オラは彼女に恋してる。
これはオラの片思い ── 決して届かぬ一方通行。
今日も彼女は、オラの前で腕を振るう。
キラリと輝くの包丁が、今日も彼女の細腕に握られている。量販店で買える、ごく普通の、ただの包丁。しかし彼女がひとたび持ったなら、たちまち芸術品へと早変わり。
褐色の彼女の肌に、皮を剥かれたジャガイモの白が映える。
ニンジンも。タマネギも。自ら服を脱ぎ捨てるように皮を剥かれ、野菜も鶏肉も、喜びに打ち震えながら体を細かく分けられていく。
彼女は可憐な褐色の指先で、材料を、腹ペコなオラの腹に入れてくれる。
オラの腹は魔法の腹。熱を持った腹で材料を炒めて、水を飲めば、すべての旨みの溶け出した不思議なスープの出来上がり。
オラの腹は魔法の腹さ。
オラを使う褐色の美女 ── それが彼女。
彼女はさながら魔法使い……いや、華麗なる錬金術師だ。
「ターメリックに、ナツメグに、シナモンを加えて、と……」
オラの腹の不思議なスープに、彼女の調合した魔法の粉が投入された。
はらわたが煮えくり返るような熱に、彼女の粉とスープが溶けあう。
ぐるぐる、ぐるぐる。
彼女がオラの腹の中のスープを掻き混ぜていくうち、スープの色は変わっていく。まるで魔法のように、スープの色が彼女の肌に似た褐色に変わっていくのを、オラは腹の中で感じた。
彼女が手を止め、オラの腹の中のスープを小皿に取り、口をつける。
うん、と彼女が頷くと同時。
── チリンチリーン
店先の扉に取り付けていた鈴が、オラと彼女に来客の存在を知らせた。
「ラーダさん、チース!」
店内に入ってきた紫髪の少年が彼女 ── ラーダ・バイラバンに笑顔を向けた。
「あら、いらっしゃいアラド。ご注文は?」
「カレー! もち、超大盛りで!」
お腹を擦るアラドのジェスチャーに、微笑みを受けべて頷く彼女。
彼女は俺の腹の中の褐色スープ ── カレーを、大皿に盛ったライスに注ぐ。食欲を駆りたてる白と褐色のコントラストが出来上がり、彼女はそれをアラドの座るテーブルに差し出した。
「いただきます!」
アラドは大声で宣言すると、スプーンでカレーライスを大口に掻き込む。
「うんみゃあぁぁっ!!」
アラドの歓喜の声が彼女を笑顔にしていた。
オラの大好きな彼女の笑顔。
彼女を笑顔にすることは決してオラにはできないけれど、オラが丹精込めて腹で煮込んだカレーはお客を笑顔にできる。
お客の喜びは彼女の喜び。
彼女の喜びはオラの喜び。
それでいいんだと、オラは思う。
『カレーの工房(アトリエ) パンダ・トラヤ』
今日もお店でお客の笑顔をスパイスに、彼女 ── ラーダとオラ ── 鍋の、甘くて辛い日常は続いていく。
ここは高校がなぜか密集する土地『エリア』。
『エリア』には個性豊かな人間が沢山いる。
今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。
次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない
<キャラ紹介>
鍋:カレー用の鍋。
ラーダ・バイラバン:カレー屋さんの店主。
アラド・バランガ:大食い小僧。
<次・回・予・告>
鍋「オッス、オラ鍋! オラ、なんだかワクワクしてきたぞ!
ラーダを馬鹿にされる怒りで、スーパー鍋ヤカンに目覚めそうなオラが、次回予告を担当するぞ!」
キョウスケ「……おい」
鍋「(某ト○コのアニメ風に)誰かが言った!
食欲の秋、お腹すいたなぁ……でもちょっと待ってくれ! エリアって、実は名物食がないんじゃね?
カルロス社長は言いました……ないのなら作ればいい!
シオニーちゃんは言いました……どうぞご自由に ── 机を叩く音が空気を劈く。
そして、商店街のちっぽけなパン屋「ヒカワ屋」に白羽の矢が立つのだった……
次回、スパロボ学院 コメディー編
『あなたはパン派? ごはん派? 2 ~カルロス社長のプロデュース大作戦!~』
カルロス社長に黒い交際はございません? オラ、ワックワクしてきたぞ!」
キョウスケ「……鍋にまで出番を奪われるなんて……」
エクセレン「ドンマイ、キョウスケ♡」
絶賛、スランプ中!
最近、執筆がうまくいかず更新が遅れる日々が続いております。
特にシリアス編が先に進みません。
頂いたネタをコメディー編で書いてリハビリをしてみたいと思います。
暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。
ではではノシ。