にとりに武器をスペルカード対応にしてもらい、六時間が経過し。
ようやく、紅魔館の入口に辿り着いた。
「すげえな本物は」
格ゲーの奴でしか見たこと無かったが、本物はそんなのとは桁違いの迫力がある。
その名の通り、全体的に紅い洋風の館で、咲夜とのバトルステージである時計までそのままだ。
「ヒロ、魔理沙、行くぞ」
「ああ」「おう」
私は建物のドアを開ける。
中に入ったが、人の気配を感じない。
「誰もいないのか・・・・・・?」
ここにはレミリア・スカーレットがいる筈で、私は彼女に用があるのだが。
次の瞬間。
どこからか飛んできたナイフに気付いた私は、それを少し動いて躱し。
飛んできた方向に向かって、銃口を向ける。
「スペルカード発動!! 霊符『銃弾之星(スター・バレット)』!!」
シルバーの輝きを放つ星屑が、ランタンを一つ破壊した。
しかし、あのナイフ・・・・・・。
「出て来いよ咲夜、私と勝負しろッ!!」
その声の後、灰色の髪の、メイド服を纏う少女、十六夜咲夜が天井から降りて着地する。
「聞き覚えの無い声ですね。貴女は誰ですか?」
聞かれた通りに、私は答えた。
「私は浅井初。ただの異世界人と名乗っておこう」
咲夜の目は、悪霊に憑りつかれている事を示す赤い瞳だ。
しかし厄介だ。咲夜と言えば、時間停止。これは詰んだかも知れん。
「初!! 咲夜の能力が使えるのは、一回につき五秒までだ!!」
ヒロの声。魔理沙からそれを聞いたのだろう。
「ならッ!! うおおおおおおおおおッ!!」
私は獣のような声を上げながら、咲夜に接近を開始した。
「奇術『ミスディレクション』ッ!!」
――――!!
一瞬にして、数千ものナイフが出現し、気付いた頃にはいくつか私の体を貫いていた。
「がッ・・・・・・」
スペルカードは『殺し合い』を『遊びやスポーツ』に変える為に存在する道具。だが稀に致死性を有するものもある。ナイフで刺された箇所に痛みを感じた。
それに耐えながら、私は銃口を咲夜に向ける。
「霊符『銃弾之星(スター・バレット)』ッ!!」
四発の星屑が、咲夜目掛けて複雑な軌道を描いて飛んでいく。
「奇術『ミスディレクション』ッ!!」
再び数多のナイフ。星屑は、ナイフにかき消された。
ならッ!!
左手の銃に付けられたスイッチを、カチリと切り替え。
銃口を咲夜に向け、引き金を引く。
「シャイニングバレットッ!!」
白い、光の槍のような弾丸が咲夜の腕目掛けて進む。
殺すのではなく、牽制の為の一撃。
「奇術『ミスディレクション』ッ!!」
ナイフが光の槍に向かって飛んでいく。
光の槍に触れたナイフ。
だが、それは槍に弾かれた。
「!?」
私はニヤリと笑う。
スペルカードは『殺し合い』を『遊び』に変えるもの。
遊びの為に作られた兵器。それはつまり、本物の殺人攻撃は防げないという事。
シャイニングバレットによって放たれた弾は咲夜の腕を穿ち、紅魔館の壁を破壊する。
咲夜は私を止めようとするが、すぐに意識を失い、腕を押さえて倒れた。
◇◇◇
「見つけたぞ、レミリア」
ドアをけ破り、銃口を向けながら、私は口を開く。
何も言わずに、スペルカードを発動、つまり引き金を引く。
星屑は真っすぐに飛んでいき、その先で爆発を起こした。
否、起こす筈だった。
星屑は、羽のようなものに弾かれて、天井に激突した。
羽の持ち主は振り向き、私を見る。
紫の髪に、子供向けの服を纏い、背中には蝙蝠のような羽。口元からは牙を覗かせている。
「よくぞ我が前に現れたな、人間。その通り。私が紅魔館の主、レミリア・スカーレット」
「浅井初だ」
レミリアの瞳は、悪霊に憑りつかれた証である赤。こいつも黒だ。
「待て、次は俺が戦おう」
ヒロは刀を握り、私の前に出た。
「次の相手は貴方ね」
「ああ。勝負だレミリア!!」
先に攻撃を行ったのはレミリア。
「スペルカード『スターオブダビデ』ッ!!」
部屋中にレーザーが放たれ、ヒロに降り注ぐ。
「スペルカード『弾銘斬波』ッ!!」
ヒロの刀から、青い光刃が射出される。
レーザーは光刃に防がれて消えた。
「先に行け、初!!」
「え!!」
「良いから早く!!」
「分かった!」
私は魔理沙を連れて、紅魔館の外へと逃げ出した。
最後に聞こえたのは、部屋から遠く離れて聞こえた爆発音だった。