学園黙示録~魔法を持って行く物語   作:武御雷参型

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スイスイ進む……止まるんじゃねぇぞ‼


第四十九話

元アメリカ、ホワイトハウスの大統領執務室に一人の男と数人の武装した集団が集まっていた。

 

「さて、大統領が亡き今。我々がこの世界を統治しなくてはならん………そこでだ……君らにある任務を行ってもらいたい」

 

「ある任務ですか? 詳細をお願いします」

 

「そう、焦るな………まず手始めに海洋にいるアメリカ海軍の空母を一隻、奪取してもらいたい」

 

男の言葉に、全員が絶句する。少人数で行える筈も無い任務だからである。武装集団のリーダーが男に断りを入れようとした。

 

「それは出来ません。我々の数で行えるのは精々、駆逐艦クラスです。それを、いきなり空母を奪取して来いなど、無謀にも程があります‼」

 

「君らの意見なぞ、聞いていない……いや、聞く耳を持たない。私には空母が必要なのだ。この世界を統治する第一歩としてな」

 

「それは、戦艦では駄目なのですか? 戦艦であれば、砲撃が行えます。空母ですと、航空機に必要な人材が要ります。この人数で空母を運用するなんて、宝の持ち腐れです」

 

「確かに、君の言う通りだ」

 

男はリーダーの言葉を肯定した。リーダーは作戦が変更されると安堵したが、そうでは無かった。

 

「だが、戦艦では通れない運河があるだろう? 空母であれば、艦載機を飛ばして行く事が可能だ………だから、私は空母を欲しがっているのだ‼」

 

男は怒鳴り声を上げる。ホワイトハウス周辺にはまだ、奴らの姿が確認されているが、内部は制圧しており、彼ら以外、動く者はいない。だから、男は堂々と怒鳴り声を上げる事が出来るのである。

 

「君らは元海軍の精鋭部隊なのだろう? なら、君らの力を使えば可能なのではないのかね?」

 

男はリーダーに対して意味ありげな目をする。

 

「………判りました。ですが、空母であれば何でもいいのですよね?」

 

「ああ、流石に私も鬼では無い。原子力空母を奪えなど、言えるはずがなかろう? だから、空母であれば何でもいい。君らの活躍を期待しているぞ」

 

「…………判りました。あなたの期待に沿えるよう、やり遂げて来ましょう」

 

リーダーはそう言うと、部下を連れ部屋を後にした。そして、残された男は窓から覗く風景を目に焼き付ける。

 

「そうだ、この様な世界は………もう一層の事潰れてしまえばいい。そして、新たな世界を作り上げるのだ。私が‼」

 

男の目には狂気としか思えない炎が宿っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーダーはまず手始めに、海軍工廠へと向かっていた。途中、奴らと遭遇するが的確に頭を撃ち抜き、骸を積み上げて行く。

 

「隊長‼ 我々がする事は何ですか‼」

 

「君らには、まず始めに使える戦闘機を探してもらいたい。燃料、弾薬は勿論だが、機体の状態も確認してくれ。飛んでいる最中に空中分解なんぞされたら、堪ったもんでは無いからな」

 

「ハハハ、確かにその通りですね。解りました‼ 機体は何でもいいんですか‼」

 

「ああ、構わない‼」

 

リーダーとその部下は銃声が響く工廠内で叫ぶように声を張り上げる。

部下達は、真っ先に地下にある機密格納庫へと向かった。そこであれば、機体が見つかるだろうと考えたからである。部下たちの考えは正解であった。地下格納庫には整備完了が終わって、いつでも飛ぶ事が出来る状態となっているF-14が数機、残されていたのである。

 

「すぐに機体のチェックを始めろ‼ 機体の状態、燃料、弾薬もだ‼」

 

一人の男が指示を出していた。その男は武装集団のナンバー2である。その為、リーダーがいない時は、男が指示を出す事になっている。

 

「こちらの機体は問題ないです‼ 全てオールグリーン‼」

 

「こっちの機体は燃料が抜かれてます‼ 弾薬は充填されてますけど………」

 

「こっちは逆に、燃料は満載でも弾薬がありません‼」

 

各自からの報告に男は頭が痛くなった。一機は全てが揃っているが、残りはどちらかが無いのである。痛いを通り越して、神々が自分達に試練を与えているのかと考えるほどであった。

 

「燃料が無い機体は、どこかにタンクがある筈だ‼ そこから給油しろ‼ 弾薬が無い奴も同じだ‼」

 

「「了解‼」」

 

男達はすぐに行動に移した。そして、男達の考えは当たり、弾薬の入ったケースや燃料満載のタンクが見つかったのである。すぐに、給油と補給を行うと全機、使える状態になったのであった。

 

「こちら、アンタレス2。隊長、聞こえますか?」

 

<感度良好だ。機体は見つかったか?>

 

「ええ、見つかりましたよ。すぐに出れます‼」

 

<判った、俺もすぐにそちらに向かう。機体を滑走路に上げておけ>

 

「了解です……機体を滑走路に向かわせろ‼ 滑走路で隊長と落ち合うぞ‼」

 

『了解‼』

 

男達は機体を滑走路へと向かわせていた。だが、滑走路へ通じる扉の向こうには奴らが埋め尽くしており、進もうにも進めない状況であった・

 

<どうする‼ このままじゃ、滑走路に行けないぞ‼>

 

「判っている‼ 仕方が無い‼ 機銃を使って薙ぎ払え‼」

 

男の指示でF-14のM61A1 20mmガトリング砲が火を噴き、奴らを鎌切れと化した。それにより、戦闘機が通れる広さを確保したのである。

 

「上がるぞ‼」

 

男の指示で、F-14は滑走路へと向かい、リーダーを乗せると、そのまま離陸して目的の空母へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、紀伊の士官室で休んでいた空は、いつの間にか真っ白な空間に連れて来させられていたのである。

 

「ここは………僕が転生した所………」

 

「そうじゃ、空君」

 

「ッ⁉ アポロニアス様……どうして僕をここに呼んだのですか?」

 

空は自分の後ろに立っていたアポロニアスに驚くが、直ぐに冷静になり自分を呼んだ理由を尋ねた。

 

「君の空母の場所を教えようと思ってな………さて、空君、君専用の空母じゃが、君であればすぐに見つかるじゃろう」

 

「なんでそんなに素っ気ないんですか………まぁ、良いです。自力で探します」

 

「それとじゃ………君にも一つ言っておかなくてはならない事がある」

 

「………何ですか?」

 

空はアポロニアスの真剣な顔からして、嫌な予感がしていた。

 

「君の専用空母じゃが………ある物が搭載されておる。なに、安心せい。危険な物じゃないから…いや、危険と言えば危険かのう?」

 

「なんで、それを僕に?」

 

「君であれば扱えると思ってじゃ………さぁ、行くのじゃ。君らの活躍を見ているぞ」

 

アポロニアスはそう言うと姿を消し、空自身も空間から出る感覚がしたので身を委ねるのであった。




誤字脱字、質問、指摘など有れば、よろしくお願いします‼

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