スパロボ学院 ~ OGだよ、全員集合! ~   作:北洋

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<注・意・事・項>
絶賛、キャラ崩壊中です!
キャラ崩壊LV5(MAXLV5)
親分と愉快な仲間たちのイメージが崩れるのが嫌な方は、見ない方がいいかもしれません。
それでも構わないという方はどうぞ!


史上最強のフリーター ~ここは○○○、達人の集う場所~

── 好きな人が出来ました。

 

 俺の名前はトウマ・カノウ。

 俺の惚れた女性は、パン屋「ヒカワ屋」でバイトをしていたひと、ミナキ・トオミネ。

 俺は彼女を護ろうと誓った。

 しかし巨大な暴力の前に成すすべなく敗れ、結局は他人の力を借りてその局面を乗り切る事となってしまった。

 

 夏の巨人……いや、その超人の名はゼンガー・ゾンボルト。

 

 俺は彼のような力を欲した。

 そのとき、ミナキが言った言葉がこれだ。

 

「短期間で強くなる方法なら知っているわ」

 

 俺は強くなりたかった、ミナキを護るために。

 今は大丈夫でも、いつかまた奴らは「ヒカワ屋」にやって来るだろう。

 そのとき、ミナキを護るのは俺しかいない。

 俺は迷いなく答えたさ。

 

「俺行くよ、ミナキ」

「ふふ、それでこそ私の見込んだ男よ」

 

 ミナキは笑いながら答えてくれた。

 そして手を取り、俺を導いてくれた。

 俺は思った。

 ミナキ、君のために俺は強くなるよ、と。

 

 ……………………だがすぐに後悔することになる。

 ミナキが俺を案内した場所……それは地獄という名のミナキの実家だった ──

 

 

 

 スパロボ学院 ~OGだよ、全員集合!~

 史上最強のフリーター ~ここは○○○、達人の集う場所~

 

 

 

 ミナキに案内されて辿り着いた場所、そこは少し山に登った所にある神社のような所だった

 俺の目の前には、あまりにも巨大な木製の門が立ちふさがっている。

 見るからに分かる程分厚い木の壁、俺はそれを試しそれを押してみたがビクともしなかった。

 

「なあ、ミナキ」

 

 俺はミナキに質問した。

 

「ここが本当に、短期間で強くなれる所なのか?」

「そうよ。ただし生き延びられればの話だけどね」

 

 真顔でミナキは答えた。

 この神社のような所に来る前にミナキが言っていたことを、俺は思い出した。

 

── 生き残れれば、短期間で強くなることができる……!

 

 不穏な話だ。

 この平和な時代に生き残れれば、だって……?

 はっきり言おう、普通じゃない。

 しかし俺にはミナキを護るためには力が必要だった。

 俺がバイトする「ヒカワ屋」に目をつけている地上げ屋「ミザル組」、奴らを追い返すためには普通の力じゃ足りないんだ。

 俺とミナキの平穏な日常と、その延長線上にある幸せな恋人生活のためには奴らを追い払わなければならない。

 そのためには力が必要だ。

 

「隊……導……教……、これがこの道場の名前か?」

「さあ、入りましょうトウマ」

「え、しかし……」

 

 先ほど俺が押してビクともしなかった大扉に向かって、ミナキはごく普通にそう言った。

 いや、それは無理だろう。

 男の俺が開けられない重量なのに、華奢なミナキに開けられるはずがない。

 そんな俺の考えを無視し、ミナキは巨大な門に手を添えた。

 そして、コンコン、と叩く。

 

「お爺様、只今帰りました」

「え……お爺様?」

 

 ミナキは確かにそう言った。

 お爺様ということは、つまりここはミナキの祖父の家ということになるのだろうか……?

 そんな俺の思考を余所に、門の内側からは地響きが聞こえてきた。

 ズシンズシン、と大地を揺らせながらなにかが門に近づく。

 重い門の隙間から褐色の大きな指が見えた。

 その手が門を内側へと軽々と明けてしまった。

 すると、化け物のような巨体が俺の視界に入って来た。

 

「ひい!」

 

 もしやマグナス!?

 そんな印象を受ける程の巨体に腰が引け、俺は本能的にその場から逃げだそうと足を一歩下げた。

 しかし、その瞬間には俺は背後になかった巨大な壁にぶつかった。

 なにもなかった空間に壁となる者が立っていた。

 

「待たんか」

「は? あ、あれ……いつの間に!」

 

 先ほど門を空けたばかりの巨人が俺の背中を押さえていた。

 明けっぱなしの門は中への道を開けたまま、人影が無くなっている。

 見えなかった。それはまったく……と言っていいレベルで見えなかった。

 俺は思わず訪ねていた。

 

「もしや貴方は、なにかの武術の達人では!?」

 

 俺の言葉に巨人は口元に蓄えた髭を撫でながら答える。

 

「む、達人という程ではないが、この歳になるまで負けた事は一度もないぞ」

「お爺様!」

 

 ミナキがその髭の巨人 ── 良く見ると大柄な老人 ── に大きな声で言うと、老人は豪快な笑みを浮かべてミナキに応えた。

 

「おお、ミナキ。帰ったか!」

「まったく……人の客人を驚かすのは止めてください、バラン・ドバンお爺様」

「わっははは、すまんすまん」

 

 戦場で着込むような甲冑を身につけ、口周りに白い髭を蓄えた筋骨隆々の老人が、そこに立っていた。

 鋭い目つきで俺を見下ろしている。

 平和な現代社会に似合わない、異世界の住民みたいな老人だった。

 

「ミナキよ、この坊主はなんじゃの?」

「トウマさん、私のバイト先の同僚です」

 

 ミナキの答えにバラン・ドバンと呼ばれた老人は口髭をさすりながら言った。

 

「そうか、ミナキの友人か。

いやー、こんなヘンピな所までよくぞ参った。どうぞ遠慮なく、くつろいでいくがよい」

「はあ、ありがとうございます」

 

 ガッハッハ、と老人は笑う。

 あまりにもミナキに似ていないその老人に俺は礼をしながら、その神社内へと案内された。

 だから気づかなかった。

 その神社の玄関の看板にはこう、名前が書かれていた。

 神社……いや、あとになって気づくが、俺はこの道場の看板の名前を俺は読み違えていた。

 隊導教、いやそれは逆読みだった。

 「教導隊」 ── それが道場の名前だった。

 

 

 

      ●

 

 

 

 この道場はミナキの実家らしく、彼女は一度自分の部屋に戻ると言って一度別れることとなった。

 俺はこのバラン・ドバン老人に連れられて道場の中を案内されることになる。

 しかし広い。

 畳みが轢かれた鍛錬場らしき空間以外にも、広大な庭、そして裏山にそのまま庭が繋がっていた。

 ここは『エリア』、なぜか高校が密集する地域。

 そのため学校とそこに通う学生たちの住処が密集しているため、土地代は法外なほどに高かったりする。

 『エリア』の端とは言え、これだけの屋敷を持っているとはこのバラン・ドバン老人は只者ではないのかもしれない。

 

「時に、トウマ・カノウ君」

 

 バラン・ドバンが俺に尋ねてきた。

 

「あ、呼び捨てでトウマで結構です」

「うむ、ではトウマ。

お主はここに、なにを求めてやって来たのかね?」

 

 いきなり核心をつくバラン・ドバンの質問。

 俺がこの道場に来た理由はたった一つのシンプルな理由だ。

 力が欲しい。

 だがそれは暴力ではなく、理想を貫くための力。

 

── そう、世界は矛盾している……

 

 暴力を持って達成した理想など無意味だ……しかし、力なき者が掲げる理想などただの夢想である。

 理想を実現するには力がいるのだ。

 それは時として腕力であり、知力や権力であったりもする。

 

── ……自分が正しいと思ったことをしようと思ったら……力がいるんだ……

 

 今の俺に必要なのは、信じた正義を貫き徹すための力が必要なんだ。

 

「俺は ──」

 

 「ミザル組」のような、誰も見て見ぬふりをする悪。

 ミナキとリョウトの努力を踏みにじり、愚弄する「ミザル組」……奴らが、誰もが耐えて泣くしかないような悪だとしても、俺は……許せない。

 

「── 俺は、誰かが泣くのを見たくない。だから強くなろうと決めたんです」

「ふむ、良い目じゃ。若い頃を思い出すのう」

 

 口端を釣り上げて、バラン・ドバンはやはり豪快に声を上げて笑った。

 しかし不快感はない。

 この笑いはきっと自分を認めてくれた笑いなのだと、俺は思う。

 

「あの、この道場では空手は教えてますか?」

「うむ、空手も教えとるよ」

 

 良かった。もし空手が教えてなかったら、また新しく武術を一から学ばなければならない所だった。

 俺がバラン・ドバンの大きな背中に付いて歩いていると

 

── パシッパシッ

 

 と、可愛らしくサンドバックを叩く音が聞こえてきた。

 音のする方に俺が向くと、眼鏡をかけた紫色の髪をした美少女が道着を着て蹴りを繰り出していた。

 蹴りの当たるサンドバックには写真が貼られている。

 なんか桃色の髪の毛をした少女の写真がクシャクシャになっていた。

 

「な、なんすかあれー?」

「ん、ああ、彼女はラトゥーニ・スゥボータ、14歳」

 

 バラン・ドバンがラトゥーニと呼んだ少女は、俺と眼が合うとサンドバックの後ろに隠れてしまった。

 気配を消したのか、その場から消えたように感じてしまう。

 

「すまんの、恥ずかしがり屋でな。こらーラトゥーニ、挨拶せんか!」

 

 バラン・ドバンが手でメガホンを作って空に向かって叫んだ。

 しかし返事はない。

 1,2,3,4,5……10秒が経った時、俺は自分の背後に気配を感じて振り返った。

 

「…………よろし、く」

「きゃーー!」

 

 俺は思わず女の子みたいな悲鳴を上げてしまった。

 だって眼鏡をかけた美少女が、いつの間にか背後に立っているんだもの。

 え? 美少女なら別にいいじゃん、だって?

 失敬な、急に背後を取られるのは怖いんだぞ!

 そう俺が心の中で独白していると、ラトゥーニはスタスタとどこかに歩いて行ってしまった。

 バラン・ドバンがため息をつく。

 

「滅多に来ない客なんで、少々緊張しているようじゃ」

「はあはあ、ここの住民は客の背後を取るのが特技なんですか?」

「がっはっは、そんなことはないぞ」

 

 笑いながらバラン・ドバンは歩を進めた。

 しかし……あんな小さな女の子が通っているのか……ここの道場大丈夫か?

 ラトゥーニという子の蹴りも大したことなさそうだったし、本当にここで強くなれるんだろうか?

 そんなことを俺が考えていると、また庭に人影が見えた。

 見覚えのある銀髪……上半身の服をはだけて鋭角に盛り上がった筋肉が実に漢らしい。

 

「あれは……ゼンガーさん!?」

「おお、トウマはゼンガーを知っておるのかね?」

 

 バラン・ドバンが言った。

 忘れられるはずもない。

 「ヒカワ屋」でマグナスに叩きのめされた俺を救ってくれた人だ。

 ゼンガーは身の丈程ある大剣を肩に担いで、片手で支えている。

 目の前にあるのは3m程ある巨大な丸い岩石の塊だ。

 

「コハァァァ……」

 

 ゼンガーはゆっくり息を吐きだすと、その大剣を両手で持ち切っ先を天に向け、上段に構えた。

 ……ちょっと待て、なにをするつもりだ?

 ゼンガーは瞑想のように閉じていた目をカッと見開くと、大剣を振り上げながら飛翔した。

 そして気合い一閃、

 

「チェエエエエエエエストオオォォォッ ──!!!」

── ズバアアアッ!!

 

 縦一文字に大剣を振り下ろした。

 ズンとゼンガーが大剣を地面に突き刺すと同時に、轟音を響かせて岩石が真っ二つになった。

 

「嘘ぉん!?」

「彼は『剣と兵器の申し子』ゼンガー・ゾンボルト、うちで剣術を教えとる」

 

 別段、驚く様子もなくバラン・ドバンが言った。

 いやいや3mの岩石が真っ二つですよ?

 バランさん、なんで驚いてないの! 

 嫌な予感がしてきた……ここは普通じゃないぞ!

 眼前の光景に目を疑う俺を余所に、ゼンガーの腰のポケットから携帯の着信音が聞こえてきた。着信音は「乾・坤・一・擲」だ。

 ゼンガーが電話に出る。

 

「── おお、ソフィアか。どうした? …………なんだと!?」

 

 ゼンガーの表情が一変した。

 眉間を一筋の汗がタラリと流れるが、それを拭きとるどころではないようだ。

 

「今、赤ちゃんがお腹を蹴っただって!? 

なんと言う事だ! 俺にも触らせてくれソフィア! 

あと胎教セットを買って今すぐ帰るからな、待っていろソフィアアアッ!!」

 

 腹の底から捻りだしたような咆哮を響かせて、ゼンガーは疾風のように去って行った。

 残されたのは真っ二つの岩石と地面に刺さった大剣だけだった。

 バラン・ドランは「うんうん」と感心したように頷いている。

 

「夫婦、仲睦まじき事は素晴らしきかな」

「そ、そういうもんすか?」

 

 俺の呆れ声に誰かが応えた。しかしそれはバラン・ドバンではなく……

 

「そういうものだ」

「うわっ、また気配ねえよ!」

 

 また俺の背後で、壁に体を預けた紫色の髪の男だった。

 長い前髪で片目が完全に覆い隠されており、前見難くないですかと心配になる外見をしていた。

 しかしこの道場は心臓に悪い。だって皆気配ないんだもの。

 静かに暴れる俺の心臓、その鼓動の原因を作った男にバラン・ドバンが言った。

 

「彼は『あらゆる盗撮盗聴の達人』、ギリアム・イェーガー君じゃ」

「ふっ、ミナキの写真、買うかいトウマ君?」

 

 ギリアムが一枚の写真を俺に見せてくれた。

 それはなんと、ミナキの生着替え写真……!

 買う買う、絶対に買います! 俺は全身全霊を懸けて首を縦に振った。

 

「1枚1万円ね」

「うわ、超ボッタ!」

 

 でも買ってしまう俺。

 悲しいね、男の性は、悲しいね……5・7・5、字余りなし。

 心は温かくなったけど、懐は寒くなりました。

 

「それよりもギリアムよ、『喧嘩100段の異名を持つ空手家』はどこにおる?」

 

 孫娘の生写真の受け渡しにも動じないバラン・ドバンが訊いた。

 

「ああ、彼ですか。先ほど変身して、特訓をしていましたよ」

「へ、変身?」

 

 聞きなれない単語が俺の耳に飛び込んできた。

 変身……確かにそうギリアムは言ったよな?

 それに喧嘩に段数なんてないだろうに。

 それなら俺だってバイト100段だ。

 

「なら道場の方かね」

「でしょうね。あ、長老、これから買い物行きますが、なにか要りますか?」

「要らん。だがついでに競馬場に行って、レーツェルに勝ち金を早く入れろ、と伝えてくれ」

「分かりました。私はついでにフィルムを買いに行きます」

 

 ギリアムはバラン・ドバンとの短い会話を終えると、一瞬で消えてしまった。

 

「実は所用での、道場を一人留守にしておってな」

「け、競馬場ですか……一体なにをしてらっしゃるんですか?」

「ジョッキーじゃ」

「ジョッ……!」

 

 バラン・ドバンは自分の言葉に一部の疑いも持っていないようだった。

 ここは確か強くなるための道場で……なのに、何故「変身」やら「ジョッキー」という単語が出てくるのだろうか?

 なんだか頭痛がしてきたな。

 ミナキには悪いが、この道場は駄目かもしれない。

 俺はバラン・ドバンに付いて、ある部屋の前に辿り着いた。

 障子をあけて、バラン・ドバンが中の人物に声をかけた。

 

「おーい、入るぞー」

「てやんでーべらぼうめ!」

 

 江戸っ子のような口調で、

 

「え、なんぞ!?」

 

 中から聞こえてきた気合いなのだろうか、力を込めた怒声に俺は驚いてしまった。

 バラン・ドバンの巨体の影から、俺は部屋の中を覗き込んだ。

 するとそこには、

 

── 全身を真っ赤な鎧のようなもので固めた漢が燃えていた。

 

 比喩や、文法表現ではない。

 赤い鎧の周りに炎が上がっており、その炎が龍を形作っているではないか。

 およそ皮膚と思われるものが一切露出していない、赤い漢にバラン・ドバンが声をかけた。

 

「のう、コウタ君、ものは相談なんじゃが……」

 

 バラン・ドバンはコウタと呼ばれた赤い鎧の漢に事情を説明していた。

 よかった、名前は普通だ。

 これで名前がシュレンとかだったらどうしようかと ──

 

「バーロー(馬鹿野郎の意)!」

 

 俺の思考はコウタの大声で中断された。

 

「てやんでー、俺は弟子は取らねえ主義なんでい!!」

「のう?」

 

 バラン・ドバンが少々困惑したような表情を浮かべていた。

 

── じゃあ、先生じゃないじゃん……!

 

 俺が心の中でつっ込みを入れていると、コウタは俺の方を品定めするように見てきた。

 俺と対して背丈が変わらないのに、眼光が鋭くて、俺は思わず顔を背けてしまった。

 

「だいたいよー、じじい」

 

 コウタが呟くと、全身に滾っていた炎が消え失せ、彼の右拳に集まって行く。

 彼の目の前には新品のサンドバック。

 

「俺なんかに弟子入りしたら、3日で死んじまうぜ」

 

 コウタはサンドバックに向けて拳を、

 

「真っ赤砂塵爆(まっかさじんばく)ッ!!」

 

 勢い良く叩き付けた。

 拳が触れた刹那、右手の炎は消滅する。

 しかしサンドバッグはぴくりとも動かなかった。

 大方、サンドバッグを吊ってある天井まで跳ね上がるのかと思っていた。

 ゼンガーみたいに鬼神のように強いのかと思っていたので拍子抜けだった。

 

「なーんだ、見かけ倒しじゃないすか ──」

── ズバゴオオオンッ!!

 

 俺がバラン・ドバンに言おうとした瞬間、サンドバックが爆音と共に爆ぜた。

 しかも爆炎を巻き上げて、内側から破裂したのだ。

 熱くなった砂が部屋に撒き散らされた。

 俺の口から驚愕の声が上がる。

 

「な、なんじゃ、こりゃあ!!?」

「ふ、必殺技の完成だぜ」

 

 必殺技……必ず殺す技、と書いて必殺技。

 こんな技を叩きこんだら、体の中から焼き肉になって木端微塵の肉片になってしまう!

 「喧嘩100段の異名を持つ空手家」……いや、違う!

 こんなの俺が知っている空手じゃない、断じて違う!

 こいつは普通じゃない!

 コウタは、くっくっく、と笑い声を殺して、握り拳を作っていた。

 

「この技でフォルカの野郎をぶっ殺す!! 

待っていろショウコ、お兄ちゃんが、今、お前の目を覚まさせてやるぜ!!」

「お前が目を覚まさんか」

 

 また気配も感じていないのに、聞き覚えのない声が聞こえてきた。

 俺の前を一条の影が奔る。その直後だった。

 道場の外に駆け出そうとしていたコウタの体が、急に浮き上がり道場の畳みに叩きつけられていたのだ。

 コウタを投げた髭の漢は、コウタの手を握ったままさらに数回投げ飛ばした。 

 俺なら受け身も取れそうにない程の速さだった。

 

「なにすんでえ!」

 

 目が回りそうな速度で投げられたコウタは、下手人の名前を叫んでいた。

 

「カイさん、痛えじゃねえか!?」

「そこに正座ァ!!」

「ひっ!!」

 

 カイと呼ばれた髭の漢は、コウタの異論に耳を貸す事なく怒鳴った。

 まるで教師に叱られた子どもみたいに、コウタはしぶしぶその場に正座していた。

 

「まったくお前と言う奴は何歳になったと思っているんだ! 

いい歳して、ショウコショウショウコショウコと、恥ずかしくないのか!? しかも妹の彼氏に逆恨みして、夜襲して、その度に黒星を増やしおってからに、情けないと思わないのかコウタ!! 少しは妹の幸せを考えてやれないのかお前は!! それに武術を人殺しのために使おうとするとは言語道断!! 必殺技などに憧れずに、不殺の技を考えろ!! 見てみろ、必殺技など考えるから今日もこの有様だ!! 部屋中砂だらけにしおってからに、お前は砂遊びが好きな幼稚園児か!! 聞いとるのか、コウタ ──」

「許してくれー、カイさん!!」

 

 カイという柔道着を着た中年男性は、現れて早々コウタに説教を始めてしまった。

 しかも終わりそうな気配はまるでない。コウタは逃げ出せばいいのに、律義に頭を押さえながら怒られていた。

 バラン・ドバンがカイの紹介をしてくれた。

 

「紹介しておこう。彼は『説教する柔術家』、カイ・キタムラ君だ」

「い、イヤ過ぎる……おっと」

 

 俺は慌てて口を塞いだ。

 カイの目がまるで獲物でもみるような目で俺を見ていた気がしたからだ。

 しかし心配は杞憂だったようで、カイはコウタに説教を続けている。これはしばらく終わりそうにないな、コウタ可哀想に。

 しかし問題は、俺が師事する空手家の先生がいないことだった。

 

「困ったのう。コウタ君が駄目となると……どうしようかのう?」

「いや、俺に聞かないで下さいよ」

 

 自分の道場の事なのに、俺に聞いてくるバラン・ドバンに俺はため息をついた。

 やっぱりこの道場……駄目だ。

 ミナキには悪いけど他を当たろうか……と思っていた時だった。

 気配もないのに、俺の袖を引くものがいた。

 

「わっ、ラ、ラトゥーニさん!」

「…………」

 

 ハッキリ言おう。無言で背後に立たれても困る。それが美少女でもだ。

 ラトゥーニは上目使いで俺を見上げていた。

 

「うぐ……!」

 

 可愛い!

 いかんいかん、いかんぞトウマ・カノウ!

 俺にはミナキという護るべき女性がいるんだから。

 頭をブンブン横に振る俺にラトゥーニが言った。

 

「私……教えようか?」

「え……?」

 

 意外過ぎるラトゥーニの言葉に俺は耳を疑った。

 なるほどその手があったか、とバラン・ドバンは手太鼓を打つ。

 

「ラトゥーニに教えてもらえれば万事解決じゃ。な、トウマ君!」

「ええー……」

 

 俺は目を泳がせながら、バラン・ドバンの言葉に異を唱えた。

 だってそうだろう?

 俺が教わりたいのは空手、彼女は一体なんの武術をやっているのだろうか?

 それに、ラトゥーニの外見をもう一度説明しておこうと思う。

 年齢は14らしいが、それ相応に幼く胸も身長も控えめで、隠れ筋肉なんてないだろうと思える程の撫で肩、さらに近眼らしく眼鏡を着用している。

 …………ふ、俺だって、指先一つでダウンをとれらあ。

 俺の相手はマグナスという巨漢だ、こんな小姓に教わる事など ── そこで、バラン・ドバンの一言が入る。

 

「彼女は蹴りの達人じゃよ」

「蹴り、だって?」

 

 そういえば、俺がこの道場に来た時もサンドバックに蹴りの練習をしていたな。

 蹴りか……俺もジェネ高時代の空手では、蹴り技の方が得意だったんだ。

 せっかくミナキに誘われて来たんだし、一手ぐらい教わっておかないと、それはそれで失礼にあたるだろう。

 俺はラトゥーニに教えを請う事にした。

 

「ご指導お願いします、先生!」

「…………」

 

 ラトゥーニは無言だったが、頬を染めて頭をポリポリ掻いていた。

 可愛い、先生と呼ばれて照れているようだ。

 まあ、5歳も下の女の子に教えを乞う大人の図は、こちらとしてもかなり恥ずかしいモノがある。

 はやく済ませて帰ろう。

 

「まず……模範、演技」

 

 ラトゥーニがボソリと呟いた。

 俺たちは道場の中央に移動し、ラトゥーニと対面する形に対峙する。

 実際に蹴りを見せてくれるだけでなく、体験させてくれるつもりらしい。

 中々に優しく気のきいた女の子のようだ。

 

「まずは……気を、ためる」

 

 しかしそこは異常人ばかり集まっている道場。

 ラトゥーニも例に漏れず、「気」という意味不明な単語を口走っていた。

 彼女が、はぁぁぁ、と静かに息を吐くのに比例して空気がピリ付いてきた。

 そして紫色のモヤが彼女の周りに現れる。

 

「これが、気」

 

 ラトゥーニが丁寧に説明してくれた。

 気か……これが気なら、俺も以前に見た事があった。

 マグナスだ。奴もゼンガーに相対している時に、桃色の気を体に纏っていた。

 ということは、俺もこの気の使い方を覚えておいた方がいいってことだな。

 

「そして気合いと共に叫んで……技を、発動させる……」

 

 技が来るか。

 しかしラトゥーニのような女の子の攻撃一発ぐらいなら、俺のような空手経験者なら耐えられるはずだ。

 が、そこで俺はあることを思い出した。

 そのことを道場の隅で俺たちを見守っていたバラン・ドバンに問うてみた。

 

「ラトゥーニの異名ってなんすか?」

「知りたい?」

 

 俺がこくりと首を振ると、バラン・ドバンは笑顔で応えてくれた。

 

「『裏キック界の死神』じゃよ」

「はっ? 死……!」

「はあああぁぁっ!!」

 

 猛烈に嫌な予感が俺の中を駆け抜ける。

 それとほぼ同時に、寡黙だったラトゥーニから咆哮が上がり、紫の気が一気に膨れ上がった。

 彼女は叫ぶ。

 

「リュウセイみたいにやってみる!!!」

 

 なにそれ、気合いのつもり?

 俺の感想を余所に、彼女は空中高く跳び上がった。

 その高さ約5m、うそーん……俺はその時、これまで生きてきた19年の思い出が脳裏にフラッシュバックしていた。

 運送屋もやったし出前もやった……あれ、バイトの思い出ばっかりだ?

 もしかしてこれ ── 走馬燈ってやつ?

 

「スゥゥゥゥパァァァァッ、ウルトラアアアアアアァッ ──」

「ちょ、待っ ──」

 

 俺の声はラトゥーニの熱い叫びにかき消された。

 

「── 流星、キイイイイイイイイィィィクッ!!!!」

「ぎゃーーーーーーー!!」

 

 それは見事に、俺の意識は刈り取られました ──

 

 

 

      ●

 

 

 

「お、目を覚ましたぞ!」

 

 目を覚ますと、青い髪をして学ランをきた少年が俺の視界に入って来た。

 道場の外を見てみると、すでに夕焼けに美しく染まっていた。

 相当長い時間気を失っていたようだ。

 

「よかったトウマ……ごめんね、家の人たちがやりすぎちゃって……」

 

 エプロンをつけたミナキが謝って来た。

 彼女の後ろにはバラン・ドバン、ゼンガー・ゾンボルト、ギリアム・イェーガー、カイ・キタムラ、ラトゥーニ・スゥーボータが立っていた。

 

「いやあ、やはりレーツェルの作ったクスハ汁はよく効くな」

「なんでも、実際に飲んでレシピを盗んだらしいからな」

 

 あっはっは、とカイとギリアムが談笑していた。

 クスハ汁? なんだそりゃ? そういえば、口の中がなんだか苦いんだけど……。

 

「この人たち、加減を知らないけど基本的にはいい人なのよ」

「そ、そうなんだ」

 

 ミナキの言葉に俺は、苦笑いしか浮かべる事しかできなかった。

 臨死体験、一回。

 ここの人たちの普通じゃない加減は、身を持って体験したばかりだからだ。

 この道場の異常者たちのリーダー格らしきバラン・ドバンが、俺の前に出てきた。

 

「改めて、自己紹介しておこうかの」

 

 バラン・ドバンの言葉に従い、後ろに待機していた面々が口々に声を上げる。

 口火を切ったのは青髪の少年だった。

 

「『喧嘩100段の異名を持つ空手家』、コウタ アズマ!!」

 

 あの赤い鎧の漢がこの少年? と驚く俺を尻目に、他の者たちも続く。

 

「『裏キック界の死神』……ラトゥーニ・スゥボータ」

「『あらゆる盗撮盗聴の達人』、ギリアム・イェーガー!!」

「『説教する柔術家』、カイ・キタムラ!!」

「『剣と兵器の申し子』、ゼンガー・ゾンボルト!!」

「そして長老のわし、『鉄球超人』、バラン・ドバン!!」

 

 勢ぞろいする6人の異常者たち。

 バラン・ドバンが説明を続けた。

 

「ここはスポーツ化した武術に馴染めない達人や、あまり凄さにその世界から遠ざけられてしまった達人が集う場所!! 所用で1名出ておるが、集まるモノの意思は皆同じ!!

ここは君のような、迷える子羊を真っ当に育て上げるための場所である!!

わしらは自分たちのことをこう呼んでおる!!」

 

 バラン・ドバンの目がライトの様に光る。

 

「わし等は教導隊(+α)!! 

ようこそ、トウマ・カノウ君!! わし等は君を歓迎するよ!!」

「いやー! 俺、帰る!!」

 

 冗談じゃない!

 こんな所で修業するなんて普通じゃない。

 ミナキは生き残れば強くなれると言っていたが、ここは普通の俺が生き残れるような場所じゃない。

 普通に、他の道場で強くなろうと、俺はその場を逃げ出した。

 

「逃がすかぁ!!」

 

 しかしゼンガーの放った鎖鎌に俺は足を取られてしまった。

 そしてそのまま道場内に引き戻され、入り口の障子はピシャリと閉められてしまった。

 達人6人に俺は取り込まれて、

 

「さ、修業しようか♡」

「いやああああっ!!」

 

 俺の断末魔は、きっと道場によく木霊していたと思う。

 ミナキはそそくさと去って行ってしまった。

 まるでクモの巣にかかった蝶を助けようとしたら、余計大変なことになってしまったときの子どものような、そんな反応だった。

 

 

── 好きな人ができました。

 

 

 俺はその人を護って生きていこうと思う。

 そのために、もっともっと強くなりたいと思う。

 でも、その前に死んじゃうかも。

 脳裏にそんな考えが過ったのは錯覚ではなかっただろう……助けて、ミナキ!!

 俺の修業の日々が始まったのだった ──

 

 

 

 

ここは高校がなぜか密集する土地『エリア』。

『エリア』には個性豊かな人間が沢山いる。

今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。

次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




<キャラ紹介>
トウマ・カノウ:ミナキ大好き19歳。先日、マグナスにボコられて、強くなるためミナキの実家へ。頑張れ、負けるなトウマ君。

ミナキ・トオミネ:「ヒカワ屋」の看板娘で、トウマの思い人。実家の家事を全てやっている。強い訳ではない。

バラン・ドバン:褐色の巨漢老人でミナキの祖父。まったく似ていないので、ミナキは養子だろう。「鉄球超人」の異名を持つ。

ラトゥーニ・スゥボータ:ジェネ高1年生で「裏キック界の死神」の異名を持つ。リュウセイ大好き、マイ死ねと思っている。

ゼンガー・ゾンボルト:「剣と兵器の申し子」の異名を持つ銀髪いぶし銀。教導隊で剣を教えているが収入低く、ほぼソフィアのヒモ状態。

ギリアム・イェーガー:「あらゆる盗撮盗聴の達人」の異名を持つ壁際のいぶし銀。探偵のバイトをしており、盗撮写真を売る・脅すを繰り返すため教導隊一番の収入源。

コウタ・アズマ:「喧嘩100段の異名を持つ空手家」の異名を持つ男。今日もフォルカをぶっ殺すための必殺技を開発中。

カイ・キタムラ:「説教する柔術家」の異名を持つ柔術家。どこかで私塾を開いているらしい。悩みは娘が反抗期なこと。




<次・回・予・告>

エクセレン「今回は次回予告はナッシング!!」

キョウスケ「なんだ、珍しいな? 一体、どうしたんだ?」

エクセレン「作者が今日で連休最後で次はいつ更新できるか分かんないし、次に書くネタをまだ決めてないからだって」

キョウスケ「そうか。ネタがない訳ではないのだな。しかしこの小説を読んでくれているそこの君、もしこんな話が読みたいと要望があったらぜひ投稿してくれ」

エクセレン「全部採用! という訳にはいかないのよねん?」

キョウスケ「こんな小説だから、どうとでもなるだろう。では待っているぞ?」

エクセレン「史上最強の弟子 ○ンイチもよろしく!」




コウタが打つ真っ赤砂塵爆の元ネタはキズポンの必殺技です。
暗黒ミカン様、sibugaki様感想ありがとうございます!
次回のネタは未定で更新期間が空くと思いますが、どうかこれからもよろしくお願いします!
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