イナズマイレブン1!2!3!4!? 比企谷 八幡伝説 作:投げやーりー
5日程前の事だ。
音無が新聞部の伝で入手した尾刈斗中の試合の映像を俺たちは見ていた。
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ…
尾刈斗中の3人の選手が奇妙な動きをしていたと思ったら、相手チームが動かなくなった。
何を言っているのか分からねーだろうが、何をしたのか分からなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術とかそんなチャチなもの……
なんだろうなー(棒)
先ずは動き……、これに意味はあるだろうが仕掛けのひとつでしか無いだろう。
この動きだけで止まってしまっているのだとすればこの映像を見ている俺達も動けないと言うことになる。
なら他にどんな仕掛けがあるのか…
おそらくはカットされている音声に秘密がある。
プレーだけを見るために余計な音声は入って無いのだろうが、音声とこの動きがセットになって初めて発動する類いの催眠術だとすれば、意外と簡単な攻略法をひとつ思い付いた。
それにしてもこんな奇抜な必殺タクティクスを使うチームがあるとはな……
意外と“日本国内”のサッカーも成長しているのかも知れないな。
そんな事を思いながら、思い付いたままに開発した尾刈斗中の必殺タクティクス対策の必殺タクティクス、その名も『ウォー・クライ』である。
他の練習の合間を縫っての5日間の急造とは思えないほどの性能を稲妻KFCとの練習試合で発揮したこの必殺タクティクスは、尾刈斗戦以外でも活躍することが出来るだろうと思う。
さて、名前からわかる通りこの必殺タクティクスは叫ぶ。もっと言うとこの必殺タクティクスは全員が一斉に気合いを入れて大声で叫ぶだけの必殺タクティクスなのだが、共鳴でも起こしたのか、あまりの音でKFCが耳を塞ぎ動けなくなると言うサッカーにおいてあまりにも大きな効果をもたらしたのだ。
ただ、使うタイミングを考えれば、必殺タクティクスを相手が使う時にカウンターとして繰り出す必殺タクティクスとして使う方が良いだろう。
相手がチーム一丸となって集中しているところを妨害するように使えば相手チームのメンタルにも大打撃間違いなしだ。
……
さて、5日前のことに思いを馳せていたが、今は目の前の試合に集中しないとな。
相手チームのどうにも胡散臭い感じの監督の嫌みに少し苛立ったが、それよりも相手の必殺タクティクスだ。
何と言う名前かまでは知らんが実際に体感出来る時が来た。
発動すれば体が硬直して動けなくなる必殺タクティクス……
果して予想通りの仕組みなのか…はたまた準備してきた必殺タクティクスが無駄になる様な仕組みなのか……
円堂じゃねぇが少し楽しみになってきたな。
因みにフォーメーションはこのようになっている。
FW 豪炎寺 染岡
MF 少林寺 宍戸 マックス 影野
DF 半田 比企谷 壁山 目金
GK 円堂
控え 風丸 栗松
の編成だ。
後半から目金と風丸は入れ替える予定となっている。栗松は今回は見学してもらう。
相変わらず角馬の実況が冴え渡っているのを確認した所で、俺は試合開始のホイッスルを聞き、臨戦体制に入る。
先攻は雷門なので、染岡が豪炎寺に、そして再び染岡にパスを回すワンツーでFW陣を突破した染岡は
「『ひとり…ワンツー!』」
ひとりワンツーでMF陣をそのまま突破し、DF陣へも一人で突破した。
何と言うか、いつものプレーに比べて今日の染岡は周りが見えなくなっている様だ。
まあ、大体の予想はついている。
試合前、相手チームの監督が雷門そのものよりも豪炎寺に興味があるから試合を組んだと言った感じの嫌みを言っていたからだ。
染岡はそれを意識してしまったんだろうな…
だからひとりで突っ込んでいく、最近の染岡らしくない
プレーをしているのだろう。
が、それでも尾刈斗を突破できているのは、あの帝国よりも尾刈斗の実力が数段劣っているからとしか考えられないな……
「雷門のストライカーが豪炎寺だけじゃねぇってことを教えてやるよ!!喰らえ!『ドラゴン…クラッシュ!』」
染岡は単独でゴール前まで突破し、伝家の宝刀『ドラゴンクラッシュ』を放った。
「『歪む空間』」
ホッケーマスクを被ったどこぞの猟奇的殺人鬼の様なゴールキーパーは、円を描くような独特の手の動きを事前に繰り返していた。
それが何を意味しているか分からなかったが、染岡の『ドラゴンクラッシュ』の威力が普段より明らかに落ちているのは、いつも練習を見ている俺には直ぐにわかった。
恐らくあの動きはシュートする相手の力を抜く催眠術の様なものなのだろう。
初見殺しには最適かも知れんが…しかし、如何せんあのジェイソンの相手は悪かったとしか言いようが無いな。
染岡の『ドラゴンクラッシュ』の威力が下がったと言えども、あの程度のキーパーであれば……
「!?」
当然受け止め切れずゴールごと叩き込まれた。
帝国と試合したあの日から、俺たちは常に成長し続けているんだ。
正直こんな所で足止めを喰らう暇なんて俺達には無い。
それにしても、染岡のシュートの威力に相手チームの他の選手の動揺しているのが手に取るように分かる。どうせ豪炎寺以外は大したことの無い奴等の集まり位にしか考えていなかったのだろう。
本当に、侮ってくれるって言うのはありがたいことだ。
早速一点を入れられた尾刈斗だが……
「いやー驚きましたよぉ、まさか豪炎寺君に匹敵するほどのストライカーがいたなんて……
調子にのってんじゃねぇぞ!!この糞弱小チームがぁ!テメェ等に本当の恐怖を教えてやるよ!おい!お前らぁ『ゴーストロック』だ!」
急にマジギレした尾刈斗の監督がそう言うと、尾刈斗のひとつ目目隠しと蝋燭鉢巻と幽霊ごっこが変な儀式の様な動きをすると同時に
「マーレマーレマレトマーレマーレマーレマレトマーレマーレマーレマレトマーレ……」
と、尾刈斗の監督が呪文のようなものを唱え始める。
そして、「『ゴーストロック』!!」とひとつ目目隠しが決めポーズと共に宣言する…と同時に「マーレマーレマレ止まれ!!」と、マジギレ監督が勢いよく呪文を終わらせる。
すると、チーム全員の体が硬直して動かなくなったのだ。
そして、これで確信を持てた。
これは、催眠術とかのちゃちなもんの類いだと言う確信を……
まあだが嵌まったときの効果は凄まじく、流石の円堂も体を動けなくさせられてはゴールを守ることは出来ずされるがままとなってしまっていた。
さて、と…
種も仕掛けもわかった所で反撃させて貰おう。
俺は拳を天に向かって掲げる。気分は世紀末の覇王の最後を彷彿とさせるが、何もカッコつけているわけでは無い。
これは合図だ。
奴等の必殺タクティクスを破るための合図をチーム全員に送った。
これで予定通り『ウォー・クライ』を使うことが出来そうだ。
「マーレマーレマレトマーレ…」
そして、性懲りもなく必殺タクティクス『ゴーストロック』を使おうとする尾刈斗に対して……
「「「「「必殺タクティクス!『ウォー・クライ』!!ウォオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」
11人全員で力の限り叫んだ。
叫び声は共鳴し、声が声を増幅させて爆音となり、相手チームを襲い耳を塞ぐ以外の方法が無くなり隙を見せる形となった。
その隙に豪炎寺が尾刈斗DF陣を突破し……
「『ファイアトルネード』」
豪炎寺が追加点をあっさりと入手する。
尾刈斗選手はおろか、マジギレ監督からも更なる驚愕の表情を雷門イレブンは引き出した。
相手側としてはかなりキツい状況だろう。
サッカーにおける単純な実力はこちらが上、奇策の必殺タクティクスも崩され、後の無い状況。
対してこちらは2点の先制点を叩きだし、余力のある状況だ。
だからと言って油断はしない。
油断をすれば必ず隙が出来る。
隙が出来れば必ず敵はそこをついて突破口としてくる。
だからこそ、俺たちは何があっても一試合一試合を全力で戦い抜く。
尾刈斗のキックオフ、それと同時に攻めの姿勢を強く出した尾刈斗のFA陣がこちらに突っ込んできたが…
「『ジグザグフレイム!』」
新必殺『ジグザグフレイム』を習得し、攻防共に隙を減らした豪炎寺によって開幕早々にボールを奪われた。
その後、染岡と豪炎寺のツートップで攻め上がる。
「豪炎寺!この距離ならいつでも行けるぜ!」
「そうか、じゃあ…行くぞ染岡!」
染岡の掛け声に豪炎寺は後ろ蹴りで染岡にシュート気味のパスを渡したかと思うと染岡は既に『ドラゴンクラッシュ』の構えに入っていた。
『ドラゴン!』
染岡は、豪炎寺のパスを『ドラゴンクラッシュ』で前方に打ち返した。
だが、シュートは天翔る龍が如くゴールより上へと完全に反れていた……しかし、染岡がそんなミスをするとは考えにくい、だとすればこれは一体?
生まれたその疑問は直ぐに解決した。『ジグザグフレイム』の加速を利用して、ボールを追う豪炎寺はボールに向かって炎を纏い回転しながら飛び上がる、と同時にボールに追い付いた。
そして、豪炎寺は………
『トルネード!』
天翔る龍へ、『ファイアトルネード』を放った。龍は炎の竜巻を纏い、蒼から紅へと色を変えてゴールへと牙を剥けた。
ジェイソンは必殺技を使う暇すら与えられぬまま、龍はゴールへと突き刺さる。
いつの間にか完成させていた染岡と豪炎寺の完璧な連携に敵だけでなく味方である俺も完璧に度肝を抜かれていた。
その後の展開は一方的なものだった…
尾刈斗はFW陣を前半中に抜くことも出来ず、後半残り10分で抜けたとしても、少林に止められ、そのまま『クンフーヘッド』で得点を決めたり、リベロの半田が『ローリングキック』で得点を決めたり、宍戸が『グレネードショット』を決めたり…
当然の如く染岡も豪炎寺も競うように点を入れた結果……
35-1
圧勝と言う結果に終わった。