学園黙示録~魔法を持って行く物語   作:武御雷参型

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第四十五話

孝達は俊輔達が戦車で来るのを待つ間、今までの事を話していた。

 

「そう、そんな事が………」

 

「……うん」

 

貴理子も孝達が大変な思いをしてここまで着たのだと思うと、喜んでいいのか悲しんでいいのか判らなかった。

 

「貴理子さん。これを」

 

「あら……これは」

 

コータは東署で拝借した拳銃の一つを貴理子に手渡した。

 

「これだけでもありがたいわ。ありがとう、平野君」

 

「えへへへ」

 

貴理子に感謝されたコータであったが、それを見ていたあさみには面白くなかった。

 

「コータさん‼ 鼻の下が伸びています‼」

 

「あ、あああさささみみみさささん⁉」

 

あさみはコータの両肩を持って、前後に激しく揺さぶった。

 

「コータさんは私だけを見ていればいいんです‼」

 

「は、はいぃぃぃぃぃぃ‼」

 

コータもあさみの尻に敷かれているのか、言われっぱなしであった。

 

すると、T字路から聞きなれた音が曲がって来たのである。

 

「待たせた‼ 全員、乗り込め‼」

 

俊輔の指示で全員が乗り込む。

 

ティーガー1

・俊輔

・沙耶

・孝

・冴子

・ありす

・ジーク(忘れていました)

 

パーシング

・空

・コータ

・あさみ

・由香里

・麗

・永

・貴理子

 

と、乗員オーバー。警察が機能していれば速攻で捕まるものであるが、今の状況では警察も機能しているのかどうかも判ら無い所であった。

 

「行くぞ‼」

 

俊輔はそう言うと、ティーガーのアクセルを踏み、全力疾走で奴らを轢き肉にしていく。

 

『所で、この戦車は誰の所有物なの?』

 

「俺のです」

 

『君は確か……俊輔君よね? この戦車はどうしたの? この戦車なんかは展示物としてロシアとかに置かれている筈なのに………』

 

「家の親父が趣味で作り上げたんですよ。何でも世界各国に知り合いがいるらしく、パーツも輸入させたらしいです」

 

この話は全くの嘘である。俊輔には父親も母親も存在しない。だが、俊輔が戦車を個人で所有すると言う事自体が問題なのである。そう言う事もあって、俊輔はウソを吐くのであった。

 

『………まぁ、そう言う事にしといてあげるわ』

 

「(ホッ)」

 

貴理子も納得した様子(?)で俊輔は胸を撫で下ろす。

 

『そろそろ、夜になるわね………どこか安全な場所で休みましょう』

 

「そうですね………孝、ここらへんで安全で休める場所はあるか?」

 

貴理子の提案に俊輔も乗っかり、この地域の事を詳しく知っている孝に尋ねると、孝は意外な場所をいう。

 

「なら、この先にある駐車場だな。あの駐車場はやけに頑丈な柵で護られているから、奴らの力でも耐えられると思うぞ」

 

「なら、案内は任せる」

 

こうして、俊輔達は安全な場所を確保し、眠りへとついた。因みにだが、ヴォルケンリッター達が夜間、監視体制を敷いて警備に当たっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔は、転生の際に来た空間にまた来ていた。

 

「あれ? ここって俺が転生する前に来た所だよな………なんで来てんだ? ハッ⁉ もしかして俺死んだ⁉」

 

『んなわけあるか、バカ者』

 

「この声……アポロニアス様?」

 

俊輔が自分が死んだと勘違いしていると、アポロニアスの声が空間内を響き渡らせる。

 

『そうじゃ。お主に来てもらったのにはわけがある』

 

「わけ? どう言う事ですか?」

 

『お主が辿ってきた道は、原作に基づいていた……だが、もう原作と言う概念が無くなる』

 

「と言う事は、朝起きたら、奴らになっていると言う事もあり得ると言う事ですか?」

 

『そう言う事だ』

 

この言葉に、俊輔はただ、驚く他無かった。

 

「でも、どうしてそれを俺に伝えたんですか?」

 

『お主の未来に一つだけ言っておかなくてはならない事がある』

 

「…………」

 

俊輔は嫌な予感しかしていなかった。

 

『今、お主たちは新床三小に向かう途中だが………自衛隊による救出作戦は実行されない』

 

「なっ⁉」

 

この言葉に、俊輔は絶望を感じさせた。

 

『だが、絶望するな。お主に新たな力を授ける。ここでの会話は朝起きても数日は覚えておる。だから、安心しろ。さて、新たな力と言うものじゃが…………明日、起きたらすぐに床主湾に向かえ。そして、パスワードを言えば、その力が手に入る』

 

「パスワードですか?」

 

『そうじゃ……じゃが、今言っても面白くはない………なので、床主湾に着いた頃にお主の頭の中に入れる。それだけじゃ…………では、これからも身近な人間を救え』

 

そう言うとアポロニアスの声は聞こえなくなり、俊輔は今度こそ眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、俊輔は起き上がると外の状況を見た。

すると、本来であれば奴らの呻き声が聞こえる筈なのだが、一切、聞こえる様子が無かったのである。

 

「おかしい……シグナム」

 

「ハッ‼」

 

俊輔は夜間、警備をしていたシグナムを呼び出した。

 

「どういう状況だ、これ」

 

「主、信じられないのかも知れませんが………奴らが昨日の夜中からいなくなったのです」

 

「はぁ? どう言う事だ。もっと詳しく説明をしてくれ」

 

「……………」

 

「シグナム?」

 

俊輔はシグナムに詳細を報告する様に要求するが、シグナムは口を閉ざしたままであった。

 

「主……怒らないで聞いてほしい………昨日、奴らの群れがある場所に向かっているのを発見した」

 

「それで、奴らはどこに向かって行った」

 

「…………新床三小です」

 

「なにぃ⁉ 奴ら全部がか‼」

 

「はい」

 

俊輔は驚きの余り、言葉を失った。

 

「チックショォォォォォ‼ そう言う事かよ‼」

 

俊輔の怒鳴り声に全員が驚きの余り、起き上がった。

 

「俊輔、何騒いでるんだ………」

 

孝がキューポラからでて俊輔に尋ねた。

 

「大変だ………奴ら全部が新床三小に向かっているらしい」

 

『ッ⁉』

 

驚きの余り、全員が言葉を発せなくなった。

 

「シグナム、ヴィータたちは何をしている………まさか、やられた訳じゃ無いだろうな?」

 

「ご安心を。我が主。ヴィータたちは誰も噛まれていません。ですが、状況が最悪です……ヴィータから念話です。どうした、ヴィータ? ………なに? 本当か‼ 判った、主に伝える。お前達も無理はするな、良いな‼ 主。もっと最悪な状況に陥りました」

 

「もう、驚く気になれんのだが…………」

 

「新床三小に避難している一部の住民が警察官と自分達の考えに背く住民を学校から追い出したそうです」

 

「…………どう言う事?」

 

俊輔には今起きている状況が呑み込めないのであった。


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