スパロボ学院 ~ OGだよ、全員集合! ~   作:北洋

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<注・意・事・項>
絶賛、キャラ崩壊中!
プロジェクトTDのメンバーのイメージが崩れるのが嫌な方は見ない方がいいかもしれません。
特にフィリオは超元気です。
それでも良いという方はどうぞ。


今日のワン子 ~アイビス・ダグラスの憂鬱~

 

 私と彼との出会いは、まだ肌寒い初春の麗らかな日だった。

 

「ただの人間には興味ありません」

 

 それが彼の初めての台詞。

 なぜか高校が密集する地域『エリア』。そこで一番の生徒数を誇るマンモス高校OG高等学院、通常ジェネ高に私は通っている。

 

 それは私がジェネ高に入学して2年目の春頃だった。

 部員の引き抜き合戦を兼ねた部活動の紹介が、ジェネ高の体育館で開かれていた。ジェネ高程の巨大な学校になると同じ名目の部活が多く存在する。それこそ、第1○○部、といった具合だ。

 入学したての新入生ではそれを把握しきれないという配慮(という建前)から、毎年この時期には体育館では全校の部活の紹介が行われている。

 ……らしい。

 らしい、というのも実はこの取り組み強制参加ではないので、私は去年参加をしていなかった。

 ……見たかったんだけど、風邪を引いてしまって自宅休養してたんだ。まったく、情けない話だね。

 

 あ、ごめんごめん、話が長くなっちゃったね。

 とにかく、私にはその時の彼の台詞がとても印象に残っているんだ。

 体育館の壇上で3年の先輩 ── フィリオ・プレスティは眼鏡を整えながら言い放った。

 

「この中に未来人、超能力者、改造人間がいたら私の元に来なさい!

 私の部活、プロジェクトTDの末席に加えてあげましょう!!」

 

 キチガイだ。

 それもマジキチ、それが私の先輩への第一印象だった。

 周囲も同じだったらしく、一様に失笑が漏れていた。

 でもそんな冷遇は物ともせず、フィリオ先輩はこう宣言した。

 

「今なら、特製チーズケーキ食べ放題!」

「私、入る!!」

 

 諸手を上げてプロジェクトTDの一員となった私でした。

 あ、自己紹介が遅れたね。

 私の名前はアイビス・ダグラス。ジェネ高2年、華の女子高生さ。

 

 

 

 スパロボ学院 ~OGだよ、全員集合!~

 今日のワン子 ~アイビス・ダグラスの憂鬱~

 

 

 

 私の名前はアイビス・ダグラス。大事な事なので2回言いました。

 私の容姿を一言で説明するならスレンダー、決してペチャパイなんかじゃないよ。毎日牛乳2L飲んでるんだけど全然膨らまない……もしかして一生このまま成長しないのでは、と不安に駆られる今日頃ごろです。

 

── そんな私にも憂鬱の種が一つある。

 

 もちろん胸のことじゃない。

 私が入部した部活「プロジェクトTD」のことだ。

 

「さぁー諸君、今日も張り切って行ってみようか!」

「「おー」」

 

 部長のフィリオ・プレスティの声に2人の女性部員が賛同した。

 ちなみに今日は土曜日で学校は休みなので彼女たちは私服だった。

 フリフリした可愛らしい服を着ている女性はツグミ・タカクラ、この部活の副部長で。

 青いロングヘアーをしたスタイルの良い女性はスレイ・プレスティ、部長の妹さんで部員の一人だった。

 一見すると美女、と言ってもいい。

 しかしこの部活。フィリオを見てもらえば分かると思うんだけど……常識人なんか存在しないだよね。

 さらに補足するとプロジェクトTDの活動の多くは野外活動……その理由は。

 

「諸君、最近この界隈には改造人間が出没するという噂が立っている!」

 

 改造人間の捜索。

 それだけではなく、珍しいモノを探索し捕獲することだった。

 その対象にはUMAやUFOも当然含まれていて、その捜索に駆りだされることもしばしば。

 部長のフィリオ・プレスティは黙っていれば超絶美形なのだが、一度口を開けばマジでキチガイだった。

 なにせ自称神様で、興味の対象はUFOなどの未確認飛行物体に始まり、宇宙人・未来人・超能力者・異世界人・改造人間などの異能力者たちのみ。

 これで成績が悪ければただの変態なのだが、学業・武道ともにトップクラスであり体も超健康体で、無遅刻無欠席で皆勤賞を受ける程の優等生なのだ。

 アンタは完璧超人か!

 そんな突っ込みを私でも入れたくなる程の天才なんだ。

 プロジェクトTDの最終目的を私は彼に聞いた事がある。そのとき返って来た答えがこれだ。

 

「なにを言ってるんだアイビス、そんなの宇宙人と交信して友達になることに決まってるじゃないか!」

 

 ……うーん、実にキチガイだよね。なんて言うか、発想がぶっ飛んでいる。

 補足するとプロジェクトTDと言うのは、宇宙人と交信するための超能力者を探す計画なんだって。要するにTD(テレキネシス ドリーム)ってことだそうだ。

 

「さあ、二手に分かれて改造人間を探そうじゃないか!」

 

 フィリオがメンバーの指揮を取ると、

 

「じゃあ私はフィリオと探すわね♡」

 

 ツグミがフィリオの腕に抱きつきながら宣言した。豊満な胸が腕に当たって……ああ、なんて破廉恥な! 恥ずかしいから、イチャつくのは余所でやってよツグミー。

 折角なので紹介しておこうかと思う。

 彼女の名前はツグミ・タカクラ、自称未来人の女の子である。

 どの辺りが未来人っぽいのかと質問したことがあるんだけど。

 

「禁則事項です♪」

 

 と返されてしまったことがある。

 おそらくフィリオの気を引く嘘なのだろう。でも私には関係ないや。

 私はツグミの作るチーズケーキさえ食べられれば満足なんだ。ぶっちゃっけこの部活に居続ける目的の半分近くはこれのためだし。

 

「ツグミ、貴様、兄さまから離れろ!」

 

 ツグミの破廉恥に激昂しているのはフィリオの妹、スレイ・プレスティだ。

 もはや説明するのも面倒なので察してもらいたい。

 スレイは極度のブラコンなんだ。

 それも超能力者。残念な事にこれは自称ではないんだよね……。

 彼女の能力は、なんと兄に近づく女性に片頭痛を起こさせること!

 非常に地味な能力なのだがこれが非常に厄介で、掛け値なしで私の頭痛の種なんだ……別に色目使ってる訳じゃないのに……。

 ちなみに巨乳の女性には効果がないらしくツグミには無害。意味ないよね、ホント。

 

「兄さまも私よりそんな女が良いのですか!?」

「なにを言っているんだいスレイ? そんなことより早く改造人間を探しに行こう。

なんでも巨大な剣を担いでいるらしいから気をつけるんだよ」

「じゃあねスレイ。アイビスをよろしくー」

「ああ、兄さま! 置いて行かないで、兄さま!!」

 

 泣き崩れるスレイを放置してフィリオたちは立ち去ってしまった。

 プロジェクトTDのメンバーは4人……必然的に私はスレイとコンビを組むことになる。

 でも正直な話をするとスレイのこと苦手なんだよね。

 いつも私の事見下してるし、ついこの間なんて「やい屑星。お前はなんの役にも立たないからここから飛び降りて流星になり、皆の願いを叶えてきな」と私を川に掛かった橋から突き落としたし……ぶるる、思い出しただけで寒気がする。

 いじめっ子気質なのだ、スレイは。

 そして私はどちらかと言うといじめられっ子タイプ……うん、相性は最悪だよね。

 

「ス、スレイ、行こうか」

 

 でもコンビなので渋々スレイに手を差し伸べる。

 

「触るな、流星」

 

 これだもの。私の手はあっさり払われてしまった。

 チッ、と舌打ちをしながら立ち上がる。なによ、舌打ちしたいのはこっちだよ。

 

「ああ、兄さま。兄さま兄さま兄さま ──」

 

 スレイはうわ言のように呟きふら付きながら去って行った。

 あのブラコン大丈夫かなぁ、転んで怪我しないといいけど。

 結局、私は一人残されてしまった。

 改造人間捜索を一人でしなければいけないことになる。

 ああ……憂鬱だ。

 

「はぁーあ」

 

 盛大に特大のため息が私の口から洩れた。

 プロジェクトTD……それが私の憂鬱の種だ。

 ……え? ならさっさと辞めてしまえばいいって?

 そうだね。それが賢いやり方なのかもしれない。でもね、私はみんなのことを別に嫌ってる訳じゃないんだ。

 フィリオを筆頭にみんなキチガイで、何処かにネジを一本置き忘れて来ているような人たちだけど。

 みんなは輝いている。

 好きな事があり、好きな事をして生きているからだと思う。

 

「羨ましいなぁ」

 

 本音が漏れた。あの人たちのようになりたいと思っている自分がそこにいた。キチガイにではなく、輝けるぐらい好きな事を見つけたかった。

 今の私にはそれがない。

 胸にポッカリ穴が開いたような感覚が私を侵食して行く。

 

 ああ……憂鬱だ。

 

 

 

      ●

 

 

 

 改造人間、そんな人物に当然出会える訳もなく、私はただ無為に「エリア」内を徘徊していた。

 やっぱり訂正。徘徊老人みたいで嫌なので、私は「エリア」内を探索し、とある公園の前に差し掛かっていた。

 なんの特徴もない公園だ。

 歩き疲れてもいたので丁度いいと、私は公園内のブランコに腰かけて休憩を取ることにした。

 コンビニで買ったプリンを取り出して食べる。やっぱり疲れてる時には甘いモノだよね。この浸み渡るような甘さ、あぁ、堪んない。顔がにやけてしまう。

 

「じぃぃぃぃ」

 

 もの凄く見られている擬音が聞こえて来た。

 表現などではなく耳に聞こえた方向に目をやると、そこには青い髪をした謎の生物がいた。

 全長約20cm、明らかに構図のオカシイ2頭身の生物がつぶらな瞳で私を見つめていた。

 

「そこはゆーさんのせきだにょ」

 

 謎生物が喋った。

 

「すわりたければたべものよこすにょ」

「な、なにこれ……? か、可愛い」

 

 

 黒豆みたいにクリクリした目で私を見つめる謎生物は、口元をω(こんなの)にしてのたまった。

 

「わたちのなまえはおーちゃむふぉー、このせかいのかみにょ」

「え……か、神様? 貴方が?」

「そうだにょ。たてまつって、うやまうがいいにょ」

 

 なにこれ?

 神様を自称するには神々しさが圧倒的に足りない。構成成分は神々しさ5%、愛らしさ95%と言ったところじゃないだろうか?

 でも眺めていると、意味不明な脱力感と愛くるしさに包まれて、思わず頭を撫でてしまいたくなってきた。でもどうしよう? この謎生物、変な病気とか持ってそうだしなぁ……

 そのとき、気の抜ける擬音が私の耳に響いてくる。 

 ぐうううううぅっ……同時に謎生物の眉が八の字のように下がり、小さな手でお腹を押さえていた。そうだなあ、分かりやすく伝えるなら(´・ω・`)(こんな)顔してショゲてたんだ。

 

「もしかして……お腹空いてるの?」

「にょー……きょうまだゆーさんこない……チーカマたべたいにょ」

「チ、チーカマ?」

 

 チーズ入りカマボコの略称だね。

 チーカマかぁ……さっきコンビニでおやつを一杯買い込んだけど、だいたい甘いモノばっかりなんだよね……そもそも、そんなおっさんの酒の摘みみたいな食べ物を女子高生が買うかっての……って、あれ? 1本だけチーカマ入ってるや?

 なんでだっけ? 意味分からないんだけど、なんだか無性に1本食べたくなって買ったんだったっけ。なんでだろう? まあ、いいか。

 

「ちっちっち、おいでー、オータムちゃーん」

「にょー?」

 

 私は猫を呼ぶように舌を鳴らしてみた。注意は引けたが、それだけだ。またしょぼーんと地面に視線を落としてしまった。

 ふふふ、しかし我に秘策あり。伝家の宝刀、チーカマさ。

 私は包装を剥いでチーカマを取り出し、オータムの目の前に差し出した。一瞬で(`・ω・´)v(ムムッ)と言った顔つきに豹変する。

 

「く、くれるのかにょ?」

「だーめ、あげなーい」

「にょ、にょー」

 

 表情のコロコロ変わる謎生物だ。いと、可愛ゆし。

 今度は再びショゲ顔で今にも涙が流れそうな程落ち込んでいる。うーん、少し虐めすぎたかな? 私、別にいじめっ子体質じゃないけど、この子見てるとつい弄りたくなるんだよねぇ。

 可哀想なので虐めるのは止めて、私は自分の足の上をポンポンと叩いて見せた。ここに登っておいで、と言う意味だ。

 するとすぐに察したのかオータムちゃんは私の膝の上に上がって来る。

 そして期待に満ちた眼差しで私を見て来た。あぁ、可愛いわぁ。はいはい、今チ-カマ上げましゅからねー。

 

「はい」

「わーい」

 

 オータムちゃんは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべて、ω(こんな)な口を一生懸命動かして一心不乱にチーカマを食べだした。

 あぁ、いいなあこの子。お持ち帰りしたいよぉ。でも私のアパートってペット禁止なんだよね。まぁ、大概の貸し住宅がそうなんだろうけど、それぐらい許可してくれもいいと思うけどなぁ。

 まぁ、愚痴ってもしょうがないよね。

 

「じいぃぃぃぃ」

 

 また擬音で視線を感じたので視線を下げると、オータムちゃんが私をじっと見上げていた。既にチーカマはない。喰うの早ッ!

 

「おまえ、いいやつだにょ」

「えー、そうかなー?」

「そうだにょ。おれいにひとつだけ、すきなねがいごとをかねてやるにょ」

 

 ん、この謎生物は一体なにを言っているんだろう?

 どこかで聞いたようなフレーズだ。球を7つ集めると出て来て、願い事の押し売りをする某爬虫類みたいな感じ。

 遊んでるのかなぁ? うふふ、可愛いなぁ。しょうがないから付き合ってやろうかな。

 

「じゃあ、胸を大きくしてよ」

 

 困った顔がみたいので無理難題を申しつけてみた。うふふ、またきっとφ(・ω・` )(しょぼーんな)顔になるぞ。楽しみだ。

 

「どのぐらいがいいにょ?」

「え、ええと……100cmくらいかな?」

「わかったにょ」

 

 あれ? なんだかあっさり受け入れられちゃったな。

 可愛らしい困った顔が見れると思ったのに、ちょっぴり残念……もしかしてこれっていじめっ子の感性なのかな? 私って実はちょっぴりS入っているのかも。

 そんな考えを余所にオータムちゃんは私の膝から、ぴょいと跳び下りる。

 そしてくるくる回りながら、変な呪文を唱え始めた。

 

「すぷりんぐーさまーおーたむーうぃんたー」

 

 なんだろうこれ? 子ども特有のごっこ遊びかな? いやあ、いと可愛ゆし。

 しかし、私の微笑は。

 

「シーズンフォーー!」

「う、うわ!?」

 

 オータムちゃんの詠唱の終了と同時に、小さな体から発せられた光によって遮られた。

 うわ、眩し!

 目が眩み、思わず手で顔を覆う。

 手を退けた時には、特に何事もなくオータムちゃんが私の眼前に佇んでいるだけだった。

 ただ一つ、私の体の変化を除いては。

 

「な、なにこれえええぇっ!?」

 

 お、重い。

 体が、とうよりも胸が。視線を下げると、足元を遮る程に巨大化した胸が飛び込んできた。私の胸のサイズって確か○○cmだったよね? 履いている靴の先なんて余裕で見る事ができたはずだ。

 でも、今は見えない。

 肥大化した胸に合わせて着てた服まで大きくなっているし……な、なななななにこれ! 魔法! もしくは超能力! これがフィリオの探し求めているTDなの!?

 私は自分の胸に触ってみる。

 軟らかい、本物だ。

 

「やったああああああっ!!」

 

 ついに念願の「悩殺バディ」を手に入れたよ! 毎日牛乳2L飲み続けて苦節数年、お父さんお母さん、アイビスはやりました! もう誰にもペタンコなんて言わせないもんね!

 

「ありがとう、オータムちゃん!」

「にょ。わたちは『エリア』のかみだにょ」

 

 胡散臭さ100%だったのに、今聞けば信頼性100%の文句に聞こえる。人間って勝手だね。立場によって同じ台詞も良いようにも悪いようにも取っちゃうんだから。

 でも嬉しいからいいや!

 オータムちゃんはこれまた「じぃぃぃぃ」と私を注視してくる。

 

「こんなのあさめしまえだにょ。

おまえはいいやつだから、チーカマくれたらもっとねがいごとかなえてやってもいいにょ」

「え! 本当!?」

 

 オータムちゃんの言葉に、先ほどまで感じていた憂鬱は消し飛んでいた。

 これって棚からぼたもちってやつじゃないのかな。

 とにかくラッキー! 超レアもの、いや神様ゲットだね!

 これはフィリオたちに見せないといけないや。絶対に喜んでくれるはずだ。

 私はすぐにフィリオたちに携帯で連絡を取った。どうやら一度ジェネ高の部室に集合しているようだ。

 

「オータムちゃん。沢山チーカマ食べたくない?」

「たべたいにょ!」

「じゃあ一緒に来て!」

「いいにょ!」

 

 私はオータムちゃんを頭に載せて駆け出した。

 自慢じゃないが足には自信がある。陸上部にスカウトされたことがあるぐらいだ。でもそのときにはプロジェクトTDに入っていたのでお断りしたんだけどね。

 私はプロジェクトTDの部室へと疾走した。

 

 

 

      ●

 

 

 

 憂鬱?

 もうそんな感情は私の中にありはしない。

 だって、最高の相棒を私は手に入れることができたのだから。

 

「みんなー、お待たせ!」

 

 チーカマを大量に買い込んだ袋を片手に私は部室の扉を開けた。

 部室には既にキチガイたちが集合している。中でも一番早く声を上げたのがキチガイ・ザ・グレート(?)ことフィリオ・プレスティだった。なんて、テンション上がり過ぎて失礼な事考えてるね私。

 

「遅いじゃないか、アイビス」

「ごめんごめん、それよりみんな、なんで急に部室に集合なんかしたの?」

「ああ。休憩も兼ねて、成果の報告をしようと思ってね」

 

 直後、フィリオは大きなため息をついた。

 

「まあ、結局、改造人間は見つけられなかったよ。改造人間に破壊された悪の秘密結社跡地が見つかっただけだね」

「でもそれを見つける事ができるなんて、流石は兄さまです!!」

 

 クイーン・オブ・ブラコンが息を荒げながらフィリオを褒め称えている。

 ツグミからも発見報告はなかった。

 いつものことだ。世にも珍しいものなんて、そう遭遇するものじゃないしね。

 

「うふふふ」

 

 私を除いてはという意味でついつい微笑が浮かんでしまう。

 それを見たツグミは怪訝な顔をしていた。

 

「なーにアイビス、気持ち悪いわよ ── ってアイビス! 貴方、その胸いったいどうしたの!?」

「可哀想に……あまりのペチャパイぶりに、とうとうパットを詰めまくってしまったか? ふん、とことん屑星だな」

「あはははは、自分が小さいからって僻(ひが)まないでよね、スレイ!」

「なんですって!?」

 

 スレイがヒステリックな声を上げて机から立ち上がった。

 眉間に皺を寄せて私を睨みつけてくる。ああ、またこのブラコンは超能力を使っているみたいだ。いつもの私なら、ここで片頭痛に悩まされて許しを乞うていたことだろう。

 だが私はアイビスであって先ほどまでのアイビスではない。そう、ハイパーアイビスさ! ……駄目だ、考えた自分で恥ずかしくなってきた。やっぱり普通のアイビスでいいです。

 ともかく、ブラコンの超能力は巨乳には通用しないのだ。

 

「あ、あれ?」

 

 私の胸をパットだと思っているスレイは素っ頓狂な声を上げていた。どうやら100cmオーバーの私の巨神兵の前には手も足も出ないようだ。

 でも認めたくないらしく、眉間に指を置いて集中して念を送って来る。利かないけどね。

 

「それよりどうしたのアイビス? そんなにはしたなく膨らんじゃって……」

「はした……って酷いよツグミ……まあ、いいや。ジャーン、実はこの子のおかげなのです!!」

 

 私は頭の上に居るオータムちゃんを持ち上げた。

 オータムちゃんがつぶらな瞳で(o・ω・o)(にょー)な顔しながら3人を見つめていた。

 ツグミが震える指でオータムちゃんを指しながら呟いた。

 

「な、なんなのその子?」

「わたちはおーちゃむふぉー。この『エリア』のかみにょ」

「おおー、神様ーー!!」

 

 フィリオが奇声を上げて机から立ち上がった。

 

「でかしたアイビス!

 まさか改造人間ではなく神様を見つけてくるとは、君、やるね!」

「え、えへへ。

しかもオータムちゃんはチーカマあげれば願い事を叶えてくれるんだよ!」

「なんと! それではさっそく!」

 

 フィリオは私が下げていた袋からチーカマを取り出すと、オータムちゃんに差し出した。

 

「神様! 私は宇宙人に会いたいです!」

「おやすいごようだにょ」

 

 オータムちゃんは私の手から机の上に跳び下ると、フィリオからチーカマを受け取って一口で食べ、また例のあやしい呪文を唱え始めた。

 四季の名前を連ねただけの意味不明な言語の後にまばゆい閃光が部室を包み込む。

 輝きが失せた後には人影が一つ、部室内に増えていた。

 顔にタトゥーの入れた金髪の男性だった。服装もエリアでは見ないものだ……なんていうか異星人っぽい。

 

「な、なんだここは!?」

「おおーー、ようこそ星の海の友よぉ!!」

 

 感極まったフィリオがいきなり入れ墨の男性に抱き付いた。

 状況の分かっていない入れ墨男性だが、男に抱きつかれるのは嫌らしく引き剥がしにかかる。しかしフィリオの力が強いらしく離れず、苛立った声で叫んでいた。

 

「離せ、この眼鏡野郎!」

「ワレワレは地球人デース! 

友達になりましょう! お名前を教えてもらっていいですか!?」

「チッ……俺の名はメキボス! 急いでるんだ、離してくれ!」

 

 メキボスと名乗った入れ墨男は、なんとかフィリオを剥がすことに成功しこう言った。

 

「俺は未開惑星の侵略を企むゼゼーナンを止めなきゃならねえ。

おい、お前ら! 俺のグレイターキンⅡが何処行ったか知らねえか!?」

「「「知らなーい」」」

「チッ、この役立たずどもめ!!」

 

 メキボスは悪態と罵声を残して、部室から飛び出して行ってしまった。

 フィリオが「ああ、マイフレンド!」と名残惜しそうに叫んでいたけど、嫌がっている相手と友達になんてなれる訳がない。

 そもそも本人の意思を無視して召喚(?)したのだから、彼にとってはトバッチリもいいところだろうしね。

 でもオータムちゃんは凄いなあ。

 チーカマ1個で本当に宇宙人を呼び出してしまった。

 がっくりと肩を落とすフィリオとは裏腹にツグミの目の色は変わっていた。

 

「凄い、本当に神様なのね!」

「とうぜんだにょ」

「お願い、私を未来に帰して!」

 

 ツグミが自称未来人を強調したいのか、チーカマを差し出しながら要求していた。

 多分、フィリオの気を引きたいんだろうなー。それとも本当なんだろうか? 大変なんだなー、乙女心って。私が様子を眺めていると、

 

「むりにょ」

 

 オータムちゃんは残酷に宣告した。

 

「だってあんたみらいじんじゃないにょ?」

「ちょ、シーシー!」

「なにするにょ!」

 

 言ってはいけないことを口走るオータムちゃんの口を急いで塞ぐツグミ。しかしフィリオはメキボスに逃げられて茫然としているので、この会話は聞こえていないようだ。

 でもオータムちゃんは凄い!

 初対面なのに相手の嘘を見抜くなんて、なんという眼力だろう。

 折角だし、私ももう一つお願い事をしようと思う。

 チーカマをオータムちゃんに献上して、

 

「チーズケーキをお腹一杯食べたい!」

「いいにょ、わたちもたべたいにょ!」

 

 閃光が部室を包み、目を開けた時には巨大なチーズケーキが出現していた。

 うわーい、チーズケーキだー。今日は死ぬほど食べるぞー。

 私とオータムちゃんはチーズケーキに齧り付き、至福の時間を過ごすのだった ──

 

 

 

 ── なんだかんだで3日が過ぎた。

 

 

 

 この3日の間に、私たちはオータムちゃんに願い事をしまくった。

 非常に充実した3日間だったと言っておく。

 ちなみに願い事は2回や3回じゃない。累計50回は下らない願い事をオータムちゃんに叶えてもらっていた。チーカマ代金がつきそうになったらお金を出してもらって、そのお金でチーカマを買い占めてくる。

 永遠に続く幸せのループ。

 私はそれを信じて疑わなかった。

 私の心に、もう憂鬱なんてないね。

 憂鬱なんて、現状に不満を持っている人間だけが味わう感情だもの。

 でもね……心になにか引っかかるものがあるんだ……。

 このままで、いいのだろうか?

 みんなみたいに輝きたい。輝ける程好きなことが……まだ私には見つかっていない。

 そう。夢。

 なんて言いすぎかもしれないけど、そういうものが私にも欲しい。

 あはは、こればっかりはオータムちゃんにお願いできないよね?

 

 でも楽しいからいいや。

 そうして3日が過ぎた頃、私がプロジェクトTDの部室を訪れた時だった。

 部室に集まったみんなの様子が変だった。

 

「ど、どうしたのみんな?」

「……あー……アイビスかー」

 

 キチガイのフィリオが気だるそうに答えた。机に突っ伏して面倒くさそうに欠伸をする。それは他の2人も同じで……なんだろう、いつも元気が感じられなかった。

 まぁいいか、と私はフィリオに訊いた。

 

「ねえねえフィリオ、今日は何をするの? また改造人間の探索? それとも超能力者? あ、UMA探すのもいいかもね ──」

「うるさいよ、アイビス」

「── え?」

 

 フィリオの口から出た言葉を私は信じられなかった。

 うるさいよ。

 いやまあ、確かに私の訊き方がまくし立て過ぎたのかもしれない……けど、この言葉のニュアンスは違う。そうじゃない。

 覇気のないフィリオの言葉の意味は……

 

「もういいよ……宇宙人も超能力者も改造人間も……どうでもいい」

「フィ、フィリオ……!」

 

 嘘だ!

 私の知っているフィリオはこんなこと言う人じゃない。

 フィリオはキチガイだ。マジキチだ。自分の好きなものにしか興味がなく、それを探すことに全身全霊を賭ける……でも、だからこそ輝いている、そんな人なんだ。

 そのフィリオがこんな事を口走るなんて……一体どうしたんだろう?

 良く見ると目にいつもの輝きがない。他の2人もそうだ。キラキラした私の好きな輝きを感じる事が出来ない。

 なんていうか濁っている、嫌な目だった。

 気味の悪い笑みを浮かべながら、フィリオが言った。

 

「だって、願い事すればなんでも叶うんだから」

「っ!?」

 

 私は机の上にいるオータムちゃんを見た。

 我関せず、チーカマを頬張っている。

 

「ちょっとオータムちゃん、どういうこと!?」

「どうもこうもないにょ」

「え……?」

「わたちはたのまれたから、ねがいごとをかなえてあげただけにょ」

 

 確かにその通りだ。

 オータムちゃんは私たちに言われるがままに、願い事をかなえて来たにすぎない。

 その代償はチーカマ……いや、もしかするとそれ以上に大切なモノを彼女に支払っていたのではあるまいか?

 生きる気力とか、やる気とか、キラキラと輝くなにかを……。

 オータムちゃんは残酷に言い放った。

 

「そうなったのは、そいちゅらのこころのもんだいにょ」

「そ、そんな……!」

 

 私はツグミに声をかけた。

 

「ね、ねえツグミは未来人だよね! フィリオと付き合いたいんだよね!?」

「どーでもいいわよー、そんなことー」

「ス、スレイはフィリオ大好きなんだよね! 

当然、それで願い事もしたんでしょう!?」

「うるさいわねー、喋んじゃないわよ流星のくせに……」

 

 やっぱりオカシイ……スレイが、あのスレイまでがこんなに弱々しいなんて!

 私を邪険に扱っているが、いつもの覇気がない。生気がない。もうどうにでもなれという雰囲気が全身から滲み出て、目が腐った魚のようだ。

 なんで……?

 なんでこんなことになったんだろう?

 私はただみんなの好きな珍しいモノを見つけたから、みんなに喜んでもらえると思ってオータムちゃんを連れて来ただけなのに……なんでこんなことに?

 ………嫌だ!

 私の好きなみんなを返してよ!

 キチガイで厄介だけど、本当にキラキラと輝いていたみんなを!

 

「オータムちゃん! お願い、みんなを元に戻して!」

「むりにょ」

 

 死神のカマのように鋭く、冷徹な言葉が帰って来た。

 ム・リ。たった2文字だけどとても重い。どうにもならない、そんな感じ。

 

「そ、そんなぁ……」

 

 私の責任だ……私がオータムちゃんを連れてきたりするから。

 調子に乗って願い事ばかりするからバチが当たったんだ……なにか欲しいものがあったとしても、そこを他人任せにしたりするからバチが当たったんだ……。

 涙で目の前が滲んで見えないや。

 どうすればいいのだろう……後悔に暮れていた私に、オータムちゃんが口を開いた。

 

「あのさんにんだけ、もとにもどすのはむりにょ」

「え……?」

「おまえがてにいれたものも、すてるならもとにはもどせるにょ」

 

 私が手に入れたもの。オータムちゃんに頼んで手に入れたもの。

 お金とか成績とか運動神経とか名誉とか……この豊満な胸とか……惜しい、ハッキリ言って捨てるには惜しい。

 でも、みんなのためなら投げだせる。

 

「いらない! なんにもいらないから、みんなを元に戻して! これが最後のお願いよ、オータムちゃん!!」

「……おまえはほんとうにいいこだにょ」

 

 食べ掛けだったチーカマを一息に食べきると、オータムちゃんは机の上から飛び降りた。

 とても小さい。大きさは私の足程なんだ。その小さな神様は(´・ω・`)(こんな)顔をして私を見上げながら言う。

 

「わたちのことはわすれるにょ。ともだちとたのしくくらすといいにょ」

「うん……ありがとう、オータムちゃん」

 

 私の感謝の言葉に、小さな神様は少し寂しげな表情を浮かべていた。

 いつもの意味不明な呪文に続いて、視力が奪われそうなくらい激しい光が放たれる。

 私は目を瞑り光に呑み込まれて行きながら、ゆっくりと考えていた。

 もしかして、私は最初から持っていたんじゃないだろうか?

 自分が輝けるぐらい好きな事、いや好きな人たちが私の周りにさ……。

 遠のく意識の中でオータムちゃんの声が聞こえてくる ──

 

「ばいばい、あいびす」

 

 誰だっけ……? もう分からない。意識は光に包まれ行く ──

 

 

 

      ●

 

 

 ジェネ高校舎の屋上にて。

 

「諸君、今日は未来人探索だぁ!!」

 

 大空にフィリオの声が響き、

 

「あら未来人ならここにいるじゃない、フィリオ?」

「なら来た年代を教えてくれたまえ!」

「禁則事項です♡」

 

 ツグミのお決まりのセリフが聞こえ、

 

「ほら屑星! アンタ、ペチャパイの分際でなに兄さまに色目使ってんのよ! 

罰としてここから飛び降りて流星になりなさい!!」

「い、色目なんて使ってないよー!」

「嘘おっしゃい! まるで欲情した犬っころね、このこの!」

「いたたたた、頭痛い! 超能力使うの止めてよスレイ!」

 

 私はスレイの能力で片頭痛に悩まされる。

 スレイは強靭そうなゴム製の紐を、屋上の手すりと私の体に結び付けていた。

 まさか本当に飛ばす気? 嘘だよねスレイ。そんなことされたら、私、意識が飛んじゃう。

 いたたたた、片頭痛が。止めて、こっち来ないで、お願いだから!

 スレイは嗜虐的な笑みを浮かべていた。

 

「ほーら、星になりなさい!」

「いやあああああああぁっ!!」

 

 スレイに背中を蹴られて、屋上から大バンジージャンプ。

 あ、気持ち良い。この浮遊感は爽快だね、空を飛ぶってこんな感じなのかもしれない。

 直後の自由落下の恐怖を紛らわせるために現実逃避する私でした。

 

 

 ── 私には憂鬱の種がある。

 

 

 もう説明しなくてもいいでしょう?

 これからも付き合って行くのだと思うと頭が痛くなる。

 プロジェクトTDのメンバーは私、アイビス・ダグラスの憂鬱の種なんだ。

 でもなんで私は笑っているんだろう?

 正直、分からない。

 ……でも、まあ、いいか……今、笑顔でいれるんだから。

 

「うわあああああぁぁんっ!!!」

 

 まあ次の瞬間には、落下して恐怖で顔が引きつったんだけどね。

 今日も私とみんなの日々は続く ──

 

 

 

ここはOG高等学院。

『エリア』にある地域最大のマンモス高校だ。

今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。

次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 一方、召喚され忘れ去られたメキボスはと言うと……

 

「チッ、この地域はどうなってやがる!?」

 

 路地裏で悪態を着いていた。

 彼は3日間『エリア』を彷徨い続け、外に出る事が叶わないでいる。

 

「外に出れそうになった途端に、急に意識が無くなりやがる! 

気づけばまたこの路地裏だし、神隠しにでもあってんのか俺ァ!?

くそお、待ってろよゼゼーナン!! 絶対にテメエの所に辿り着いてやるかんな!!」

 

 こうしてメキボスは、諦めずに再度脱出を試みるのだった。

 合唱。

 

 

 




<キャラ紹介>
アイビス・ダグラス:ジェネ高2年、夢に夢見る女の子。ジェネ高は比較的胸が大きい人が多いので、1・2を争うペチャパイぶり。いつもスレイに苛められている。でもTDのみんなは好き。

フィリオ・プレスティ:ジェネ高3年、自称神様のプロジェクトTDのキチガイ部長。体は超丈夫な健康体で、成績も優秀。今日も宇宙人などを探して街を捜索する。

ツグミ・タカクラ:ジェネ高2年、プロジェクトTDの副部長。自称未来人で口癖はあのセリフ。フィリオが好きで未来人を気取っている。

スレイ・プレスティ:ジェネ高2年、フィリオの実妹。超ブラコン。実は超能力者、しかし能力はフィリオに近づく女に片頭痛を起こさせること。しかも巨乳には効かない。今日もアイビスを苛める。

オータム・フォー:公園に住むエリアの神様。チーカマ大好き。




<次・回・予・告>

エクセレン「ただの人間には興味ありません!」

キョウスケ「…………」

エクセレン「この中に、宇宙人、平行世界人、アンドロイドがいたら私の元に来なさい! お姉さんがぁ、いいことしてあ・げ・る♡」

キョウスケ「黙れ人外」

エクセレン「酷ッ! ちょっとキョウスケー、恋人にそれはないじゃないのー、ぷんぷん」

キョウスケ「黙って聞いていれば調子に乗って……そんな募集では、スパロボでヒットする人材は幾らでも出てきてしまうぞ。その全員にいいことをしてやるのか?」

エクセレン「あらー、キョウスケ、もしかしてヤキモチかしらー? 可愛い♡」

キョウスケ「…………もういい。次回予告にいくか」


キョウスケ
「俺の名前を言ってみろ!
次回はスパロボじゃないぞ、ムゲフロだ!
あのキザ野郎が緊急参戦、どうなる無限のフロンティア!
次回スパロボ学院、「ここは……無限のフロンティア?」
どんな相手だろうと、打ち貫くのみ!!」

エクセレン「涼宮ハルヒの憂鬱もよろしく!!」





ども作者です。
休日なので調子に乗って明け方まで書いてました。
暗黒ミカンさん、sibugakiさん、ヴィーアスさん、平沢 唯さん感想ありがとうございます!
とても励みになっています、ありがとう。

オータムですが、キャラのイメージは「にょろーん ちゅるやさん」のちゅるやさんです。
またネタを思いついたら、アイビスの話を書きたいです。
ではでは。
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