浅井初と記憶喪失少年が幻想入り   作:門矢心夜

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第六話「永遠亭にて 魔理沙VSレミリア・???」

永遠亭で初の診察が始まって数十分。

 診察をしていた、赤と青のナース服を纏う銀髪の少女、八意永琳(やごころえいりん)が診察室から出てきた所だ。

「永琳、初はどうだったのぜ?」

「驚いたわ。あの人意外と頑丈ね。

気絶はしているけど、脳震盪を少し起こしてるせいなだけで、怪我はしてないわ」

「そ、そうなのぜ?」

 魔理沙は胸を撫で下ろす。

「多分あと数時間くらいで目覚める。だがあまり無理はさせないように」

 永琳はそう言い残し、何処かへ行った。

 

 さて、無理をさせるなと言われた以上、悪霊に憑りつかれた敵を少しの間は私が戦わなければならないわけだ。

 初のいる病室辺りに箒を置いて座り、意識を集中させる。

 永遠亭に近付いてくる二つの気配。

 だが、前に感じたことのあるもの。

 少し邪悪なものが混じっているもの。

 数時間前に戦闘した緑ローブのような奴の気配は読めないが、普通の人間の気配を読むことは可能だ。

 故に、悪霊に憑りつかれた敵が襲ってくるのが分かる。

 魔理沙はそのまま、永遠亭の入口に向かって駆け出した。

 

◇◇◇

 

 そこにいたのは。

「レミリアッ!」

 ヒロと戦闘していたレミリアと、青いローブを纏う何かだった。

 あの緑ローブに似ているが・・・・・・。

 ローブのデザインが似ているという事は、何か関係があるのだろうか・・・・・・。

 あの緑ローブは女性だが、今回の青ローブは雰囲気的に男性の感じだ。

 しかしレミリアの仲間に男性はいたのだろうか?

 というかそもそもヒロはどうしたのだろうか。

「レミリア・・・・・・。ヒロの奴をどうしたのぜッ!?」

「ヒロなら、とっくに私が殺した。残念だったわね、あそこで貴女だけでも残っていれば助かったかも知れないのに」

 何も言い返せない。

 だから魔理沙は、箒に乗り、そのままレミリアに突進した。

「出番だよ、青ローブさん」

 ――!?

 青ローブは二本の刀を取り出し、私に襲い掛かった。

 もう一つは真剣。もう一本はにとりに貰った剣と酷似しているスペルカード対応の刃引きされた刀。

 いやまさか。そんな可能性はあり得ない。

 魔理沙はスペルカード技を使用する。魔理沙の十八番。

「マスタースパーク!!」

 恋符『マスタースパーク』。

 七色に輝く電流が、青ローブ目掛けて飛んでいく。

 青ローブはスペルカード用の刀で、それを弾き飛ばす。

 刀に飛ばされた電流は空に向かって飛ばされた。

 

「やるなそこの青ローブ・・・・・・」

「あら、敵を褒める前に自分の状況を理解した方が良いと思うわよ。

斬りなさい」

 ――!?

 刹那にも満たない速度で、青ローブは自分の後ろに現れた。

 そのままローブは、両手の刀でうなじを斬り付けた。

「ぐおッ・・・・・・」

 その圧力で二メートルくらい吹き飛ばされ、顔から地面に叩きつけられた。

「まだだ・・・・・・」

 両手を地面につけて何とか立ち上がり、敵の方を向く。

 初なら、こんな簡単にやられたりしない。

「っと・・・・・・大人しく寝てろよ。そうしないとお前の肉を、綺麗にそげねえだろ」

 ――!?

 その声は青ローブから発せられたもの。

 だが、聞き覚えがある。ヒロに似ているのだ。

「お察しの通りよ魔理沙。この青ローブの正体は・・・・・・」

 レミリアの頷きと同時に、青ローブはフードに手をかけた。

 そのままバッ、と外す。

 その顔は、瞳の色こそ赤く変化しているが、紛れもないヒロそのものだ。

「ヒロ・・・・・・」

「そう。ヒロは私に負けた。

私の中にある力を、ヒロに分け与えてあげたの」

 両腕を大きく広げながら、レミリアは高らかに言う。

 何という事だ。

 ヒロ・・・・・・。

「さあ、第二回戦と洒落込もうか」

 ヒロはスペルカード用の刀に力を込め始めた。

 あの技――――『弾銘斬波』では無い。

 それとは違う構え。

 深紅の光が、彼の体を満たし。

 そして、爆散した。

「スペルカード発動! 変化『吸血化』ッ!!」

 ヒロの体に変化が起きた。

 まず、背中からは赤い羽が生え。

 口元からは牙が。

 青いローブを脱ぎ捨てた、その姿は。

 完全にドラキュラそのものだった。

 

 これがヒロの新しいスペルカードか・・・・・・。

「さあ、見せてやりなさい。貴方の力を」

 ヒロはそう頷くと、魔理沙の背後に一瞬にして回った。

 手段はただ一つ。

 スペルカードの攻撃で、一度足止めするしかない。

 死神の如く襲ってくるヒロを止めるにはそれしか。

「喰らえッ! ブレイジングスターッ!」

 蒼き彗星が、魔理沙のスペルカード宣言と共にヒロの周囲に降り注ぐ。

 ヒロのスピードは桁違い。全て見切られ、躱され、あるものは弾かれた。

「『弾銘斬波』ッ!」

 続けてヒロはスペルカード技を放つ。

 黒と赤の光刃が、剣から一気に放出される。

 十字型の、防御不能の光刃が。

「これは防げないのぜッ!」

 何とか食い止めるべく、魔理沙はマスタースパークを発動。

 七色に輝く電流は、『吸血化』により有り得ない程強化された『弾銘斬波』とぶつかると同時、消失する。

 全くの無意味。

 魔理沙は成す術も無く、永遠亭の入口に向かって大きく吹き飛ばされた。

「ヒロ・・・・・・」

 これではレミリアを倒せない。果たしてどうすれば・・・・・・。

 

 その瞬間。

 白いローブを身に纏った何かが、ヒロの真剣を斬り飛ばした。

 

「な、何なのぜ・・・・・・?」

 白ローブは魔理沙の前に立つと、ローブを脱ぎ捨てた。

 その姿は、白い髪と、青緑色の衣服、そして二本の刀。

 半人半霊の剣士、魂魄妖夢だ。

「妖夢ッ!?」

「待たせたわね魔理沙。ここら辺で異変が起こっていると聞いて駆け付けたわ」

 というか剣士の人間がローブ姿で現れるのは最近流行っているのか?

「私の獲物は、あの剣士ね」

「なるべく殺さないでくれ。頼むぞ妖夢」

「了解した」

 そう呟くと、妖夢はヒロと共に空を飛んだ。

 

「邪魔者が一人現れたね。まあ無駄な事よ、吸血化状態のヒロに妖夢如きが勝てるわけがない」

「それはどうかな、レミリア。

妖夢はかなり強いのを、私は知っているぜ。

さあお喋りは終わりだ。行くぜレミリアッ!

マスタースパークッ!」

「スターオブダビデッ!」

 

◇◇◇

 

 妖夢は空で、ヒロと対峙していた。

 先に攻撃したのはヒロ。

 何のスペルカードを使ったのかは知らないが、三つに分裂し、妖夢に襲い掛かる。

 そのまま妖夢はスペルカードによる剣術の体勢に入る。

「幽鬼剣「妖童餓鬼の断食」ッ!」

 妖夢はヒロより上に飛び、虚空を斬る。

 その軌跡が光ると同時、その軌跡から楔弾がヒロに投下された。

「『弾銘斬波』ッ!」

 赤と黒の斬撃が、楔弾を粉砕する。

 その時には、妖夢は瞬間移動めいた速度でヒロの背後に回っていた。

 スペルカードによる斬撃を殺さずに、腕目掛けて放つ。

「人符「現世斬」」

 ヒロの腕に妖夢の剣が突き刺さる。

 同時に吸血化が解け、そのまま地面に落下していった。

 

◇◇◇

 

 その頃には、魔理沙もレミリアを倒していた。

 妖夢は地面に着地し、魔理沙に話しかけた。

「悪霊・・・・・・何が原因で起こっているのかしらね」

「さあ。だがとんでもないという事だけは明らかのぜ」

「取り敢えず、レミリアは私が紅魔館に帰しておくから、あとは貴女方が何とかしなさい」

 そう言ってから、妖夢はレミリアを抱え、永遠亭とは逆方向に駆け出した。

 

◇◇◇

 

 畳一畳の部屋で、私は目を覚ました。

 布団を持ち上げ、自分の服装を確認する。

 いつもの白いブラウスと黒いスカートでは無く、薄いピンクの和服。

 自分の服は布団の隣で、丁寧に畳まれていた。

「ここは・・・・・・?」

 私はチルノを倒し、その後気絶した。

 魔理沙がここまで私を運んだのだろうか。

 まだ痛む頭を押さえながら、私はよろよろと立ち上がり襖を開ける。

「魔理沙・・・・・・?」

 小さな声でそう呼ぶと、何故か包帯姿の魔理沙と、右手に包帯を巻くヒロがいた。

「魔理沙! それにヒロ!」

「おう、初か。

ちょっと色々あってな」

 なるほど。気絶している間に一波乱あったわけだ。

「というか初、お前は大丈夫か?」

「まあな。てか私が寝ている間に何かあったか?」

「実は――

 

◇◇◇

 

「――――なるほど。ヒロとレミリアが、魔理沙と戦い、途中妖夢が現れたと。

あと、緑ローブだっけ?」

「ああ。今は一番奴の正体が気になる。香霖堂で私達が来るのを今も待っているらしい」

「そうか。明日にはそこに向かわないとな」

 だが緑ローブの話を聞いた時、容姿や戦い方などから少しある人物を思い出した。

 私の身近な人だ。もしかすると・・・・・・。

「いや、多分その可能性は無いか」

「ん、どういう事のぜ?」

「何でもないッ!」

 




さて、ヒロの吸血化を卍解だと思った貴方。
正直に手を挙げなさい。怒らないから。

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