学園黙示録~魔法を持って行く物語   作:武御雷参型

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第二十三話

孝達が離れた家では、沙耶を筆頭に荷物を纏めていた。

 

「この荷物をどうやって車に載せる?」

 

「RPGみたく静かに積み込むしか無いわね。ありがたい事に、向こうに行ってくれているし」

 

沙耶が言うのは奴らが音に引き付け寄せられて孝達の方へ向かって行った事である。

 

しばらくすると、集められた荷物はハンヴィーのトランク部に詰め込められた。

 

「平野は?」

 

沙耶がそう言うと、丁度家から出て来るコータと出くわした。だが、その格好に誰もが言葉を失った。

頭に鉢巻をして両サイドに懐中電灯を二本差し、両手に狙撃銃とショットガンが握られ、体にはショットガンの弾が巻き付けられていた。

 

「あんた、楽しそうね」

 

「孝達はラクチンそうだけどね」

 

「「………」」

 

「「「ひっ⁉」」」

 

シグナム達に抱えられている孝と永を見て、麗と冴子に表情は無表情へと変貌する。

 

「帰ったら説明してもらわなくちゃね」

 

「互いに意見が一致したな」

 

「ええ、帰ってきたら」

 

「「お仕置きだ」」

 

麗と冴子の想いは一致した。

 

 

その瞬間、俊輔達がいる家の塀が壊れ、そこから戦車とキャリアー、トラック、殿を務めている戦車の計四台が現れた。

 

「な、なに⁉」

 

「ティーガーにパーシング⁉ それに73式中型トラックまでもある‼」

 

塀から飛び出してきた車両に麗達は驚くが、コータに至っては興奮を抑えられずにいた。

 

「待たせたな。あれ? 孝達は?」

 

ティーガーのキューポラから身を出した俊輔の質問に全員が指をさした。

 

「なるほどね………シグナム達はこっちで回収する。お前たちは俺達の車両の間に入ってくれ」

 

そう言うと一方的であったがティーガーは発進する。

鞠川が運転するハンヴィーも空の搭乗するパーシングの前方に入るのであった。

 

 

 

シグナム達に抱えられた孝達は、ハンヴィーの上に立つ冴子を発見するが、前方と後方に戦車が護衛しているのが見えた。

 

「あれは?」

 

「前に走っている戦車は我が主が乗っている。また、後方の戦車には空が搭乗している」

 

「空を飛んでる‼ 空を飛んでるよ‼」

 

「オイ‼ 暴れるな‼」

 

ヴィータの背中に乗っているありすは空を飛んでいる事に大喜びで、先程までの恐怖は無くなっていた。

 

「まぁ、結果的には良かったのかな?」

 

「そうだな………でも」

 

「でも?」

 

永の言葉に孝は顔を傾げる。

 

「麗が怖い」

 

「………ドンマイ」

 

孝の慰めの言葉に永は、体全体から鬱オーラを展開した。

 

「絶対、ばれたら殺される………確実に息の根を止められるっ‼」

 

「まぁ、事情を話せば大丈夫だろ………多分」

 

「多分って言ったよな‼ 今、言ったよな‼」

 

「まぁ、気にするな。俺は気にしない」

 

「気にしろよ‼」

 

「いつまで漫才をしているつもりだ? そろそろ合流するぞ」

 

「「あっはい」」

 

シグナムの声で二人の漫才は終了するのであった。

 

 

 

翌日、俊輔達は川を下っていた。カーキャリアはどう言う構造をしているのか、ハンヴィーの先頭を下っており、パーシング、ティーガーも同様に下っていた。73式に至っては普通に下っており、川の流れなど屁の河童状態であった。

 

「そろそろ川から出られるな………にしてもコータは子供に好かれ易いのか?」

 

ティーガーの操縦をしながら、ハンヴィーの上でコータとありすが仲良く歌っている姿に少し頬を緩ませていた。

 

「ま、子供の笑顔は誰もが笑顔になれるからな………」

 

俊輔は二人の姿を見ながらホッコリしていた。

 

『こちらパーシング。ティーガー、聞こえますか?』

 

「こちらティーガー。何かあったのか?」

 

通信機から空の声が響く。

 

『いえ、特に何も無いんですけど………ハンヴィーを見て』

 

「なるほどね」

 

空の言いたい事は俊輔と同じ事であった。

 

「まぁ、良いんじゃないの? 子供が一人増えた所で特に俺達に支障はないんだし」

 

『確かにそうですけど………これからの行動が………』

 

「そん時はそん時だ。そろそろ川から上がるぞ」

 

『了解』

 

俊輔の交信の後、五台は川から上がるのであった。

 

「コータ、孝、永‼ 上を確認してくれ‼」

 

俊輔はキューポラから顔を出して男三人に指示を飛ばす。

 

 

「クリア」

 

三人は川沿いの道に上がると銃を構える。だが、奴らの姿が全く見受けられなかった。

 

「奴らの姿は無いぞ‼」

 

「了解した‼ 先に戦車が行く。空、続け‼」

 

「了解です」

 

永の言葉で俊輔と空はティーガーとパーシングを川沿いの道に上げ、他の車両の邪魔にならない場所で停車した。

次にハンヴィーが上がるのだが、坂を急発進で駆け上ると、バウンドし90度直角に曲がる。

 

「なぁ、空」

 

「なんですか?」

 

「ハンヴィーってあんな動きで来たか?」

 

「さぁ?」

 

遠くで見ていた二人はハンヴィーの動きに驚きを隠せなかった。

キャリアーと73式は普通に上がった。

 

「行くぞ」

 

俊輔はそう言うとティーガーに乗り込み発進させようとした。だが、ここで思わぬ事が起きる。

 

「ねぇ、ありすも乗せて?」

 

「は?」

 

「僕も僕も‼」

 

「お前はダメだ」

 

アリスがティーガーに乗りたいと申し出し、それに便乗する形でコータも言うが、俊輔の一蹴りで地面にノの字を書いていた。

 

「冗談だ。乗れ」

 

俊輔はそう言うとありすを先にティーガーに乗せコータに至っては自力で登らせた。

 

「戦車の中ってこんな風になってるんだ~」

 

「あれ? ティーガーって五人じゃなかったっけ?」

 

「コイツは改造車でな。一人で運用できる様に改造しているんだ。装填も自動出しな。因みに、10式戦車と同じように行進間射撃が出来る」

 

「チートだね」

 

俊輔の説明にコータは呆れ顔であった。

 

「山本君、気付かない?」

 

「とっくに気付いている。奴らの事だろ?」

 

「うん」

 

コータは運転をしている俊輔に奴らが一人も遭遇していない事に疑問を投げた。

 

「序に言うと、空を見上げてみろ。気付かないか?」

 

「…………何も…」

 

「はぁ~」

 

俊輔が言いたい事は昨日まで飛んでいた飛行機やヘリが一機も飛んでいない事であった。

 

「まぁ、その時になりゃ気付くか……うん? 前方に奴らを発見‼ 数が多い‼」

 

『俊輔君、パーシングとティーガーを前に出しますか?』

 

「いや、ここは現状の布陣で行く。シグナム、ヴィータは空へ上がれ‼」

 

〈了解〉

 

俊輔はそれぞれに指示を出していく。

 

「さて、手始めにティーガーの砲弾を浴びせますか‼」

 

俊輔がそう言うと操縦席の近くにあるボタンを押す。

すると、砲弾が装填され、射撃準備が整った。

 

「二人とも‼ 耳を塞いで口を開けろ‼ 鼓膜が破れるぞ」

 

「「はい‼」」

 

俊輔はコータとありすに耳を塞がせ口を開けさせた。

それを確認すると、発射ボタンを押し込むのであった。




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次回は高城家に助けられる前からスタートします‼

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