今年もよろしくお願いします。
さて、新年の挨拶も無事終えたことですし、本作品の解説でもしましょうかね?
ご存知の方も多分それなりにいる……と思いたいんですが、本作品は昔フジ系列で放送されていたアニメ、学校の怪談を基に、MF文庫からかつて刊行されていたラノベ、101番目の百物語のキャラとか設定をぶち込んだ作品となっています。
学校の怪談のアニメ知らない人はレンタルするか、動画サイトググってください。
101番目の百物語知らない人はハーメルン内にある二次作品か、ブックオ⚫️でも行って読んでください。
もしくはアマゾンで購入してください。あ、アマゾネスドットコムではないですよ?
……と、話が逸れましたね。ええと、何の話でしたっけ?
FGOの話でしたっけ?
ああ、FGO2部序章最後はある意味衝撃的というか、さすが汚い綺礼きたないって感じでしたね。
ってきり、麻婆ネタぶち込んでくると思ってたのに……。
……えっと、さあ、始まるよー?
『貴女は姫巫女の主人公に決定しました。これは大変素晴らしい!』
さつきの耳にはっきりと聞こえる音量で、
その声は、やけにノリの軽い若い女の声で、さつきはどこかで聞いたことがあるような、ないような……はっきりと誰かはわからなかった。
ただ、一つ言えるのは、その明るいノリが非常に胡散臭いという事くらいだ。
「す、素晴らしいとか言われても……あんた誰なのよ」
主人公に決定、というのもよくわからない。
とりあえず、携帯電話を拾ってみよう、そう思ったさつきは驚いた弾みに床に落とした携帯電話を拾って画面を覗き込んでみた。画面には大きく『8番目のセカイへようこそ』と描かれており。
『祝! 姫巫女物語の主人公! 宮ノ下さつき!』とクリスマスツリーやらお正月やらお天気マークやらでデコレーションされた、いかにも『胡散臭い』装飾で描かれていた。
さつきはインターネットはおろか、電子メールすらしたこともなく、まだ引越してきたばかりで友達も知り合いすらいない町で、誰にも教えた事がないのに、自身の名前がでかでかと画面に描かれていた事にゾッとしてしまった。
(な、何よこれさっきから一体何が起きてるのよ! 何で私の名前が描かれてるの? 嫌よ、嫌いやいやいやー!!!)
恐怖心からか、さつきはDフォンを手放し、後ずさる。
辺りを見渡すと、窓の鍵をかけて、ドアを家具で塞ぎ誰も入れなくした。
そして、啓一郎が眠るベッドの下に潜り込み布団を被りながら祈る。
(これは夢これは夢これは夢これは夢これは夢!!!)
さつきが必死で現実逃避したその時だった。
トゥルル、トゥルル……
一階から電話が鳴る音が聞こえてきた。
(こんな時間に?)
さつきは時計を見る。時刻は23時30分。
深夜といってもいい時間帯だ。一階にはさつきと啓一郎の父親である礼一郎が寝る寝室がある……が、礼一郎は熟睡してるのか、電話が鳴る音に全く気づく様子がない。
(……)
さつきは恐怖心を胸に押し留めながらも、ベッドから抜け出し、部屋を出て一階に降りる。
そして、電話の受話器を恐る恐る手に取り、耳に当てた。
「も、もしもし?」
『あ、ラーメン屋さん?
味噌チャーシュー大盛りいっちょ、お願いします?』
ドキドキしながら受話器を取ると聞こえてきたのは可愛いらしい女の子の声だった。
それもさつきがよく知る少女の声だった。
「はい、出前いっちょ、って、うちはラーメン屋さんじゃないわよっ!」
電話に出て早々さつきは可憐なツッコミを入れてしまった。
『あははは! 相変わらず元気そうだね、さつきちゃん』
「……まったく、そういうあんたは相変わらずなんだから……で、何の用よ?」
『んとね、チャーシュー麺を食べたくなって』
「私はとんこつがいいな」
いきなりラーメントークが開始されたが、受話器の向こう側にいる少女相手にはこれはいつものことなので、さつきはあえてツッコミを入れることなく、自身が食べたいラーメンを口にした。
決して少女とのやり取りが面倒くさいとかそういう理由ではない! 多分、おそらく、きっと。
『あう、夜中にそんな話をするもんじゃないね、お腹空いてきちゃった』
「私も。えっと、こんばんはアカネ、こんな夜中に何の用よ?」
電話の相手はさつきが以前通っていた東京の小学校での親友、南條アカネだった。
『さつきちゃんが引っ越していってからさつきちゃん成分が足りなくて……具体的にいうとさつきちゃんの血とか』
「今すぐあんたとの友情をリセットしたいわ……」
『あははは、なんてね冗談だよ! さつきちゃんと久しぶりに電話でお話ししようかな、って思って』
冗談と言ってるが、さつきはこの少女に会うたびに血を分けてくれと言われていたことを思い出す。
この少女はオカルトマニアで、人間の血を使った黒魔術の研究やら召喚術やらを調べるのが好きなちょっと、いや、かなり変な人だったなー、とさつきは思い出した。
『もー! 私は変な人なんかじゃないよーだ。私、こう見えてもとーってもこわいこわい魔女なんだからね? そんな変なこと考えてるとさつきちゃんに呪いをかけちゃうぞー!』
魔女って何言ってんのよ……と思いながらさつきは彼女が言う呪いについて聞き返す。
呪いなんて非科学的な現象あるわけないじゃない、と思ってるが実際はIお
「呪い? なんのよ……」
『んーと、洗濯物が早く畳める呪いとか?』
「何それ便利!!!」
洗濯物が早く畳める呪い、それは小学生にして主婦のさつきにとって是が非でも覚えたい呪いだ。
『それか洗濯物が早く乾く呪いもあるよ?』
「今すぐかけて!」
洗濯物が早く乾く、それは全国の主婦を魅了する呪いの言葉だ。
『あはは、変わらないね〜! さすがさつきちゃんだ!』
さすが、ってどんな意味なんだろうと疑問に思いながらもさつきはあえてそこには触れないでいた。
「で、用件ってそれだけ? 他にないんなら切るわよ。ちょっと今変なサイト見て気分悪いし」
『せっかくかけたのに冷たいなぁ。で、どんなサイト見たの? グロ系?』
「そういうんじゃなくて、なんていうか……そのサイトに繋いだらね」
『うんうん』
Dフォンの画面に現れた『8番目のセカイ』というタイトルロゴを思い出しながらさつきは答える。
「いきなりファンファーレっての? パンパカパーンって鳴り響くやつ? あれが鳴ったの」
『いきなり? うんうん、それでそれで?』
「えーと『おめでとうございます!』って声が流れてきて」
『うわっ、携帯のサイトで?』
「うん、しかも私の名前がサイトにでかでかと載ってて、怖かったよ〜」
『ああ、実名で載ってたんだ……おーよしよし、怖かったねー』
「うん、怖かった……」
『エアなでなでしつつ、それで何を見たの? 家事が楽になる方法が書いてあるサイトから飛んだの?』
「そんなサイトあるの?」
『いや知らないけど』
「なぁんだ……」
『って、あから様にガッカリされた⁉︎』
「家事が楽になる方法あるなら見たいわよ、主婦にとって時間と手間は敵なのよ!」
『さつきちゃん……まだ小学生だよね? ベテラン主婦みたい。『お母さん』って呼んだ方がいい?』
「誰がお母さんよ!」
さすがにこの年でお母さん呼ばわりはされたくない。
そう思ったさつきは声を上げた。
「私がお母さんなら、あんたは私の娘か!」
『あははは、いいね〜さつきちゃんがお母さんなら毎日美味しい餃子食べれるね!
ね、さつきちゃん。私と契約して私のママになってよ〜』
「絶対嫌よ!!!」
大声を上げた事で、誰か起きたのかゴトンと物音が聞こえ、さつきはハッとした。耳を澄ま澄まるが音は治った様だ。
いけない、いけない、もっと静かにしないとみんな起きちゃう。
さつきは電話口のアカネに向けて、人差し指を立てて『しっー!』と静かにしてと伝える。
『あはは、ごめんね。で、どんなサイトだったの?』
まったく悪いと思っていないような口調に苦笑いしながらさつきは先程見たサイト名を伝える。
「えっと、確か……『8番目のセカイ』だったかな?」
『ええっ⁉︎』
さつきが口にした瞬間だった。電話口からアカネの声が大きくなる。
「ちょっと、もう少し静かに!」
『あ、ごめん。でも、それほんとなの⁉︎ さつきちゃん!』
まるで耳の間近にアカネが近いたかのように、受話器からはアカネの興奮した声が響いてきた。
「ちょ、ちょっとどうしたのよ?」
『そのサイトは、ほんとに凄いトコなんだよ! そこに繋げたってことは、さつきちゃんは……あ、あれ? あ、いや。そっか。そういえばそうだった。さつきちゃんなら繋げても当然だった』
「ん? なんでよ?」
『いや、『8番目のセカイ』って私達みたいなオカルトマニアの間では超有名なサイトなんだけどね』
「そんなに有名なサイトなんだ……次、怖い目にあったらアカネちゃんに相談するね」
『うんうん。『さつきちゃん、貴女疲れてるのよ……』って乗ってあげるね』
「凄い信じてないわよね、それ⁉︎」
まるで⚫️-fileの某捜査官みたいなことを言う親友にさつきは突っ込みを入れる。
その突っ込みを聞いたアカネは『あははっ!』と笑う。
「で、そのサイトは何が有名なの?」
『うん、そこはなんとね! 『実際にあった都市伝説』しか載ってないんだって!
そこにある都市伝説は、必ず実際にあったお話。つまり、どんなおばけが現れたものでも、どんな被害があったものでも。全部本当にあった話……ってものらしいよ?』
「なんか胡散臭いわねー……都市伝説なんてほとんどが作り物なんじゃないの?」
『まあね、
「そういうものなんだ……」
真実かどうかわからない話に、否、真実かどうかわからないからこそ、人はそれを知りたいと思う。そういう人が大勢いて、そういったものを話し合い、やがて噂となり世に広まった。つまりはそういうことなのだろう。
『でも、実際にそれがあるっていう人もいてね? 私達オカルトマニアはその存在を確かめたくて仕方ないっていうお話』
「ああ、納得したわ。でも、そんな有名なものなら偽物もいっぱいあるんじゃない?」
『なんだよね。だから、さつきちゃんがたどり着いたサイトも、きっと本物じゃないだろうなーって』
「なぁんだービックリしたなーもー!」
『一応、ファンファーレと当人向けのメッセージ、っていうのは『8番目のセカイ』に繋がった人に流れるものらしいけどね。その内容は人それぞれ違うんだって』
「へぇ?」
そう言われたさつきは先程、Dフォンから流れた『おめでとうございます! 貴女は見事……』というメッセージを思い出す。
(いやいやいや、そんなことあるわけないじゃない……あれは何かの間違いよ。そうだわ、きっと何かの間違いよ!)
『さつきちゃんは、何か言われた?』
「んーと……なんだったけな。貴女は見事、なんかの……姫巫女? の主人公に決定しました、おめでとうとかなんとか。『これは大変おめでたい事ですよ、素晴らしい!』とか言われた」
『素晴らしいて』
「うん、私もそこは突っ込んだ」
『へええ、でも、なんとなく信憑性はあるかもしれないね?』
「信憑性があっても嫌だなあ……」
『でも、本物の『8番目のセカイ』は、専用の携帯でしか見られないって話しだし、やっぱり偽物のサイトだろうなあー。うーん、残念。さつきちゃんが繋げるんだったら、そこを見ればオカルトマニアの私はすっごいハッピーなのに!』
「そこを見れば、って東京からどうやって見るのよ?」
『そこはほら、突然現れた転校生の友達は転校生とかありじゃない?』
「まさかこっちに引っ越してくる気⁉︎」
『あははは、なんてね。さすがに私の我儘でお引越しはできないからそこは長期休暇の時に会いに行くよ』
「……本当に来るんだ、うん、まあ、そうだよね。アカネちゃんはそういう子だったね。じゃあ、そん時は家事が早くできるお呪いかけてくれる?」
『もちろん!
あ、そうそう。もし、さつきちゃんが本当に『8番目のセカイ』に選ばれたんだとしたら、近いウチに美少女がやってくるんだって』
「美少女?」
『白い服を着た、小さな女の子。名前は確か……『ヤシロ』ちゃんだっけな。神社の『社』と書いて、ヤシロって読むの』
「……え?」
アカネの言葉にさつきは驚愕して、固まってしまう。
白い服を着た女の子。名前はヤシロ……それは昼に見た夢の中で会った女の子と同じ名前だ。
『その子から専用の携帯を受け取ったら……みたいなお話。もしさつきちゃんが受け取ったりしたら、ぜひ教えてね!』
「……」
(え、え? どうしよう? 私もう、その子と会ってるし、携帯電話も貰っちゃたよ!
どうしたらいいの? アカネちゃんに伝えた方がいいのかな? でも、あれが大丈夫なものかわからないし、もし、人に伝えた事でアカネちゃんにも何かあったら私……)
「だ、大丈夫よ! そんな変なもの私が受け取ることなんてないんだから!」
『ふぅ』
え、溜息吐かれた? まさか、強がってるのバレバレだった?
さつきがそんな風に微妙に勘違いしていると、アカネは笑いながら、『さつきちゃんの声を聞くための電話なのに、私ばっかり喋っちゃったなー、と思って、さつきちゃんのお話も聞かせてよ?
新しい学校ってどんな感じ? 友達できた? お隣さんはどんな人? 噂の旧校舎もう行った?』などとさつきを質問攻めしてきた。
親友からの電話に、気づけばさつきはDフォンの事も『8番目のセカイ』の事も忘れて、夜遅くまで長話に興じていた。
『それじゃね!』
「うん」
さつきが電話を切ったのは夜中の3時過ぎだった。
親友とつい長話をしてしまい、気づけばこんな時間になっていた。
(いけないいけない夜更かししちゃった。それにしてもこんな夜中まで長話してたのに、パパも敬一郎も起きて来ないなんて……二人ともそんなに引っ越しが疲れたのかな?)
通常なら玄関前とはいえ、夜中に起きて長電話なんかしていたら父親に咎められたりするものだが、父親はおろか、いつもなら夜中のトイレに起きだす弟も起きてくる様子はない。
慣れない引っ越し作業に疲れたのか、それとも……起きないように誰かが何かをしたのか。
さつきは子供部屋に戻るとすぐにベッドに入り、目を閉じる。
意識は夢の中に旅立つ。
やがて、すー、すー、と静かに寝息をたて始めた。
この時、気づくべきだったのだ。
すでに、自分の日常が非日常とかしていることに……。
さつきが寝てから床の上にあるDフォンが点滅しだしたことに。
黒猫カーヤがそれを咥えて、部屋から出て行ったことに。
さつきは気づかない。
すでに『運命』に導かれていることに。
翌朝、さつきと敬一郎は父親が運転する車に乗り、新しく通うことになる小学校の前まで送られた。
「本当にいいのかぃ?」
「大丈夫だって! パパこそ、転勤早々遅れないでね? 」
「ああ、校長先生にちゃんと挨拶するんだぞ?」
「うん」
さつきが頷くと父は車を走らせた。
「「いってらっしゃい〜!!!」」
敬一郎と声をハモらせて、さつきは父の車が見えなくなるまで手を振り見送ろうとする。
と、その時だった。 「にゃあ」と猫の鳴き声が聞こえたのは。
さつきは敬一郎が背負ってるランドセルを開けた。
「あっ……」
そこにはやはりと言うべきか、黒猫カーヤが収まっていた。
カーヤはさつきの顔を見ると嬉しそうに「にゃあ〜」と一鳴きした。
あらやだ、可愛い。さつきは内心そう思いながらもここは叱らねばならないと断腸の思いで踏み止まる。
(こんなところにカーヤを連れてくるなんて……)
「はぁぁぁ……」と溜息を吐いて敬一郎を見る。
「なんで連れて来たのー!」
「だってまだ友達いないから……」
「先生に叱られるわよ……」
まったく、もう……仕方ない弟なんだから。
さつきがそんなことを思いながら、敬一郎を叱っていると。
「戻して「にゃあああ……」ああっ!」
叱ってる途中で、カーヤはランドセルから飛び出し走り去っていってしまった。
「カーヤ!」
「大変⁉︎」
さつきと敬一郎は慌ててカーヤが走り去った後を追いかけた。
カーヤは今は使われていない階段を登り、学校の敷地内へと入っていってしまう。
さつきと敬一郎はカーヤの後を追って旧校舎がある敷地内へと足を踏み入れる。
「カーヤー」
消えた黒猫の名前を呼びながら、さつきと敬一郎は草木が生い茂る旧校舎の敷地内を歩く。
怖がりの敬一郎は姉の腕をギュッと掴みながら、姉の後をついて回る。
「カーヤ!」
名前を呼びながら歩くが、カーヤの姿はない。一体どこに行ったんだろう。
さつきと敬一郎が心配したまさにその時。
「あ、カーヤ⁉︎」
旧校舎の出入り口の前にいる黒猫を発見した。
カーヤはさつき達の呼びかけには答えず、なぜか少しだけ開いていたドアの中に入っていってしまう。
「旧校舎の中に入っちゃった⁉︎」
さつきと敬一郎はしばし呆然と立ち尽くしてしまう。
それはカーヤが入った旧校舎が如何にも何かが出そうな雰囲気がある場所だからだ。
さつきの腕を掴む敬一郎の手に力が入る。ギュッと腕を掴まれたさつきはハッとした。
さつきは白い女の子に言われた言葉を思い出していた。
『お姉さんは必ずあそこに行くことになるよ? 絶対に』
『それが運命だから、だよ』
(運命……ううん、運命なんかじゃないわ! 偶々よ。これは偶然! 私は運命なんか信じないんだから!!!)
「お姉ちゃん……あれ!」
考え事をさつきがしていると敬一郎が何かに気づいた。
視線を敬一郎の方に向けると……さつき達と旧校舎の出入り口の扉。そこの前に漆黒の携帯電話が落ちているのが見えた。さつきは何度も目をこすった。夢なら覚めてほしかった。だが、醒めない。これは現実だ。
地面に落ちているのはどう見てもDフォンだった。
(な、何でここにあるのよ……⁉︎)
さつきは怖くなった。帰りたくなった。
今ならまだ引き返せるかも……そんな風に思っていると、敬一郎が呼び声が聞こえた。
「お姉ちゃん! あれ、見て!」
敬一郎が指差す。
指差された方を見ると、なんとDフォンが空中に浮いていた。
誰も触れていないのに、勝手に作動を始めた。
ピロリロリーン♪
点滅したかと思うと、何かを読み取ったような音を立ててDフォンは真っ赤に発光する。
その時だった。
『お姉さん』
突然、女の子の声が聞こえた。
背後を振り返ると、敬一郎の姿はなく、代わりに全身白ずくめの女の子が立っていた。
もう、何がなんだかわからない。
敬一郎はどこに行ったのだろう?
『ふふ、また会えたね? お姉さん、おめでとう。今、お姉さんが読み込んだロアはお姉さんを助けてくれるロアだよ。もっとも……』
「もっとも?」
『殺されなければだけど』
少女の口から響いた言葉には真実味があった。
何故かはわからない。わからないが、嘘は付いていない。そう、さつきは感じた。
それも脅しや忠告でもなく、ただ純粋に、目の前の少女は『殺されなければ助けてくれるかもね』と言ってるのだと理解出来てしまう。
殺される……殺される?
「ど、どういう意味よ⁉︎」
『そのままの意味だよ。じゃあね?』
少女はさつきの疑問には答えずに、スーッとまるで周りの風景に溶け込むかのように一瞬で消えてしまった。
「……ちゃん……ーちゃ……お姉ちゃん!」
ハッと気づいた時には、さつきのスカートを引っ張る弟の姿が目に入った。
(夢……じゃないわよね?)
今のは夢だった……とはいかないようだ。何故ならさつきの手にはいつのまにかDフォンが握られていたからだ。それも真っ赤に発光したまま、点滅を繰り返している。
「……行くよ」
覚悟を決めて、さつきは一歩、一歩踏み出す。
校舎の出入り口に近づこうとしたその時。
それまでほとんど吹いていなかった風が突然激しくなる。
ザザザッと木々が揺れ、ゴゴゴ、とまるで空間が揺れるかのように強い風が吹き扉の取っ手ににかけられた『立ち入り禁止』と書かれた看板が風に煽られ、コンコンと打ちつけられる。
「うぅぅぅ……」
音に驚いた敬一郎が鳴き声をあげる。
「風のせいよ……」
まるで自分自身にもいい聞かせるように呟きながら、さつきは一歩、一歩扉に近こうと歩を進めていく。
まさにその時だった。
さつきの前を何かが横切ったのは……
「お姉ちゃん怖いよ……」
(! ……今の、何?)
さつきは内心動揺しつつ、怖がる弟の声でハッと正直に戻る。
(なんだろう、何か嫌な予感がする。ここから……離れなきゃ)
そう思いながらも、さつきは校舎の中に入ってしまう。それも駆け足で。
頭ではこの校舎の中に入るのは危険だ、とはわかっていても、さつきの足が勝手に、まるで何かに導かれるように自然と動いていたのだった。
「怖くない、怖くない、怖くない、怖くない、怖くない、怖くない……ひゃっ⁉︎」
さつきと敬一郎が扉の中に入ったその時。
触ってもいないのに、背後で扉が勝手に閉まる音が聞こえた。
恐る恐る、さつきと敬一郎は後ろを振り返る。
すると……
「「だ〜れ〜だ〜!!!」」
振り向いた先には変な顔をした不審者……二人の少年がいた。
「きゃ……きゃぁぁぁあああ!!!」
「ひぃぃぃ……」
怖がるさつきと敬一郎。
謎の不審者達はさつき達に襲いかかり……はしなかった。
ただ、笑うだけであった。
「驚いてやんの〜」
「あっ、昨日のお兄ちゃん……」
敬一郎がその正体に気づく。
よく見るとさつき達を驚かしたのは、昨日会ったパンツ覗き魔の少年、はじめと帽子をかぶりメガネをかけた少年の二人だった。
「よっ! 今日も白、か……」
「ふぇっ? ……隣のスケベ」
「お前が勝手に見せたんだろ!
あーあ、人がせっかく注意しに来てやってんのに……」
「な、何がよ……」
「旧校舎は立ち入り禁止だぞ! ……もう入っちまったけど」
「カーヤが入り込んじゃったんだ……」
「カーヤ?」
なんだそれ、という顔をしたはじめにさつきは服に付いた埃を手で払い落としながら答える。
「猫の名前……そうだ! 探すの手伝ってよー」
「ダメだ! ……入るなって言ってるだろう!」
「なんでよ! 猫を探すだけよ?」
さつきの疑問に、はじめは何故だか言いたくなさそうな顔をしながら答える。
「……出るんだよここは」
「「ええっ⁉︎」」
はじめの言葉に驚きの声を上げるさつき達。
すると、それまで沈黙していたメガネをかけた少年が口を開く。
「そのことについては校内一の心霊研究家であるこの柿木レオがお話しましょう」
「ば、馬鹿馬鹿しい……そうやって、私達を驚かそうとしたってダメよ〜」
「信じない奴ほど狙われるらしいぜ〜。
後ろからそいつを見つめているって……ん? な、なんだよ?」
話している途中でさつきと敬一郎の顔色が悪くなったことに気づいたはじめはゆっくりと後ろを振り返る。
そこには……
髪の長い二人の女の子が立っていた。
南條アカネ……一体何ものなんだ?
ヒント、声優さんから名前一部とってます。