スパロボ学院 ~ OGだよ、全員集合! ~   作:北洋

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<注・意・事・項>

絶賛、キャラ崩壊中!
フィリオさんや負け犬ちゃんが、大変にキャラ崩壊起こしています!
プロジェクトTDのイメージを崩したくないという方は、読まない方がいいかもしれません。
あ、あと微エロです。
以上を踏まえた上で大丈夫という方は、どうぞご覧ください!

今回の話には、ゲレゲレさんから提供された「みてみん」に投稿されている絵を使わせていただきました。
もちろん、許可は取ってあります。
ちなみに初めての挿絵付きの話になります。


今日のワン子2 ~アイドルマスター・アイビス~ 

 私の名前はアイビス・ダグラス。

 

 エリア一のマンモス高校、OG高等学院 ── 通称ジェネ高に通う高校2年生。いわゆる一つの、青春を謳歌している、今が旬の花の女子高生なんだ。 

 箸が転んでも面白い。そんな年代の私だけど、毎日が楽しいことばかりで、悩みがまったくない訳じゃないんだ。

 例えば、いくら牛乳を飲んでも胸が大きくならないことや、ツグミの焼くチーズケーキの食べすぎで……その、ほんの少し成長しちゃったり、とか……。

 でもそんなことは些細なものだ。

 私の毎日はなんて言えばいいのだろう?

 むしろ、悩み事がお祭り騒ぎしながら押し寄せてくるような、そんな毎日なんだ。

 

 今日も今日とて、それは彼の一言から始まった。

 

 

 

 スパロボ学院 ~OGだよ、全員集合!~

 今日のワン子2 ~アイドルマスター・アイビス~

 

 

 

 切っ掛けは単純なことだった。

 

「諸君、聞いてくれ!」

 

 私の所属するプロジェクトT(テレキネシス)D(ドリーム)の部長、フィリオ・プレスティが元気いっぱいに宣言していた。

 

 ジェネ高にある部室棟の一室で。

 プロジェクトTDの部室には小さなデスクが置かれていて、私は自分の席でツグミの焼いたチーズケーキを楽しみながら、いきなり椅子から立ち上がったフィリオを見た。

 フィリオは私の先輩で高校3年生。

 眼鏡をかけた色白で知的な細身の男性だ。外見のイメージ通り勉強は学校内でトップクラス、でも虚弱そうな印象は裏切って超健康体な上、運動神経抜群という絵に描いたような優等生なんだ。

 しかし天は二物を与えずという言葉があるように、神様はそんなに優しくない。

 完璧超人なフィリオにも重大な……いや、致命的な欠点があった。

 

「モグモグ……どうしたのフィリオ? 今日は宇宙人でも探すの? それとも改造人間、異世界人? 付き合うけど、このチーズケーキ食べ終わってからにしてね」

 

 どうせ、いつもの戯言だろうとケーキを頬張りながら受け答えする私。

 フィリオは一見完璧な人間に見えるけど、実は普通の人間に興味がなく、未来人や宇宙人、さらに改造人間やUMAなど、普通じゃない人にしか興味のない変人なんだ。

 部活であるプロジェクトTDの目的はテレパシーで宇宙人と交信すること。

 その上、部活の主な活動内容は未来人などの野外探索。

 なんて言えばいいのかな? 

 悲しいことにもう慣れちゃったけど、世間で後ろ指を指されかねない変人的な活動をしている部に、なぜか私、アイビス・ダグラスは所属していた。

 

「なにを言っているんだいアイビス! 今日は至って真面目な話だよ! 無論、いつでも僕は真面目だけどね!」

「そうよ。私のフィリオは最高なんだから」

「私のだと! ふざけるなよ、ツグミ!」

 

 フィリオの言葉に賛同したツグミの言葉に、スレイが目くじらを立てて怒りはじめる。

 プロジェクトTDは普通じゃない。

 つまり集まっている人間も普通じゃなかった。

 フィリオに笑顔を向けている豊満な胸の女性の名前はツグミ・タカクラ。

 この部の副部長であり、また未来人(自称)でもある。だけど未来に関する質問はすべて「禁則事項です☆」の一言で返される。

 客観的に見てツグミはフィリオの事が好きみたいだから、気を引くために未来人を名乗っているようだ。

 

 そしてツグミを親の仇のように睨んでいるスレンダーな女性はスレイ・プレスティ。

 私と同じ平の部員にして、フィリオの妹であり、さらに超能力者でもある。

 スレイは冗談ではなく本物の超能力者なんだ。けれど能力は「フィリオに近づく異性に偏頭痛を起こさせること」……ただし巨乳には効かず……。

 ツグミに通用しない地味な超能力の矛先は、主に色目を使ってないのに私に向けられている……正直、勘弁してもらいたいよ。

 「なによ!」「私の兄様に近づくな!」と口論している2人を尻目に、フィリオは高らかに手を上げて宣言する。

 

「実は! 部費が、もう、ない!」

「えぇー、なんでー?」

 

 プロジェクトTDの主な活動は、エリア内の散策だから、資金が必要なことは少ない。今まで使わず貯まった部費は結構余っているはずだ。

 

「実は先日、『宇宙人探知レーダー』を通販で購入してしまったさ! ごめんね!」

 

 この野郎。覚えた怒りを、私はチーズケーキの甘味で中和する。

 

「とにかく、ノーマネーノーフューチャーだ! スマイル0円だとか、旅先の思い出はプライスレスだとかよく聞くけれど、お金がないと活動できないし首は回らないのだ! 分かるかね、諸君?」

「さすが、私の(・・)フィリオね! 一味もふた味も違うわ!」

「さすがです兄様! えぇいツグミ、私の(・・)兄様から離れろ!」

 

 フィリオの腕に抱き着くツグミを、スレイが引き剥がそうと躍起になっていた。

 この2人はフィリオの言うことを無条件で受け入れるので、はっきり言って何の役にも立たない。

 オセロの駒には、白と黒以外に実は幻の赤色があるとフィリオが言えば、「すごいわ、フィリオ! 物知りね!」と絶賛する始末なんだ。

 ストレスの緩和にはやっぱり甘いものだよね。今日も今日とて、チーズケーキの甘味が倍増だよ。

 

「ガツガツ……それで、どうするの? お金がないのは分かったけど、どうやって部費を増やすの? 生徒会に部費の増額を申請するの?」

「HAHAHA! まさか! あの偏屈な生徒会が、そんなこと許すはずがないじゃないか」

 

 あれ? 私、変な事言ったかな? アメリカ笑いされて、いやぁ、今日は一段とチーズケーキが美味しいなぁ。

 

「バクバク……じゃあどうするの?」

「そんなの決まっている! こうするのさ!」

 

 フィリオが大仰に叫びながら、懐からなにかを取り出した。

 それは小さなビデオカメラだった。子どもの運動会なんかで、お父さんが片手で持って我が子の活躍を撮影してそうなイメージの奴。多分、メーカーはソミーだと思う。

 

「実は最近、宇宙人たち以外にアイドルに凝っていてね。プロモーションビデオとかを結構見ているのさ」

「ムシャムシャ……へぇー、意外だなー」

 

 フィリオが異能者以外に興味を持つなんて。

 でもこれは良い傾向かもしれない。アイドルに傾倒すれば、異能者好きなんて変人からは脱却できそうに思える。

 でも、それが部費稼ぎとなんの関係があるのだろう?

 フィリオがビデオの電源を入れ、レンズを私に向けてきた。

 

「前々からアイドルのプロモーションビデオを撮ってみたくてね。そして自作したプロモショーンビデオをコピーして、みんなに売りさばくのさ。楽しくお金も稼げて、実に一石二鳥だとは思わないかい? ねぇ、アイビス?」

 

 ……なんだろう? すっごーい、嫌な予感がしてきた。

 その証拠に、チーズケーキの美味さが一際輪郭を鋭くする。

 天使のようなフィリオの笑みには地雷のような危険物が含まれている。そんな錯覚を覚えながら、私は言う。

 

「アイドル、ノーサンキュー」

「いやぁ、アイビスとアイドルって語呂が似ているよね」

 

 お願いフィリオ。人の話を聞いて。

 

「い、嫌だよ。アイドルの真似事なんて私にできるはずがないよ。それに素人の作った自作ビデオなんて売れる筈がないよ。ねぇ、フィリオ、だから止めよう」

「違う!」

 

 フィリオが目を険しくして大声を上げた。

 

「これから、僕のことはプロデューサーと呼ぶように!」

「さすが、私のフィリ ── プロディーサー!」「さすが、私の兄さ ── プロデューサー!」

 

 フィリオに構ってもらいたいのか、ツグミもスレイも彼をプロディーサーと呼び、視線が絡んで火花を散らしていた。

 子どものごっこ遊びじゃあるまいし、付き合いきれないし、恥ずかしいからやりたくない。

 まだ部活の活動時間内だが、今日の所は部室からさっさと退避するのが身のためだろう。

 私は残っていたチーズケーキを口に詰め込み、飲み込むと、椅子から立ち上がる。机に手を突き、腰を上げた。

 けどそのとき、スポンジ製の床に立っているような不安定さを体に覚えた。

 

「あ、あれ?」

 

 チーズケーキを食べすぎたのかな? 頭がボーっとして顔が熱い。いや、顔だけじゃなくて体も熱いし、原因不明の高揚感が、私の背筋をつぅと指でなぞっているような感じだった。

 

「HAHAHA、アイビス、僕から逃げられると思っているのかい?」

「え? な、なに? フィリオ、私になにかしたの?」

「ごめんねーアイビス」

 

 なぜか、ツグミが手を合わせて謝ってきた。

 

「あなたの食べてたチーズケーキにお酒を混ぜといたの。どう? なんだか楽しくなって、色々やってみたくなったでしょう?」

 

 え? お酒って、もしかしなくてもアルコール? 私、一応未成年だから勘弁してもらいたいんだけど……それにアルコールって火を入れたら飛んでしまうはずなのに、どうやってチーズケーキにアルコール分を残したのだろう?

 疑問の視線を向けると、ツグミは唇に人差し指を当て「企業秘密です☆」と返してきた。

 

「そ、そんな。酷いよツグミ、フィリオ」

「さぁ! では、用意してある衣装に着替えようか! あと、僕のことはプロデューサーと呼ぶように!」

「い、いーやーだー……あぁ ──」

 

 アルコールと聞いて、何だかさらに酔いが回ったような気がする。

 フラフラする私の両腕を、ツグミとスレイが腕を回してがっしりと掴んできた。振り払う力が出ない。2人に引きずられて、更衣をするために、私は別の部屋に連れて行かれた。

 気分は蜘蛛の巣に絡め取られた蝶々。

 2人に無理やり制服をはぎ取られ、フィリオの用意した衣装を着せられた。

 衣装は銀色を基調にしたショートパンツと丈の短いシャツ、さらに上着という出で立ちで、ヘソ丸出しな恥ずかしい服装だった。お願いだから、他の生徒たちには見られませんように……不幸中の幸いか、私の姿はツグミたち以外に見られることはなかった。

 2人に引きずられて、私は部室に連れ戻された。

 

「さぁ、用意はできているよアイビス!」

 

 プロデューサー気取りのフィリオが言った。

 私をハンディカメラのレンズに収めながら、手招きする。そしてコード付きタイプのマイクを差し出してきた。まったく、何処で手に入れてくるのだろう?

 

「アイドルと言えば、やっぱり歌だよね! ねぇ、アイビス!」

「う、うん……そうだね」

 

 フィリオのハイテンションぶりに腰が引けてしまう。しかし背後にスレイが居て、後ずさることもできず、しぶしぶフィリオの前へと足を運んだ。

 

「なんだか、アイビスのテンションが低いな。このままでは撮影に支障を来す可能性があるね。ツグミ」

「分かったわ! アイビス、新しいチーズケーキよ!」

「も、もうお腹いっぱぉわ ──── ムグゥ」

 

 ツグミがアルコール入りケーキを私の口に押し込んできた。

 食べちゃダメと分かっているのに、反射的に口が動いて飲み込んでしまった。ど、どうしよう……アルコールが……。頭が火照る。

 気づくと、フィリオが糸で吊った5円玉を取り出して私を見ていた。

 彼は5円玉を左右にゆっくりと振り始める。5円玉の規則的な動きが、古時計の中にある振り子のような……見てて心が落ち着くような……そんな感じがする……

 

「アイビス、君はアイドルだ」

「私が……アイドル……?」

「そうだ! 君はアイドルマスターさ! 天下無敵のスーパーアイドル、アイドルマスター・アイビスさ!」

「私がアイドル……私はアイドル……私こそアイドル……!」

 

 フィリオの5円玉を見ていると、私は自分がアイドルだったことを思い出す。

 私はアイドルなんだ。いつからアイドルになったかは、まったく全然これっぽっちも覚えていないけれど、私はアイドルなんだ。

 

「さぁ、歌うんだアイビス! 君のファンのために!」

 

 フィリオ……いや、プロデューサーがカメラを回しながら、マイクを差し出してきた。

 迷うことなく、マイクを受け取る。

 電源を入れ、口元にマイクを近づけた。

 私はアイドルマスター・アイビス。頑張って、ファンのみんなのために歌わなくっちゃ! 持ち歌は……なんだっけ? そうだ、「流星、夜を切り裂いて」だ!

 

「よぉーし! みんなぁ、私の歌を聞けぇ!!」

 

 カメラ目線で指を突きだし、私は歌う! みんなのために!

 

 

 

 

 

 残念ながら伴奏はないけれど、みんなの頭で想像しながら聞いて欲しい。2番まで続いた「流星、夜を切り裂いて」を約4分間熱唱し、清々しい汗が私の頬を伝った。

 興奮のせいか、頭がボゥとする。でも気持ちいい。会場いっぱいの観客が、私のためにスタンディングオベーションしてくれているような、そんな最高の気分だった。

 

「えへへ、ありがとー! ありがとー!」

「よぉし、良いぞアイビス! 次はファンサービスのためにマイクパフォーマンスをするんだ!」

「はい、プロデューサー!」

 

 私はプロデューサーのカメラにではなく、目の前のファンのみんなに手を振って応えた。ファンが幻のように揺らめいている気もするが、それは気のせいだ。

 

「みんな、私アイビス! よろしくねー!」

「駄目だ駄目だ! そんなんじゃ、ファンの方々は満足してくれないぞ! もっと色っぽく、艶っぽいセリフを言うんだ!」

「え? は、はい! プロデューサー、私、頑張ります!」

 

 色っぽい上に艶っぽいセリフ。

 なんだろう? どんなセリフならいいだろう?

 ……分からないや。私って色恋沙汰に疎いし、胸もないから色気もないし……でも、ファンのみんなのために頑張らなきゃ!

 こうなったら、シンプル イズ ベストだ。小細工抜きで、みんなに真正面からぶつかろう。

 でも頭がずきずき痛んで熱っぽい。頬も熱い。立っているのが少し辛くなってきたけど、私はカメラ目線のまま頑張って口を動かす。

 

「ぬ ── 」

 

 

 

 

 

「── 濡れる!!」

「いいよぉ! 凄くいい! これで売れ筋好調間違いなしだ!」

 

 …………なぜだろう? とんでもない失言をした気がする。

 でもプロデューサーの熱意が大きな声となって私に伝わってくる。だから私の言葉はなにも間違っていないんだ。そうにちがいない。

 ……でも、だんだん頭が痛くなってきた。なんでだっけ? ああ、そういえば、アルコール入りのチーズケーキをしこたま食べたんだった。

 

「さぁ、最後はお色気シーンだ! スレイ、ツグミ、用意は良いかな!」

「簡易ベットと枕は用意できました、兄さ ── プロデューサー!」

「金髪のカツラと『つなぎ目が絶対に分からない爆乳体験ブラ』の用意ももいいわよ、フィリ ── プロデューサー!」

 

 大分酔いが回ったらしく、3人の声が少し遠くに聞こえた。

 私の知らない所で、話がとんでもない方向に進行している気がする。いつの間にか、あれだけ沢山いたはずのファンの皆の姿も消えていた。頭、痛い……。

 

「さぁ! アイビスに、金髪のカツラと『つなぎ目が絶対に分からない爆乳ブラ』を付けて、ベットに横にするんだ!」

 

 プロデューサー……じゃなくて、フィリオの声が聞こえた。

 

「分かったわ。アイビス、服を脱ぎ脱ぎしましょうねー」

「ツ、ツグミ……」

「偽乳とは言え、爆乳体験ができるんだ。兄様に感謝しろ、屑星」

「スレイまで……」

 

 気分が悪い。吐きそうだ。

 弱り切った私が2人の魔の手に抵抗できるはずもなく、服を引っぺがされて、ベットの上に押し倒された。

 

「アイビス、シーツで胸を隠して、カメラを見るんだ!」

 

 フィリオの指示が飛んできた。

 気分が悪い、吐き気もするしすごく眠い……早く寝たい。もうどうにでもなれ。早く終わらせて楽になりたかった。

 私は最後の力を振り絞って笑顔を作り、上目使いでカメラを見た。

 

 

 

 

 

「いいよぉ! これでこのプロモーションビデオは大成功間違いなしだ!」

「さすが、私のフィリオ! 最高ね!」

「ツグミ! 貴様、兄様から離れろ!」

 

 3人の声をバックコーラスに、私の視界はシーツと枕の白に覆われた ──……

 

 

 

 

 

      ●

 

 

 

「いやぁ! お願いだから止めて!」

 

 とんでもない悪夢に、私はベットから飛び起きた。

 目が覚めると、そこは雪国……ではなく、勝手知ったる自分の部屋だった。シングルベットにウサギの抱き枕、ワンコの人形やダンディライオンちゃんに囲まれて私は起きた。

 どうやら私は、いつの間にか寝てしまっていたらしい。いつからだろう? それはよく覚えていないけど、兎に角、全身汗だくで寝苦しい夜を過ごしたのだけは間違いなかった。

 

「ゆ……夢かぁ。良かったぁ……」

 

 さっきまで見ていた悪夢が、ありありと現実のように思いだされた。アイドルの真似事をして、歌って、失言して、最後はヌードシーン……うわぁ……穴があったら入りたいよ。これがもし現実だったら、恥ずかしさのあまり引き籠ってしまいそうだ。

 夢で良かった。

 ほっ、と胸をなで下ろし、目覚まし時計を手に取った。

 

 電池が切れて、短針は12時で動きを止めていた。

 

 携帯電話のデジタル時計を確認すると、8:30と表示されている。

 

「え……わ、わぁ! ち、遅刻だ!」

 

 寝過ごした。焦って身支度を整えて家を出る。私の家とジェネ高はかなり近いけど、5分はかかるから走らないとホームルームに間に合わない。

 髪を振り乱しながら走り、教師が校門を閉める前に構内に入ることができた。

 でもホームルームまでに教室に辿りつかないと、遅刻にされてしまう。

 私は教室に続く廊下を小走りで進んでいく。

 私と同じような境遇の男子生徒が数人、走って私を追い抜かして行った。すれ違いざまにその内の1人と視線が合う。左頬に絆創膏をし、茶髪の後ろ髪をひもで括った男子生徒だった。

 

「お、アイドルマス ── じゃなくって、アイビスさんじゃん。頑張れよ、俺、応援してるからな」

「え? は、はい。ありがとう」

「じゃあな!」

 

 男子生徒は手を振り、去って行った。見たことはあるけど名前は知らない。別のクラスの男子生徒だろう。

 でも応援してるって……なにを? ホームルームに間に合えるように、ということだろうか? ……と、こんなことを考えている場合じゃなかったや。

 

 

 なんとかホームルームには間に合い、遅刻することだけは免れた。

 あっという間に1日が終わり、私はプロジェクトTDの部室に顔を出す。なぜだろう? 無性にツグミのチーズケーキが食べたい気分だった。

 部室棟に足を運び、部室のドアノブを捻る。

 

「みんなー、お疲れ。今日はなにする ── って、あれ?」

 

 扉を開けると、室内から心地よい冷気が流れ出してきた。また部室内の様子も変わっていた。

 私の記憶ではなかったはずのエアコン、プラズマクラスター、液晶テレビに小型冷蔵庫が増えていた。扇風機が部屋の隅に追いやられている。しかしそれも必要ないぐらい、快適な空間にプロジェクトTDの部室は様変わりしていた。

 

「あら、アイビス。授業お疲れ様。チーズケーキと紅茶、いる?」

「あ、うん。いるいる。ありがとう、ツグミ」

 

 先に来ていたツグミが冷蔵庫からチーズケーキを取り出してくれた。紅茶も、なかったはずの電気ポットからお湯を注いで入れてくれる。ケーキは程よく冷えていて、紅茶と相まって美味しくいただけた。

 部室内での私の定位置の椅子に座る。

 使い古されていたはずの座布団が新しくなっていた。

 

「ねぇ、ツグミ」

「なぁに、アイビス」

「どうしたの、これ?」

「勿論、新しく買ったのよ。かなり古くなっていたしね」

 

 さすがに、それぐらいは分かる。

 私が訊きたいのは、そのお金が何処からでたのかなんだけどな。

 

「部費が増えたのかな……?」

「うふふ、禁則事項です☆」

 

 ツグミお得意の決め台詞。なにか隠しているのかなぁ。

 まぁ、でも、部室が綺麗になることはいいことだよね? クーラーも効いていて、とても過ごしやすい部屋になっているし。

 

「ま、いいや」

 

 私は快適空間と化した部室で、ツグミお手製のチーズケーキに舌鼓を打つのだった ──……

 

 

 

 

ここはOG《オリジナルジェネレーション》高等学院。

『エリア』にある地域最大のマンモス高校だ。

今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。

次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 




<キャラ紹介>

アイビス・ダグラス:ジェネ高2年、夢に夢見る女の子。ジェネ高は比較的胸が大きい人が多いので、1・2を争うペチャパイぶり。いつもスレイに苛められている。でもTDのみんなは好き。チーズケーキ大好き、多分酒に飲まれるタイプ。

フィリオ・プレスティ:ジェネ高3年、自称神様のプロジェクトTDのキチガイ部長。体は超丈夫な健康体で、成績も優秀。今日も宇宙人などを探して街を捜索する。

ツグミ・タカクラ:ジェネ高2年、プロジェクトTDの副部長。自称未来人で口癖はあのセリフ。フィリオが好きで未来人を気取っている。

スレイ・プレスティ:ジェネ高2年、フィリオの実妹。超ブラコン。実は超能力者、しかし能力はフィリオに近づく女に片頭痛を起こさせること。しかも巨乳には効かない。今日もアイビスを苛める。


<次・回・予・告>

エクセレン「さぁーて、次回のスパロボ学院は?」

キョウスケ「次回、『キョウスケ・ナンブに出番をよこせ!』の巻! お楽しみに(嘘)」

エクセレン「要するに、なにも決まっていないってことよん。短編でかけそうなネタがあったら、みんなドシドシ送ってねん。採用できるとは限らないけと、できるだけ書くように心掛けるわよん♡」

キョウスケ「出番……」



久しぶりにコメディー編更新。

挿絵を提供してくださったゲレゲレさん、本当にありがとうございます!
ゲレゲレさんは「史上最強弟子 ケンイチ」の二次小説と、オリジナル小説の2作品を執筆されている作者さんです。
絵を描けない私が言うのもあれですが、「みてみん」で絵も描いており、書き始めの頃よりずいぶんと上手くなっていらっしゃいます。
とても努力家の作者さんです。
興味が沸いた方は、ゲレゲレさんの小説や絵をどうぞ読んでみてくださいね。

アイビスは絶対に弄られキャラだと思う。
ちなみに私はアイドルマスターはタイトルしか知らなかったりします。
なので、今回の話はあまりパロディじゃないですね。

では、また次回ノシ
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