浅井初と記憶喪失少年が幻想入り   作:門矢心夜

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第四話「紅魔館にて VS十六夜咲夜」

にとりに武器をスペルカード対応にしてもらい、六時間が経過し。

 ようやく、紅魔館の入口に辿り着いた。

 

「すげえな本物は」

 格ゲーの奴でしか見たこと無かったが、本物はそんなのとは桁違いの迫力がある。

 その名の通り、全体的に紅い洋風の館で、咲夜とのバトルステージである時計までそのままだ。

「ヒロ、魔理沙、行くぞ」

「ああ」「おう」

 私は建物のドアを開ける。

 

 中に入ったが、人の気配を感じない。

「誰もいないのか・・・・・・?」

 ここにはレミリア・スカーレットがいる筈で、私は彼女に用があるのだが。

 次の瞬間。

 どこからか飛んできたナイフに気付いた私は、それを少し動いて躱し。

 飛んできた方向に向かって、銃口を向ける。

「スペルカード発動!! 霊符『銃弾之星(スター・バレット)』!!」

 シルバーの輝きを放つ星屑が、ランタンを一つ破壊した。

 しかし、あのナイフ・・・・・・。

「出て来いよ咲夜、私と勝負しろッ!!」

 その声の後、灰色の髪の、メイド服を纏う少女、十六夜咲夜が天井から降りて着地する。

「聞き覚えの無い声ですね。貴女は誰ですか?」

 聞かれた通りに、私は答えた。

「私は浅井初。ただの異世界人と名乗っておこう」

 咲夜の目は、悪霊に憑りつかれている事を示す赤い瞳だ。

 しかし厄介だ。咲夜と言えば、時間停止。これは詰んだかも知れん。

「初!! 咲夜の能力が使えるのは、一回につき五秒までだ!!」

 ヒロの声。魔理沙からそれを聞いたのだろう。

「ならッ!! うおおおおおおおおおッ!!」

私は獣のような声を上げながら、咲夜に接近を開始した。

「奇術『ミスディレクション』ッ!!」

 ――――!!

 一瞬にして、数千ものナイフが出現し、気付いた頃にはいくつか私の体を貫いていた。

「がッ・・・・・・」

 スペルカードは『殺し合い』を『遊びやスポーツ』に変える為に存在する道具。だが稀に致死性を有するものもある。ナイフで刺された箇所に痛みを感じた。

 それに耐えながら、私は銃口を咲夜に向ける。

「霊符『銃弾之星(スター・バレット)』ッ!!」

 四発の星屑が、咲夜目掛けて複雑な軌道を描いて飛んでいく。

「奇術『ミスディレクション』ッ!!」

 再び数多のナイフ。星屑は、ナイフにかき消された。

 ならッ!!

 左手の銃に付けられたスイッチを、カチリと切り替え。

 銃口を咲夜に向け、引き金を引く。

「シャイニングバレットッ!!」

 白い、光の槍のような弾丸が咲夜の腕目掛けて進む。

 殺すのではなく、牽制の為の一撃。

「奇術『ミスディレクション』ッ!!」

 ナイフが光の槍に向かって飛んでいく。

 光の槍に触れたナイフ。

 だが、それは槍に弾かれた。

「!?」

 私はニヤリと笑う。

 スペルカードは『殺し合い』を『遊び』に変えるもの。

 遊びの為に作られた兵器。それはつまり、本物の殺人攻撃は防げないという事。

 シャイニングバレットによって放たれた弾は咲夜の腕を穿ち、紅魔館の壁を破壊する。

 咲夜は私を止めようとするが、すぐに意識を失い、腕を押さえて倒れた。

 

◇◇◇

 

「見つけたぞ、レミリア」

 ドアをけ破り、銃口を向けながら、私は口を開く。

 何も言わずに、スペルカードを発動、つまり引き金を引く。

 星屑は真っすぐに飛んでいき、その先で爆発を起こした。

 否、起こす筈だった。

 星屑は、羽のようなものに弾かれて、天井に激突した。

 羽の持ち主は振り向き、私を見る。

 紫の髪に、子供向けの服を纏い、背中には蝙蝠のような羽。口元からは牙を覗かせている。

「よくぞ我が前に現れたな、人間。その通り。私が紅魔館の主、レミリア・スカーレット」

「浅井初だ」

 レミリアの瞳は、悪霊に憑りつかれた証である赤。こいつも黒だ。

「待て、次は俺が戦おう」

 ヒロは刀を握り、私の前に出た。

「次の相手は貴方ね」

「ああ。勝負だレミリア!!」

 先に攻撃を行ったのはレミリア。

「スペルカード『スターオブダビデ』ッ!!」

 部屋中にレーザーが放たれ、ヒロに降り注ぐ。

「スペルカード『弾銘斬波』ッ!!」

 ヒロの刀から、青い光刃が射出される。

 レーザーは光刃に防がれて消えた。

「先に行け、初!!」

「え!!」

「良いから早く!!」

「分かった!」

 私は魔理沙を連れて、紅魔館の外へと逃げ出した。

 最後に聞こえたのは、部屋から遠く離れて聞こえた爆発音だった。

 


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