「……ご主人~」
「……なんだ?」
草木も眠る丑三つ時、月の光さえ無い、そんな夜のある森に二人の男女がいた。一人は猫背で頭にアホ毛を生やし特徴的な腐った瞳を持つ少年、もう一人はかなり小柄な緑色の長い髪に赤い瞳で黒を基調とした着物を赤い帯で締め宙に浮いている少女。二人は人気の無い森をただひたすらに進んでいた。
「吾輩はもう……眠いぞ……」
「いや、なら、なんで着いてきたんだよ……」
少女の方はうつらうつらとしており今にも夢の世界の住人になりそうな勢いだった。それに対し少年は一緒に行くと聞かなかった少女に対して半ば呆れたような視線を向ける。
「それは……ご主人が心配で……」
「……そうか」
少女が自分の気持ちを吐露すれば、その言葉に嘘が無い事を知っている少年は気恥ずかしさに頭を掻く。そして、少年は少女の前に行き少し腰を屈めた。
「……おぶってやるよ」
「うむ!」
少女は少年の言葉に即座に飛びつき、少年に背負われた。少年は背中に少女の温もりを感じながらまた、歩き出した。
少年が再び歩き始める事十数分、少年はおもむろに足を止めた。
「……ご主人」
「ああ」
少女は少年に背負われた時から眠気はどこに行ったのか上機嫌に鼻歌を歌っていたのだが今はその表情は自身の不機嫌さを表している。対して少年の方も面倒だと言わんばかりの表情をしていた。二人は揃って同じ方角を見ており、その方角から微かにだが足音のようなものが響いてきていた。その音は次第に大きさを増していき、ついにその正体を現した。それは、人でもなく、既存の動物とも異なる姿をしていた。蝙蝠の羽のようなものを背中から生やし獣の手足を持ち体は筋肉で肥大化し3mは超えている。そして、頭部は球状で口しか存在しない。そんな異形。その異形は二人の方に口しかない頭部を向けるなり、右腕を振りかぶりながら襲い掛かってきた。それを見て少年は即座に後ろに跳び距離をあけ、背中の少女を降ろした。
「無粋なやつめ」
「ムラサメ、少しさがってろ」
ムラサメと呼ばれた少女は少年に言われた通りに少し距離をあけた。そして少年の方は腰に下げている黒いケースから札のようなものを数枚取り出し右手の指に挟む、そして、それらを一斉に異形目掛けて投げつけた。
「——燃えろ、
少年がそう呟けば忽ちその札は火の玉に変わり異形を包みこんだ。
「ガァァァ……グァ……アツイィィ」
異形は全身を炎に焼かれる痛みからか咆哮を上げる。そして、最期の足掻きのように燃えながら少年に突っ込んで行く。それを少年は避けるでも無く、今度はケースから二枚の札を出した。その内一枚の札を異形の突っ込んできているほうに投げる。
「結」
少年がそう紡げば投げた一枚の札を起点に光の障壁が現れる。異形はその障壁に真正面から衝突し途轍もない轟音をたてた。しかし、障壁には罅すら入らない。少年は手に一枚の札を持ちながら瀕死の異形に一歩ずつ近づいていく。
「……ガァ……」
異形はもはやその場から動く事もできない。少年は右手に持っている札に霊力と呼ばれる力を込める。すると、札は一瞬発光しその形を銀色の短銃に変えた。少年はその短銃を異形の頭部に向け、引き金に指を掛けた。
「……何か言い残すことはあるか?」
「…………」
少年の問いかけに対し異形は沈黙していた。それは、もう喋るだけの力が残って無いからか、はたまた己の死を受け入れたのか……。
「……そうか」
少年は引き金に掛けている指に力を込めた。そして、深夜の森に一つの銃声が木霊した。
「おきろーご主人」
もはや聞き慣れてきた少女の声が俺の鼓膜を震わせる。俺はその声に従い少しずつ目を開いていく。そして、目にしたのはいつものように浮かびながらこちらを眺める少女の顔。
「おはよう、ご主人」
「ああ……おはよう」
少女の名はムラサメ。ムラサメは今現在、俺が所有者となっているある刀の管理者?をしている。何故、俺がその刀の所有者になったかと言えば、俺の師匠が関係してくる。師匠と言うのは俺の陰陽師としての師匠だ。俺こと比企谷八幡は2年ほど前までは普通のぼっちの学生だった。奉仕部という部活にも入っていた。奉仕部は他者からきた依頼を依頼主自身が解決できるよう手助けするという部活だ。そして、中学の修学旅行前にその奉仕部にある依頼がきた。その依頼を受けた時が分岐点だったのだろう。俺はその依頼の果てに奉仕部の部活仲間に拒絶された。俺は、その時暫くその場に一人立ち尽くしていた。その時だ、俺は妖怪に襲われた。当然、当時一般人の俺は何もできなかった。恐怖で足は震え碌に走る事もできなかった。殺される。そう思った時助けてくれたのが俺の今の師匠だ。俺はその後、師匠に弟子にならないか問われ、弟子になる事を選んだ。俺はこの選択を後悔はしていない。その選択のおかげでできた繋がりが確かにあるから。
「ご主人、吾輩はぱふぇが食べたいぞ」
「朝からパフェは無いだろ……」
「最近ひとつも食べれてないぞ!」
俺はムラサメを宥めつつ布団から起き上がり朝食の準備に取り掛かった。その間、ムラサメが騒ぐので今日の学校の帰りに買う約束をしたら、ようやく大人しくなった。
俺とムラサメが朝食を食べ終わり学校へ行く準備も終えたので学校へ向けて家を出る。俺は今現在、陰陽師の仕事として駒王町に住みそこの駒王学園に通っている。駒王学園には悪魔といわれる種族の者が幾人か通っていて、その中の二人ほど上級悪魔と言われる地位の高い者がいる。上級悪魔や最上級悪魔は悪魔の駒と呼ばれるチェスの駒を模した物を使い他者を己の眷属にする事が出来る。学園に通っている悪魔は上級の二人以外は皆二人の内どちらかの眷属だ。俺は陰陽師としてその二人の上級悪魔と連携してはぐれ悪魔と呼ばれる自身の主から逃げたり、殺したりした力に溺れた悪魔を討伐している。俺がこの地にいるのもはぐれ悪魔がこの地に多くあらわれるからだ。
学園へと続く道をムラサメと歩いていると見知った後ろ姿を見かけた。その後ろ姿の主もこちらに気づいたようで挨拶をしてきた。
「……おはようございます、比企谷先輩にムラサメちゃん」
「おはよう、小猫」
「おはようさん」
塔城小猫、同じ学園に通う後輩で悪魔。ムラサメと共に駒王学園のマスコットとしてかなりの人気をもっている。勿論、そんな二人といる俺には周りから嫉妬の視線どころか殺意の視線が飛びまくっている。お家帰りたい……。
「今日も相変わらず腐ってますね」
「それは目のことだよな……俺自体が腐ってるとかじゃないよな?」
「さぁ? どうでしょう」
この後輩、仕事上よく顔を合わせるのだがこうやって毒づいてくることが多い。まあ、その程度じゃ、何とも思わないのだが。塔城は甘いもの好きで唯一マッ缶の良さを理解してくれた同士だ。そのため、実家から送って貰っているマッ缶をお裾分けしたりもしている。その分塔城からお菓子を貰ったりもする。律儀な奴だ。まあ、マッ缶好きに悪い奴はいないということだな。
「比企谷~⁈ 何、ムラサメちゃんと小猫ちゃんと仲良く登校してんだよ!」
「どうみたら塔城と仲良く見えんだよ……」
二人と学園に向かっていると一人の茶髪の少年が俺たちの方に駆け寄ってきた。こいつの名は兵藤一誠、駒王学園で変態三人組の一人として有名だ。女子更衣室の覗きなど日常茶飯事、現に今もムラサメや塔城を見てだらしない顔をしている。そして、今も塔城にゴミを見るかのような目で見られている。
「どう見たらッて、そのまんまだよ!」
「いやいやいや、ムラサメはともかく俺と塔上が仲良いわけないだろ? 痛ッ」
そんな事を俺が言った瞬間、俺の足に激痛が走った。目を向けてみれば塔上が俺の足を踏み付けていた。ほらな?仲良くなんてないだろ?(涙)
「そうですね、比企谷先輩なんかとは仲良くなんてないです」
そういい、塔城は歩く速度を上げ一人で学園に向かって行った。
「八幡、小猫はどうしたのだ?」
「俺に分かるわけないだろ……」
ムラサメが聞いてくるがそんなのは俺が知りたい。ああ、ムラサメには一般人のいる所では別の呼び方にしてもらっている。そうでもしないと、ご主人なんてムラサメに呼ばれてると知られたらほぼ確実に俺の命が危ないだろうからな。
そんな事がありながらも俺たちは学園へとたどり着いた。はぁ、早く家に帰りたい……。
どうもちょむすけMKⅡです。自分は千恋万花をやったことは無いので某有名動画サイトを見ながらやっています。ムラサメの設定は他の一般人にも見えて触れるという風に改変してます。また、他の部分も変えていくかもしれません。それでも、よろしければ見ていただけると幸いです。あと、八幡の使った銃は最遊記の三蔵の銃と思ってください。あとあと、ムラサメの口調は自信が無いのでここはこうすればいいなどあればどんどん言ってください。