絶賛、キャラ崩壊中!
ガキと爺が馬鹿になっています。
キャラのイメージが崩れるかもしれませんが、それでもよい、という方はどうぞ!
前回の話の後だからか、今回はかなり短めです。
私の名前はアリスと申します。
何故か高校が密集する地域「エリア」で、発明家としてクラール・グライフ博士の家で家政婦として働かせていただいています。
博士は発明家として非常に優秀で、取得したさまざまな商品の特許権で生活している富豪でもあります。
そんな博士の屋敷で働かせていただけるなんて、とっても光栄だと思っています。ハイ! 今日も頑張って、大きな屋敷の中を掃除させていただいています!
ですが ──
「勇者よ、余の仲間になるがよい」
── 窓ガラスを拭いていた私の耳に、威厳たっぷりのハスキーボイスが届いてきました。
「世界の半分を貴様にやろうではないか」
それは博士の声でした。
勇者? 世界の半分? 何の話をしているのでしょうか?
……ハッ、アリスは大変なことに気がついてしまいました!
きっとグライフ博士は世界制服を企む悪の科学者なのです。いずれは世界をその手に納める程の力を持った天才科学者だったのです。間違いありません!
「冗談も休み休みにしてもらおうか、大魔王クラール・グライフ!」
窓ガラスを拭く手を止めていた私の耳に、もう一人の勇ましい男性の声が届いてきました。
博士に相対しているのは博士の台詞から推測するに勇者さんのようです。
勇者さんと言えば、RPGなどのゲームで魔王を退治する主人公的な存在だったはずです。でも何故勇者さんがお屋敷にいるのでしょうか……?
ハッ、アリスは大変なことに気づいてしまいました!
勇者さんは魔王である博士を惨殺に来たに違いありません。
声が聞こえてくるのは屋敷の中の一室……この中では、今修羅場が繰り広げられている。このままでは火曜サスペンス劇場になってしまいます。博士の命が危ないのならば、私は家政婦として助けに入らなければなりません。
私は武器(ほうき)を携えて部屋の前まで急ぎました。
ほうきだって先が尖っているから凶器になるはずです。間違いありません!
「俺の双肩には世界の平和がかかっている! 貴様の邪悪な誘惑になど屈する訳にはいかない!」
「……どうしてもか?」
それにしても博士のハスキーボイスは渋いです。
いきなり飛び込むのも無謀なので、私は扉を開いて隙間から中の様子を伺うことにしました。
そのとき、私は見てしまいました!
いつもの白衣に身を包んだ博士と、鎧に身を包み剣を携えた少年が1人いました。どこか見覚えのある背中の少年が剣の切っ先は博士に向けられています。
「当たり前だ! 俺は勇者、南雲 一鷹! 世界を救う男だぜ!」
「あーあー、残念じゃのう。今仲間に入れば、限定版の無修正ピンク本がついてきたのにのぅ」
「え、どうしよう?」
真顔で迷う勇者一鷹とエロ本を持った魔王博士が遊んでいるだけでした。
私は盛大にコケてしまいましたが、まったく問題ありません!
スパロボ学院 ~OGだよ、全員集合!~
迷探偵南雲 一鷹シリーズ ~そのとき、家政婦は見た!~
私に見られているとも知らず、一鷹さんと博士は問答を続けていました。
「ど、どうしようかな? 世界の平和も大切だけど……ピ、ピンク本も欲しいなぁ……」
「ククク、勇者よ。自分の欲望に正直になりたまえ」
無理やりな感じで悪っぽい話し方をする博士。普段の博士を知っている私には違和感がありますが、十分に様になっていて本物の悪の魔王といった雰囲気です。
ちなみにいつもの博士はこうです。
「おーいアリス、飯はまだかいのう──ブッ(オナラの音)」
「もう博士、お昼ごはんはさっき食べたばかりですよ?」
「そうじゃったかのう。イヤーうっかりうっかり ── ブゥ(オナラの音)」
博士は髪もボサボサに伸びっぱなしだし、促さないとお風呂にも入らないし放屁しまくりだし……博士は私がいないと本当に駄目なんです!
でも今その博士が……
「いいか勇者よ。人民など救うに値しない身勝手な存在なのだ。いつも他力本願で、脅威が去れば貴様とて忘れ去られる運命なのだ」
立派に悪役をやっていました。なんだかアリスは嬉しいです。
「そんなことはないぜ! 俺は信じているぜ!」
「若造め……貴様に真実を教えてやろう」
博士は懐から金色の勲章か紋章みたいなモノを取り出しました。
「そ、それは勇者の紋章!」
「そうだ。余こそは世界を救った先代勇者クラール・グライフ。世界を救った後、民より迫害され社会的に殺された男よ!」
「な、なんだってー!?」
あれれ、なんだか雲行きが怪しくなってきましたね。
勇者一鷹さんは動揺したように1歩後ろずさっていましたが、博士は紋章を床に捨て踏みつけながら言っていました。
「これで理解できただろう? 人民など守る価値もない、強者に沸いてくる蛆虫(うじむし)のようなものだ。貴様もこれまでの旅路で感じなかったとは言わせないぞ?」
「うぐ……!」
「さあ勇者よ、余の仲間となり愚民共に思い知らせてやるのだ! 世界の広さ、命の儚さ、虐げられる者の悲しさを」
魔王博士の勧誘は慟哭に似ていました。
人の残酷さをよく理解しての発言のように思えました。きっと、悲しい思いを沢山してきたのでしょう。かつて世界を救った勇者が魔王に身をやつしてしまうなんて筆舌に尽くしがたい過去があるに違いありません。
勇者一鷹さんは迷っている様子でした。
と、博士は先ほどのシリアスは口調と打って変わって、機械的な口調で勇者一鷹さんに尋ねていました。
「魔王の仲間になりますか?」
「いいえ」
これまた機械的に勇者一鷹さんは答え、
「いやー、弱い! ちょっと弱いよ博士。勇者が魔王側に付くんだったら、もう少し説得力がないと厳しいんじゃない?」
「そうかのう? 魔王が実は元勇者というシュチュエーションは、結構いい線いってたと思うんじゃがのう」
勇者一鷹さんは魔王博士を拒絶したにも関わらず和気藹々(わきあいあい)と話を始めました。
扉の隙間から覗いていた私ですが状況を理解できません。
勇者と魔王が結託も対決もせぬまま、どうして仲良く話しているのでしょうか?
「博士、やっぱりRPGの選択肢で拒否権を得るのは難しいな。もし、魔王との対決で勧誘された場合に出る選択肢で、勇者に『はい』と言わせるに値する状況を発見するのはやっぱり厳しいぜ」
「一鷹よ、諦めてはいかん。諦めたらそこで試合終了じゃ。きっと勇者に『はい』と言わせられるような説得方法があるはずじゃ」
「例えば?」
2人の会話が私にはやっぱり理解できません。
RPG? 選択肢? どんな障害があろうとも、勇者は魔王を退治するものじゃないんですか?
手にほうきと汗を握って、状況の進展を見守ることにしました。
「そうじゃのう、例えば『余にはもうすぐ世継ぎが生まれるのだ』とか『この戦いが終わったら結婚するのだ』と言えば、いくら勇者でも同情ぐらいしてくれそうなもんじゃ」
「うわ、却下。死亡フラグ一直線だぜ」
「じゃあ『勇者よ、お前の母親の命は余の中にある。母を助けたければ余の仲間になれ』とかはどうじゃ?」
「『私に構わず魔王を討つのよ!』と母親の声が聞こえて、パワーアップした勇者に殺されそうな展開になるんじゃない?」
「では実際に母親を殺してみてはどうじゃ? 絶望感からパワーダウンするかもしれんぞ」
「『母さんのことか ── ッ!!』とか言って、勇者が静かな怒りに目覚めてしまいそうだぜ」
「うーん、難しいのう……」と博士は唸っていました。
本当に難しいですね。
一鷹さんと博士は一体なにをやりたいのでしょうか。まったく、理解できません!
「博士、いきなりクライマックスから考えるから駄目なんだよ。やっぱり、最初は王道的に物語り冒頭の部分で行くべきだぜ」
「そうじゃのう。では、物語冒頭で王様に魔王討伐を依頼される場面で、どうやったら『いいえ』で通せるかRP(ロールプレイ)してみるとしようかの」
博士は部屋の中にあったリッチな椅子に座ると、足を組んで偉そうに踏ん反り返りました。
一方、一鷹さんは剣を収めて膝をつき、王様に頭をたれる姿勢をとります。
「勇者よ」
王様になったつもりだろう博士が、これまたハスキーな威厳たっぷりの声で言いました。
「大魔王討伐の旅、辛く苦しいものになるだろう……しかし貴君は人類の希望……行ってくれるな?」
「いいえ」
「なんじゃと?」
勇者一鷹さんの即答に、王様博士の顔が歪みました。
凄いです。一鷹さんは本当の勇者です。国家権力のトップの依頼を堂々と蹴りました。きっと後先を考えない、若さゆえの過ちという奴なのでしょう。
当然、王様博士は気分を害したのか、声を荒げて訊いています。
「なぜじゃ? なにが不満なのじゃ?」
「働いたら負けだと思っている」
「衝撃の新事実、勇者はNEET(ニート)でした」
あまりにも勇者一鷹さんがスパァーーンッと答えを返すので、思わず声が出てしまいました……ですが、役に没頭しているのか2人は私が覗いているのに気づきません。
それはそれで嫌なものです。2人で変な問答を続けている様はまるでピエロのようでした。
蛇足ですが博士も特許を取って生活をしているので仕事は一切していないようなものです。博士もNEETなのでしょうか? もうお歳ですからNEETには当てはまらないでしょうけど、身の回りの世話を全部私に一任するのはどうかと思います。
NEETじゃないけど、少し苛立ちも募っているので博士はNEETということにしておきましょう。でも王様ってNEETみたいなものですよね? やっぱり博士はNEETにしておきましょう。
NEET博士が勇者一鷹にコメントをくれました。
「一鷹よ、勇者がNEETというのは少し酷くないかのぅ?」
「あ、やっぱり? じゃあ、別パターンを試してみようか」
勇者一鷹さんは再び王様博士の前で膝をつきました。
王様博士は勇者一鷹に言います。
「勇者よ、大魔王討伐の旅、行ってくれるな?」
「いいえ」
「勇者よ、大魔王討伐の旅、行ってくれるな?」
「いいえ」
「勇者よ、大魔王討伐の旅、行ってくれるな?」
「いやだ」
「勇者よ、大魔王討伐の旅、行ってくれるな?」
「ベーだ」
「勇者よ、大魔王討伐の旅、行ってくれるな?」
「NOだ」
「勇者よ、大魔王討伐の旅、行ってくれるな?」
「もう、帰っていいですか?」
「勇者よ、大魔王討伐の旅、行ってくれるな?」
「しつこいよ、もう諦めろよ!」
王様博士の依頼を拒否していたはずの勇者一鷹さんの方が、先に根負けしていました。同じ文章の繰り返しは拷問みたいなモノですね。モブキャラはこれだから……。
「うーむ、断り続けるだけなのはやはり説得力に欠けるのぅ……やはり、RPGの選択肢での自由を確保するのは難しいのかのぅ?」
「博士、諦めたらそこで試合終了だぜ!」
勇者一鷹さんが立ち上がり、熱く語っていました。
……そうだ、思い出しました。
一鷹さんは15歳の中学3年生で、大の漫画やアニメ好きなのでした。
私は個人の趣味に口を挟んだりはしませんが、一鷹さんの場合は少し問題があるんです。
直前に閲覧した作品の影響をすぐに受けるんです。
しかも真似事をせずにはいられない、という悪癖がある一鷹さんが拳を握り締めていました。
「博士。俺はこのRPGにおける選択肢の拒否権を獲得するために諦めないぜ! どこかに抜け穴があるはずだ。その答えを俺は推理してみせる! じっちゃんの名に懸けて!」
「おぅおぅ、頑張れよ一鷹」
一人熱血する一鷹さんを博士は優しい眼差しで見つめていました。
博士にとって一鷹さんは血は繋がっていないけど、可愛いもう一人の孫のようなモノでしたね。おそらく推理系の漫画でも読んで、どうでもいいことを無理やり推理しようとしている一鷹さんに付き合ってあげているのでしょう。
博士! アリスは博士を見直しました!
例え、1時間前に食べたご飯のことを忘れても、トイレの後水を流すのを忘れても、一鷹さんへの優しさを忘れなければ、まったく問題ありません!
私は扉をそっと閉め、その場を後にしました。
やりかけだった窓拭きの仕事に戻ります。
窓から見える空は雲ひとつない日本晴れで、太陽の日差しで体も心も温かくなりました。
「今日も、平和ですねぇー」
磨き上げた自慢の窓ガラスには、笑っている私の顔が映りこんでいました。
ここは高校がなぜか密集する土地『エリア』。
『エリア』には個性豊かな人間が沢山いる。
今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。
次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない
<キャラ紹介>
南雲 一鷹:中学3年生のガキ。漫画やアニメの影響をすぐに受けて真似事をしたがる。グライフ博士の家にはよく遊びに来る。
アリス:グライフ博士の家で家政婦をしている女性。年齢不詳。口癖は「~ありません!」。広大なグライフ邸の掃除・家事を全て任されているので能力は高い。
クラール・グライフ:数々の特許をとり、その代金で悠々自適な隠居生活を送る示威遺産。天才発明家だが最近は少しぼけ気味。よく一鷹と遊んでやっている。孫が1人いる。
<次・回・予・告>
キョウスケ「今回の次回予告はなしだ。次回はキャラの紹介を更新予定だ」
エクセレン「キャラの紹介って?」
キョウスケ「うむ。連載が続いている内に登場したキャラが増えすぎたからな、作者もどの話にどのキャラが出てるか分からない時があるそうだ」
エクセレン「まぁ、いい加減ねぇ」
キョウスケ「なので次回は、キャラ紹介とどの話にどのキャラが出てるか纏めて更新するぞ。よろしくな」
エクセレン「第2次スーパーロボット大戦Zもよろしく!!」
前回の話に比べてかなり短いです。
スパロボLのキャラをあまりつかめていないのもありますが、書き始めたネタがこれ以上膨らみませんでした。
次回はどうするか迷い中です。ネタ・感想募集中です。
sibugakiさん、ケルンバイターさん、暗黒ミカンさん感想ありがとうございます! 次回はただのキャラ紹介なのでたいしたものじゃありませんが、更新にそう時間はかからないと思います。
PS.
PSPで第2次スパロボZが発売されるみたいですね。ガンガンレオンは再登場するのでしょうか? グレンラガンも出るみたいだし楽しみです。