今年も執筆を頑張っていきますので、よろしくお願いします‼
俊輔達は紫藤を追い詰めたが、紫藤は自らその命を絶ったのである。この呆気ない終わり方に俊輔達は、これで終わったと言う認識では無かった。
「紫藤は言っていたな………」
「“後はあの方に託す”と………誰の事を言っているのでしょうか…………」
「判らない。だが、一つ言えるとすれば、奴らを生み出した者が居ると言う事だ」
俊輔が見つめる先には、小学校内で立てこもる暴徒住民を制圧していく孝やコータ、永、麗、冴子などであった。また、生き残りの警官たちも参加して、立てこもる暴徒住民の制圧に時間が掛かる事は無かった。
「さて、これからの事を考えなくてはな…………」
「そうですね…………」
俊輔がそう言うと、上空から数十機のヘリが小学校に向かって来ているのを見付ける。
「さぁ、俺達は静かに去って、今後の戦いに備える必要がある」
「でも、良いのですか? 俊輔君」
「何がだ?」
「沙耶さんの事です………」
「…………」
空の言葉に俊輔は何も言えなくなる。壮一郎に沙耶を託された事もあり、それを無下にする事は出来無いと言う事を言っているのである。
「判っている………だが、アイツはこのまま孝達と一緒居た方が身の為だ…………」
「そう言って、本当は別れるのが嫌なんでしょう?」
「グッ…………そうだよ」
空の呟きに俊輔は悔しそうに答える。
「俺だって、アイツの事は護りたいと思っている‼ でもやっと救助が来たんだ‼ アイツは………アイツには助かって欲しいんだ」
「へぇ~、そうなんだ」
「ふぁ⁉」
俊輔が吐き捨てる様に言うと、沙耶の声がして俊輔は変な声が出てしまう。
「さ、沙耶⁉ どうしてここに来たんだ‼ 救助が来たんだからそっちに行けば良いだろう」
「愚問ね………私はアンタと一緒に歩みたいの‼ この気持ちに偽りはないわ‼」
「だけど…………」
「アンタは黙って私に付いて来いと言えばいいのよ‼ そう、私のパパのようにね‼」
「だが………「君は私との約束を違えるつもりなのか?」ッ⁉ 壮一郎さん………ご無事だったんですね?」
「ああ、自衛隊の救助があってな………君ともう一度会う約束をしていたのだ。私はそれを違えなかった。だが、君はどうかね?」
「…………俺達がこれから向かおうとしているのは、生きている人間を殺す事になるかも知れないんです………それを沙耶にさせる訳にはいきません」
「君の言い分は判った…………だが、君は沙耶を守れないと言うのか?」
「………」
壮一郎の質問に俊輔は答えられない。
「だが、君のいや、君たちの仲間は君と一緒に行こうとしているそ? 君の考えは彼等には筒抜けだった様だな」
「え?」
壮一郎がそう言うと、孝達も俊輔の傍に集まる。
「どうして………救助が来たんだからそっちに行けよ‼」
「俺達は仲間だぜ? それにリーダーからの命令だ。俺達も一緒に行動する」
「………とことん、バカばっかりだ」
「ああ、俺達は馬鹿だ………だが、そんなバカも良いだろう?」
孝の言葉に俊輔は「確かにな」と呟いた。
「俺がやろうとしているのは途方もない事だぞ? それでもお前達は付いて来ると言うのか?」
『当たり前‼』
俊輔の確認に、全員が声を揃え肯定した。
「…………壮一郎さん。今ここでもう一度、誓いをさせて下さい。沙耶さんを絶対に護ります。この命に賭けても‼」
「………君の誓いは私の胸に刻ませた貰う。だが、一つ訂正させてもらう。命は賭けなくても良い。だが、傷付いたとしても、何があっても沙耶の元へ帰る事。これを誓いなさい」
「はい‼」
壮一郎の言葉に俊輔は強く頷いたのである。
「さて、私もこれでお暇させてもらおう」
「パパ………」
「沙耶よ………幸せになりなさい」
「はい‼」
壮一郎は憂国会の総長としてではなく、父親としての表情で、沙耶の幸せを願うのであった。
自衛隊の救助作戦を見守った、俊輔達は戦車に乗り込み、俊輔が夢の中で言われた事を思いだしていた。
「そう言えば、アポロニアス様が言っていたな………自衛隊の救助作戦が行われないって………でも行われた。これはアポロニアス様の言っている事が嘘になるのか、それとも俺達が介入した事による改変が起きたのか………」
俊輔はティーガーを動かしながら、夢の中で言われた事を呟いていた。
「俊輔、何ブツクサ言ってるのよ」
「いや、夢の中でな言われた事を思い出していたんだ…………」
「そう……でもアンタが言われた通りにならなかった。それだけで多くの住民や警官が助けられたのよ? それだけでも良かったと思いなさい」
「………そうだな」
俊輔はそう言って操縦に意識を向ける。
「それで、私達はどこに向かってるのかしら?」
「ああ、そう言えば言っていなかったな。夢の中でもう一つ言われた事があるんだ。それを確認する為にな」
「そう………それで、どこにあるの?」
「床主湾だ」
俊輔は床主湾に向けて戦車を走らせるのであった。
俊輔達が床主湾に着くが、そこには何も無かった。
「何も無いじゃない………嘘を言われたんじゃないの?」
「いや、降りれば判るだろう」
俊輔はそう言うと、戦車を降りそれに続き孝達も戦車から降り立った。
俊輔はそのまま床主湾を見つめると、一つの言葉が頭の中で浮かび上がった。
「『我、堕天により使わされた者。我が命に応じ現れよ。最強にして最凶の戦い船‼ 超大和型戦艦…そして、紀伊型超弩級戦艦‼』」
俊輔が高らかに宣言すると、床主湾の海深くから一隻の戦艦がその巨体を現した。その姿は旧大日本帝国海軍が全ての知能を使って完成させ、最後の戦艦として名を馳せた大和型戦艦に似ていた。
だが、似ていないのは主砲の数と所々にある対空火器である。
「“紀伊”って………大和型戦艦の改良艦に名付けられる予定だった名前………」
スペックだけ説明しておくと、大和型であって大和型では無い。
紀伊は船体の形こそ大和型であるが、艦橋や武装、レーダー、大きさ等では大和型と違うのである。
「さぁ、これで俺達がやるべき事が決まった」
「どう言う事?」
「俺達の敵はこの海の果てにいる。だからこそ、この戦艦が俺に手に収まったと言う事だ」
俊輔はそう言うと、紀伊を見つめるのであった。
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