絶賛、キャラ崩壊中!
スパロボLの女キャラが戦争ボケ化しています。
読むとキャラのイメージが崩れるかもしれません。
それでも良いという方はどうぞ!
<注意>銃の所持は20歳になってから(嘘)
私の名前はアリス。
何故か高校の密集する地域「エリア」でも指折りの大富豪、クラール・グライフ博士のお屋敷で働かせてもらっている家政婦です。
クラール・グライフ博士はそれはそれは優秀な発明家でして、これまでに様々な発明品の特許を取得し、現在では特許による収入で悠々自適な隠居生活を満喫しているのです。
そして、私は一介の家政婦として広大なグライフ邸の家事全般と経理管理を任されているのです!
どうですか? すごいでしょう?
こう見えても、私は結構有能でして掃除・洗濯・料理・介護などなど……いろいろな仕事を一任されている程なのです。
ですがグライフ邸はとても敷地が広くて、家政婦一人では仕事が追いつかず、特に安全管理面での仕事が疎かにになりがちなのです。
── という訳で、グライフ邸には家政婦がもう一人働いています。
彼女は私にできないお屋敷の安全管理を一任されていて、お屋敷は「エリア」内では豪華な方ですので、頼んでも居ないのに泥棒さんが侵入してくるものです……
そのたびに。
「動くな。両手を挙げて、武器を捨てろ」
腰まで伸びる赤いサラサラのロングヘアーをなびかせて、今日も彼女は泥棒さんに警告します。高圧的な雰囲気を漂わせた美人さんです。
屈強なガードマンならいざ知らず、メイド服を着込んだ美女の恫喝で泥棒さんが気おされることはありません。懐からスタンガンを取り出しました。先端でバチバチと電流が火花を散らします。
早く、早く逃げてください! このままでは手遅れになってしまいます!
「へへへ、姉ちゃん。丸腰でくるなんて、ヤッテくれと言っているようなもんだぜ?」
「そうか? では ── 」
早く逃げて下さい、泥棒さん!
彼女が足首まで隠れるロングスカートの裾を捲ります。その中に花園……は広がっていませんでした。
拳銃、マシンガン、ショットガン、手榴弾etcetc……私の知っている銃器という銃器がスカートの中には納められていました。
彼女はマシンガンを手に取ります。
「── お前はここまでだ」
ばららららららっ。マシンガンが乱射され、ちゅど~んと地雷が爆発しました。
彼女が放ったマシンガンの弾から逃げ惑った泥棒さんが、彼女お手製のトラップゾーンに足を踏み入れてしまったのです。
哀れ、泥棒さんは黒焦げになり目を回しています……死んではいないようです。
「任務、完了ね」
「まったく、問題ありまくりです!」
真顔で呟いていた彼女の頭を、私は何処からか手に入れたハリセンで思いっきり引っ叩いてあげました。
「痛いじゃないの」
「黙ってください! 誰が掃除すると思ってるんですか?」
「はぁ、アリスだろう? それより勤務時間中だ、早く仕事に戻れ」
彼女はマシンガンをスカートの下に納めながら返事をしました。グライフ邸で働くもう一人の家政婦 ── ハルノはお屋敷の安全面を一任された、拠点防衛のエキスパートなのです!
今日も銃声と硝煙の匂いがお屋敷に立ちこめるのでした……。
スパロボ学院 ~OGだよ、全員集合!~
南から来た女 ~そのとき、家政婦は見た!~
ここで、私の同僚のハルノについて説明しておきましょう。
ハルノは広大なグライフ邸で安全管理を一任されている家政婦です……安全管理、侵入者排除の名目の元敷地内にトラップゾーンや監視カメラを設置したり、しばしば銃器を発砲して脅威を排除しています。
実に素晴らしい仕事ぶりですね?
おかげでグライフ邸への進入に成功した不届き者は独りも居ません! 素晴らしい。まったく素晴らしい成績です!
ただ ──
「よく来たな。全身全霊をもって排除する」
── と、お屋敷に招待されたお客様にまで銃器を向けたりするのを除けば……ですが……。せめて、歓迎してもらいたいものです……
……もう、ぶっちゃっけちゃいますね。グライフ邸には家政婦が2人しかいません。
何故でしょうね? 理由は理解しかねます。
そういう事情もあり、私がお屋敷の経理担当、ハルノが安全管理を任されているのが現状です。
ただ……ハルノは家事が壊滅的に下手で、手伝ってもらうとかえって手間が増えてしまいます。結局、私が経理と家事全般を担当するしかないという結論にたどり着くのは容易なのでした……
私は泥棒さんを手早く警察に引き渡すと、地雷原に散らばった土ぼこりなどをほうきで掃いてきれいにします。地雷の位置はハルノに聞いて暗記していますので、地雷原を歩いていてもまったく問題ありません。
今日も平和です。
平和ですったら、平和です。まん丸お日様が私を見下ろしていました。
うふふ、お日様ポカポカで気持ちいいしこういう日にお布団を乾すと、さぞかし気持ちよく眠ることができそうです。
決めました。片付けが終わったら、博士のお布団を乾して ──
── ズガガアアァァァァンッッ!!!
強烈な爆音と風がお屋敷の門の方角から流れてきて、私の思考はそこで中断されました。
一体、どうしたというのでしょうか?
……いえ、犯人は分かっています。ハルノに違いありません。
私が門たどり着くと、案の定、ハルノが木っ端微塵になったポストから距離を取ってたたずんでいました。
「あーあー、なんてことをするんですか! ポストをこんなにして……手紙までボロボロに ──」
「よせ! それ以上近づくな、危険だ!」
鬼気迫る表情でハルノが銃口を向けてきました。勢いで……私にそれを向けないで下さい!
「まだ危険物が残っている可能性がある」
「き、危険物? ポストですよ。入っているのは郵便物に決まっているじゃないですか?」
「甘いぞ、アリス」
ハルノの鋭い眼光は真剣そのものでした。
「そう考えるのは素人の浅はかさだ。敵は、そう言った油断につけ込んでくるのだ。私が依然聞いた話では、とある国では帰宅したらポストを開ける習慣のある重鎮が狙われ、爆死したことがあるそうだ」
敵って誰ですか? 私たちはお屋敷に住んでいるのであまり外出もしませんし、ポストを爆破したのはハルノですよね?
ハルノは慎重に足で無残に爆散した郵便物を掻き分けていた。
「ところでどうやって爆破したんですか?」
「プラスチック爆弾だ。扱いやすいからな」
プラスチック爆弾って……大方、あのロングスカートの中にでも仕込んでいるのでしょう。歩く火薬庫のような女性ですね。
そう言えば、依然聞いたことがあります。
ハルノが博士のお屋敷で働き始める前、彼女は傭兵としてア○ガンやア○ガニスタンの戦場で活躍していたそうです。
また、生まれも育ちも一切不明。唯一分かっているのは、元傭兵という物騒極まりない経歴だけで、ハルノは自身の価値観に基づいて忠実に仕事こなしています。
プロ意識があるというのはとても好感が持てるのですが、ここは戦場ではなくて平和な「エリア」なんですよね……ハルノには少しは平和ボケしてもらいたいものです。
私がポストを爆破した理由を尋ねると、ハルノはこう答えました。
「屋敷に届く郵便物を回収するのは私の役回りだ」
「まぁ、ハルノは安全管理という名目でお屋敷を巡回していますものね」
博士はモノグサだから言うまでもなく、お孫さんの悠さんも学生さんですので、郵便物の回収は普段からハルノの仕事です。
「ですが、それがどうかしたのですか?」
「門の外ではなく屋敷側からポストが開閉した形跡が見られた。仕掛け爆弾かもしれん。不用意に開けるわけにはいかないからな、だから ──」
「爆破したと?」
「ああ」
あぁ、あまりの弁明に立ちくらみがしてきました。
そりゃあ博士や悠さんは普段からポストを触ったりしませんよ? でも、それがどうして爆弾が仕掛けられているという思考に繋がるのでしょうか? 思考がぶっ飛んでいますね。
「博士を狙ったとは断定はできん。私を狙ったテロかもしれない。ポストを開けて郵便物を確認するのが私の日課だと調べをつけての犯行だ」
「……ハルノ、心当たりがあるのですか?」
「ああ、山ほどな」
怖いのでそれ以上は訊きませんでした。皮肉をこめた質問にも真顔で返すハルノは、良くも悪くも生真面目な性格をしていますね。
……はぁ、でも戦争ボケも大概にしてもらいたいです。
「ハルノの言い分はよく分かりました。でもここからは私の仕事です。燃えカスを掃除しますから退いて下さい」
「駄目だ、まだ安全が確認でき ── ん?」
ハルノが燃え残った郵便物に視線を落とした。しゃがみ込み、掻き分けると紙切れが出てくる。『ハルノ』と書かれている。
「なんだ……これは?」
「ハルノ宛の手紙じゃないですか? 燃やしちゃって、まったくもう」
「だが、私に手紙を寄こす知り合いなどいないぞ」
ハルノが真顔で悲しいことを口走っていました。
「昔の知り合いは、その……みんな、遠いところに行ってしまったし、ここでは住み込みで働いているから外出はほとんどしないしな」
「いいんですよ、ハルノ……それ以上言わなくても……私も住み込みだから外に友人はほとんど居ませんからね……」
「ん? どうした、顔が暗いぞアリス?」
放っておいてください!
仕方ないんです。このお屋敷に訪ねてくるお客様と友人になるわけにはいきませんし、かといってお仕事は多くて外へ出る機会もほとんどないし、昔の友人と連絡取ってもお暇がいただけないし……私も手紙をくれるような友達欲しいです。よくよく考えたら、お屋敷に遊びに来てくれる友人って一鷹さんぐらいですね……考えてて悲しくなってきました。
こういうときは仕事をして嫌なことを忘れれば、まったく問題ありません!
「さあハルノ、残った紙切れも拾いましょう。合わせればまだ解読可能かもしれません」
「ああ、犯人を特定して、生きているのが辛くなる程の拷問をしてやろう」
……敵は出会い頭に取りあえず撃て、みたいなことを言うハルノ。
もしかしてこれはツンなのでしょうか? 自分に手紙が来たことの歓喜を隠すための演技……でも、デレが想像できません。ハルノはきっとツンドラですね。間違いありません!
私たちは紙切れをかき集めて、休憩時間にハルノの部屋に集まることにしました。
休憩時間 ハルノ自室。
私とハルノは軽い昼食を済ますと、集めた紙切れを観察することにしました。
その手紙は爆発でほとんど燃えてしまっていましたが『ハルノ』『いつも見てい~』『胸を締めつけ~』『つきあい~』『放課後、ジェネ高体育館裏で待っ~』という文面を読み取ることができました。
「やはり、私を付け狙う誰かの仕業だな。間違いない」
「え~、そうでしょうか?」
ハルノは断片からそう断じていました。
……うーん、でも私の感想を言いますとね、この手紙はラブレターなんじゃないでしょうか? ハルノのことを遠巻きに見ているシャイな男の子が搾り出した一欠けらの勇気……あぁ、いいですねぇ。
きっと文面は「ハルノさん。いつも見ています。貴女のことを考えると胸を締め付けるように苦しいのです。よかったらハルノさんとつきあたいです。放課後、ジェネ高校体育館裏で待っています」……といった風なのでしょう。
「この文面からは敵意しか感じないな。
『ハルノ、いつも見ているぞ。いつか、胸を締め付けるような苦痛を与えて殺してやる。だがそれは無理なようだ。剣でつきあい決着をつけよう。放課後、ジェネ高 ──』……といった内容だろう」
「なんでやねん!」
私は思わずハリセンでハルノの頭を叩いてしまいました。ハルノは「痛いじゃない」と私を見ると、手紙のパーツを指差して言いました。
「見ろ。この書き殴った、汚らしい字を。私に対する憎しみの表れだと思わないか?」
「ただ字が汚いだけでしょう。きっと、男の子の字ですよ」
「甘い。これは筆跡鑑定を逃れるための偽装工作に違いないわ」
ハルノは断定した。
どうしてそうなるんですか? 少しは常識的に考えてくださいよ、ハルノ。
「私は至って真面目だが?」
ハルノから自分の結論に一部の迷いもない眼差しが返ってきました。
駄目ですね。この人にはしっかり言葉にして伝えないと理解してもらえそうにないです。
「ハルノ。これはラブレターというものですよ。間違いありません!」
「て(プ)、天敵(プレデター)? それはいかん、早く対策を ──!」
「なんでそうなるんですか!?」
本日3回目のハリセンをハルノの頭にお見舞いしてやりました。「バカになったらどうする?」とハルノは返答してきましたが問題ありません! ハルノは既に戦争バカです!
バカには一から手取り足取り教えてあげないといけないようですね。
「いいですかハルノ? ラブレターというのは好きな子に対して、私は貴方のことがこんなに好きですよ、と伝えるために文章をしたためて送る物なのです」
「はぁ? 何故、そんな事をするのだ?」
眉を歪めて表情を作るハルノ。私をバカにしている、のではなく純粋に不思議そうな顔です。
「ですから、好きな子の心を射止めるためにですね……」
「心臓を射止めるのならスナイパーライフルだろう? 安心しろ、アリス。知り合いに凄腕のスナイパーならいるぞ。ただ背後に立つと撃たれるがな」
「……もういいです」
駄目ですね。ハルノに色恋を期待するだけバカだったのです。私はもう匙を投げました。
しかし手紙を出した男の子のために、あと一肌だけ脱ぐことにします。
「ハルノ、ちゃんと放課後に行ってあげて下さいね」
「もちろんだ、私を誰だと思っている?」
もちろん、戦争ボケのうすらバカですよ?
でも口には出しません。お屋敷に家政婦は2人しかいませんから、可能な限り仲良くしなくては……しかし私の譲歩もそろそろ限界な気がします。ハルノには早く平和に慣れてもらいたいものです。
休憩が終わり、私たちはそれぞれの仕事に戻りました。
私は屋敷内の掃除をしていましたのでハルノの姿は見かけませんでしたが、宣言どおり約束の場所まで行くのでしょうか?
不安になってきました。
それに手紙の出し主が誰なのか気になります。
……悠さん、でしょうか? ハルノの周りにはいる若い男子は悠さんぐらいしかいませんからね。でも悠さんなら、このような回りくどいことはせずに面と向かって告白しそうなものです。
「うーす、アリス、博士いる?」
お屋敷の玄関口を掃いていると、よく博士の家に遊びに来る中学生、南雲 一鷹さんが姿を現しました。
「あ、一鷹さん、いい所にきました」
「なになに? なんか面白いことでもあるの?」
私はことの経緯を話しました。
そこは好奇心旺盛な中学生の一鷹さん、
「よっしゃあ、覗こうぜ!」
「駄目ですよ一鷹さん。ハルノにもプライバシーがあるんですから」
「アリス、笑いながら言っても説得力ないぜ?」
「そういう一鷹さんだって」
「へへへ」
「うふふ」
こうして私と一鷹さんは、ハルノの逢引の瞬間を確認することにしたのでした。
別に下世話な好奇心が倫理観やモラルに勝ったわけではありません。
ハルノはあのとおり戦争ボケですからね。トラブルを起こさないように見守る義務が私にはあるのです! 私はハルノの保護者みたいなモノなのです!
「さあ、いざジェネ高だぜ!!」
「駄目ですよ~一鷹さん~」
一鷹さんを止めるために、使命感の強い私は彼を追いかけるのでした。
中学生と家政婦が、高校という未知のテリトリーに足を踏み込むのでした。
●
ジェネ高体育館裏。
ジェネ高の体育館裏は校舎側からは見えないような構造になっていました。
私と一鷹さんは体育館裏の茂みの裏に身を隠し様子を窺います。
ですがまだ手紙の差出人はおりませんし、ハルノの姿も見えませんでした。もしかしたら、あの手紙は悪戯だったのではないかと私が思い始めた頃、
「あ、来ました! 来ましたよ、一鷹さん!」
「ちょっと静かにしろよアリス。バレちまうだろ?」
草葉の陰から様子を見守っていた私たちの前に現れたのは、茶髪のジェネ高男子生徒でした。左頬に絆創膏を貼っている以外にはこれといって特徴のない少年です。なんと言いましょう、彼女がいないオーラが全身から湧き上がっているような少年でした。
「なんだ、カズマの兄ちゃんじゃん」
「一鷹さん、知っているんですか?」
「アリス知らねえの? 有名だぞ。毎日、夕方ごろに自転車便で『エリア』内を爆走してる兄ちゃんだよ」
確かに……そう言われてみると、博士のお屋敷にも荷物を持ってきたことがあるような……ないような?
後で教えてもらった話なのですが、カズマさんという男の子は「ヴァルストークファミリー」という運び屋一家の長男坊さんらしいのです。彼女いない暦=年齢、という話も以外に有名な話らしいです。
「そのカズマさんという方はハルノの知り合いなのですか?」
「そりゃあないと思うよ。多分、悠兄さんもジェネに通ってるからハルノの話を聞いたんじゃないかな?」
「では、カズマさんとハルノは面識がないと?」
「多分ね」
小声で密談を交わす私たちにカズマさんが気づくことはありませんでした。
時刻はとっくに放課後……携帯電話で時間をせわしなく確認しながら、カズマさんは何か呟いていました。
「初めてラブレター書いたけどうまくいくかなぁ?」
おぉ、純ですね! 純情ですね! 青春っていいですね、間違いありません!
「ま、書く相手はハルノさんじゃなくても良かったんだけどな」
え? やはりカズマさんはボソボソと口を動かしています。
しかしアリスイヤーは地獄耳! どんな言葉だろうと逃さずキャッチするので、まったく問題ありません!
「やっぱり彼女を作るにはこちらからアプローチしていかなくちゃな。でもジェネ高内でラブレター書いて、振られて噂になるのもマズイし、悠さんに紹介してもらったハルノさんはちょうどいい練習になるぜ」
……まぁ、なんてことを言っているのでしょうか、このカズマさんは……?
「おい、アリス。なんて言ってるんだ、教えてくれよ?」
「お子さまには聞かせられない話ですよ」
「ひ、酷ぇ……」
一鷹さんがしょげていましたが無視します。
私に独り言を聞かれているとは露知らず、カズマさんはそわそわしながら呟いています。
「でもOKされたらどうしような……?
年上で、ロングヘアーの美人でメイドさんという超ハイスペックな彼女をゲットしてしまうことになるのか? 女日照りで苦しんでいた俺にも春がやってくるのか?
よぉーし、やるぞカズマ・アーディガン。メイドさん萌えーだ。本番のつもりでメイドさんをゲットしてやるぜ」
カズマさんは急にスキップを踏み始め、2~3分おきに携帯電話で時間を確認し始めました。……正直、気持ち悪いです。
これは私の私見ですが、このカズマさんに彼女さんができない理由の一つは、彼女が欲しいとがっつき過ぎな部分が大きいのではないでしょうか? 付き合い始めた途端に色々と束縛されそうで私は嫌です。
「なぁなぁアリス、なんて言ってたんだよ?」
「要約するとですね、ハルノをゲットしてやるぜコン畜生、と気合を入れていましたね」
「おお、なるほど! 頑張れよ、カズマの兄ちゃん!」
前振りを省略して教えてあげると、一鷹さんは拳を握り締めて熱い視線を向けていました。
正直、ハルノを練習台にしようという考えは感心しませんが、カズマさんも恋人作りに必死なんでしょうね。
こういうのもきっと青春の一ページになるのです。後々振り返り「あぁ、俺はなんて若かったんだ……」と赤面してしまうでしょう。若気の至りですが、そこは、まったく問題ありません!
それより問題なのは、ハルノがここに現れるか、なのです。
案の定、ハルノは現れませんでした ──
── 3時間経過……
時刻は夜8時。月が顔を出し、学校に人気はなくなり、体育館裏は小さな街頭からの光で薄暗く照らされていて物悲しさが滲み出ていました。
それはカズマさんも同じ。憔悴しきった表情で呆然と立ち尽くしています。
「なぁなぁアリス、もう帰ろうぜ。ハルノもう来ないって」
「もう少し、もう少しだけです。いくらハルノでも、そこまで酷い子じゃないはずです」
淡い期待を胸に私は待つことにしました。一鷹さんは辟易とした表情を浮かべながらも付き合ってくれました。一鷹さんはいい子なのです。ハルノもそこまで酷い子じゃないと信じたいのです。だから私は待つことにしました。
すると、体育館裏に1つの人影が近づいてきました。
シルエットは女性ではありません。
「カズマ」
「ゆ、悠さん」
カズマさんに声をかけたのは、グライフ博士のお孫さん悠さんでした。
「まだこんな所にいたのか……家族が心配するぞ?」
「あ、あの悠さん、ハルノさんはまだお屋敷に居たりしなかったか?」
「いや、見てはいないが……そうか、ハルノの奴来ていないのか」
悠さんは全てを悟ったようにため息をつくと、
「済まないことをしたなカズマ。ハルノの奴には後で言い聞かせておくよ」
気にするな、とばかりにカズマさんの肩に手を置きました。
「ゆ、悠さん、ありが──」
カズマさんが礼を述べて悠さんの手を取ろうとしました。刹那 ──
── ズダアァァンッ!!
── 轟音が響きました。私たちの耳元……そう、私たちが隠れていた茂みから銃声が聞こえたのです。
茂みからショットガンの銃口がせり出し、上空に向かって発射されたのです。
「な、なんだ?」
カズマさんも鳩が豆鉄砲を食らったような表情で茂みを見ていました。私にもなにが起こったのか分かりません、とそのとき。
茂みが動きました。
猛スピードでカズマさんにタックルをかまし、腕を捻り上げ足を払って彼を地面の上に転倒させます。弾倉に弾を送る動作と音を響かせて、動く茂みはショットガンの銃口をカズマさんの後頭部に向けていました。
「気を抜くな、接近戦は、CQC ── お前はここまでだ」
茂みはハルノでした。
かくれんぼの神さまみたいな事を言いながら、カズマさんを拘束しています。
彼女は布着れに茂みの木の葉を貼り付け、塗装し、キレイな顔にも黒と緑のペイントを塗りたくってカモフラージュしています。ご丁寧にショットガンまでペイントしていました。はっきり言います。傍に居てもまったく気づきませんでした……
カモフラージュ用の布着れを剥ぎ捨てると、ハルノは銃口をカズマさんの後頭部にグイグイと押し付けます。
「貴様、何処に雇われた殺し屋だ? 何故、悠様を狙う? 答えなければ、貴様の頭を砕けたザクロのように破裂させてやるぞ」
「ヒィィィィ!?」
カズマさんは目を白黒させて絶叫していました。
「ふむ。口を割らんのを見ると、相当訓練された殺し屋のようだな。では自白したくなるまで指を一本一本切り落としていくことにしよう」
「いい加減にしろ」
ロングスカートの中からサバイバルナイフを取り出すハルノを、悠さんが何処からか取り出したハリセンで叩きました。
スパァァン、と夜の学校に快音を響き渡ります。
「悠様、痛いじゃないですか」
「うるさい。お前は人の友人になにをするんだ?」
「友人? ハハ、バカな。こいつは殺し屋です。現に先ほども悠様の手を取り、悠様を拘束しようしていました。オイ、そうだな?」
ハルノがサバイバルナイフを投げると、それはカズマさんの指と指の間に深々と刺さりました。
「はい! そうです、なんだっていいです! だからお家に帰してー!」
「ほら?」
「誘導尋問をするな!」
再び悠さんのハリセンの音が木霊しました。
「ぽんぽん叩かないでください。バカになる」
「気にするな。気づかないお前は幸せ者だ」
「お褒め頂き光栄の極み」
「褒めてない! あと、カズマから早く銃を退けろ!」
「しかし……」
ハルノの顔には不満が満ちています。
「上官命令だ!」
「サー、イエッサー!」
悠さんの一声でハルノは銃口を外すと、カズマさんの尻を蹴り飛ばしました。
「おい、地面に這い蹲るのがお似合いの○○野郎。悠様の命だから今回は見逃してやる。だが今度こんなことをしてみろ。
お前の○という○に煮えた油を流し込んで、×××が使い物にならなくなるまで△△△してやるぞ。分かったか!」
「ひ、ひぃ……!」
アリスイヤーは地獄耳。
ハルノの過激な発言もしっかり聞こえていましたが、危険なので全て伏字にさせてもらいます。一鷹さんの耳は私が塞いでいるのでまったく問題ありません。
しかしカズマさんの精神的ショックは計り知れず、ヨロヨロとハルノから後ろずさっていました。
だぁん。ハルノが上空にショットガンを発射しました。
「分かったら走れ! トロトロするな新兵が! ○の◎に散弾ぶち込まれたいのなら歩けばいい!」
「そんなことされたお婿にいけない?!」
カズマさんは慌てて走り去って行きました……あぁ、無情。
ハルノはショットガンをロングスカートの中に納めると、ペイントされまくりの美顔でメイドさんスマイルを悠さんに向けます。
「危ないところでしたね?」
「お前が危ないわ!」
悠さんのハリセンが一閃します。もしかしたら、居合いの域に達しているかもしれないハリセン攻撃に、ハルノは頭を抑えて訴えていました。
「痛いじゃないですか?」
「黙れ。人の友人にトラウマ植え付けよってからに、お前は……」
「致し方ない処置でした。奴が悠様に手を上げずに去れば、私も奴を見逃してやるつもりでしたが……」
「見逃してやるって……お前、ずっと隠れてたのか? 茂みになって?」
「はい」
ハルノは即答すると、私たちが隠れている茂みを睨み付けてきました。ヤ、ヤバイです。
「不届きな闖入者がやってくる30分程前から茂みに潜んでおりました」
「闖入者? 誰だか知らんが、お前は数時間も潜伏して、銃口をずっとカズマに向けていたと言うのか?」
「私にかかれば造作も無いことです」
ハ、ハルノ、恐ろしい子……!
私たちが体育館裏に来た時からずっと息を殺して、カズマさんを狙っていたなんて……それに、同じ茂みに隠れている私たちに気づかせないなんて……ステルス機能でもついているのでしょうか?
「はぁぁ」
悠さんが深いため息をつきました。
「もういい、帰るぞ」
「はい、護衛はお任せください」
ハルノはスカートの中から暗視ゴーグルとサプレッサー付きの拳銃を取り出していましたが、悠さんにハリセンでしばかれて、シブシブ元に戻していました。
2人が去った体育館裏には誰もいなくなります。私と一鷹さんを除いては。
「凄いもの見ちゃいましたね」
「ハルノ怖ぇー、ハルノ怖ぇー。俺、もうハルノに口ごたえするの止めよう……」
私たちも茂みから抜け出すと帰路に着きました。
一鷹さんをお家に送り届けお屋敷に戻ると、門番のように入り口にハルノが立っていました。
顔のペイントを落として、整った顔立ちと切れ長の瞳で私を睨んでいます。
「おい」
「な、なんですか?」
もしかして、覗き見していたことを怒っているのでしょうか? ハルノの言っていた闖入者とは私と一鷹さんのことですものね。さすがに発砲とかしませんよね……?
「夕食を早く作れ。博士と悠様を飢え死にさせるつもりか?」
「……はい、分かりました。すぐに準備しますね!」
よかった、食事のことでしたか。
覗き見に必死になりすぎてすっかり忘れていました。短時間で作れる料理……残り物を活用したチャーハンにでもしましょうか。栄養価もあり、時間と食材を節約できるので問題も解決。これで問題ありません。
ハルノの用件はそれだけだったのか屋敷の中に戻ろうとしました。が……
「期待しているぞ」
「へっ……?」
ハルノがボソリと呟いたのを私は聞き逃しませんでした。
アリスイヤーは地獄耳。
まさかハルノがそんなことを口走るなんて……私の料理を少しは認めてくれているのでしょうか? うふふ、それなら嬉しいですね。まさに、まったく問題ありません!
「さあ、今日も腕を振るいましょうか!」
お腹を空かせた博士たちのために私は厨房へと急ぐのでした。
あぁ、なんて言えばいいのでしょう?
あぁ、実に、平和ですねぇ ──……
ここは高校がなぜか密集する土地『エリア』。
『エリア』には個性豊かな人間が沢山いる。
今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。
次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない
おまけ
ここは「ヴァルストークファミリー」の実家。
遅めの夕食を済ませたカズマは、食卓の対面に座っている双子の妹・アリアを見つめていた。
「なぁ、アリア」
「なによ、バカカズマ?」
アリアは一瞥もせずにテレビを見ながら、食後のコーヒーを飲んでいる。
カズマはアリアの顔をマジマジと見ながら言った。
「やっぱり、女の髪はショートに限るよな!」
「ブゥ ──── ッ!!」
力強いカズマの宣言に、アリアは思わずコーヒーを噴き出していた。せきごみながら顔を紅潮させて、荒々しく食卓を叩く。
「なによ、アンタ! あ、あたしをそんな目で見てた訳!?」
「へ? なにが?」
カズマは訳が分からずただコーヒーを啜るだけ。
居間でテレビを見ていた妹のミヒロと姉のアカネも、カズマの言葉に反応していた。
「お兄ちゃん! 私も髪の毛短いよ、ねえねえ、可愛い? 可愛い?」
「はいはい、可愛い可愛い」
ミヒロの言葉を軽く流すカズマ。
「私なんてショートでスレンダーだよ。うふ~ん、どうカズマ? メロメロっしょ?」
「はいはい、メロメロメロメロ」
「ダッシャア!」
「16文キック?!」
適当な受け答えをしていたらカズマはアカネに前蹴りをお見舞いされた。食卓から蹴り落とされる。
「痛えじゃねえか!?」
カズマが起き上がると、視界に入ってきたのは長女のシホミ・アーディガンだった。ちなみに彼女の髪の毛はロングヘアー。
普段からシホミが天女のような笑顔を絶やすことはない。
「あらあら、カズマちゃんは髪の長い女の人が嫌いなのかしら?」
「え……? そういう訳じゃあ……」
身の危険を感じたカズマは必死に取り繕おうとする。
しかし ──
「お姉ちゃんは悲しいわぁ!!」
「ぎゃああああああああぁぁっ!!」
── 時既に遅く、シホミの両目が見開かれたとか、開かれなかったとか……真相は定かではない。
合掌。
<キャラ紹介>
アリス:クラール・グライフ博士の家で働く家政婦。年齢不詳。屋敷の家事全般と経理担当をしている。暇があまり貰えず、住み込みで働いているので友人が出来ないことが悩み。
ハルノ:クラール・グライフ博士の家で働く家政婦2。アリスと違い家事はできず、屋敷の安全管理を一任されている。その経歴はなんと元傭兵で、どういう育てられ方をされたか不明だが、平和な「エリア」の常識を無視した行動をすることが多い。スカートの下に武器を隠し持っている。
南雲 一鷹:博士の家によく遊びに来る中学3年生。好奇心旺盛で色々なことに首を突っ込みたがる。アリスの数少ない友人の一人。
悠凪 グライフ:ジェネ高3年生で、博士の孫。カズマとは何故か知り合い。女を紹介してくれと懇願され、とりあえずハルノを紹介する。
○屋敷側からラブレターを入れた犯人は実は彼。
カズマ・アーディガン:ジェネ高2年の「ヴァルストークファミリー」の長男坊。彼女いない暦=年齢で、恋人を作るために行動を開始する。手始め(練習)にハルノを紹介してもらい、ラブレターを送ってみるが……。今回の一件で少しロングヘアー不信に陥る。
<次・回・予・告>
キョウスケ「キョウスケ・ナンブ復活。みんな、心配をかけたな」
エクセレン「大丈夫よ、きっと、誰も心配なんてしていないから」
キョウスケ「そ、そうか」
エクセレン「それよりお赤飯炊いたの。キョウスケもどう?」
キョウスケ「ああ、頂こう。ところで赤飯を炊くとは、なにか良いことでもあったのか?」
エクセレン「キョウスケの開通祝いよん♪」
キョウスケ「……ご馳走様でした」
エクセレン「お粗末様でした。じゃあ次回予告いってみよー!」
キョウスケ
「俺の名前はキョウスケ・ナンブ! 覚えてくれたかな?
次回は第2次スパロボZの発売決定を記念して、ランド・トラビスを登場させる予定だ!
名づけて「ザ・ヒート 熱すぎる漢たち」!
内容は一切考えていない! 落ちぶれて ── ではなく、こんな作者でスマン!
では次回もスパロボ学院に、打ち砕けリボルビング・バンカー!!」
エクセレン
「フルメタル・パニックもよろしく!」
はい、今回は「フルメタルパニック」ネタでお送りしました。
ギャグはいい。
スラスラ書けますね。
フルメタの短編はかなり面白いので、興味の向いた方は是非読んでみてください。
sibugakiさん、ケルンバイターさんいつも感想ありがとうございます!
感想を励みにこれからも頑張っていきたいと思います!
次回はランドを出すどー!
暑苦しくなるのはお約束な話にしたいです。