堕天使の女が去った後、公園に残った俺達は一度兵藤に詳しい説明をするためにオカルト研究部の部室に移動した。移動中、兵藤は一言も喋らなかった……。
そして、部室にあるソファに兵藤とグレモリー先輩が向かい合うように座り話し合いは始まった。
「こうして面と向かって話すのは初めてよね? 私はリアス・グレモリー、このオカルト研究部の部長を務めているわ」
「……兵藤一誠です」
「それで、兵藤一誠君……貴方は何から聞きたいかしら?」
「夕麻ちゃん……それから先輩達って何者なんですか?」
兵藤は今まで疑問に思っていたであろう事をグレモリー先輩に聞いた。真っすぐに先輩の目を見て。
「貴方と一緒にいた彼女は堕天使よ……そして、目的は貴方の殺害」
「……ふざけてんすか?」
兵藤の瞳にはあからさまな怒りの感情が見てとれた。そりゃあ、自分に初めてできた彼女が堕天使で自分を殺すのが目的だなんていわれたらキレるだろうな。しかも、こいつはその彼女の事を本気で好きになっていた……。デートの計画を立てる時だって友達と呼べるほど仲がいいわけでもない俺に頼るほどに真剣だった…。
「…貴方も見たはずよ? 彼女が黒い翼を生やして飛んでいるところを」
「…だからってそんなの信じられるわけ」
兵藤は彼女が堕天使という事が信じられないようだ。当たり前だ……。俺だって今でこそ信じているが普通に生活していたらきっと信じる事はできなかっただろう……。
「……そうよね、そうそう信じれる話でも無いでしょうし……先に私達の事を話しましょ
うか」
「先輩達の事……」
グレモリー先輩はそう言うと周りにいる自身の眷属達を見渡し兵藤に真実を告げた。
「私達は悪魔なの……ハチマンは違うけど」
グレモリー先輩がそう言うとその場にいる俺と兵藤以外の全員が悪魔の翼と尻尾を出しピコピコと動かす。
「……それ、本物ですか?」
「ええ、もちろん…何なら触ってみる?」
「……じゃあ」
兵藤は近くにいるグレモリー先輩の羽を触って本物かどうか確かめているが…。一体どんな感触なんだろうか…。前から少し気になっていた。と、そんな事を考えていると俺の着ている服の袖が引かれた。
「……比企谷先輩も触ってみますか?」
俺の服の袖を引いた手の持ち主は塔城だった。っていうか何?俺ってそんなに触りたそうにしてたの?
「……はい」
「いや、俺喋ってないよね……何で分かるの? サトリなの?」
「……先輩は分かりやすいですから」
あっ、そうですか……。
「本物……みたいですね……」
「これで信じてもらえたかしら?」
「まだ半信半疑ですけど……」
「そう、まぁ今はそれでかまわないわ」
どうやら俺と塔城が話してるうちに兵藤の確認も終わったようだ。
「ところで先輩達が悪魔なのは分かりましたが比企谷は何なんですか? さっき比企谷は違うって言ってましたけど」
「ん? ああ、俺は陰陽師だ……」
「え⁈」
何でそんなに驚いてるんだよ……。俺が陰陽師なのがそんなにおかしいか? この目か? グールか何かだとでも思ってたのか?
「いやいやいや、陰陽師って比企谷銃使ってたじゃん! 銃使う陰陽師なんて聞いた事ねえよ!」
あ、そっち? しかし……分かってないな兵藤。
「いいか兵藤」
「おう」
「時代は常に変わってきたんだ、弓矢から鉄砲、男尊女卑から男女平等……昔は家事は女性がするのが当たり前だったかもしれない……しかし、今は男の主夫だっている……だから陰陽師の俺が銃を使うのだっておかしくないし、俺の夢が専業主夫なのも何もおかしくはない」
ふっ、どうだ兵藤。
「「「「「…………」」」」」
ん? 何で全員そんな呆れたような視線を向けてくるんだ?
「ま、まぁ、ハチマンの夢はともかく、ハチマンが陰陽師なのは本当よ?」
「……そうですか」
兵藤はどうやら納得してくれたようだ。だが……
「……比企谷は夕麻ちゃんの目的が分かってたのか?」
こうなるよな……。
「ああ、大体の見当はついていた……」
「じゃあ! 何で!「……待ってください」小猫ちゃん……」
兵藤の俺に対しての問いかけを塔城が遮った。おそらく兵藤は俺にどうして話してくれなかったのか、それを聞きたいんだろう……。当然だ。分かってて一緒にデートプランを考えていたりしたんだから……。しかし、塔城は何を言うつもりだ?
「……兵藤先輩は今も悪魔や堕天使について信じ切れて無いようですけど、もし、比企谷先輩が兵藤先輩が襲われるより先に彼女が堕天使という事を話したとして信じれましたか?」
塔城は少し責め気味に兵藤にそう言った。塔城はいつもより感情的になっているように思える。
「そ、それは……悪い、比企谷……」
「……謝るなよ、悪いのは俺でお前は何も悪くないんだから」
そうだ……。こいつは何も悪くない……。
「兵藤君、話を続けてもいいかしら?」
「あ、はい」
「そう、それじゃあ次は
「神器ですか?」
どうやら次は兵藤が堕天使に狙われる原因となった神器について説明するようだ。ちなみに言っておくと俺には神器は宿っていなかった。龍の手でもあれば戦闘がずっと楽になるのに……。
「えっと、つまり神様の作った便利アイテムが俺の中にあってそれが狙われたって事ですか?」
「ざっくり言うとそうなるわね」
「でも俺、そんな物今まで見たこと無いですよ?」
そりゃそうだ、普通に過ごしてれば一生関わる事が無いことの方が多いんだから。
「じゃあ、出してみましょうか」
「えっと……痛かったりします?」
「ふふっ、大丈夫よ、この部屋は神器が出やすいようになっているから……そうね、
貴方が一番強いと思うものを思い浮かべてみて」
「一番強いもの……」
兵藤は徐に両手の平の付け根どうしを合わせて腰辺りに構えた。ってまさか……。
「ドラゴン波ァァァ」
やっぱりそれかよ………。
俺が呆れていると兵藤の左手が光り出し光が収まると手の甲の辺りに赤い防具のようなものがついていた。
「これは……
「龍の手? これってどんな物なんですか?」
兵藤は自分が狙われる原因となった物に対して複雑な表情を浮かべ見つめている。
「それは持ち主の力を二倍にするものよ」
「二倍……それって凄くないですか?」
まあ、普通の人間からしたら充分チートアイテムだよな。
「確かに人間からしたらそうでしょうね……でも、私達のような存在からしたら普通の人間の二倍くらいなら全く脅威にならないの」
「……そんなに差があるんですか?」
「ええ、ハチマンのような人間もいるけど、基本的に悪魔と人間の種族的な差は二倍程度じゃ覆せないわ」
兵藤はそれを聞いて肩を落とした。大方、俺って実は凄い? とでも思っていたんだろう。
「兵藤君、神器も分かったところで私から提案があるのだけれど」
「提案?」
提案? まさかグレモリー先輩……。
「これを見て頂戴」
「赤いチェスの駒ですか?」
グレモリー先輩が取り出したのはチェスのポーンの駒だった。
「これは悪魔の駒と言って他の種族を悪魔に変えて自分の眷属にできるの」
「悪魔に……」
「そう、それで兵藤君、貴方私の眷属にならないかしら?」
グレモリー先輩の提案は兵藤を自身の眷属に迎え入れるというもの。まあ、グレモリー先輩の眷属になれば堕天使や他の悪魔も手を出しづらくはなるだろうが……。
「俺がですか?」
「ええ、これから先も今回のように他の種族に狙われるかもしれない……もちろん私達も手を尽くすけどもしもの事があるかもしれない」
「ッこれからも……」
「私の眷属になれば少なくとも堕天使や悪魔は手を出しづらくなるはずよ」
「俺は……」
前までの兵藤ならグレモリー先輩のような美人に勧誘されたならすぐ食いついただろう……。ちなみに俺の場合は美人局などが一番に頭に浮かび断る。
「もちろん強制はしないしすぐに返事をする必要もないわ、ゆっくり考えて決めてくれればいいわ」
グレモリー先輩はそう言い兵藤に向け微笑みを向けた。
今日のところは此処までにしておきましょうか、ハチマン、悪いけど兵藤君を送って貰えないかしら? 私たちはこれから契約の仕事があるの」
「別に構いませんよ」
「そう、ありがとう」
そして俺にも微笑みを向けてきた。恥ずいんでこっちを見つめないで!
オカルト研究部のある旧校舎を出てみれば辺りは既に暗くなっており時間を確認すればかなり遅い時間になっていた。俺達は無言のまま兵藤の家に向けて歩き出した。そして、兵藤の家まで続く道の半ば程に差しかかった頃。今だに俺達の間に会話は無かった。普段から積極的に話す仲では無いが調子が狂うな。
「なあ、比企谷」
「なんだ? 兵藤」
なんて思ってたら話しかけられた。フラグでもたったのか?
「比企谷の家は陰陽師の家系なのか?」
「……いや、普通の家庭だ、陰陽師には今の俺の師匠に出会ってからなった」
「じゃあさ、比企谷はどうして陰陽師の道を選んだんだ? 他にも道はあったんだろ?」
俺がどうして陰陽師になるのを選んだのか……。それは——
『……あなたのやり方、嫌いだわ』
『人の気持ち、もっと考えてよ……』
「……俺は逃げたんだよ」
「逃げた?」
「ああ」
……俺は二人と向き合うのが怖くて陰陽師という道に逃げた。
「逃げたことを後悔はしてないのか?」
兵藤に問われ考える。俺は今も奉仕部に囚われてるのかもしれない。あの時二人と向き合っていたらと考える事もあった。
「……正直、陰陽師になってはぐれ悪魔や妖怪の討伐なんかの面倒な事だってできた」
「おう」
……でも
「逃げたことは後悔してるかもしれない……けど、陰陽師になった事を後悔はしてない」
今のムラサメやグレモリー先輩達のいる暮らしも悪くはないと思っている。
「そうか」
「ああ」
日も暮れ暗くなった道中、道の端に立つ街灯だけが俺達二人を照らしていた。
ちなみに俺が家に着き扉を開けた時。
「ご~しゅ~じ~ん~」
ムラサメが大層怒った様子で仁王立ちしていた。なんかオーラみたいなのも見えるんですけど……。
何でこんなに怒ってるんだ? ムラサメが怒っている理由を考えてみるが……あっ、そういえば昼飯は用意してたけど晩飯は用意してなかったわ……。
「……ご主人、何か吾輩に言う事はないか?」
笑顔だが目が笑ってないムラサメの問いに、俺は右手を丸め頭の方に持っていき
「……てへぺろっ♪」
この後、ムラサメから滅茶苦茶説教された。
4話目です。時間が掛かった割に文字数がいつもより少ない!
それにムラサメも最後しか出てない!
そして話があんまり進まない!
などがありますが次回も読んでいただければ幸いです。