スパロボ学院 ~ OGだよ、全員集合! ~   作:北洋

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<注・意・事・項>
絶賛キャラ崩壊中です!
OG外伝味方勢のイメージが崩れるのが嫌な方は閲覧しない方がよいかもしれません。
それでもよい、という方はどうぞ!

本当に注意:飲酒は18歳になってから(嘘)


続・アンドー君漫遊記 ~デート目指して行く、2千里?~

「なんでデートすっぽかしたのよ!?」

 

 それがリューネの言葉だった。

 俺の名前はマサキ・アンドー、なぜか高校の密集する地域『エリア』1のマンモス校 ── OG高等学院、通称ジェネ高に通う高校2年生だ。

 目の前で激怒している金髪の美少女の名前はリューネ・ゾルダーク。

 俺と同じクラスに所属し、その活発で人当たりの良い性格からクラスで一番人気の女子である。

 

「私、ずっと待ってたんだからね!」

「す、すまねえリューネ……しかしなんの事だかァ ── ゲフウ!?」

 

 俺の言葉に、体育5のリューネの鉄拳が顔面に炸裂した。

 グーであるので当然痛い。

 しかしリューネにデートに誘われた記憶が、まるで文字を修正液で振り潰したかのように、まったくと言っていいほど覚えがなかった。

 だがリューネは俺をデートに誘ったらしい。

 そして俺はそれをすっぽかしたらしい。

 ならば待ちぼうけにされたリューネが怒るのも無理からぬことだと、俺も思う。

 殴られてガンガン痛む頭に、リューネが大声でわめき散らした。

 

「シュ ──── ら ──── バーだからね! はい、これ店の名前と住所! 

今日こそ20時に待ってるから、絶対に来てよね!」

 

 リューネが乱暴にメモ用紙を俺に押し付けると、そのまま大股歩きで下校してしまった。

 リューネは店の名前はなんと言った?

 俺は彼女に殴られた痛みで店名を聞き逃してしまっていた。

 しかし手元にはリューネが渡した虎の巻であるメモ張がある。

 これを先日購入した黒いGPS ── クロに入力すれば、白いイヤホン ── シロが目的地に間違いなくナビゲートしてくれるはずだ。

 なにを隠そう、俺は超が着くほどの方向音痴なのだ。

 

── 自慢ではないが、目的地に無事に着いた試しなど……一度もない!

 

 だがそんなコンプレックスとも今日でオサラバだ。

 ちょちょい、と店名と住所を入力すれば、ひょひょい、と目的地まで案内してくれるだろう。ああ、素晴らしきは文明の利器かな。

 

「さーて、店の名前でも確認して ── ヘェクションッ!!」

 

 先日は気がつくとなぜか真夜中のゴミ捨て場で目覚めたため、風邪を引いてしまったようだ。

 

「あ」

 

 広げたメモ用紙に、まるで狙ったかのように見事に鼻水が飛び散っていた。

 あ、やばい、文字が消えるかも……慌てて俺はティッシュで拭きとったのだが不幸な事に店の名前がかすれてしまい、読み取ることができなくなってしまっていた。

 

「シュ……ラ……バー…………なんだかデジャブがするのは気のせいか?」

 

 読み取れる文字を繋げた言葉に、なぜか俺は背筋に寒気を覚えた。

 しかし幸いにも住所の方は無傷だった。

 これなら無事に待ち合わせ場所に辿り着けるだろう。

 

「頼んだぜクロ、シロ。デート現場にいざ行かん!」

 

 本当に頼りにしているぜ、小さな俺の相棒たち。

 今回のデートの成否は、お前たちの双肩に掛かっていると言っても過言ではない。

 俺は浮かれていた。だってそうだろう?

 美少女とのデートに心踊らない男がいると言うのなら是非紹介してもらいたい。

 メモ用紙片手に意気揚々と下校した。

 

 

 

 スパロボ学院 ~OGだよ、全員集合!~

 続・アンドー君漫遊記 ~デート目指して行く、2千里?~

 

 

 

「行ってらっしゃい、お兄ちゃん! 今日こそ、本当に早く帰ってきてね!」

「分かってるって、プレシア」

 

 俺は義理の妹のプレシア・ゼノサキスの声を背中に受けて、俺は自宅を出発した。

 時刻は夕方17時、待ち合わせの時間まではかなり余裕を持っての出陣である。

 

 しかしそれでも、プレシアの表情には「大丈夫?」という疑問がありありと浮かび上がっていたな。

 無理もないか……今まで待ち合わせの時間に間に合ったことはないし、通学路でも時々迷って夕飯の時刻を大きくオーバーしまったことも多々ある。

 

 ラップされた夕食に「チンして食べてね♡」という書き置きをなんど目にした事か……。

 ちなみに家の家事全般は全てプレシアがやってくれている。

 まったく、出来すぎた可愛い妹だ。

 俺やゼオルートのおっさんにはもったいない家族だと思う。

 もしプレシアに悪い虫でも付いた日にゃあ、俺はその虫を「ゼオルート流剣術」で八つ裂きにしてしまうかもしれない。

 

「さてと、頼んだぜクロにシロ」

『それはこちらの台詞だニャ』

 

 住所をクロに入力すると、シロの嫌み混じりの音声ガイドが始まった。

 失礼なナビだ。ついさっきもナビを使って、真っ直ぐ自宅まで帰って来れたというのに。

 目的地と俺の現在位置が赤い明滅する点としてクロに表示される。

 地図を見ながら住宅街をしばらく進んでいると、家の塀で出来たT字路が見えてきた。

 

『10M先、突き当りを左折するニャ』 

「おう、左だな……左左と……」

 

 俺はシロの指示に従い、T字路を左に曲がる。

 直後、シロの金切り声が俺の頭を揺らした。

 

『なにやってるニャ、マサキ! そっちは右でしょうがニャ、左に曲がるんニャよ!』

「おっとすまねえ、左だな……左左、と」

 

 俺は振りかえると、再びT字路に侵入した。

 左は茶碗を持つ方だ、間違えようがない。

 俺は間違えることなく、T字路を左折する。

 

『マサキ、そこを左に曲がると元来た道に戻るだけニャ!

ここは真っ直ぐ進めば、元来た道に対して左に進む事になるでしょうがニャ!』

「そうだっけ?」

 

 喧しいシロのナビに耐えながら、俺は3度目の正直でT字路を左に曲がる。

 しかしこのやり取り……なんだか初めてでないような気がする。

 既視感(デジャブ)、だろうか?

 

「なあ、この会話前にも ──」

『マサキはなにも考えずに、黙って指示に従っていればいいのニャ!』

 

 俺の質問にシロは取り合ってくれなかった。

 なんというナビだろう。大枚はたいて手に入れたのに、この対応は流石にないと思う。

 だが今はデート現場に向かう方が先決だ。

 シロたちへの文句は胸の奥に隠し、俺は目的地を目指した。

 

 

 

      ●

 

 

 

 小姑のようなシロの小言に耐えること1時間……俺は『エリア』内の繁華街にある1件の店の前に辿り着いていた。

 

「シュ・ラバー……どこかで聞いたことがあるような気がするな……」

 

 どうにも今日は既視感を感じることが多いな。

 それにしても「シュ・ラバー」か、ラバーというくらいなのだから、恋人たちが愛を語らうにはきっとぴったりの店なのに違いない。

 それにあのリューネが指定したのだから、おそらく店内の雰囲気もいいのだろう。

 右手の腕時計を確認すると時刻はまだ午後18時だった。

 俺にとっては空前絶後の快挙と言っていいだろう。

 時間はまだまだ残っているが、繁華街をブラブラして時間を潰すのは超方向音痴の俺にはリスクが高すぎる。

 ここは大人しく店内で待っているが吉だろう。

 

── カランカラーン

 

 扉を開けて店内に入ると、ドアに付けられた鈴が鳴り俺の来客を店内に知らせた。

 

「いらっしゃいませ」

 

 グラスを拭きながら、変な仮面を被ったマスターが俺を迎え入れてくれた。

 三つ目の模様が描かれた仮面の、公園でブランコに揺られてそうな、そんな男性だ。

 酒場の例に漏れず店内はうす暗く、客はまだ3人しかいない。

 栗毛の少女と青髪の若者、その間に挟まれるようにして紅い髪の若者が座っている。

 18時という時間は、酒場にしては開店直後のように早すぎる時間帯なのだ。

 カウンターに座る3人の客を横目に席に着いた。

 

「なんにしますか?」

「んー、そうだなー……」

 

 仮面のマスターがメニューを出して来る。

 俺は未成年なので法律で飲酒してはいけないことになっているが、ジェネ高でそんなもの護っている連中は皆無である。

 特に3年のエクセレン・ブロウニングなど、若い身空で酒豪と呼ばれる程の飲みっぷりらしいしな。

 俺が待ち合わせの時間まで、1杯ぐらいカクテルを飲んでも罰は当たらないだろう。

 正直カクテルの味など覚えられる程飲んでいないので、俺は目に付いたメニューをオーダーすることにした。

 

「じゃあ、このXYZ(エックスワイズィー)ってのくれよ」

「分かりました、少しお待ちください」

 

 俺の注文にマスターが答える。

 胸ポケットからメモ張を取り出して覗きながら、数種のお酒を取り出し、たどたどしい手つきでシェイカーで混ぜ始めた。

 この仕事について日が浅いのか、どうもまだ慣れていない様子だ。

 しかし出来上がったカクテルをそっと俺に差し出してくれる仕草を見れば、しっかりとマスターをしているんじゃないかと思える。

 

「サンキュー」

 

 俺はマスターに礼を述べ、カクテル ── XYZを持ち、口に運んだ。

 

「ッ!!?」

 

 しかしそこで俺は、この日最大の既視感を覚えることとなる。

 口の中が熱い! 鼻の奥が辛く、目じりには反射的に涙が浮かんでくる。

 なんだこのカクテルは! アルコール度数が半端じゃないぞ!

 これを飲むとマズイ……どうするトイレに行って吐いてしまうか? あれ? 前にもこんなこと考えなかったか俺?

 俺は怪訝なマスターの視線を受けながらも席を立つことにした。

 椅子をカウンターから引き立ち上がろうとした、まさにその時だった。

 

「てやんでえっ! べらぼうめ!!」

── ドンッ!!

「ッ ── ゴクン」

 

 突然隣の客が発した大声に、反射的に俺の喉が含んでいた物を嚥下した。

 飲んじゃった……途端に俺の頭が火照り出す。

 まずいなあ……このカクテル、間違いなくアルコール度数は20%あるぞ……。

 リューネが来たときに、デート相手の俺が既に泥酔状態なんて……見っともなさすぎる。 

 早くもボヤケ出す思考。

 文句を言ってやろうと隣の3人組の方を向くと、机を叩いた青髪の少年が顔面を上気させて立ち上がり、隣の紅い髪の男性を睨みつけていた。

 

「落ち着いてくれ、お兄さん」

 

 紅い髪の男性の言葉に、青髪少年のこめかみに青筋が奔る。

 

「なんだとぉ、テメエに兄貴呼ばわりされる筋合いはねえんでい!」

「止めてよお兄ちゃん、他にお客さんもいるのに恥ずかしいでしょ!」

 

 紅い髪の男性の右隣りに座っていた栗毛の少女が叫んだ。

 

「ショウコが誰と付き合おうとショウコの勝手じゃない! ねえ、フォルカ?」

「う、うむ」

「うがあああッ、この泥棒修羅が! テメエ、いけしゃあしゃあと答えてんじゃねえ!」

 

 ショウコという栗毛の少女が、フォルカという紅い髪の男性の逞しい右腕に手をまわして抱きつく光景に、青い髪の少年はさらに激昂していた。

 

「テメエがショウコと付き合うなんざ百万年早えぜ! 

例えお天とさんが許しても、この俺 ── コウタ・アズマ様が許さねえぜ!」

「もうお兄ちゃん、過保護なのも大概にしてよね!」

 

 ショウコの反論にコウタは首を振る。

 

「いんや、お前はまだ男と付き合うなんて早すぎる! 

こんな優男に騙されずに、今は俺の分まで学校でしっかり勉強するんだ!」

「止めてよね、そんな娘に煙たがられる親父みたいなこと言うの! 

折角フォルカと仲良くなって貰おうと思って飲み会セッティングしたのに、これじゃあ台無しじゃないの! お兄ちゃんのバカ!」

「バ、バカ……ショウコが俺の事をバカって言った!?」

 

 ショウコの言葉に衝撃を受けるコウタ。

 

「俺はショウコを学校に通わせるために毎日働いているのに、そんなお兄ちゃんに向かってバカはねえだろう、ショウコよぉ!」

「お、落ちつくんだ、お兄さん」

「テメエにお兄さん呼ばわりされる筋合いはねえってんだろ、このすっとこどっこいが!!」

 

 兄&妹&妹の恋人による、壮絶な三角関係デスマッチが勃発していた。

 俺は彼らに文句を言うのも忘れて、不躾ながらつい聞き耳を立ててしまっていた。

 どうも紅い髪の男性フォルカ(格闘技でもやっているのか、かなり体が引き締まっている)と、栗毛の少女ショウコは交際しているようだ。

 だがそれが気に食わないショウコの兄コウタは、おそらくフォルカの事が大嫌いなのだろう。

 一方的に険悪な両者の関係を改善しようとショウコがこのバーに誘ったが、コウタにスイッチが入ってしまい、醜い兄妹喧嘩に発展してしまったようだな。

 

 …………いやー、面白い。

 こういうのをなんと言っただろうか……そう、修羅場だ。

 自分が三角関係に巻き込まれるのは勘弁願いたいが、他人のそれを観察するのは実に楽しい。

 本当に、下世話な話ではあるのだが。

 しかしXYZ1口で酔ってしまったようだ。

 俺の体はポーっと熱くなっていて、3人の光景を傍観しながらなぜかXYZに手を伸ばし、無意識の内に1口含んでしまっていた。

 しまった ── と思うのも一瞬。

 

「ショウコー、俺のこと嫌いになっちまったのか!?」

 

 涙ながらなコウタの悲痛な叫びが俺の耳に木霊する。

 俺のこと嫌いになったのか、か……俺にもプレシアという義妹がいるので、コウタの気持ちは痛いほど良く分かった。

 プレシアはまだ幼く、俺のことを「お兄ちゃん」と慕ってくれている。

 家事も全てパーフェクトにこなす自慢の妹だ。

 だがそんなプレシアにもいつか彼氏が出来たりするのだろうか?

 そして俺のことを煙たがり始めるのだろうか?

 そんなの嫌だ、悲しすぎる……俺は思わずXYZを飲みほして、立ち上がっていた。

 

「そうだぞショウコー、もっとお兄ちゃんのことを大切しろー!」

「えっ、ちょっと、あなた何なんですか!?」

 

 会話に乱入した俺に驚いたのか、ショウコがたじろいだ。

 

「お兄ちゃんを大切にしない妹は死刑! この法律があるのを知らないのかショウコー!」

「し、知らないです! な、なんなのこの酔っ払い、フォルカ助けて!」

「ああ、ショウコ、俺の後ろに隠れるんだ」

 

 フォルカがカウンターから立ち上がり、ショウコは彼の裾を掴んで背中に隠れた。

 なんと言うことだ!?

 俺の教えも聞かずにそんな男にすがるとは、まったくもって嘆かわしい!

 フォルカは無言で俺を凝視し、威圧してきた。

 白い衣服の下には、鍛え抜かれた鋭角なボディーラインが若干浮き上がって見える。

 明らかに一般人の体つきではなかった。

 

「ショウコー、そんなに修羅野郎の方がいいのかー?」

 

 涙目になりながらコウタも立ち上がった。

 コウタの息は心なしか酒臭い、かなり飲んでいるようだ。

 

「修羅野郎、テメエもそんなにショウコがいいのかー?」

「お兄さん」

「るせえ! そんなにショウコが欲しいんなら、この俺を倒してみやがれってんだ!!」

 

 コウタがボロボロの学ランのような上着を脱ぎ捨てると、フォルカとはまた違う太い二の腕の筋肉が披露された。

 学生生活の部活では身に付きそうにない、力仕事を生業にしている者の持つ筋肉だ。

 

「いいぞ、やれやれー、ぶっ殺せコウタ!」

「任せとけ、緑髪のアンちゃん!」

 

 バキバキ、と拳を鳴らしながらコウタが構える。

 ただ力任せに拳を作り、腕で顔周辺をガードするだけの格闘技の素人の構えだった。

 

「もうお兄ちゃんの分からず屋! フォルカ、やっちゃえ!」

「……これも修羅の宿命か」

 

 フォルカが流れるような手の動きで、コウタを迎撃するために構えを取った。

 体から紅い闘気のようなモノが立ち上がり、酒場内の空気が打ち震えていく。

 コウタの構えとは対照的に、完成された一つの芸術品のような型を取るフォルカに、俺は思わず恐怖を覚えた。

 あれ……なんだろうこれ? 体が震える?

 以前にもこんな感覚を味わったことがあるような気がする……俺は恐怖を打ち消すために、再びXYZを注文してそれを一気に煽った。

 両者の間には一触即発の空気が流れる。

 

「話し合いの余地はないのか、お兄さん?」

「テメエが俺を兄と呼ぶ限り、俺はテメエを許さねえ。そんなにショウコと付き合いたけりゃ、拳で俺から奪い取ってみやがれってんだ!」

「是非もなし、か。やむおえん ──」

 

 フォルカの闘気が膨れ上がり、棚に陳列されたグラス類がカタカタと唸り始める。

 軽く指を立てた手の型を向け、フォルカが吠える。

 

「機神拳、奥義 ── ッ!!」

 

 貯め込んだ空気が爆ぜる、まさに瞬間、

 

「フォルカアァァァッッ!!」

── ドバーーン!!

 

 酒場の入り口のドアを蹴り破って、1人の男が店内に飛び込んできた。

 目つきの鋭い、水色の髪をした男だった。

 チッ、これからが本番だと言うのに。

 俺も、コウタもフォルカも、空気を読まない乱入者の方に目をやる。

 

「探したぞフォルカ! 貴様、俺と言うものがありながら、そんな小娘になびくとは一体どういう了簡だ!?」

「フェルナンドか。なんの用だ?」

 

 フェルナンドというその乱入者は、どうもフォルカの知り合いのようだった。

 フェルナンドはフォルカに近づくと、胸倉を掴んで叫んだ。

 

「その乳臭い小娘と俺のどちらを取るかと訊いてるんだ!」

「ちょっ、乳臭いってどういう ──」

「娘、貴様は引っこんでいろ!!」

 

 フェルナンドの暴言にショウコが異を述べようとしたが、フェルナンドの射抜くような眼光に言葉を詰まらせた。

 フォルカとは対照的に、青い湯気のようなモノ(闘気)が背中から立ち上がっている。

 なんだこいつ等は? 感情的になると体から煙が上がる人種なのだろうか?

 突然のフェルナンドの登場にコウタもキツネにつままれたような表情を浮かべている。

 雲行きが怪しくなってきたなあ……俺は取り合えず、XYZを再注文して口に運んだ。

 

「この泥棒猫め!!」

 

 なんだか、恋人を寝とられた女のようなフェルナンドの言葉に、俺は違和感しか覚えることができない。

 フェルナンドが女性なら、おおっ昼ドラじゃんっ、と俺も感銘を受けたであろうに……残念ながら彼は見事なまでに漢である。

 フォルカに負けず劣らずの筋肉が服の下から浮き上がって見えている。

 

「意味が分からんぞ、フェルナンド」

 

 まったくもってその通り、俺はフォルカの言葉に頷いた。

 だがフォルカの言葉を聞いた途端に、フェルナンドの青い闘気がどす黒い暗黒のような色に変わる。

 フェルナンドは耳まで真っ赤にしており、激怒しているのが目に見えて明らかだった。

 

「フォルカ、俺と過ごした暑い夏の思い出を忘れたのか!?」

「覚えているとも。夏に山籠りし、共に修業した頃のことだな?」

「忘れたのか!? 2人きりで、海に一緒にでかけたことを!?」

「覚えているとも。水中戦の鍛錬のため、2人で人喰いザメを退治した時のことだな?」

「忘れたのかフォルカ ──── !?」

 

 フェルナンドの叫びが店内に木霊する。

 俺は彼の主張には主観が入りすぎている気がしていた。要するに脳内で美化しまくっているのだ。しかも男との思い出を、である。

 理解しがたいフェルナンドの主張は続くが、フォルカは客観的事実を述べて対応していた。

 

「いい加減にしろ、アンちゃん」

「そうだぜ、その男には俺たちが用があるんだからよ」

 

 俺とコウタは、延々続きそうなフェルナンドとフォルカの押し問答に痺れを切らした。

 2人同時にフェルナンドの肩に手を置く。

 すると、フェルナンドは俺たち手を払い除け、

 

「機神双衝撃(きしんそうしょうげき)ッ!!」

「あべしっ!?」「ひでぶっ!?」

 

 両手から青い光弾のようなモノを放ってきた。

 至近距離だったのでまともに当たり、俺とコウタは壁際まで吹っ飛ばされた。

 かなり痛い。激痛が俺の中を駆け巡る。

 しかし俺よりタフなのか、コウタは血の混じった唾を吐き捨てながら立ち上がった。

 

「おい、アンちゃん、なにしやがんでえ!?」

「俺の体に触っていいのはフォルカだけだ!!」

「あんま訳の分からねえこと言ってると、変身してぶっ殺すぞコラァ!!」

 

 変身……確かにそう言ったコウタの体には、薄くぼんやりと光る紅い膜のようなものが纏われ始めていた。

 

「いいだろう、この俺の機神拳で葬ってくれる!!」

 

 フェルナンドも黒いオーラを立ち昇らせて、フォルカと同じ構えをコウタに向けた。

 …………………やばい。

 フェルナンドに受けた痛みで酔いが醒めた俺は思った。

 以前にもこんな光景を見たことがある。

 既視感……なんかじゃなく、確かにこんな光景を見たはずだ!

 そして酷い目に遭った!

 まずい、逃げなくては……俺は痛む体を無理やり起き上がらせるが、

 

「ねえ、フォルカ」

 

 ショウコがフォルカに言った。

 

「やっちゃえ♡」

「承知した」

 

 コオォォォ、と空手の息吹のような呼吸法で、フォルカが力をため始めた。

 真っ赤な闘気……いや、思い出した。あれは確か覇気と言うものだ。

 爆炎のようにフォルカの体から噴き出し、双頭の龍のようなシルエットが彼の背後には浮かび上がっていた。

 

「や、やばい!!」

 

 俺は急いで、ドアの壊れた出口に向かって駆け出した。

 フォルカの変化に気付いたコウタとフェルナンドが背後で叫んでいた。

 

「てやんでぇ! やんのかテメエら!?」

「俺の機神拳で目を覚まさせてやるぞ、フォルカ!」

 

 2人の言葉を受けたフォルカは、

 

「機神拳の力……その身で思い知るがいい!!」

 

 さらに覇気を強大に高めているのが、背中越しにでも俺には分かった。

 だって背後から物凄いプレッシャーがビンビン伝わって来るんだもの。

 早く、早くここから逃げなければ、俺の身が危うい。

 ここは「シュ・ラバー」……恋人たちが愛の語らいをする酒場、そう思っていた。

 しかし違った。

 ここは本当の修羅場だ!

 

「真覇猛撃裂破(しんはもうげきれっぱ)ァァッ!!!」

 

 空気が爆ぜた ── では生ぬるい、爆弾が炸裂したような衝撃が体を包む。

 そのフォルカの咆哮と共に放たれた閃光に、

 

「「「ギャアアアア ──── ッ!!」」」

 

 俺、コウタ、フェルナンドの悲鳴はかき消され、俺の意識はそこでプッツリと途絶えることになる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると俺たちは、ゴミ捨て場で横になっていた。

 周囲は完全に深夜真っ盛りの暗闇で、冷めきった冷たい風が吹きすさぶ。

 なぜか俺の隣にはコウタとフェルナンドが気絶していた。

 

「俺、なんでこんな所で寝てるんだ?」

 

 俺の隣で気絶している連中の名前は分かるのだが、なぜ自分がゴミ捨て場で寝ていたのかが思い出せない。

 それに頭がガンガンする。

 鈍器かなにかで頭を強打されたみたいに痛む。

 つい先ほどの事を思い出そうとすると、痛みがさらに酷くなり、吐き気まで催してきたので考えるのは止めることにした。

 

「……なにか大切なことを忘れてる気がするが……気分も悪いし、帰るか」

 

 俺はコウタとフェルナンドを放置して帰路に付いた。

 夜の街は煌々と明かりが照らされ明るいが、光の届かない路地は暗闇に覆われている。

 この暗闇になにか恐ろしいものが潜んでいるような気がした。

 俺は駆け足で自宅を目指した

 

 

 

 

      ●

 

 

 

 

 深夜2時。

 客のほとんど居なくなったバーでの中で、リューネは1人項垂れていた。

 理由? 説明しなければいけないだろうか?

 

「マサキ、やはり来ませんね」

 

 グラスを拭きながら、閉店の準備を進めるシュウが呟いた。

 彼の目の前のカウンターには顔を赤く染めたリューネと、空の酒瓶が大量に転がっている。

 

「ちゃんと、私が働いているバーの名前と、住所のメモを渡したんですか?」

「…………」

「リューネ?」

 

 シュウの問いかけに、リューネは答えなかった。

 代わりに無言で携帯電話を取り出し、座った目でメモリーを眺め、不確かな指の動きで通話ボタンを押した。

 しばらくして、電話をかけた相手から声が帰って来た。

 

『リューネよ、こんな夜中にどうしたのだ?』

「あ、親父―、ちょっとお願いがあるんだけどさぁー」

 

 どうやらリューネは自分の父親、大企業「ディバインクルセイダーズ」のトップであるビアン・ゾルダークに電話しているようだ。

 

「首輪作ってよ、首輪! 発信器付きのヤツね! 

…………犬? 違うわよー、人の首に付けるヤツ ────」

「ふぅ……やれやれ」

 

 シュウのため息は、客の居なくなった店内に空しく溶けていくのだった。

 

 

 

 

ここは高校がなぜか密集する土地『エリア』。

『エリア』には個性豊かな人間が沢山いる。

今日も、楽しく愉快な仲間達がアホな事件を巻き起こす。

次はどんな事件が起こるのだろう……それは誰も知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 『エリア』内にある小さな公園のブランコ。

 真夜中にそれをキイキイと揺らす影が一つあった。3つ目の仮面をつけた中年男性だった。

 

「……また、クビになってしまった……」

 

 「シュ・ラバー」のマスターとして雇われて1日目にして解雇。

 耐えようのない絶望感が仮面の中年 ── ユーゼス・ゴッツォに圧しかかる。

 

「がんばれ、ゆーさん」

「ありがとう、オータムちゃん。はい、チーかま」

「わーい、ありがとー」

 

 傷心のユーゼスはチーかまの包装を剥ぎ、謎生物オータム・フォーに渡してあげた……ユーゼスの明日はどっちだろう?

 頑張れ、マダオ。

 

 

 

 

 




<登場キャラ紹介>
マサキ・アンドー:ジェネ高2年生。超がつくほどの方向音痴、次はどこへいくのやら。
リューネ・ゾルダーク:ジェネ高2年生、マサキと同じクラス。マサキが好き。
フォルカ・アルバーク:修羅。ショウコの彼氏らしいが職業不明。あまり暴力はすきではない。
フェルナンド・アルドゥク:修羅。フォルカの親友だが、気持ちが時々暴走する。
コウタ・アズマ:学校に通わず、肉体労働で生活費を稼いでいる。ショウコ命!
ショウコ・アズマ:ジェネ高1年生。フォルカと交際している。


<次・回・予・告>

エクセレン「ワーオ、お久しぶり! 実に1週間ぶりの更新よーん!」

キョウスケ「作者は最近仕事が忙しいと言い訳をしていたな」

エクセレン「小説の更新なんて趣味みたいなもんなんだからそんなの関係ないでしょ。それにしても、そろそろ忘年会の場所も決めないとまずいわねー」

キョウスケ「その内、忘年会ネタでもやるか……では次回予告にいくとしよう」


キョウスケ
「俺は ── 以下略 ── だ!
次回は久しぶりに劇でもやってみるとしよう!
だが日本昔話ではなく、世界名作劇場だ!
次回、スパロボ学院『OG世界名作劇場 ~蛸とシンデレラ~』!
どんな相手だろうと、打ち貫くのみ!」





 本当は2,3日中に更新するつもりでしたが、仕事で疲れてやる気が出ず、ここまで遅くなってしまいました。
 待っててくれた人は本当にごめんなさい。
 
 感想くれたsibugakiさん、Disさん、三国同盟さん、ありがとうございます!
 皆さんの感想を励みに頑張っていこうと思います。
 また、随時ネタ募集中なので、気軽にネタを投稿していただければ助かります。
 では、また次回でお会いしましょう!
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