一方、家では白が神楽を咥えて出ようとしていた。
『でも、俊君がそこまで急ぐとは、よっぽどの事なんだろうね』
「そうだな。だが、我が主の命だ。致し方が無いだろう?」
『そうかも知れないけどさぁ~白って結構硬いね』
「グハッ!!?」
神楽の一言に白はライフがゼロになりかけてしまった。
『まぁ、でも。白の言う事も一理あるね。でも、瞬君は私達の事を家族って感じで接しているけどね?』
「まぁ、そこがあいつの良い所だろう。さて、急ぐぞ」
『了解!!』
何時の間にか復活した白はそう言うと、家の屋根の上を走っていく。
俊輔サイド
俺達は今、少女が誘拐されて連れ去られた場所に来ている。さて、もう少ししたら白達も来るだろうな。早く来てくれないかな?
『でも、マスター?』
「ん? どうした、フォーカ」
『突入しないの? 私達でも行けると思うけど?』
フォーカの言う事もそうだが、違うな。今回は並大抵の誘拐じゃない。それどころか、一歩間違えたらテロが起きるほどかも知れない程の誘拐事件だ。
「そう言うことはもう少し考えて言う物だな。なら、フォーカ。もし俺達が突入したとしよう。犯人達は銃火器を持っている。一方の俺はフォーカを装備しているだけだ。どちらが勝つ?」
『………………向こうが勝つね』
「そう言うことだ。だから、俺は白達を待っている。っと、言っているうちに白達も来た様だな……」
俺の行った直後、目の前に神楽を咥えた白が居た。
「少し待たせたな。では、これから如何する?」
白が人間形態に戻って神楽を渡しながら聞いてくる。
「決まっている。これから突入する。神楽、セットアップ!!」
『Aii right My Master Stand by Ready? Set up!!』
バリアジャケットを装備した俺は首からフォーカを取る。そして…
「フォートレス・カノン……武装展開!!」
『All right My Master Arm Develop!!』
俺の体にフォーカが装備される。そして、今度は印を結び……
「白叡、開放!!」
『待ってましたぁぁぁ!!』
白が本来の姿へと戻る。
「では、行きますかねっ!! フォートレスを全武装パージ!! カノンは砲撃モードに移行。これより突入します!!」
俺はそう言うとストライク・カノンを誘拐されている場所の扉に向ける。そして、俺の周りにラージ、ミドル、スモールが浮遊する。
「エクサランス・カノン……フル………バーストッ!!」
その瞬間、ストライクカノンを中心に砲撃を扉に放つ。着弾後、建物の半分は爆発の煙が出て全くと言って良いほどに中の状態が見えなかった。そして、煙が晴れるとそこに居たのはディバイダーを装備した少年であった。
「なっ!?」
俺は驚いていた。この世界に転生したのは俺だけだと思っていたからである。
「ねぇ、君の目的は何? この少女を助けるの? それとも僕と戦いに来たの?」
少年は殺気を飛ばしながら俺の方を見て聞いてくる。
「………俺はそこに誘拐された少女を助けに来た。君とは戦いに来た訳じゃない。全ての武装を解除。白も戻って」
「了解した」
俺はそう言うと全ての武装を解除して、少年の方に歩いて行く。白も霊獣の姿から子犬に戻る。
「君の名前を教えてくれないか? 僕の名前は山本俊輔だ」
俊輔は少年に尋ねる。
「……………僕の名前は山城空」
「そうか…空君ね。君はどうしてディバイダーなんかを持っているの? それに、そのディバイダーってもしかしてトーマが使用していた996じゃないの?」
「そうだよ。これは996だよ。そこまで知っているということは君も僕と同じの転生者と呼ばれる存在なの?」
空は目を虚ろにしながら尋ねる。
「そうだ。でも、君は眠たそうだね?」
「僕は今まで寝ていないからね……少し、休ませて貰うよ」
空はそう言うと前のめりになって倒れるが、俊輔が支えたので倒れる事はなかった。
「…………すまないけど、白。この子を俺の家に連れて寝かしてくれないか?」
「了解した。だが、俊輔は如何するつもりだ?」
「もう少ししたら騒ぎを駆けつけた警察が来ると思うからその時まで此処で待っているよ。じゃぁ、頼むよ」
俊輔はそう言うと建物の中で眠っている少女の下に向かって行く。その周りには誘拐犯であろう男達が伸びていた。
「はぁ、相変わらずだな。さて、我が主に言われた事ぐらいしなければな」
白はそう呟くと家へと帰って行った。
俊輔サイド
「はぁ、にしても少しやり過ぎたかな?」
俺は周りを見渡しながら呟く。
『当たり前です。まさか、フルバーストを掛けるなんて誰が考えますか!? まだ、なのは様の方がお優しいです!!』
フォーカが俺に小言を言ってくるが俺はそれを無視する。
『まぁまぁ、フォーカもそれぐらいにして……でも、俊君。此処の空気ってもしかして………』
「在り得るな。もしかしたら霊気が集まって来ているのかも知れない。まぁ、もしその時には白を呼んで食べて貰えれば良いから、餌代が安くなるね………でも、この空気は異常すぎる」
俺は回りを見回す。そして、見つけてしまった。一人の少女が立っていた。しかも………
「ああ、この子は事故で死んじゃったんだね……それで帰る場所が見つからなくて此処に来ちゃったんだね? 大丈夫だよ。こっちにおいで」
俺がそう言うと頭から血を流して泣きじゃくっている少女がこちらに来る。
「何時の間にか殺されたんだね? それは怖かったね。もう大丈夫だよ」
俺はそう言うと少女を抱擁する。
「見えるよね? 足元に流れている川が、この川はね、『生命の川』と呼ばれるんだよ。だから、君もそこに行って新しい命を貰うんだ。だから、気持ちを楽にして……そう。………オン・カカカ、ビサンマエイ・ソワカ………。お休み」
呪文を唱えると少女の体はキラキラと光り始め、泣いていた顔が笑い顔に変わって
『ありがとう………お兄ちゃん』
そう聞えた気がした。そして、少女は消えた。
「もう少しで警察が来るだろう。それまで少し休むか」
『では、また起こしますね?』
「ああ、頼む」
そう言って、誘拐されて気絶している少女の横で俺は横になった。
そして、これが俺と高城沙耶との出会いだった。
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