学園黙示録~魔法を持って行く物語   作:武御雷参型

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話数を間違えていました。すみません‼


第二十五話

俊輔と空は整備に夢中になり時間を忘れていた。

 

「お兄ちゃん達、コータちゃんや沙耶ちゃんが呼んでるよ?」

 

「うん? ありすちゃんか。判った。空、行くぞ」

 

「判りました」

 

ありすに呼ばれた二人は整備道具を置きありすについて行く。

 

「ねぇねぇ、あの戦車って強いの?」

 

「う~んどうだろうかな? 第二次世界大戦時中、ドイツ軍の主力戦車だったティーガー。俺が乗っている戦車ね? その戦車に対抗する形で作られたのが」

 

「僕が乗っているパーシングだよ」

 

俊輔と空の説明にありすは「へぇ~」と納得した様子だった。だが、二人は否、ありす以外の全員が知っていた。

まだありすは地獄の中を彷徨っている事に。

昨晩、ありすは何度も悲鳴を上げて目が冷めてしまっていた。それも当然の事である。助けてもらえると思っていた家の人間に、目の前で父を殺され、怖い目にも遭った。

ありすの心の傷は根深く築かれ、それが癒える日が果たしてくるのか、それは誰もが判らない事であった。

 

「あれ? 俺達が最後か?」

 

「遅いわよ、山本、山城」

 

「ごめんごめん。整備に夢中になってたからね」

 

沙耶が小言を零した。

 

「まぁ、良いわ。あたし達は一度、話し合いをしようと思って皆に集まってもらったの」

 

「なんでここなのよ………」

 

「アンタ、満足に動けないからだでしょ? だからここでするの。異議でもあるの?」

 

「………無いわよ」

 

沙耶に正論を言われた麗は何も言えなかった。だが、俊輔を恨みの籠った表情で睨みつける。

 

「それで、何を話し合うの?」

 

最初に口を開いたのは鞠川静香であった。しかし、その手にはバナナが握られており、皮が剝かれている状態であった。

 

「あたし達がこれからも仲間として動くかどうか……と言う話し合いよ」

 

沙耶の言葉で静香は口に入れていたバナナを落としかけた。

 

「当然だ。折角、ここまで一緒に生き抜いた者達だ。それを仲間として呼ばずに何と呼ぶ? つまり……」

 

「そう、今の段階で選択肢は二つしか無いわ」

 

「別れるか」

 

「呑み込まれるか」

 

沙耶の言葉を肯定として口を開く冴子。だが、孝達九人には二つの選択が迫られていた。

 

「でも、別れる必要なんてあるの?」

 

静香の言葉を受け沙耶はベランダへと進む。

 

「ここから周りを見渡せば判る筈よ。自ずとね。それが判らないと言うのであれば、私の名前を呼ぶ権利は無いわ‼」

 

沙耶は孝達に向き合うとそう断言する。

 

「街はどうなっているんだ?」

 

「はい、これ」

 

「サンキュー」

 

孝とコータもベランダへ出て、街を見渡した。その際にコータから渡された双眼鏡を使う。

 

「酷くなる一方だな………人類滅亡だな。だが、手際が良いな。お前の親父さん。右翼の偉い人だけあるわ」

 

「ええ、凄いわ。今だってそう………これだけの防衛を取れる。でも‼」

 

「高城……」

 

「名前で呼びなさいって言ったでしょ‼」

 

孝が言いたい事は沙耶自身も判り切っていた事である。

 

「判ってる。判ってるわ‼ 私の親は最高。 妙な事が起きたら途端に行動して、家族や部下、その家族までも守ろうとする。一番に考えるのは娘の私の事」

 

「それくらい…お前の事を大事にs「でもね‼ 生き残っている筈が無いと即座に諦めたのよ‼」ッ‼ 沙耶‼」

 

孝は堪忍袋の緒が切れたのか、沙耶の胸ぐらをつかみあげる。

その行動に全員が驚く。一番に手を出そうとしたのはコータであった。

 

「な、なによ………でもやっと名前w「お前だけじゃないんだ‼」ッ⁉」

 

沙耶の言葉を遮り孝が叫ぶ。

 

「みんな同じだ‼ いや、まだお前は両親が無事だと言う事が判っただけ良いじゃないか‼ 俺や麗、永、毒島先輩、誰もが同じことを思っているんだよ‼」

 

「判ったわ……判ったから手を離しなさい」

 

沙耶の眼の色が変わった事に気付いた孝は沙耶を降ろした。

 

「悪かった」

 

「ええ、本当に………でも良いわ。本題に入りましょう」

 

沙耶がそう言うと同時に、屋敷の近くからトラックの走行音やバイクの音などが聞こえ始める。

 

「あれは……」

 

「そう、この県の国粋右翼の首領。私のパパよ‼」

 

沙耶が指差したのは先頭車両から降りる一人の男性であった。

 

「聖者の割合を自分で決めて来た男よ」

 

男の表情は一点にしか見ていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

沙耶の父親が帰って来たと同時に壇上が組み上げられ、そこにフォークリフトが檻を持ちながら壇上横へ付けた。その檻の中には奴らとなってしまった、一人の男性が檻から逃げ出そうと姥貝ていた。

 

「この男の名は土井哲太郎。四半世紀の間、共に活動してきた我が同志であり、我が友でもあった。だが、この男は救助活動の最中、部下を助けようとして噛まれた。まさに自己犠牲‼ 人間として最もな高貴な行動である‼ しかし……」

 

国粋右翼首領の高城壮一郎は刀を手に取り、鞘かた刀身を抜く。

 

「彼はもはや人間としてでは無く、ただの物へとなり果ててしまった。だからこそ、私はこの男に最後の友情を示す‼」

 

壮一郎の言葉が終わると同時に、檻から奴らへとなり果てた男が飛び出し、壮一郎に飛び掛かろうとした。

だが、壮一郎は慌てずに刀で、男の首を刎ねた。

刎ねられた男に首は床に墜ちるが、まだ動こうとしていた。

 

「さらばだ、我が友よ‼」

 

壮一郎は男の首を踏みつけるのであった。

 

「これこそが今の現状なのだ。素晴らしい友、愛する家族、恋人だった者、だが、それでも躊躇わずに戦わなければならないのだ‼ 生き残りたいのであれば、闘え‼」

 

壮一郎の演説はそこで終了した。

 

 

それを遠くで見ていた孝達。だが、コータは納得のいく様子では無かった。

 

「刀じゃ効率が悪すぎる……」

 

「決めつけが過ぎるよ、平野君」

 

冴子がコータの言い分を否定した。

だが、コータは自分の考えこそが合っていると強く思っていた所為か、反論した。

 

「でも‼ 日本刀は人骨に当てたら刃毀れが起きますし3.4人斬ったら血脂などで役立たずになるじゃないですか‼」

 

「君の言い分も判る。だが、剣術の世界は乗数なのだ。剣士の技量、刀の出来、そして、精神の強固さ。この三つが合わさった時、刀は本当の力を出す。それだけなのだよ」

 

「でも‼ ッ⁉」

 

反論しようとしたコータの声が大きかったのか、下にいた壮一郎がコータ達を見つめた。目があったコータは言葉を呑み込むしかなかった。

そして、銃を取るとどこかへと走り出したのであった。

 

「ひ、平野‼」

 

「今は一人にさせてやれ。あいつには少し頭を冷やす時間が必要だ。それに俺も………」

 

沙耶がコータを止めようとしたが、永が手で遮りコータと同じ気持ちであると言うと、永もどこかへ行ってしまう。

 

「俺も何かあったら大変だから、車の整備に行って来るわ」

 

「僕も行きます‼」

 

俊輔もこの空気の重さに耐えられず、車の整備を続ける為に倉庫へと進んで行った。それに続く形で空も行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん達、大変‼」

 

「どうした‼ 何があった‼」

 

整備をしていた二人であったが、走って来たありすの表情が先ほどとは違った事に、何か起きたと言う切迫感があった。

 

「コータちゃんが……コータちゃんが‼」

 

「行くぞ空‼」

 

「はい‼」

 

二人はすぐにバリアジャケットを着用するとありす先導の元、コータの元へと行く。

二人が向かった先には、憂国一心会のメンバーがコータを取り囲み、銃を奪おうとしている所であった。


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