永遠亭で治療を終え、旅を再開した私達。
次の目的地である香霖堂に向かって、現在歩いている。
魔理沙曰く、そこで緑ローブの女性が待っているという。
それにしても、緑の木刀とクールな顔立ちってあいつくらいしかいない気がするんだが・・・・・・。
多分ヒロと私以外にも幻想入りした奴がいるのだろう。
大体正体分かるけど。
まあ、奴にあったら知らなかったフリでもしてやろう、などとブラックな事を考えている内に。
建物が見えてきた。
瓦屋根の目立つ和風の一軒家。入口はドアで、窓は障子というおかしな組み合わせ。
桜の木が一本生えているらしい。
魔理沙の情報では、ここは幻想郷で唯一外の世界のモノが売られているそうだ。
そして、建物に近付こうとしたその時だ。
「待ち侘びたぞ。異世界の銃士」
まるで死神のように、何もない空間から緑ローブは突然現れた。
腰の柄から木刀を抜いたその時、強い風が私に向かって放たれる。
スペルカード技ではない。
スペルカードは一部の技を除いて、吹き飛ばされる以外の効果を持たない。
だが今の風は明らかに、顔に傷を作り、服の一部を裂いた。
スペルカード使用状態にしたエアガンの銃口を向け、口を開く。
「随分派手な挨拶だな、お前」
「ふっ。この程度で怖気づいたか?」
いやお前らがよくやってることだから今更驚かねえよ?
多分彼女は正体を隠したがっていることだろうから、私は取り敢えず大嘘を吐いておく。
「ああ、ちょっとな。その風の刃、本気の奴が来たら死ぬかもな」
まあ死なないけど。
「ふっ、ただの人間にしては理解が早いな。
その通りだ。吾の手に掛かれば、貴様ら三人を物言わぬ肉塊にするなど容易いことだ」
「は、はぁ・・・・・・」
そして緑ローブは、木刀を三度振ってから言う。
「吾、この幻想郷に焦土の世を欲する也。鳴かぬなら、滅してやろう、杜鵑」
某実在していた第六天魔王よりひでえな。
「そう簡単に死んでたまるかよ。私は元の世界に帰らなきゃいけねえんだ。
悪いが、倒させてもらうッ!」
私は言い終わると同時、引き金を引く。
霊符『銃弾之星(スター・バレット)』。
銀色に輝く星の弾丸が、一直線に緑ローブへと飛んでいく。
勿論銃弾之星(スター・バレット)の飛ぶ速さは実弾銃と同じレベル。高い反応速度を持つ者にしか、回避も対策も無意味。
だが緑ローブは。
木刀と真剣の二刀流で、それを容易く捌いた。
「やるな」
こんな動きが出来るなら、多分あいつしかいない。
あいつは淀子(よどこ)姉さんよりは強くないが、私よりは確実に強い。
故に、弾丸すらも切り裂ける。
「つーかやっぱり、改めて思うわ。
私の周りの連中、組めば世界滅ぼせる気がするわ」
などと呑気な事を言いながら、三度引き金を引く。
星の弾丸を容易く切る緑ローブ。
死神の如く、素早い動きだ。
「緑ローブ! 私もリベンジさせてもらうぜッ!
行くぜ、マスタースパークッ!」
七色に輝く雷が、魔理沙の両手から放たれる。
緑ローブはそれも斬り、私目掛けて飛び掛かった。
「初ッ!」
その攻撃を、ヒロがスペルカード用の刀で受け止める。
「『弾銘斬波』ッ!」
ヒロのスペルカード技。
ヒロの持つ刀から、刃の形をした光が一直線に放たれた。
「ぬゥッ!」
ヒロの放った光刃は緑ローブの一振りによってかき消されたが、彼女の被っていたフードが風で捲れた。
フードに隠されていた顔は。
緑掛った黒い長髪。普段は緑の、紅い鋭い瞳の整った中性的な顔。
これで確定だ。
「やっぱりお前か、江代(えよ)」
「貧乳の銃士・・・・・・。よくぞ我が正体を見破ったな」
「待ってろよ江代。今目を覚まさせてやる」
私は銃口を江代に向ける。
一方江代は、木刀を鞘に収納し、真剣の方の柄に手を掛けた。
確かに江代は、私以上に強い。
だが。
姉が負けるわけには、いかねえよ。
「うおおおおおおおおッ!」
凄い雄叫びの後、江代は刀を抜いた。
私を殺すつもりの、全力の抜刀。
剣に当たっても、江代にダメージは入らない。
顔に当てて吹き飛ばすしかないッ!
「はァッ!」
銃口から、星の弾丸が放たれる。
抜刀術に集中している江代は、それに気付くことが出来ない。
故に今なら、当てられる。
星の弾丸は、江代の顔面衝突と同時。
破裂し、江代を吹き飛ばした。
◇◇◇
少し時間が経ち、江代は起き上がった。
「わ、我は何を・・・・・・。何故このような身なりを・・・・・・?」
緑のローブのローブを脱ぎ捨て、いつもの服装に戻ると、私を見るや否や。
「貧乳の銃士、貴様ここにいたのかッ!
赤の姫も、我らの創造主たる父母も心配しておったぞ」
「お、おう・・・・・・」
「吾も貴様を探していたのだが、その途中穴に落ちてしまったのだ。
気付けば幻想郷にいて、吾は何者かに操られてしまった」
江代は真剣を捨ててそう言う。
「ま、今回は許すわ。江代、一緒に博麗神社に行こうぜ。
そして帰ろう、家に」
「言われなくともそのつもりだ。貧乳の銃士」
「名前で呼べ。名前で」
さてこれから四人で再び博麗神社に向かおうとしたが。
ヒロが言う。
「なあ、初」
「なんだ、ヒロ」
少し俯いてから、ヒロは言う。
「俺は思ったんだ。ここで色んな出会いをして、色んな興味深い事を沢山経験した。
だから、俺はもう少しここで生きようと思う。
孰れは帰るけど、今すぐにではない。
だから、一旦ここでお別れだ」
ヒロは意思に満ちた目をしていた。
私はそれに対して、
「そうか・・・・・・。分かったぜ、ヒロ。
また会おう」
「ああ。まずは無縁塚に行こうと思う。
じゃあな、初。またゲームしよう」
こうして、ヒロと別れ。
私達は魔理沙と江代の三人で、香霖堂に入店した。