スパロボ学院 ~ OGだよ、全員集合! ~   作:北洋

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<注・意・事・項>

全力でキャラ崩壊中!
閲覧すると気分を害する可能性があります!
スパロボOG界で生身で戦えるユニットとなったお兄ちゃんがキャラ崩壊起こしております!
それでもよいと言う方はどうぞ!

次回予告? なにそれ、美味しいの? と言わんがばかりに、次回予告を無視中ですw
いや、あの、ごめんなさい。
ではどうぞ!


バカとビビリと大金持 ~兄より優れた妹など存在しねえ!~

 ここはなぜか高校の密集する地域、エリア。

 

 突然の話だが、エリアは住宅街、商店街、繁華街と大まかな区分分けがされている。

 住宅街は住民の寝起きする場所、商店街は日用雑貨や卸売の食材を販売、繁華街では大手の店が軒を連ねて商売をしていたりする。住宅街を除き、商店街・繁華街とエリアの住民が店を構え商売をしているわけだが、個人商店の脅威になる大規模フランチャイズ店がないわけではなく、モスドナルドやケンカッキーフライドビーフなど有名店も進出していた。

 有名フランチャイズ店のバックには、当然のように巨大企業の影が存在している。

 飲食店経営に限らず、コンピュータ製造販売のソミーや週刊誌の製造販売を担う超英社のように、有名な企業の息がかかった店はエリア内にもあるのだ。

 これは、そんな巨大企業の若社長と社長秘書のお話である。

 

「あぁ、暇だなぁ」

 

 エリアのどこかにある超高層ビルの一室 ── 社長室で、その男は呟いていた。リッチな社長椅子の背もたれがギシギシと豪華そうな悲鳴を上げている。

 

「世の中の物事の99.999999%はお金があれば解決できる。僕はお金持ち。それも超絶お金持ちだ。

 僕にできないことは何にもない。僕はいうなれば全能者さ。だけど今、僕は猛烈に暇なんだ」

 

 男は独り言を終えると、社長椅子から立ち上がり、天を仰ぐように両手を突き上げて唸った。

 

「お金があれば何でもできる! お金、持ってますかー!?」

「うるさいですよ、カルロス・アクシオン・Jr.。何がそんなに不満なんですか?」

「そんなの決まっているじゃないか、シオニーちゃん」

 

 男をカルロスと呼んだ銀髪の社長秘書らしき若い女性を、彼はシオニーと呼んだ。

 男の名前はカルロス・アクシオン・Jr.、つい最近、エリア内で頭角を現し始めた「アクシオン財閥」を取り仕切る頭取、いや、若社長である。ちなみにカルロスは、奇抜で常識を疑うようだがそれでいて独創的かつ効果的な経営手腕を持っており、古参の企業「D・C」や「マオ・インダストリー」とは犬猿の仲である。

 決して、彼が、奇抜で常識を疑うような独創的な男というわけではない。そこのところは間違えないでいただきたい。

 新進気鋭、生き馬の目を抜くような企業間経済闘争の寵児……それがカルロスだ。

 そんな大物が、コメリカ初の黒人大統領のような身振り手振りを交え、吼えた。

 

「暇なんだ!」

「はぁ」

「HI・MA・NA・NN・DA!」

 

 思わずローマ字で発声してしまう程、カルロス・アクシオン・Jr.は暇だった。

 金を手に入れ、すべてを自由にできるようになった。何でもできる。だから何をしようか迷い、仕事を終えたあとの時間が、カルロスには暇で暇で仕方なく感じられるようになっていた。

 カルロスの暇さを目に見えるように表現すると、

 

 

── バンッ!(机をたたく音)

「ひっ……!」

 

 

 意味も無く机をたたき、ついつい、美人秘書のシオニーちゃんをビックリさせて暇をつぶしてしまう程である。

 

 

── ババンッ、バ、バンバンッバンッ!(カルロスが机をたたく音)

「ひっ……やめて心臓が……はぁはぁ」

 

 

 胸を押さえてうずくまるシオニーちゃんを見て、しょうがないので机をたたくのを自重するカルロス。彼は欲望に抑えが少しだけきく、立派な大人なのだ。偉いぞ、カルロス。

 

「これで、僕がどれぐらい暇か分かってもらえたと思う! 中小企業『リモネシア』の社長だったけれど、経営難から我が財閥に吸収され、今は社長秘書として働いているとっても臆病者のシオニーちゃんにもね!」

「はぁはぁ、と、とても説明ちっくなセリフありがとうございます……!」

 

 言葉とは裏腹に射抜くようなシオニーの視線。だがそんなもので貫かれるような薄い皮を、カルロスの面はしていなかった。

 

「シオニーちゃん、僕は暇なんだ?」

「知ってます」

 

 カルロスを無視して、落とした書類を拾い集めるシオニー。

 無言で両手を上げるカルロス。

 数秒後、彼の手が振り下ろされる先には、さっきのバンバン音を奏でた分厚い木製の社長デスク。

 

「シオニーちゃん、僕は暇なんだ?」

「…………」

「HI・MA・NA・NN・DA?」

 

 そりゃあもう、2度もローマ字で発音してしまうぐらいには。

 カルロスの手首がピクつく。肩を震わせながら、シオニーちゃんは答えた。

 

「分かりましたよ! やればいいんでしょう、やれば! 暇つぶしの企画を!?」

「さすがシオニーちゃん。頼りになるぅ」

 

 こうして、アクシオン財閥主催の「第1回自慢自慢大会」が、エリアの商店街に特設ステージを建設して行われることになった。

 カルロスの暇をつぶすために、急ピッチで作業が進められ、参加者を募るチラシがエリア中に配られた。

 賞金は1000万……ペイカ(見えないぐらい小さく書かれている。ペイカはアクシオン財閥内でだけ通用する単位で商品券のようなもの、価値は円の1/1000程)……シオニーちゃんのヤケっぷりが目に見えるような宣言っぷりであった。

 

「もう、やだ」

 

 頑張れ、シオニーちゃん。君が報われる日はいつかきっと来るさ……たぶん。

 

 

 こうして、あっという間に、「第1回自慢自慢大会」の開催日がやって来るのだった。

 

 

 

      ●

 

 

 

 開催日、商店街の特設ステージ上で、赤いジャケットを着た男がマイクに向かって言った。

 

 

「俺の名前はキョウスケ・ナンブ。この物語の主人公にして、俺の絶叫は収録用のマイクすらも破壊したことがある程だ。

 では、みんなに俺の美声を堪能してもらいたい。せーの、ボルッテッ ────」

 

 

── カーン

 

 

 審判用の鐘の音が鳴る。最低ランクの1鳴りであったことにキョウスケは驚愕し、その驚きの様は彼の眼にありありと浮き上がっていた。

 

「キョウスケ、アウトーー」

 

 審査員長カルロスのほくそ笑んだ審判が下される。

 

「待て! なぜだ! なぜなんだ!? 俺の舞台はまだ終わっていない!」

「えぇい、その鐘1つ男をひっ込めろ。賞金欲しさにメタ発言するような奴は失格。僕の悪口を言うような奴も失格。

 それに君の発言で、この大会が公共広告機構(・・・・・・)に睨まれたりしたら面倒ジャロ(・・・)?」

 

 カルロスの発言に場の空気が凍った。

 時が止まったような寒さが会場内を駆け抜けていく。まるでその様はさながらブリザード……しかし直後、会場内から拍手喝采が巻き起こる。先ほどの白けた雰囲気すら、この爆発のためのタメでしかなかったような。そう思わされる程の拍手とカルロスコールだった。 

 もちろん、サクラである。

 シオニーちゃんに雇われたサクラが、観客を扇動し場を盛り上げていた。カルロスは、まぁまぁ、と会場の騒ぎを押さえるように、檀上の審査員席から手を振り、満足気な表情でジェスチャーをしていた。

 納得いかん、と黒子に引きずられながらキョウスケが叫んでいた。

 

「俺の! 俺の名を言ってみろ ── ッ!!」

「キョウスケ、あうとーー」

 

 残酷な鐘の音(1回)が死神の鎌のように、キョウスケの退場を告げる。

 カルロスはその光景を笑いながら眺めている。実に楽しそうだった。エリア住民の滑稽な自慢話が、カルロスの退屈を拭い去っているように見える。

 シオニーちゃんは審査員席でカルロスの隣に座っていた。楽しそうに笑うカルロスに白い流し目を向けた後、びくびくしながら司会の仕事を続ける。

 

「で、ではエントリーナンバー33番、『ミザル組若頭 重震のマグナス』さん、ど、どうぞ」

 

 シオニーちゃんの言葉に続いて、相撲取りに贅肉をさらに足したような巨漢が壇上に姿を現した。

 マグナスと呼ばれた男が腹を叩く。湖面に小石を投げ入れたような波紋が肉面に広がった。

 

「ぐふふふ、俺様の体は拳法殺しの体ー。さらに俺様の必殺技、巨霊奔烈は地を砕き、天を裂き、人を ────」

 

 

── カーン

 

 

 カルロスの鐘による審判が冴えわたる。

 

「マグナス、(存在自体が)アウトー」

「な、なんだってー!?」

 

 マグナスの大きな体が衝撃にぷるんと震えた。

 確かに、マグナスは某有名、ほあたぁな、漫画のキャラクターに似ている。具体例を挙げるならハー……とその時、マグナスの怒りが爆発した。

 

「なんで俺様が失格なのだ! 理由を言え! 理由を!」

 

 だからマグナスがハー……とにかく、マグナスの主張は当然のものでもある。

 世の中には理不尽が溢れているとしても、自己アピールさえさせてもらえない、売り込むチャンスすらないなんて悲しすぎる。

 マグナスの主張はもっともだと、シオニーちゃんは思った。

 なぜなら、彼女はアクシオン財閥への就職希望者の面接官をしたことがあったからだ。ちなみに内定率は100%と破格。彼女が担当する面接通過のコツは簡単だ。シオニーちゃんの前で大声を上げたり、机をたたけばそれでいい。

 

「ごめんごめん、悪気はないんだ」

 

 カルロスがマグナスに謝罪する。

 

「けど、ほら、あれさ。僕って金持ちだからね、貧乏人の考えは分からないんだ。だから許しておくれよ」

「テメェ、謝る気ねえだろう!?」

「そんなことはないさ!」

 

 

── カンカーン

 

 

 カルロスの叩く鐘が2連発した。

 

「ほら、奮発して鐘を2回鳴らしておいたよ。君ら貧乏人には勿体ないくらいさ」

「ぶるぅぅあぁぁ! 許さん! このチビめ、俺様の巨霊奔烈の餌食にしてくれるわ!」

 

 激昂したマグナスがカルロスたちに近づいていく。マグナスの巨体の影が、審査員席に座っているカルロスたちを覆っていく。鬼の形相のマグナスと2人の視線が絡み合った。

 

「ひ、ひぃ……!」

 

 シオニーちゃんが怯えた声を漏らす。

 両手で頭を庇って震えていて、その様子は見ているものの嗜虐性を刺激する。マグナスの瞳に怪しい光が灯る。拳を鳴らすマグナスの巨体が、まるで悪魔のようにシオニーちゃんには見えた。

 

「ぼ、暴力反対! 僕を殴ると高額訴訟を起こすよ!」

「ぐふふ、ならばその減らず口、二度とたたけぬようコンクリに固めて沈めてくれるわ」

「な、なんだって!? 君、貧乏人の分際で金持ちに逆らおうって言うのかい!? 信じられない、アンビリーバボーだよ!!」

 

 カルロスの絶叫にマグナスは、ヤクザ屋なめんなよ、とドスの利いた声で返してきた。

 このままでは2人の身が危ない。特にシオニーちゃんに非はないため、完全にカルロスの傲慢のとばっちりである。コンクリと合体して海にダイブ……想像しただけ身の毛もよだつ。

 しかしマグナスはやりそうだ。

 マグナスの嘲笑がシオニーちゃんの恐怖に拍車をかける。

 

「何なのよ、もう……! 帰りたい……私をお家に帰してよ!」

 

 もう嫌だ。なぜ自分はここにいるのだろう。なぜリモネシアは経営難に陥ってしまっただろう。なぜ、あのときあの男 ── アイム・ライアードの言葉を信じてしまったのだろう。シオニーちゃんの頭で走馬灯のように疑問の嵐が吹き上がる。

 しかしそれは直面した事態からの逃避でもあった。

 

「ぐふふ、安心しろ。女の方は回したあと、娼館に売り払ってやるわ」

「ひっ、い、いや……!」

 

 マグナスの笑顔が痰のようにシオニーちゃんの視界にねばりつく。

 気持ち悪い。他に表現のしようがないマグナスの顔から反射的に顔を背けた。

 

 

── 助けて! 誰か!!

 

 

 シオニーちゃんは懇願する。しかし理解していた。願って叶うのなら、あのときリモネシアはアクシオン財閥に吸収合併などされなかったはずだ。

 この世界にヒーローなんて存在し ──

 

 

「待てぃ!!」

 

 

 ── した。

 壇上に力強い声が響いた。背後から聞こえた声にマグナスが振り返り、カルロスもシオニーちゃんも声のした方を向いた。

 壇上に紅い鎧に身を包んだ男が立っている。

 

「行く手に危険が待ち受けようと、心に守るものあるならば」

 

 鎧の男は青い髪をなびかせてマグナスに近づき、

 

「たとえ己の命尽きるとも、体を張って守り通す ──」

 

 人の顔を模した仮面、その瞳部分に真っ赤な炎を燃やしながら叫んだ。

 

「── 人、それを『男』と言うんでえ!!」

「テメェ、何者だ!?」

「エントリーナンバー34番! 『萌(も)える妹魂(シスコン) しっとファイターロア』! 呼ばれてなくても只今参上だぜ!!」

 

 紅い鎧の男 ── ファイターロアが一瞬でマグナスの懐に潜り込む。そして燃え上がる拳をマグナスに突き込んだ。

 しかしファイターロアの突きは肉に阻まれた。マグナスの腹の贅肉がファイターロアの拳の威力を分散させて、消してしまうようだ。

 

「ぐふふ、俺様の体は拳法殺しの体よ! そんなパンチ、痛くもかゆくもないわ!」

「そうかい! なら、こうするまでだぜ!」

 

 ロアが止められた拳をねじり上げる。真っ直ぐ突き出していた腕を肘を視点に直角に曲げ、至近距離にも関わらず一歩踏み込んだ。足で地面を蹴って、生まれたエネルギーを全てマグナスの体をかち上げるために使った。

 

「うらああぁぁ ── ジェットアッパァァアァッ!!!」

 

 マグナスに接触したままの拳が、直上に向けて振りぬかれた。マグナスの巨体が地面から離れる。

 

「お、俺様の体が持ちあがる、だとぉぉ!?」

「パンチで倒せないなら、パンチでふっとばすまでよ!」

「ば、バカな! そんな……パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない的な、そんな理屈が通用するはずが! 通用するはずがぁ ── ッ!?」

 

 BACOOOOMM!!

 マグナスの体が渦を巻きながら天空高く叩き上げられた。1m、2m、3m……マグナスの体の速度は増していき、ドンドン上昇していく。その様子はまるで加速し、上昇するジェット機のようだった!

 車○先生の某漫画と違い、マグナスの体は頭から落ちてくることはない。落ちれば間違いなく頸椎を折る高さからの落下は免れ、きらりと、マグナスの体は空に輝く星となった。

 

 

── カンカンカンカーン!!

 

 

 カルロスが鐘を狂ったように打ち鳴らす。

 

「勝者、ファイターロア!」

「見てたかショウコ! 兄ちゃんは、兄ちゃんはやったぞ! 次はフォルカだ!」

 

 カルロスの判定にロアが拳を突き上げて吠えた。

 会場からも歓声が沸き起こる。シオニーちゃんの雇ったサクラが観客を扇動したようだ。「次は~」の下りには誰も触れず、会場は自然とロアコールが巻き起こっていた。

 

「な、なんだか……大会の趣旨が変わっていない……?」

 

 もはや会場では、シオニーちゃんだけが冷静だった。

 「第1回自慢自慢大会」……カルロスの暇つぶしのために、シオニーちゃんが無理やり考案した、自慢したいことを自慢する大会だ。

 カルロスも審査員として参加させれば暇はしないだろう、というかなり投げやりなアイデアだったが、予想以上に参加者が集まり大会らしくなった。その事にシオニーちゃんは小さな達成感を感じていた。

 それが今はどうだろう?

 気づけば、ボクシング漫画のような展開になっているではないか。

 

「よーし、お前らこれを見ろ!」

 

 ロアコールに当てられたのか、ファイターロアが何処からか数枚の写真を取り出した。

 女の子の写真だ。カメラ目線のものもあるが、ほとんどが撮られていることに気付いていないと思われる写真ばかり……盗撮チックな写真を見せつけ、ファイターロアは全身全霊で喉を震わせた。

 

「これが! 俺の自慢の妹、ショウコだああぁぁぁっ!!!」

 

 

── カーン

 

 

 カルロスの鐘がうなりを上げる。

 

「ロア、(倫理的な意味で)アウトー」

「あ、あれ? 意外と冷静なんだ」

 

 カルロスが適正な判断を下したことにシオニーちゃんは驚く。

 

「当たり前だよ、シオニーちゃん。僕は金持ちだからね。金持ちは社会の流れに敏感なものだよ。どんな大金持ちの権力者でも、社会という化け物には勝てない。社会という化け物の規範に刃向えば、僕のような大金持ちでもすぐに潰されてしまうからね。

 だから僕ら金持ちは社会に刃向わず、流れに乗り、金を稼ぐのさ。投資するのさ。だから彼はアウト。社会が彼を認めないからさ!」

「てやんでぇ、べらぼうめ!」

 

 ファイターロアの江戸っ子口調が空を裂く。

 

「妹を舐めんなよ! 妹は最高だ! もう文化と言ってもいい、デカルチャーなんだぜこんちきしょー!!」

 

 シオニーちゃんの目の前で、カルロスの持論にファイターロアは妹最高論を振り上げて反論していた。

 妹を大切に思う兄の気持ち……シオニーちゃんは、彼の気持ちは素晴らしいものだと思った。こんな自慢大会に出場して訴えることができる程、彼は妹のショウコちゃんのことを想っているのだ。

 ふと、ファイターロアが握っている写真の絵がシオニーちゃんの目に入った。

 お風呂場だ。それも、これから風呂に入ろうとしているショウコの写真だった。上着に手をかけて脱ごうとしており、お腹周りのタマのような素肌が見えていた。

 気持ち悪い。素直にそう思えた。

 

「いいか、妹は素晴らしい!」

 

 ファイターロアはシオニーちゃんの心の内を知らず、マイクに向かって主張を続けた。

 主張自体は自慢大会の趣旨に合っているのでシオニーちゃんは止めなかった。

 先ほどまでの江戸っ子口調とは打って変わって、真面目にファイターロアが語りだす。

 

「まず妹は、兄よりも歳が若いことが美点としてあげられる」

 

 真面目な口調だが言っていることは大したことない。妹が兄より若いのは当たり前のことだ。

 ファイターロアの熱弁は続く。

 

「身内が女ならいいのか? いいや、違うだろう。

 女でも母ちゃんや姉ちゃんだと、歳が上になってしまう。歳が近い姉ちゃんがいたとしても、姉という人種は弟に対してあまりに独裁的である。加えて歳が離れている姉ちゃんほど我慢しがたい存在はいない。母ちゃんなど論外だ。歳が離れれば離れるほど、母ちゃんや姉ちゃんに対する萌え度は、まるで滝から落ちる水のように急降下する。

 しかし! 妹は! 違う!

 妹の歳は離れれば離れるほど、萌えるのだ! 歳の差がメリットに成り得るのは妹だけだ! ちがうか諸君!!」

「おぉ……」

 

 誰かが会場で感嘆の声を漏らしていた。誰だ? シオニーちゃんは見つけ出して、声の主を打ち首にしたい衝動に駆られた。

 ファイターロアのトークは段々と熱を持っていく。「Yes.We Can!」と言い出しそうな身振り手振りでロアの妹論が続く。

 

「ここでドジッ子属性について考察してみよう。

ドジッ子とは間が抜けてミスを連発してしまうが、むしろそこが逆にイイ! という恵まれたキャラクター性だ。ドジッ子は可愛いよなぁ、と思う人も諸君らの中に少なくないと思う」

 

 驚くことに、うんうん、と小さいながら声が上がった。シオニーちゃんは賛同者を発見したら、すぐさまバイクによる町内引きずり回しの刑にしたい衝動に駆られた。

 

「ではまず、姉ちゃんがドジッ子だった場合を想像してくれ。……想像できたか? 自分よりも年上の人間が、バケツにつまずいて水浸しになる、運んでいたコーヒーをこぼしてカップを割る……なんでもいい、想像してくれ。

 ……確かに、見た目に可愛くは映るかもしれない。

 だが、ここでもう一度想像してほしい。先ほどのシュチュエーションで、姉ちゃんを妹に挿げ替えて想像してみてくれ!」

 

 ファイターロアは一拍の間を置く。

 

「どうだ! 可愛らしさが2、3倍になっただろう!

 あるとき妹がバケツにつまずいて水浸しになれば、大丈夫か?かわいそうに、と心配し、別のとき妹がコーヒーをこぼしてカップを割れば、ふふふ仕方のない奴めと、俺たちの顔には笑みが浮かぶ!!

 妹とは、どんなシュチュエーションでも萌え度を倍増させてくれる。妹とは、人生における最高のスパイスなのだ!!」

「「「おおぉ~~」」」

 

 会場から上がる歓声を聞いて、もう死ね、とシオニーちゃんは思った。結構な数の声が会場から上がっていた。シスコンを1匹見つけたら、あと30匹はいると考えた方がいいのかもしれない。

 あと付け加えれば、妹想いの人は決して妹の脱衣風景を盗撮なんてしない。

 盗撮。ダメ。絶対。

 

「いいか! 妹は最高だ! さぁご一緒に、妹は最高ですかーー!?」

「「「最高でーす!」」」

 

 ファイターロアの声に観客の多くが応える。

 なんだか、怪しい新興宗教みたいになっている。止めた方がいいんじゃないか、とシオニーちゃんは焦燥感を覚える。

 と、そのとき。

 

「ちょっと、待ったぁーー!!」

「え? こ、今度はなに?」

 

 大声を上げ、1人の少年が壇上に乱入してきた。

 

「俺の名前はカズマ・アーディガン! 先輩、あんたは間違っている!」

「オメェ……2号か! 久しぶりだなぁ。しかしさっきの言葉はどういう意味でぃ?」

「そのまんまの意味だぜ、先輩!」

 

 乱入者の名前はカズマ・アーディガンというらしい。しかもファイターロアと知り合いらしい。それだけで気持ち悪い。とシオニーちゃんは思ってしまった。

 

「いいか! 妹ってのは鬼だぞ! 鬼畜じゃねえか! それを褒めたたるなんて、先輩はどうかしている!」

「なにを言う2号! 妹は ── ショウコは最高だ! なんなら歌を歌ってやってもいいぐらいだ! そら、いくぞ!

 ショウコーショウコーアズマーショウコー、ショウコは可愛い女の子―」

 

 なんとファイターロアがマイクに向かって歌いだした。しかも歌は即興で考えた自作のようだ、しかも下手。これにはドン引きしていたシオニーちゃんも、さらに大きく引かざるを得ない。

 

「なんだと? なら、俺も!」

 

 カズマも対抗して歌を歌おうとし始めた。しかし壇上には大会参加者が喋る用のマイクは1つしかない。大会参加者が喋る用のマイクは、だ。

 カズマとシオニーちゃんの目が合う。シオニーちゃんの手には司会者用のマイクが1つ握られていた。

 

「頼む! 司会者の姉さん、そのマイクを俺に貸してくれ!」

「ひっ、なんで?」

「これが男の戦いだからだ!」

「もう嫌ぁ!」

 

 シオニー・レジス25歳。心の底からの叫びであった。

 

「なんなのよ……なんなのよこの人たち……!」

「あははは、いやー、楽しいね。最高だ」

「ちょっとカルロス! あなたまでなにを言っているの!」

 

 カルロスまで妹魂(シスコン)に目覚めてしまったのか、とシオニーちゃんは驚愕する。

 ……いや違う。カルロスはこのカオスな状況と慌てふためく自分を見て楽しんでいる。そうに違いない、とシオニーちゃんは推測した。

 

「むむ、僕の考えを読んだか。ビビリのくせに」

「ひっ……こ、心を読まれた……?」

「あははは、なーに、ちょっとした読心術だよ」

 

 得意げなカルロスの笑みに、大きな苛立ちを覚えるシオニーちゃん。

 

「それよりマイク貸してくれよ!」

「ショウコーショウコー、ツンデレショウコー! よぉし乗ってきた! 2番いくぜぇ!」

「もう嫌! 誰か! 誰か私を助けてよ!」

 

 歓声、暴走、煽り……様々な要素が入り乱れてカオスとなった会場に、シオニーちゃんの悲鳴が響き渡る。

 それは経営していた会社を乗っ取られ社交秘書にされた挙句、無理やり企画させられた大会をもメチャクチャにされた、1人の女の悲痛なまでの叫びであった。

 あぁ、誰か私を助けて。他力本願なシオニーちゃんには誰も応えてくれない。というより、騒然としている会場に声はかき消され、誰の耳にも届いていなかった。

 それでもシオニーちゃんは願った。

 このカオスに収集してくれる救世主の存在を!

 まさにそのときだった!

 

 

「お兄ちゃん、恥ずかしいからやめてよね!」

「いい加減にしなさいよ、このバカカズマ!」

 

 

 会場から女の子の大声が上がった。

 会場の人垣が声の主を中心に割れた。まるでモーゼのなんたらのように、声の主から人が引いていく波のように離れていき、2人の少女と1人の青年だけが残された。

 茶髪の少女と青髪の少女、そして赤い髪の青年が腕を組んで立っていた。

 

「おお、ショウコ! ショウコじゃないか!」

「げぇ、アリア!」

 

 ファイターロアが茶髪の少女を喜々としてショウコと呼び、カズマが青髪の少女をアリアと呼んで怯えていた。怒り心頭。ショウコもアリアも目と眉が吊り上っている。

 

「お兄ちゃん、これはどういうことなの!?」

「妹の ── ショウコの素晴らしさをみんなに伝えようと……」

「このバカァ!!」

 

 ファイターロアがショウコに怒声を浴びせられ、

 

「ねぇバカカズマ、鬼畜の妹って誰のことかしら?」

「…………ミヒロ」

「嘘おっしゃい! このバカカズマ!」

 

 やはりカズマもアリアに罵声を浴びせられていた。

 

「バカなお兄ちゃんには」「バカなアニキには」

 

 2人の声がシンクロする。

 

「「お仕置きが必要ね!」」

「心得た」

 

 ショウコたちの後ろで動かなかった赤髪の青年が動いた。

 背が高く、引き締まった筋肉をした男だ。眼力だけで相当の修羅場を潜ってきた男だと分かる。只者ではないことが一目でわかる。

 その男が腕組みを解き、なにかの拳法の構えを取ったのだ。

 途端に、会場にいた観客が逃げ始めた。まるで湖面から飛び立つ水鳥のように、静かに会場には誰ひとりいなくなる。

 シオニーちゃんは猛烈に嫌な予感に襲われていた。

 

「テメェ、フォルカ!」

 

 ファイターロアが赤髪の青年の名を呼んだ。フォルカと言うらしい。

 

「今日で会ったが100年目!」

「いえ、今日で会ったのは4回目です。お兄さん」

「てやんでぇ! 俺をお兄さんと呼ぶんじゃねえ! 今日こそ、俺の奥義『ファイヤードラゴン』で消し炭にしてやるぜ!!」

「致し方なし。ならば、こちらも機神拳の奥義で迎え撃つまで……!」

 

 ファイターロアの体が燃え上がり、拳を構えたフォルカの周りの空気が揺らめき始めた。

 ファイターロアの体から燃え上がる炎の龍が出現し、フォルカの周りの空気は青白いオーラのようなものに変質する。

 2人が何かを口走っている。おそらく技の名前かなにかだろう。シオニーちゃんにはそんな風に見えた。

 2人が拳を振るう。発光と轟音、そして衝撃が拳から生まれる。

 

「ひ……!」

 

 一瞬でシオニーちゃんの視界はまばゆいまでの白で覆い尽くされた ──……

 

 

 

 

      ●

 

 

 

 それからの事をシオニーちゃんは覚えていない。

 

 目を覚ましたら、全壊した「第1回自慢自慢大会」用の特設ステージだけが残されていた。

 ファイターロアも、カズマも、フォルカの姿も見えなかった。ショウコとアリアも当然いない。残っていたのは、みすぼらしく真っ黒に焦げた服を着たカルロスだけだった。

 髪の毛もちりちりに焦げている。凄い熱量に曝されてしまった後の、燃え残った残りかすのように見えた。彼はなぜか残っていた審判用の鐘の傍で立ち、シオニーちゃんの方を見ている。

 その顔には、なぜか、彼が暇をしていない時に浮かべる笑みが張り付いていた。

 

 そして気づく。

 自分の姿もカルロスと同じザマになっていることに。

 

 いや、もっと酷い。愛用のスーツが真っ黒どころではなく、ボロボロに焼け落ちていた。焼けて穴の開いたスーツの隙間から、シオニーちゃんの雪のような素肌が見える。ついでに愛用の黒い下着もだ。

 

 

── ガイィィン

 

 

 カルロスの審判の鐘の音が鳴り、砕けて落ちる。

 

「シオニーちゃん、(性的な意味で)アウトー」

「死ねぇ!!」

 

 唸る鉄拳、轟く打撃音……その日、シオニーちゃんがカルロスを殴る音が商店街中に木霊したという。

 今日も明日も、カルロスの暇つぶしに付き合わされるシオニーちゃんの日常は続く。

 

 

 

 

ここは高校がなぜか密集する土地『エリア』。

『エリア』には個性豊かな人間が沢山いる。

今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。

次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 




<キャラクター紹介>

シオニー・レジス:中小企業「リモネシア」の社長だったが、「アクシオン」財閥に吸収され、今はカルロスの社長秘書をしている。あだ名のシオニーちゃんはカルロスが勝手に命名(実は25歳なのでちゃん付けされる歳ではない)。超が付くほどのビビリで、そのビビリっぷりはSたちの嗜虐性を刺激し、彼女の前で机をバンしたいというSなファンが地味に増えているという。

カルロス・アクシオン・Jr.:「アクシオン財閥」の若社長。奇抜ば経営手腕で短期間でトップ企業の一員に上り詰めた。暇を持て余すと、シオニーちゃんに無茶ブリをしたり、彼女の前で机をバンする悪癖がある。金持ちを鼻にかけた嫌な奴のため、特定人物に「すっとこどっこい」と呼ばれている。

(しっと)ファイター・ロア:深紅の鎧に身を包む我らが変身ヒーローにして、「萌える妹魂」。今回は妹の素晴らしさを広めるために大会に出場。日々、妹ショウコの恋人フォルカをぶっ殺すための必殺技を開発にいそしみ、毎度返り討ちに会っている。

その他:主人公・長男坊・妹・修羅など


<次・回・予・告>

キョウスケ
「マイクの力を借りて! 今こそ必殺の!
     リアクタアァァッボルッテッ ──────」

── カーン

エクセレン「キョウスケ、アウトー♪」

キョウスケ「くっ、なぜだ! なぜ、邪魔をするエクセレン!?」

エクセレン「うふふ、それはねー、キョウスケが私のお兄ちゃんじゃないからよ♪ お兄ちゃんになってくれたら、叫んで撃ってもいいわよん♡」

キョウスケ「な、なにを言っているんだ?」

エクセレン「そんなわけで『宇宙の騎士 テッカマンブレード』もよろしく!」

キョウスケ「次回予告は?」

エクセレン「なしよ! 毎度無視するから!」

キョウスケ「お、俺の出番が……」



カルロスとシオニーちゃんを書いていたらこうなった。
後悔はしていない。反省もしていない。
こんな作者で良ければ、絶賛元ネタ募集中です!
提供されたネタを私なりにアレンジ・統合して書いていきたいと思います!
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