学園黙示録~魔法を持って行く物語   作:武御雷参型

48 / 52
皆さま、新年あけましておめでとうございました。

今年も執筆を頑張っていきますので、よろしくお願いします‼


第四十七話

俊輔達は紫藤を追い詰めたが、紫藤は自らその命を絶ったのである。この呆気ない終わり方に俊輔達は、これで終わったと言う認識では無かった。

 

「紫藤は言っていたな………」

 

「“後はあの方に託す”と………誰の事を言っているのでしょうか…………」

 

「判らない。だが、一つ言えるとすれば、奴らを生み出した者が居ると言う事だ」

 

俊輔が見つめる先には、小学校内で立てこもる暴徒住民を制圧していく孝やコータ、永、麗、冴子などであった。また、生き残りの警官たちも参加して、立てこもる暴徒住民の制圧に時間が掛かる事は無かった。

 

「さて、これからの事を考えなくてはな…………」

 

「そうですね…………」

 

俊輔がそう言うと、上空から数十機のヘリが小学校に向かって来ているのを見付ける。

 

「さぁ、俺達は静かに去って、今後の戦いに備える必要がある」

 

「でも、良いのですか? 俊輔君」

 

「何がだ?」

 

「沙耶さんの事です………」

 

「…………」

 

空の言葉に俊輔は何も言えなくなる。壮一郎に沙耶を託された事もあり、それを無下にする事は出来無いと言う事を言っているのである。

 

「判っている………だが、アイツはこのまま孝達と一緒居た方が身の為だ…………」

 

「そう言って、本当は別れるのが嫌なんでしょう?」

 

「グッ…………そうだよ」

 

空の呟きに俊輔は悔しそうに答える。

 

「俺だって、アイツの事は護りたいと思っている‼ でもやっと救助が来たんだ‼ アイツは………アイツには助かって欲しいんだ」

 

「へぇ~、そうなんだ」

 

「ふぁ⁉」

 

俊輔が吐き捨てる様に言うと、沙耶の声がして俊輔は変な声が出てしまう。

 

「さ、沙耶⁉ どうしてここに来たんだ‼ 救助が来たんだからそっちに行けば良いだろう」

 

「愚問ね………私はアンタと一緒に歩みたいの‼ この気持ちに偽りはないわ‼」

 

「だけど…………」

 

「アンタは黙って私に付いて来いと言えばいいのよ‼ そう、私のパパのようにね‼」

 

「だが………「君は私との約束を違えるつもりなのか?」ッ⁉ 壮一郎さん………ご無事だったんですね?」

 

「ああ、自衛隊の救助があってな………君ともう一度会う約束をしていたのだ。私はそれを違えなかった。だが、君はどうかね?」

 

「…………俺達がこれから向かおうとしているのは、生きている人間を殺す事になるかも知れないんです………それを沙耶にさせる訳にはいきません」

 

「君の言い分は判った…………だが、君は沙耶を守れないと言うのか?」

 

「………」

 

壮一郎の質問に俊輔は答えられない。

 

「だが、君のいや、君たちの仲間は君と一緒に行こうとしているそ? 君の考えは彼等には筒抜けだった様だな」

 

「え?」

 

壮一郎がそう言うと、孝達も俊輔の傍に集まる。

 

「どうして………救助が来たんだからそっちに行けよ‼」

 

「俺達は仲間だぜ? それにリーダーからの命令だ。俺達も一緒に行動する」

 

「………とことん、バカばっかりだ」

 

「ああ、俺達は馬鹿だ………だが、そんなバカも良いだろう?」

 

孝の言葉に俊輔は「確かにな」と呟いた。

 

「俺がやろうとしているのは途方もない事だぞ? それでもお前達は付いて来ると言うのか?」

 

『当たり前‼』

 

俊輔の確認に、全員が声を揃え肯定した。

 

「…………壮一郎さん。今ここでもう一度、誓いをさせて下さい。沙耶さんを絶対に護ります。この命に賭けても‼」

 

「………君の誓いは私の胸に刻ませた貰う。だが、一つ訂正させてもらう。命は賭けなくても良い。だが、傷付いたとしても、何があっても沙耶の元へ帰る事。これを誓いなさい」

 

「はい‼」

 

壮一郎の言葉に俊輔は強く頷いたのである。

 

「さて、私もこれでお暇させてもらおう」

 

「パパ………」

 

「沙耶よ………幸せになりなさい」

 

「はい‼」

 

壮一郎は憂国会の総長としてではなく、父親としての表情で、沙耶の幸せを願うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自衛隊の救助作戦を見守った、俊輔達は戦車に乗り込み、俊輔が夢の中で言われた事を思いだしていた。

 

「そう言えば、アポロニアス様が言っていたな………自衛隊の救助作戦が行われないって………でも行われた。これはアポロニアス様の言っている事が嘘になるのか、それとも俺達が介入した事による改変が起きたのか………」

 

俊輔はティーガーを動かしながら、夢の中で言われた事を呟いていた。

 

「俊輔、何ブツクサ言ってるのよ」

 

「いや、夢の中でな言われた事を思い出していたんだ…………」

 

「そう……でもアンタが言われた通りにならなかった。それだけで多くの住民や警官が助けられたのよ? それだけでも良かったと思いなさい」

 

「………そうだな」

 

俊輔はそう言って操縦に意識を向ける。

 

「それで、私達はどこに向かってるのかしら?」

 

「ああ、そう言えば言っていなかったな。夢の中でもう一つ言われた事があるんだ。それを確認する為にな」

 

「そう………それで、どこにあるの?」

 

「床主湾だ」

 

俊輔は床主湾に向けて戦車を走らせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔達が床主湾に着くが、そこには何も無かった。

 

「何も無いじゃない………嘘を言われたんじゃないの?」

 

「いや、降りれば判るだろう」

 

俊輔はそう言うと、戦車を降りそれに続き孝達も戦車から降り立った。

俊輔はそのまま床主湾を見つめると、一つの言葉が頭の中で浮かび上がった。

 

「『我、堕天により使わされた者。我が命に応じ現れよ。最強にして最凶の戦い船‼ 超大和型戦艦…そして、紀伊型超弩級戦艦‼』」

 

俊輔が高らかに宣言すると、床主湾の海深くから一隻の戦艦がその巨体を現した。その姿は旧大日本帝国海軍が全ての知能を使って完成させ、最後の戦艦として名を馳せた大和型戦艦に似ていた。

だが、似ていないのは主砲の数と所々にある対空火器である。

 

「“紀伊”って………大和型戦艦の改良艦に名付けられる予定だった名前………」

 

スペックだけ説明しておくと、大和型であって大和型では無い。

紀伊は船体の形こそ大和型であるが、艦橋や武装、レーダー、大きさ等では大和型と違うのである。

 

「さぁ、これで俺達がやるべき事が決まった」

 

「どう言う事?」

 

「俺達の敵はこの海の果てにいる。だからこそ、この戦艦が俺に手に収まったと言う事だ」

 

俊輔はそう言うと、紀伊を見つめるのであった。




次回の更新は未定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。