俺の財布がパフェの支払いで少し軽くなった日の翌日。今日も俺はムラサメと共に駒王学園に向かっていた。道中に兵藤が呻き声を上げて倒れていたが何かあったのだろうか? きっとまた、女子にでもやられたのだろう。
「ッ痛て~松田と元浜の奴~」
松田と元浜なんて呟いているように聞こえるのもきっと俺の気のせいなのだろう。……うん、そうに違いない。しかし、実際問題兵藤が堕天使に狙われている件に関してはどうするべきか……。いきなり、お前の彼女は堕天使でお前の持つ特別な力を狙っている。なんて言われても信じる奴なんて、まず、いないだろう。むしろ言った側の頭の方が心配される。信じるのはせいぜい材木座のような奴くらいだ。だとすれば、いっそ始末ないし捕縛を今日にでもおこなってしまうのがいいんだろうが……。グレモリー先輩には堕天使が近くに居る事は一応昨日のファミレスで塔城に伝えるように言っておいたから、その堕天使の独断という情報が確定するまで一先ずは様子見に徹するべきか……。一応、悪魔と協力関係にある俺が不用意に堕天使に危害を加えて戦争なんてのは避けたいしな。
「何か考え事か? 八幡」
「ああ、ちょっとな……昨日の堕天使について考えていた」
「ふむ、結局どうするのだ?」
「今は取り合えず様子見ってとこだな」
よっぽど俺は考え事に熱中していたのだろうかムラサメに尋ねられ俺は取り合えずの今後の方針について話した。
「まぁ、妥当な判断じゃな」
ムラサメも概ね賛同してくれるようだ。今できるのは堕天使の動向に注意しながら兵藤を尾行して、いざというときに守るくらいか。男の尾行なんて気が乗らないが……。いや、女だから乗るってわけでもないが。っと、今後の事を考えながら歩いていたがどうやら学園についたようだ。これから堕天使の事が解決するまで兵藤を尾行しなければならない事を思い陰鬱としながらも俺は下駄箱で上履きに履き替えた。
「……比企谷、少しいいか?」
授業などは滞りなく進み、現在は放課後。兵藤達は今日も女子の部活動を見るんだろうと思い、その間に一応グレモリー先輩のところに顔を出すかと思った矢先に兵藤に声を掛けられた。
「ああ、かまわないぞ……」
普段なら何かにつけて断るのだが、今は兵藤と行動する方がいいかと思い承諾した。それに兵藤の顔はいつもと違い真剣そのものだった。
「それじゃあ、まず最初に……俺さ、彼女ができたんだ……」
「……自慢か?」
真剣な顔をしたと思ったら彼女の自慢がしたかっただけかこいつ?
「いや、そうじゃなくて……俺さ今まで彼女なんてできたことなくて、それで、今度のデートどうすればいいか分かんなくて……でも、夕麻ちゃんにはデートを楽しんでもらいたいんだ! だから、一緒に計画立てるの手伝ってくれ!!」
そういい兵藤は俺に頭を下げてきた。こいつがそこまで相手の事を考えていたのは正直意外だった。俺としても兵藤の行動が把握できるのは助かるのだが……。
「何で俺なんだ? 俺だって彼女なんてできたことないぞ?」
「比企谷ならムラサメちゃんとよくいるから、女の子の事よく分かると思って……」
「……一緒にはいるが他の女子のことなんて全くわからないぞ? それに松田と元浜はどうなんだ? あいつらなら力になってくれそうだが……」
俺がそう言うと兵藤は顔をしかめた。
「あいつらにそんな事相談なんてしたら嫌味みたいになっちまうだろ……あいつらとはこれからも友達でいてえんだよ……」
ああ、松田や元浜が兵藤の事を本当は祝福してるように兵藤も二人の事を本当に大切に思っているんだろう……。だからこそ、兵藤は二人には相談できないと思っている。それが、勘違いとも知らずに。あの二人ならきっと最期まで真剣に手を貸してくれるだろうに……。
「……分かったよ、手伝ってはやる…けど期待はすんなよ……」
「本当か! ありがとう比企谷!」
俺は結局兵藤に手を貸す事にした。あの二人にも黙っておくつもりだ。今回の件は恐らく兵藤の心にトラウマをつける事になるかもしれない。そんな事にあの二人を少しでも関わらせるのに気が引けた……。
その日の放課後はムラサメにはオカルト研究部で待っていてもらい俺は兵藤のデートプランを一緒に練る事になった。俺達二人は四苦八苦しながらもなんとかデートプランを立てる事ができた。
「できたー!」
「……疲れた」
兵藤は喜びながら腕を広げ対照的に俺は机に突っ伏していた。デートプランを考えるのってこんなに大変なの?リア充達も大変なんだな……。
「ありがとな! 比企谷!」
「おう……」
「それじゃあ、今日は帰るわ! 今度何か奢ってやるからな!」
「まぁ、期待せずに待ってるわ……」
そう言うなり兵藤は立ち上がりカバンを持って教室を出て行った。さて、俺もムラサメを迎えに行って兵藤の後を追うとするか。
俺はオカルト研究部にムラサメを迎えに行ったら兵藤のあとをつけるつもりだったのだが当初の予定と変わってそのままオカルト研究部で今後の話し合いをすることになった。ちなみに兵藤の護衛は現在、木場がしているらしい。そんなわけで今はオカルト研究部の部室のソファに座り、姫島先輩の出してくれた紅茶を飲んでいる。相変わらず美味いな……。この先輩の淹れた紅茶は……。
「それでハチマン、堕天使の数と拠点は分かってるの?」
紅茶に舌鼓をうっているとグレモリー先輩に尋ねられた。まぁ、塔城には堕天使がいて兵藤を狙ってるという事しか言ってないしな。
「数は四人で拠点は少し離れたところにある廃教会です……あと、その廃教会に少しずつ人の気配も集まってます……」
「そう……、人の気配は恐らくはぐれエクソシストでしょうね……」
「俺もそうだと思います……」
グレモリー先輩は俺から情報を聞くと何かしら考え事をしだす。おそらく、その堕天使達の独断と確定するまでにこちらがとる行動だろう。そして、少し間をおいて考えがまとまったのか部室内にいる全員に向けて声を発した。
「それじゃあ、こうしましょう……私と朱乃と裕斗で廃教会のほうを探るから小猫とハチマンでその兵藤一誠君の護衛をしてくれないかしら?」
「俺はいいですけど……塔城はそれでいいのか?」
男とよりも女同士の方がいいんじゃないのか?
「……私もかまいません」
俺の考えとは裏腹に塔城もすんなり了承したので俺は塔城に兵藤のデートの日時を知らせ塔城との集合場所なども決め、今後の方針も固まってきたところで俺とムラサメはグレモリー先輩達に別れを告げ部室をあとにした。
家への帰り道、俺はいまだに迷っていた。兵藤を危険にさらしてまで様子見に徹することに。確かに不用意に堕天使に手を出せば最悪戦争に発展し多くの命が失われる可能性がある。しかし、そのために兵藤を切り捨てるような真似が本当に正しいのか……。そんな事を考えていれば急にムラサメが俺の前に躍り出て。
「ご主人、吾輩はご主人がどんな選択をしようと共にいるぞ……」
「ムラサメ?」
「吾輩とご主人はずっと一緒じゃ」
そう言って俺に笑顔を向けて来た。どうやらムラサメには俺がまだ迷っていることがバレていたようだ。ああ、でも、そうだったな……今の俺は一人じゃ無かったな……。俺一人ならともかくムラサメまで危険な目にあわせるわけにはいかねーよな……。なら、覚悟を決めるか……兵藤を危険な目に合わせても絶対に死なせはしないという覚悟を……。
そうして、その日は過ぎていった。
兵藤と堕天使のデート当日、俺は鳥の囀りが聞こえ目を覚ました。塔城との集合時間までまだまだ余裕があるな。なので、俺は早めに出かける準備を済ませ、毎週日曜朝の楽しみのプリキュアを見ていた。やっぱり、プリキュアは最高だな!。
「ご主人~」
おっと、どうやらムラサメも目を覚ましたようだ。俺はムラサメの朝食を用意しながら今日は家にいるようにという旨を話す。しかし、
「ムラサメ、今日は留守番してろ……」
「なッ! 吾輩も共にいくぞ、ご主人!」
やはりというかムラサメは納得しなかった。それでも俺が兵藤を守っているうちに直接的な戦闘能力の無いムラサメに何かあるといけないので
「今日だけでも言う事を聞いてくれればパフェを好きなだけ食わせてやるから……」
「ぐッ……そ、それでも共に行くぞ!」
パフェで釣ろうとしたのだが失敗した。おかしいな……。これでいけると思ったんだが……。
結局その後ムラサメを納得させるのに時間が掛かり塔城との集合時間に遅れ足を踏まれたりしたが割愛しておく。ちなみにムラサメは今度一日言う事を聞いてやるということで一応納得した。不満ありありというのが顔を見れば分かったが……。
塔城と合流して暫く、塔城に踏まれた足がいまだ痛むが何とか兵藤達のデートの集合時間まで間に合ったようで兵藤がそわそわしながら相手を待っていた。というか、塔城の奴、強く踏みすぎだろ……足の骨が砕けるかと思ったぞ……。俺達が兵藤を見つけてから十数分どうやら相手もきたようだ。兵藤と何か話しているようだが、どうせ『ごめん、待った!』『いや、今来たとこだよ!』とかやってんだろうな……。
「……塔城、そろそろ動くぞ」
「……分かりました」
それから、俺と塔城は兵藤達のデートを尾行しながらついていき昼食時に兵藤達と同じ店で食べたのだが遅れた罰として俺が金を払うことになった。さようなら……俺の野口さん達……。
そして、夕方になりついにデートの最終地点の公園に到着した。公園の周辺には人払いの結界が張られている。おそらく此処で事を起こすつもりなのだろう……。兵藤はデート中ずっと相手の事を気遣っていた。きっと、俺が相手の考えを知っていたのを知ったら俺の事を恨むだろうな……。そして、ついに事態は動いた。堕天使の女が翼を広げ宙に浮かんだ。兵藤は呆然とその場に突っ立っている。だから俺は塔城に一言残し腰に下げている黒いケースから呪符を取り出しながら足に霊力を込め飛び出した。
「塔城、グレモリー先輩に連絡してくれ!」
「分かりました!」
堕天使の女は光の槍を形成し兵藤を貫こうとする。させるかよッ。俺は呪符に霊力を込め愛用する短銃を手に持ち引き金を引いた。そして公園に響く銃声。
「何⁈」
「なッえ? 比企谷? 何がどうなってんだよ!」
今の一発はただの牽制。俺の思い通りに堕天使の女は突然の銃声に動揺している。その内に俺は兵藤の前に出た。
「何? 人間?」
「ああ、お前らからしたらただの下等な人間だよ……」
「その下等な人間が何? ヒーローにでもなったつもり?」
「……まさか、俺はヒーローなんかにはなれねえよ……」
本当のヒーローなら兵藤を危険な目に合わせずに済んだんだろうよ……。俺は結局、兵藤が危険な目に合うのを良しとした……。
「なぁ……比企谷、何が起こってんだよ……説明してくれよ!」
「……悪い兵藤……後で全部話すから少し待っててくれ」
今だに状況が理解できてない兵藤には悪いが今はこっちをどうにかしないとな……。俺は銃口を堕天使の女に向けて構える。
「兵藤の前でお前を撃つ事はしたく無い……今なら見逃してやる……」
「人間風情がこのレイナーレ様に勝てると思ってるの?」
堕天使はこちらを馬鹿にしたように笑みを浮かべ光の槍を手に持った。どうやら引く気は無いみたいだな……。俺は引き金を引こうとし
「何で比企谷が夕麻ちゃんに銃なんて向けてんだよ!」
銃を構えている手を兵藤に掴まれた。……まぁ、こいつならそうするよな……。俺は霊力を体に纏わせ兵藤を力づくで振りほどこうとした、が、その時、今までこの場にいなかった人の声がその場に響いた。
「そこまでよ! 堕天使さん」
「……リアス・グレモリー先輩?」
突然の学園の有名人の登場に兵藤はまたもや呆然としている。その間に俺は兵藤の手を振りほどき再び銃を構える。そして、堕天使の女もこれは予想外だったようで
「その紅い髪……グレモリー家の者かッ」
「ええ、その通りよ」
「……いいわ、今は引いてあげる……良かったわね、イッセーくん命拾いして、まぁ、生きていたところで大した神器は持って無いでしょうし」
グレモリー先輩の言葉を聞き堕天使の女はそんな言葉を残し去っていった。俺もそれに伴い銃を呪符に戻す。
兵藤がデートの最終地点に選んだ公園、その場にいるのは俺とグレモリー先輩、塔城……そして、状況が理解できずその場に立ち尽くす兵藤の4人だけだった。
3話目です。基本深夜テンションで書き上げてるんで変なところがあると思います。なので、ちょくちょく編集していくと思います。あと、しばらく忙しくなるので次回はいつになるか分かりませんが少しずつ書いていきます。
では、次回もよろしくお願いします。