った。あ、あれ? 俺の演技ってもしかして上手いの?

 ふふっ、ま、そんなわけないか。

 

「おう、よろしく」

「少なくとも、これからもう100年は一緒だねー」

 

 なんて楽しそうに諏訪子が言った。

 うん、これから楽しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、赤って何歳なの?」

「1億歳くらいだと思う」

「「はい!?」」

 

 諏訪子と神奈子がシンクロした。

 仲いいね、君たち。

 

 






自分の中で『ハイドロポンプ』は2回に1回は、はずれるイメージです
5回連続で外れた時は、もう何も信じられなくなりました


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