絶賛キャラ崩壊中です。
キャラ崩壊レベル5(MAX5)。
戦う漢たちのイメージを崩したくない方は、閲覧しない方がよいかもしれません。
本当に注意:お酒は18歳になってから。
「ねえマサキ、デートしよ」
それがリューネの言葉だった。
俺は、なぜか高校が密集地域『エリア』一のマンモス高校、OG学園に通っている高校2年生だ。
リューネは俺と同じクラスの女子で、明るく誰にでも親しく接することのできる、クラスでも一番人気の女子だった。
その女子 ── リューネ・ゾルダークが俺、マサキ・アンドーに向かって言った。
デートしようと。
「今日の夜、シュ ──── ら ── バーで20時に待ってるから、絶対来てよね!」
リューネはそう言うと、俺に待ち合わせ場所を書いた紙を渡して去ってしまった。
俺は手元に残された紙を見る。
そこには半ば強引に渡された待ち合わせ場所の住所が書かれていた。
この際だからはっきり言っておこう、俺はリューネが嫌いじゃない。
可愛いし、活発で俺に好意的に接してくれるし、俺が彼女を嫌う理由なんて1つもありはしないだろう。
だが俺には淡い恋心を抱いている女性がいた。
それはリューネではない。
彼女の名はウェンディ……ジェネ高の3年の女生徒だ。
はっきり言っておこう。
俺はリューネの誘いに乗って一日デートをしたいと思っている。
しかしそうすることが、別に付き合ったりしていないのだが、俺が想いを寄せるウェンディに対する裏切りになるのではないかとも思っている。
ここでリューネの誘いを受けるのは、いささかよろしくないと思っていた。
でもやっぱり、俺はデートには行きたい。
「シュ・ラ・バーか……バーかな?」
バーと付く以上はお酒が出てくるには違いない。
お酒か……。
18歳未満は飲酒禁止なんて法律は確かにあるが、今時そんなものを護っている未成年なんて皆無と言っていいだろう。
俺も既に仲間内の飲み会で飲んだことはあるし、下戸というレベルで酒が弱い訳でもない。
リューネが選んで誘ったぐらいだから、それなりに雰囲気の良いお店なのだろう。
だが俺には、お酒などより甚大な問題があった。
俺は「ゼオルート流剣術 師範代」で、それなりに容姿も淡麗、運動神経・成績もそれなりのものを修めている。
しかし俺にはそれらを帳消しにして余りある、致命的と言える欠陥があった。
── 俺は、超絶的なまでにの、方向音痴なんだ!
自慢ではない、これは間違いなく自慢ではないのだが……
── 生まれてこの方、何事もなく目的地に着いたことは一切ない!
だから俺は手に入れた。
俺の致命的な欠点を補う、俺の人生における相棒を!
「頼んだぜ、クロ、シロ」
俺はついこの間購入した黒い携帯端末型GPS ── クロと、ナビを音声ガイドする白いイヤホン ── シロに向かって言った。
頼んだぞ、俺の相棒たち。
今回のデートの成否はお前たちにかかっている。
スパロボ学院 ~OGだよ全員集合!~
アンドー君漫遊記 ~デート目指して行く千里?~
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん! 早く帰って来てね!」
妹 ── プレシア・ゼノサキスに見送られ、俺は自宅を後にした。
俺が住んでいるのは『エリア』にあるごく普通の一件家で、義父であるゼオルート・ゼノサキスの世話になりながら生活している。
俺は幼いころに義父のゼオルートに拾われて育てられた。
生みの親の記憶はない。
血の繋がらない子であるのに、義父のゼオルートは愛情を一身に注いでくれた。
プレシアとは本当の兄弟のようにして育ち、毎日を幸せに過ごせている。
俺は、本当に義父のゼオルートには感謝している。
「さあ頼むぜ、クロにシロ」
家を出てしばらくしてから、俺はGPSのクロに目的の住所を入力した。
なぜ家で入力しなかったかというと、実はクロとシロを購入したのは義父とプレシアには内緒だからだった。
実はクロとシロは結構な値を払って手に入れたのだ。
バイトして貯めた真っ当な金で買ったのだが、財布の紐を握っているプレシアにバレれば大目玉を食らうことになるに違いないはずだからなぁ。
データを入力したクロに地図が表示される。
しかし地図を見たぐらいで解決される程、俺の方向音痴は軽いものじゃない。
クロにナビを務めるイヤホンのシロを繋ぎ、俺は耳に装着した。
『初めましてマサキ、ナビを開始しますニャ』
「おう、頼んだぜシロ、それにクロ」
俺の声にシロとクロが反応することはなかったが、クロのGPSに2つの明滅する点が現れた。
真ん中が俺、その先にある点が目的地の「シュ・ラ・バー」だろう。
なるほどなるほど、地図に目的地が示されるだけで位置関係の分かりやすさが、天と地ほどの差があるな。
地図に従いながら直進すると、左右に道が分かれるT字路に差し掛かった。
『10M先を右に曲がってくださいニャ』
「おう、右だな、右右……と」
俺はシロのナビに従い、T字路を右に曲がった。
しかしその直後、シロからまるで俺を非難するような声が上がった。
『なにやってるニャ、マサキ! そっちは左ニャよ、この道は右に曲がるんだニャ!』
「おっとすまねえ。ありがとうよ、シロ、右だな、右右……と」
俺は歩いてきた道を引き返し、今度こそT字路のを右に曲がった。
右手はお箸を持つ方だ、間違えようがなく俺は右折する。
『マサキ、そこを右に曲がると元来た道に戻るだけにゃ!
ここは真っ直ぐ進めば、元来た道に対して右折することになるニャ!』
「えっ、そうだっけ?」
『そうだニャ! しっかりして欲しいニャ!』
イヤホンからシロがキンキンと高い声で俺を怒鳴りつけてきた。
たくっ、うるせえなぁ……そんなに言われなくたって、自分の方向音痴具合は俺が一番分かってるってえの!
「ここ左だっけ?」
『右だって言ってるでしょうニャ!』
俺はシロのシゴキに似た指導を受けながら、目的地へと足を運んだのだった。
●
シロに進路訂正をされること十数回……俺は、目的地である「シュ・ラ・バー」の前に立っていた。
時刻表示機能も持つクロを確認すると、まだ19時30分だった。
少し早めに家を出たからな、約束の時間よりまだ30分も早いじゃないか。
これは快挙だ。
俺にしてみれば、このような出来事は前代未聞の空前絶後だった。
クロにシロ、ふふふ、この相棒がある限りもう誰も俺を方向音痴などとは呼ばせはしないぞ。
「とにかく、中に入って待ってるとすっか」
俺はシロとクロをポケットにしまって「シュ・ラ・バー」のへと足を踏みこんだ。
うす暗い店内にマスターらしき見目麗しい美男子と、ピアニストらしき美女が居るのみで他に客はいなかった。
時間になってもいないので、リューネの姿も見えない。
店内にはピアニストの美女が弾く和やかな旋律が響き、えも言えぬ良い雰囲気を醸し出していた。
「へえ、リューネの奴やるじゃねえか。こんないい店知ってるなんてよ」
時刻はまだ20時前、世間一般には夜であるがこう言った酒場にしてはまだまだ宵の口である。
客もいないし入り口に立っていても仕方ないので、俺はカウンターに座りなにか飲み物を頼むことにした。
「なにになさいますか?」
銀髪の秀麗の美男子がメニューを指し出し、注文を聞いてきた。
様々なカクテルの名がメニューに書き記されていた。
スクリュードライバー、シントニック、ソルティードッグ、カシスオレンジ……種類が多すぎて、俺はどのカクテルが美味しいのかはっきり言って分からない。
確かに仲間内で飲んだ事はあるが、お酒の名前を覚える程に種類を飲んだことはない。
だが折角こういったバーに来たのだから、ここはカッコいいドリンクをオーダーしたいではないか。
マスターに奇妙な視線を向けられても構わず、俺は真剣にメニューを凝視した。
…………んっ、するとある品名が俺の目に留まる。
うーん、なんだかこのカクテルの名前、カッコいいな。
「なあマスター、このX・Y・Z(エックスワイズィー)ってのくれよ」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
俺が注文するとマスターはすぐに数種のお酒をブレンドし、シェイカーでシェイクしてグラスに注ぎ、コトンッと俺の前のカウンターに差し出してくれた。
おおー、なんだかカッコいいなぁ、まるでドラマの中にでもいるみたいだ。
X・Y・Z……どこかで聞いたことがありそうな名前のカクテルを、俺は少しカッコ良さそうに思えるポーズでグラスを持ち、これまたやはりカッコ良く一息に口に運んだ。
「ッ!?」
その瞬間、強烈な灼熱感と強烈な刺激が俺の口内を埋め尽くした。
なんだこのカクテル!?
アルコール度数が絶対に半端じゃないぞ! 俺がキツイと思っていたブラッディーマリーが甘く感じてしまう程に辛い、辛すぎる!
の、呑み込めない……でも、このままではつらすぎる!
どうしよう、なに食わない顔でトイレに行き、そこで出してしまおうか ──
「メイシスゥゥゥッ!!」
── バコーーンッ!
「ッ ── ゴクンッ!!」
何者かがバーの入り口の扉を蹴り開けて侵入して来て、俺はその音に体を跳ね上げてしまうほど驚いた。
そして……口の中のモノを飲んでしまった。
飲んじゃった……やばいよなあ、これ絶対アルコール度数10%以上はあるって……。
そんな事を考えている内に、俺の頭は心地よいような気持ち悪いような浮遊感に包まれていく。
店内に飛び込んできた若い男が、ピアニストの美女に向かって叫んでいた。
「メイシス、好きだ、結婚してくれ!」
「ア、アリオン、また貴方なの!?」
メイシスと呼ばれたピアニストの彫像のようだった表情が、アリオンと呼ばれた青年の登場で激しく崩れ去っていた。
アリオンは頭から抱きつくようにしてメイシスに飛びついたが、メイシスは手敏な動きでそれを躱す。
アリオンは頭から壁に突っ込んだが、すぐに立ち上がって来た。
「なぜだメイシス!? なぜ、この自由戦士アリオンの想いを受け止めてくれない!?」
「そんなの、貴方がプーだからに決まってるでしょ!」
俺は、揺れる視界と頼りなくなった耳でその様子を見る。
「いい歳して、定職にもつかずにいつまで遊び回ってるのよ!
女に求婚したいんだったら、せめて年収言えるぐらいになってから来なさい!」
「分かってないなぁ、メイシス」
アリオンが言う。
「俺を例えるなら、雲。雲を掴むことは誰もできぬ。
どんな大企業だろうと、俺を一か所に留めておくことなどできはしないのさ。
そうメイシス、君を除いて俺を掴める者などいない」
「失せろ、プー!」
「止めろアリオン、それにメイ」
俺の目の前で、美男子のマスターが2人を止めた。
「お客の前ではしたないぞ」
「ご、ごめんなさい、アル」
メイシスは反省したように項垂れる。
「アリオン、お前も営業の邪魔だから帰るんだ。話なら営業終了後に聞いてやる」
「なんだとアルティス、貴様、一端に言ってくれるじゃねえか?」
アルティスと呼ばれた美形のマスターをアリオンが睨みつけた。
頭がボーとしていても分かる。
両者の間に一触即発の空気が流れていることが、それも俺を挟んで。
「メイシスの想いに気付いていながら、それに答えてやらぬ薄情者……いいや、貴様は腰抜けだ!
貴様は女1人の気持ちも受け止めてやる覚悟もない、腰抜けだ!」
「…………」
「アル……」
メイシスが少女のような瞳をアルティスに向けていた。
うーん、なんだろうこの状況?
俺はここになににしに来たんだっけ? なんだか酷く場違いな気がする。
アリオンの罵声を浴びたアルティスはしばらく黙っていたが、やがて口を開く。
「愛するが故に、見守る愛もある」
「アル……」
メイシスの表情がパアっと明らんだが、逆にアリオンの顔が怒りに歪んでいた。
「だからそれが生温いというのだ!
いいかアルティス、俺たちは修羅だ! 修羅は力こそが全て、欲しい物は腕ずくで奪うのが掟だ!
アルティス、貴様はメイシスを護り抜くことができるのか!?」
「……問答はそれでしまいか、アリオン」
その一言の後、アルティスの雰囲気が変わった。
なんて言うのだろう? 熱い。
展開が熱いとか、お酒を飲んで頭が熱いとかそういうのではなくて、空気が熱い。
よく見たら握りしめたアルティスの拳が燃えているような気がした。
アルティスが構える。
「貴様も修羅なら拳で語れ」
「いい度胸だ『閃光のアルティス』、自由戦士アリオンの真の力を見せてやろう」
アリオンも構えた。
カウンターに居る俺を挟んで、そして俺を無視して2人に体にオーラのようなものが溢れてくる。
「止めて2人共、私のために争わないで!」
悲壮感を漂わせたメイシスの目には涙が浮かんでいた。
……………………えーと、なんなのだろうな、この状況。
さっきのカクテルのせいなのだろうか、頭がボーッとするがこの状況をなんと言うかは知っている。
そう、修羅場だ。
「魔朧百裂拳(まろうひゃくれつけん)!」
先手をとったアリオンが拳を放った。
人知を超えた速度の拳は百の手のように見え、俺の頭の上で風切り音を唸らせる。
「激流を制するは静水」
アルティスは緩やかな手の動きでアリオンの攻撃を全て弾き落とし、
「紅蓮衝撃波(ぐれんしょうげきは)」
掌から爆炎の衝撃波が放たれた。
熱い!
マジで手から炎出てやがる! 俺の自慢の緑髪がチリチリに焦げてしまうではないか!?
「ぐわっ!」
衝撃波をまともに受けたアリオンは吹き飛ばされ、机と椅子を巻き込みながら倒れた。
しかしすぐに起き上がる。
血が滴る口元を歪めて言った。
「や、やるじゃなーい」
カウンターに小さくうずくまって俺は思っていた。
なんだこいつらは!? そして、なんだここは!?
俺は魔界にでも迷い込んでしまったのだろうか?
クロにシロ、なんて所に案内してくれやがるんだこの野郎!
「我の店でなにをしている貴様ら!」
再び酒場の入り口の扉が蹴り開けられ、異様に巨大な漢が乱入してきた。
よく見ると普通に筋骨隆々なだけの大男なのだが、身に纏う強烈な存在感のため必要以上に巨大に見えてしまう。
「「「修羅王ナー(オーナー)、アルカイド・ナアシュ!!」」」
オーナー? 良かった……店主が出てくれば、この奇怪な状況も収まるはずだ。
俺はそう思った。
「むう、久しいなメイシス」
「お、お久しぶりでございます、修羅王ナー(オーナー)様」
修羅王ナーと呼ばれた漢はメイシスに目をやり、にやりと笑った。
「ふふふメイシス、やはりうぬは美しい。我の嫁に相応しいのは、やはりうぬ以外にはおらぬようだな」
「お、お戯れを……修羅王ナー(オーナー)様」
「我は冗談など言わぬ」
修羅王ナーがずしんずしん、と巨体を動かしメイシスに近づいていく。
しかし修羅王ナーってのも言いにくな、もう修羅王でいいや。
一方メイシスは完全に怯えきった目をしていた。
まあそうだろう。俺が女だとしても、あんな怪物に嫁ぎたくなどないし。
それにしても、ここはなんだか現実離れしているなぁ。
もしかして、目の前で展開されている光景は、実は客向けのアトラクションなのかもしれない。
それなら、お酒を飲みながら観戦した方が楽しいというものだ。
「マスター、X・Y・Zもう一杯」
「は、分かりました、少々お待ちを」
なんだか楽しくなってきて、頭が回り始めた気がするぞ。
そんな頭で結論した言葉に、マスターのアルティスは答えてカクテルを作り、俺に差し出してくれた。
ほらやっぱり、これはアトラクションなんだなぁー、素晴らしい酒場じゃないかここは。
修羅バー、ってか? あはははは。
ごくりッ、と俺はX・Y・Zを一口飲んだ。
「待ちな、アルカイド・ナアシュ」
アリオンがメイシスと修羅王の前に飛び出した。
「むぅ、うぬはアリオン・ルガダか。小物がこの修羅王になんの用だ?」
「メイシスの幸せのために、修羅王、貴様は俺が倒す!」
いいぞ、やれやれ!
愛する者のために巨悪に立ち向かう男、くぅぅ、いいねー、漢だねー。
俺は心の中でアリオンにエールを送った。
「魔朧背撃掌(まろうはいげきしょう)!」
アリオンは渾身の覇気を込めた両手発剄を放つ。
しかし修羅王はアリオンの一撃を片手で振り払い、
「覇皇剛掌波(はおうごうしょうは)!!」
空いた片手で覇気の衝撃波をアリオンの全身に浴びせた。
爆ぜる様にしてアリオンの体は弾き飛ばされて壁に激突、そのままずるずると崩れ落ちてしまう。
凄いなぁ、一体どうやって出しているのだろう?
また一口、俺はX・Y・Zを飲んだ。
「やりおるわアリオン、この修羅王に技を使わせるとはな」
「ち……最後の種明かしも見破られちまったか……」
悪態をついてアリオンは気を失った。
「待たせたなメイシス」
「待ってない!」
「早速、式でも上げるか」
「話を聞いてください、修羅王ナー様!」
修羅王はメイシスの話など意に介していないようだった。
女をないがしろにする男は許せんな……なにか、大切なことを忘れているような気がするが……ま、いいか。
それにしても、この修羅王という男の傍若無人ぶりには目が余る。
嫌がる女の手を引いて結婚だと? ふざけやがって。
俺は一気にX・Y・Zを飲みほした。
「待てよ」
俺は思わず声を上げていた。
「嫌がってんじゃねえか、離してやんな」
「なんだ、うぬは?」
「テメエの店の客だよ」
俺はカウンターから立ち上がる。
おっと、なんだか足がふらつくな。
だがそんなことは気にしない。
今の俺は誰にも負ける気がしないぜ。
今なら俺は風にだってなれる気がするぜ。
しかしX・Y・Zって飲みなれるとウメエなぁ……最高だぜ。
「マスター、もう一杯」
「き、君、もうよしといた方が……」
「もう一杯」
俺の一声に、マスターのアルティスはしぶしぶカクテルをつくって俺に出してきた。
俺はそれを一息に煽る。
口の中にカーッとするような辛さが通り抜けたあとに、一瞬甘さが残った。
うーん、ウメエなあ、癖になりそうだぜX・Y・Z。
今なら○ティーハンターだって呼べそうだ。
「なんだうぬは? 酔拳の使い手か?」
「すいけんーー?」
なに言ってんだこのデカブツは?
「俺は世界最強の剣法『ゼオルート流剣術』の師範代だぜ!
すいけんってなんじゃー!? 喧嘩売ってんのか、コラア!!」
「ふん、変な輩だ。まあよい、剣術だろうがなんだろうが、かかって来るがいい」
「上等だぜぇ!」
修羅王の言い草に俺は頭に血が上っていた。
客に喧嘩売るとはふざけた店主だ! 俺の秘剣「エーテルちゃぶ台返し」で懲らしめてやるぜ!
「ん」
剣はどこだ?
さすがに真剣は落ちてないよなぁ、竹刀持ってきてなかったっけ? 持ってなかったか。
うーん、どうしよう。
「マスター、剣ないか?」
「あいにく果物ナイフしか置いていない」
おお、なんてこったい。
刃渡り20cm程度の武器なんてリーチの足しにもなりやしない。
こうなりゃ素手でやってやるぜ。
「ゼオルート流剣術」の極意は、プラーナを爆発させて全身を武器に変えること……だった気がする。
修羅王なんてコン畜生は目じゃないね。
「マサキ・アンドー、最終秘奥義!!」
体内のプラーナを燃え上がらせ、地下に眠るマグマのように貯め込んだ。
俺はカウンターを蹴って、空中高く飛び上がる。
力が漲る。やはりX・Y・Zは最高だぜ、今なら○ティーハンターにだって勝てそうだった。
風の精霊たちよ、俺に力を!
俺はあらん限りのプラーナを両手に込めて振り下ろす。
「熱風! 疾風! サイ ・ バス ・ ター!!」
「ふん!」
修羅王の拳が俺に炸裂した。
「ひでぶッ!?」
超必殺技は修羅王のパンチ一発で防がれてしまった俺は、成すすべなく壁際まで叩き飛ばされた。
あれ、痛い……めっちゃ痛いんですけど?
マスターのアルティスが呆れた表情で俺の方を見ていた。
ん、よく見ると、メイシスは気配を消して裏口から逃げだそうとしているではないか。
「なんだうぬは? 話ならぬ程弱いな」
ずうううん、そんな感じで俺の眼前に立ちふさがる修羅王。
畜生、剣さえあればお前なんてイチコロなのに!
くそう、早く早く○ティーハンターを呼ばなくては(混乱)! マスター、X・Y・Zですよ、もう後がありませんよ!
「マスター、X・Y・Zくれ」
「帰れ」
アルティスに見放されてしまった。
メイシスはもういない。アリオンは気絶中。
「去ね、下郎」
「ちょまっ ── あべしッ!?」
修羅王の前蹴りが俺に炸裂し、俺の体は軽々と空中に浮き上げられた。
ああ……今、俺は空を飛んでるよ、プレシア。
なんだか花畑が見えるような気がするなぁ……痛みも通り過ぎると、なにも感じなくなるんだね、プレシア。
なんだいプレシア、お兄ちゃんを迎えに来てくれたのかい?
あれ、どうしたんだプレシア、背中に羽が生えてるじゃないか?
「全て忘れ去ってしまうがよい」
修羅王の声が聞こえた。
そう言えば、なんで俺はこんな所来たんだっけ?
そうだ、リューネと待ち合わせしてたんだった……今、リューネいないけど。
その瞬間、眼下の修羅王の覇気が一気に膨れ上がり、
「覇皇新血愁(はおうしんけっしゅう)ッ!!」
修羅王の指が俺の腹に刺さったような気がした。
頭が真っ白になり、俺の意識はそこで途切れた ──
目が覚めると、俺はゴミ捨て場で横になっていた。
周囲は完全に夜真っ盛りの深夜というやつで、ゴミ捨て場周辺に人気はない。
「俺、なんでこんな所で寝てるんだ?」
自問するが答えは出てこない。
体と頭に鐘の音でも響いているようにガンガン痛むが、なにも思い出せない。
確か今日はジェネ高の学食でリューネと昼飯食った。
しかしその後からの記憶がまったくない。
一体どうしてしまったのだろうか、俺は?
「……考えても仕方ねえ。家に帰るか」
体にまとわりついていたゴミを払いのけ、俺は帰路についた。
夜の街は煌々と明かりが照らされ明るいが、光の届かない路地は暗闇に覆われている。
この暗闇になにか恐ろしいものが潜んでいるような気がした。
俺は駆け足で自宅を目指した。
●
深夜2時。
客もほとんど居なくなったバーの中で、リューネは一人黄昏れていた。
「マサキ、来ませんね」
バーを経営しているマスターのシュウ・シラカワがリューネに声を駆けてきた。
「本当に、私(・)がはたら(・)いているバー(・・)に来てと言ったのですか?」
「言ったわよ。シュ(・・)ウがはたら(・)いているバー(・・)に来て、言ったもん」
リューネは口を尖らせて呟いた。
その顔は真っ赤に染まっている。
周囲には酒瓶の山……マサキに約束をすっぽかされたためにできた空ビンたちである。
要するに、リューネはやけ酒を飲んで不貞腐れているのだった。
「言っときますが、ツケは利きませんよ」
「いいもーん、私の親父、大企業のトップだもーん」
それだけ言うと、リューネはカウンターに頭を預け寝息を立て始めた。
シュウはその様子を見て、まったく、と呆れていたが、風邪を引かないように毛布を被せてやっていた。
「……マサキの……バカ……」
誰もいなくなった店内にリューネの呟きが溶けていったのだった。
ここは高校がなぜか密集する土地『エリア』。
『エリア』には個性豊かな人間が沢山いる。
今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。
次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない
ちなみにマサキが自宅にたどり着いたのは3日後だったという……
<キャラ紹介>
マサキ・アンドー:ジェネ高2年の生粋の方向音痴。やや酒乱ぎみ?
リューネ。ゾルダーク:マサキに恋するジェネ高2年生。大企業の社長令嬢。
アルティス・タール:シュラバーマスターで修羅。メイの事が実は好き。
アリオン・ルガダ:メイシス大好きなプータローの修羅。雲が好きな自由戦士。
メイシス・マルク:シュラバーで働くピアニストで修羅。アルの事が実は好き。
アルカイド・ナアシュ:シュラバーオーナーで修羅王。嫁さんと強敵募集中。
<次・回・予・告>
エクセレン「やっほー、完全に軒下の住人になっているナンブ&ブロウニングでーす。みんな、私のこと忘れてないわよねん?」
キョウスケ「おい、エクセレン、今回は予告はなしだ」
エクセレン「なになに、どったのキョウスケ?」
キョウスケ「なんでも作者がこの話書いてて気に入ったらしくてな、マサキをもっと修羅場へ案内してやりたいらしい」
エクセレン「ワーオ、マーサも大変ねぇー、ということは?」
キョウスケ「次回も『アンドー君漫遊記』、どんな相手だろうと、とりあえず打ち貫くのみ」
エクセレン「ワーオ、やる気ナッシング!」
感謝!
ネタをくれた三国同盟さんありがとうございます!
subugakiさん、disさんも感想ありがとうございます。
「アンドー君漫遊記」まだ続きます、どうぞよろしくお願いします。