学園黙示録~魔法を持って行く物語   作:武御雷参型

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第十九話

ガソリンスタンドで麗を抱え込んだ、体格の良い男はナイフを麗の首元へ突き付けながら孝と対峙していた。

 

「兄ちゃん。その手に持っている物騒なもん、床に投げ捨てな」

 

孝は男の要求通りに金属バットを遠くへ投げつけた。床に投げつけられたバットは、金属特有の音を立てて床を転がる。

だが、その行為は男にとっても孝達にとっても自殺行為であった。音を聞きつけた奴らが建物内部からゆっくりとその姿を現したからである。

男はその事に気付いてはいなかったが、孝と麗は奴らがこの音に気付いて出て来ることが判っていた。

 

「兄ちゃん、さっきレジを壊したんだろ? 金を持って来ているだろ。バイクに燃料入れな」

 

「判った」

 

男の言う通りに、バイクに燃料を入れ始めた。その時、孝の目にヴィータがいつでも攻撃が出来る準備をしているのが判ったが、視線をすぐにバイクへ戻した。

男に気付かれた時に、麗を助ける隙が無くなってしまうからである。

孝は男に静かに語りかけた。

 

「なぁ、俺達を見逃してくれ。俺達は街にいる家族が無事か、確認する為なんだ」

 

「黙れ‼ 俺の話を聞いていなかったのか‼ 街にいる家族だぁ? ひゃぁっはっはっは‼ お前達の家族もバケモンになってるだろうよ‼」

 

だが、孝の説得も虚しく男は聞き入れられなかった。

 

「終わった。なぁ、本当に見逃してくれよ」

 

孝はそう言いながら男へ近づいて行く。だが、その行為が男を逆上させた。

 

「うっせぇ‼ お前もぶち殺してやろうか‼」

 

男がそう言うとナイフを孝へ振りかぶった。

 

「ヴィータ‼」

 

「任せろ‼」

 

孝の声でヴィータはアイゼンで魔法で精製した鉄球を弾く。

 

「ギャァァァァァァァァ⁉ いでぇ‼ いでぇよ‼」

 

アイゼンで弾かれた鉄球は、男の右肩を貫いた。その手はナイフを持っている手であった為、貫かれた瞬間にナイフを落とした。

 

「よくも………よくもっ‼」

 

麗は先程、胸を掴まれた怒りで男を殺そうとした。

 

「止めておけ、もうその男は助からない」

 

ヴィータが麗の行動を止めた。

 

「どう言う事だ?」

 

「あれを見ろ」

 

「「ゲッ‼」」

 

孝の言葉にヴィータは近くを指さした。そこには夥しい数の奴らが、孝達へ向かって来ているのが視界に入る。

 

「私達だけで逃げるぞ。バットは………回収が不可能だな」

 

「そうだな」

 

「ええ、行きましょう」

 

ヴィータの言葉通り、バットがあった場所には既に奴らがおり、回収する必要性も無かった。

 

「お、おい‼ 行っちまうのかよ‼ 俺を助けてくれ‼」

 

「貴様は馬鹿か? 先程までの威勢はどこに行ったんだ?」

 

「さっきのは、勢いでやっちまった事なんだ‼ 許してくれ‼」

 

「………良いだろう助けてやる」

 

「えっ⁉ なんでなの、ヴィータちゃん‼」

 

「黙ってろ‼」

 

「ッ‼」

 

男の助ける声にヴィータは反応し、麗が異議を唱えたがヴィータの声で黙ってしまう。

 

「一瞬で楽にしてやる」

 

「え?」

 

ヴィータの言葉に男は、自分が何を言われたのか判らなかった。それもその筈である。男は驚きの言葉を上げたすぐに、ヴィータの相棒であるグラーフ・アイゼンで体を叩きつけられたからである。

 

「行くぞ」

 

ヴィータはそう言うと、空へと上がって行くのであった。

 

 

それから暫らく孝達はバイクを走らせていた。

その時、銃声が何発か聞こえる様になってきた。

 

「孝‼ もしかしたら生存者がいるのかも‼」

 

「そうかも知れないな………だけど、さっきの男の様になっている可能性も高いぞ」

 

「行って見ましょう‼」

 

「待て」

 

麗の言葉に待ったを掛けたヴィータ。

 

「なんでヴィータちゃん? もしかしたら協力してくれるかも知れないんだよ?」

 

「だからと言って、見に行く必要も無い」

 

「どう言う事?」

 

ヴィータの言葉に麗と孝には意味が判らなかった。

 

「私が見る。そこで待っていろ」

 

ヴィータはそう言うとサーチャーを飛ばした。

 

「それも魔法なの?」

 

「ああ、サーチャーと言って、危険が無いか確認する為でもあるし、危険人物を見張る役割も持っている…………行かない事をお勧めする」

 

「どうして?」

 

「サーチャーで確認したが、生存者はいる「だったら‼」だが、生存者(やつら)は奴らに限らず、生きている人間も殺している。必然的に、私達も巻き込まれる危険性が高い。行かない方が良いだろう」

 

ヴィータの言葉で孝と麗は言葉を呑む。

 

「だったら迂回しよう。その方が良いだろ?」

 

「なら、危険が少ないルートを探る」

 

孝の言葉にヴィータは頷くと、サーチャーを再度飛ばし危険性が少ないルートを探し出した。

 

「あった。私についてこい」

 

ヴィータはそう言うと認識障壁を解除して孝達の前を飛び始めた。

 

「行くぞ‼ 掴まれ」

 

孝はヴィータについて行く。

 

 

 

 

「止まれ」

 

ヴィータはビルの角で降り立つと孝達を止めた。

 

「どうしたの?」

 

「あれを見てみろ」

 

ヴィータが指さした方には生存者が奴らを散弾銃や日本刀で殺していた。

 

「ムチャクチャね………でもさっきよりマシと言う事?」

 

「ああ、さっきのはお前達にとってトラウマになる可能性があったし、巻き込まれる危険性もあった。だが、どこを見渡しても同じ風景しか無かった。ここがまだ安全と言えるルートだったから、こっちへ進んだ」

 

麗の言葉にヴィータは頷き説明した。

 

「まるで戦争だな……いや、戦争よりもっと酷いな」

 

「だが、ここで7止まっていられる猶予は無いぞ。行くしかない。お前達に危険が及ぶ時だけ助ける。行くぞ」

 

ヴィータはそう言うと、認識障壁を張り直し上空へと飛び立つ。

孝は隙を見計らい、角から飛び出した。だが、バイクの音が響いた所為か、生存者の一人に見つかってしまう。

 

「オイ‼ あそこにいるぞ‼」

 

「麗、しっかり掴まれ‼」

 

「えっ?」

 

孝の言葉に驚く麗であったが、一人の男が散弾銃を自分達に向けているのが目に入った為、孝に強く掴まった。

孝はバイクのアクセルを全開にし、逃げる。後に残ったのは、外れた弾が車に中りサイドを吹き飛ばすだけであった。

 

 

 

上空で見ていたヴィータは孝達が無事に逃げられたのを確認した。

 

「無事に乗り越えられたな…………これから先も同じことが起きるのか………憂鬱だな」

 

ヴィータは小さく呟くと孝達に追いかける為、飛行し始める。

だが、ヴィータの目に入ったのは、橋が渋滞で混雑している風景であった。

 

「やっぱり橋の方ではこうなっていたか………孝達と合流するか」

 

ヴィータは曲がり角で止まった孝達と合流する。

 

「孝、橋はまっすぐでしょ‼ どうして止まるの?」

 

「あれを見てみろ」

 

孝の言葉で麗は橋を見る。そこには渋滞で動けなくなった車や徒歩で逃げている生存者の姿が確認できた。中には警官の指示に従わなかった不良共が、法的の処罰で橋から落とされていた。

 

「このままじゃ、時間までに警察署まで向かうのは厳しいな」

 

ヴィータが降り立つと同時に言う。

 

「城の脇を抜けて御別橋の方へ向かうぞ」

 

孝はそう言うと行動を開始するのであった。




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「アメ美味しいね‼ 王様‼」

「うむ。中々の美味じゃな」

「そうですね……ナノハにも食べさせてあげたいです」

「オリジナルにもね」

「小鴉には……やらん事でもない」

素直になりなよ、王様

「お主は黙っておれ‼ ジャガーノート‼」

ギャァァァァァァァァ‼

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