いきなりだが、よくマンガとかで男が女子校とかに転入する話とかを見て羨ましいとか言う奴がいるが・・・・・・はっきり言って間違いだ。
もし「そんなことはない!!ハーレム万歳!!」と力説できる奴がいたら今すぐ来い。喜んで代わってやるよ。
何故なら・・・・・・。
「・・・・・・一夏。持ちそうか?」
「いや、結構キてるぞ。秋」
二人揃って脂汗をダラダラと流しながら某司令のように手を顎の前で組み、ひたすら真正面を向いている。
今はIS学園での入学式の後に行われているSHRの最中だ。最初からマックスだったストレスとここにきて俺たちに降り注ぐ大量のプレッシャーに胃がキリキリと痛みだし始めている。
「では最初のSHRは皆さんに自己紹介をしてもらいましょう」
そう言って笑顔を見せるのはこのクラスの副担任『山田真耶』先生だ。しかし、俺も一夏も先生の話が耳に入ってこない。
というかそれどころではない。
「「(メッチャ見られているメッチャ見られているよ!!俺ら!!!)」」
そう、このクラス・・・・・・というかIS学園の生徒で男は俺と双子の兄『織斑一夏』しかいないのだ。故に緊張し、兄弟揃って肩身が狭い思いをしている。さらに席は二人揃って最前列、背中からビシビシと視線を感じて正直生きた心地がしない。
「えっと・・・・・・織斑君?織斑秋君?自己紹介してもらってもいいかな?」
「え?あ、はい!!」
慌てて立ち上がり振り返ると。
「(うっ!)」
何故か異様に目が輝くクラスメイト。その目には気のせいか?いや気のせいではないだろう。“期待”の二文字が浮かんでいた。
「(そんな目で見るな!期待なんかしないでくれ!)」
内心で叫びながら思わず隣の一夏を見ると。
「(頑張れ!秋!)」
何故かいい顔で応援する愚兄。
黙れ。殴るぞ?
拳を握り締めいい笑顔を向けてやると途端に顔を青ざめ黙り込む愚兄。そんな兄にため息をつきながら俺は窓際の席に視線を向ける。
「(箒!)」
しかし、視線に気付いたであろう肝心の幼馴染の『篠ノ乃箒』はというと。
「(が、頑張れ?)」
目を泳がせながら小さく握り拳をしてそうつぶやいた……気がする。そんな幼馴染に小さくため息を吐きつつ。
「・・・・・・織斑秋です。一応、隣の一夏とは一卵性双生児で俺が弟になります。よろしくお願いします」
最後に軽く頭を下げて終える。
どうだ?なんとか切り抜けてやったぜ。もう普通とか言われても構うもんか。こっちは少しでも早くこのプレッシャーから解放されたいんだ。
「すげぇな・・・・・・秋」
「ふん。俺よりもっといい挨拶してくれよ?兄さん?」
「んぐ?!」
せめてもの意趣返しにハードルをあげてやる。
「では、織斑一夏君」
「は、はい!」
慌てて立ち上がる一夏。そして肝心の自己紹介は・・・・・・。
「織斑一夏です!よろしくお願いします!」
・・・・・・とっても普通な何の捻りもない挨拶だった。まあ人のことは言えないが、それでもせめて何か言わせようとしたその時だった。
パアンッ!
「え?」
一夏の頭を殴りつける人物。その人物から背を向けている一夏は分からないだろうが俺は。
「あ、姉貴」
呟いた瞬間、俺の頭にも衝撃が走った。
「ここでは織斑先生と呼べ。織斑・・・弟」
織斑と呼ぼうとしたのだろうが生憎ここには一夏と俺がいる。姉貴も少し悩んでから俺を呼ぶが弟ってなんだよ!?間違っちゃいないけどさ!!
「はい。織斑先生」
「あ、織斑先生。会議はもういいんですか?」
「ああ。山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」
ああ・・・・・・やっぱり俺らと話し方が変わるんだね。
「諸君。私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことをよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は若干十五歳を十六歳まで鍛え抜くことだ。逆らってもいいが私の言う事は聞け。いいな」
なんつー暴力宣言。というか暴君?しかしこれこそが俺たちの姉“織斑千冬”であり、俺たちの尊敬している人物だ。もちろん。この発言を聞いて文句を言う奴はいない。証拠に黄色い声援が教室内を飛び交い、姉貴は頭痛をこらえるように顔を顰めている。というか正直かなりうざったいのだろう。でもクラスメイトの気持ちは分からないでもないし、ここまで慕われている姉貴を見て俺は誇らしい気持ちになった。
ちなみに俺と同じ失敗をして再び殴られている一夏を見てため息をついた。頼むから学習してくれ・・・・・・。
「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉に返事をしろ」
と手を叩きながら鬼教官。まあこの織斑千冬、第一世代IS操縦者の元日本代表で公式戦では無敗と来たものだ。ところがある日突然引退。公の場から姿を消したはずなんだが・・・・・・まさか教師をしているとは。家では公務員をしているとは言っていたけどさ。
「(まったく・・・・・・姉貴も俺たち兄弟をあんまり心配させんなよ。心配していた俺たちが馬鹿みたいじゃないか)」
さて、そろそろ授業が始まるようだし、気合を入れるとしよう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
IS学園ではもちろんISに関する授業も行うが普通の学校のように授業も当然ある。だが、そのせいで入学式から授業はみっちり入っているがそれは別にいい。
ちなみに学校の案内は地図を見ろと言われたがそれも別にいい。
「「あー・・・・・・」」
現在、一時間目のISの基礎理論の授業を終えたところだが、俺と一夏は同時に机に突っ伏していた。
「秋・・・・・・もう限界だ」
「一夏に同じく。動物園の動物たちの気持ちがよく理解できた」
「大体、そんなに騒ぐことなのか?」
「騒ぎになってるからこそのこの状況なんだろ?」
恐る恐る視線を教室の外にやるとそこには他のクラスの女子から三年生までの女子が窓に張り付くようにこちらを見ていた。
やっぱり世界でISを動かせる兄弟っていうのが珍しいんだよな?
俺たちが試験会場でISを起動させた後、この事は世界で大々的に放送され、ニュースにほぼ毎日のように取り上げられていた。人のことばかり追い掛け回してくれた報道陣共にぶち切れて暇人ばかりか!と叫んでいた気がする。
ということもあり、俺たちは完全に客寄せパンダと化している。しかし、世間が大騒ぎにも理由はある。前にも言ったかもしれないがISは女性しか動かせない。よってISが発表されてから10年で世界は激変した。只でさえISは現代兵器を凌駕する性能があり、一機で戦況を覆すこともできるのだ。おかげで軍事バランスは完全に崩壊。そして女性しか起動できないとうことで何故か女性のほうが偉いというふうになってしまい男たちは肩身が狭い思いをしているのだ・・・・・・。中には男を奴隷のように扱う女性もいるそうだ。
そんな時に現れたのが俺たち兄弟。もし俺たちがISを動かせる理由が判明し、それを今のISへと利用できたら?さらに世界は激変するだろう。だから世間はあんなに大騒ぎしていた訳なんだが・・・・・・
「(だからって俺たちがモルモットになるのはカンベンだしな・・・・・・)」
モルモットになるのとIS学園に入るのとどっちがいいかと言われればもちろん後者なんだけどさ。再び内心でため息をつくと。
「・・・・・・ちょっといいか?」
「え?」
「ん?」
この状況で声をかけてきた奴って一体誰だ?
「「・・・・・・箒?」」
まあ、篠ノ乃箒以外に入る訳ないか。後で聞いた話だがこの時、箒を女性陣が一斉に牽制するように睨み付けていたそうだ。
「一夏、お前行ってこいよ」
「え?秋は?」
「俺はちょっといい。箒も別にいいよな?」
「・・・・・・すまないな」
相変わらずな幼馴染の態度に苦笑しつつ片手を挙げて手を振りながら廊下へと向かっていく一夏と箒を見送る。
「(六年ぶりだもんな~俺よりもまずは一夏と話したいだろうし)」
あの馬鹿兄貴は気付いていないだろうが箒は間違いなく一夏に惚れている。まあ、箒が一夏とくっついてくれるなら俺も安心だ。
「(姉貴が言うには俺もそういう事には疎いらしいけど・・・・・・)」
それないわ~と思う。現に中学時代に告白されたこともなければ女の子が近づいてきたこともない。やっぱりツリ眼が悪いのか?それとも一時期の行いか?
-ちなみに真実は女性陣たちが抜け駆けしないように牽制しあっていただけでかなりモテていたが人当たりのいい一夏の方が目立っていたため秋が気づくことなかった-
まあいいや。彼女なんて・・・・・・彼女なんて・・・・・・おかしいな?少し目の前が霞んで見えるよ?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「―――であるからしてISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ―――」
すらすらと教科書を読む山田先生の声を聴きながらノートを取っていると。
「(何してんだ?一夏の奴?)」
何故かそわそわしながら教科書を捲っては閉じ、捲っては閉じを繰り返しその内に汗が流れ始めていた。
・・・・・・もしかしてアイツ授業についていけてないのか?
俺の思ったとおり一夏はまったく授業についていけなかったらしい。山田先生から質問され堂々「全部わかりません!」と返した一夏に俺は頭を抱えたくなる。
「・・・・・・織斑兄。入学前の参考書は読んだか?」
後ろに控えていた姉貴がそう訊いてくるが俺は知っている。あいつが電話帳と思って捨てていたことを。せっかく人が分かりやすいように置いておいたのに……。
「古い電話帳と間違えて捨てました」
そしてやっぱりそう答え、殴られる一夏。
「織斑弟・・・・・・お前もか?」
ジロリというかギロリ?という目つきで俺を見る姉貴に首を横に振り。
「いえ・・・・・・入学前に出来る限りの予習はしておきましたけど」
「ならいい」
と微笑を浮かべ、戻って行く姉貴。まあ我ながらよくあの短期間で出来たと思う。いきなり黒服の男たちがやってきて『保護する』とかどうのこうのいって入学願書をおいていったのだから・・・・・・俺も一夏も望んできた訳じゃないけど現実は変えることが出来ない。だったらやるしかないのだ。
「秋、お前いつの間に・・・・・・」
恨みがましそうに俺を見る一夏。
「春休み中に時間はあっただろ?バイトもできなかったんだし」
「うっ?!」
「はぁ…家に帰ったら教えてやるよ」
「恩に着る」
両手を合わせて拝む兄貴に苦笑しながら再び授業へと戻る。ちなみに山田先生が小さく「教師と生徒の放課後個人レッスンが~」とか呟いていたがここの教師は大丈夫なのだろうか?後、後ろでひそひそと「どっちが攻めだろうね?」「秋君じゃない?」「案外一夏くんかも」といっている腐女子どもその頭を分解整備してやろうか?
これからの学校生活に不安しか感じられなかった。そして自慢じゃないが俺の勘はよく当たる。
「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」
「ん?」
まるで一時間目の休み時間を巻き戻したかのような感覚。
そこに立っていたのはロールが掛かった金髪に透き通った蒼い瞳を持つ女子。しかしその蒼い瞳はツリ眼がちになっている。この状態から察するにきっと俺らのことが気に入らないのだろう。今の世の中ISの登場のせいで女性=偉いという認識が多い。そして時々いるのだ完全に男を見下している女性というのが・・・・・・きっとこの女子も同じなのだろう。内心でため息をつきながら。
「ああ・・・・・・悪い。何かようか?用がないならちょっと邪魔しないで欲しいんだ。これから隣の兄貴にISの基礎知識叩き込みたいから」
「まあ、そう言うわけだから・・・・・・でも用件があるなら聞くぞ?なあ?秋」
一夏に頷きながらも目の前の女子を見る。
「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」
「「・・・・・・・・・・・・」」
と言って来る女子に俺たちは二人揃って二の句が告げなかった。この女子はどうやら典型的な力に酔った女子らしい。ISが使えるから偉い。ISが使える者が多ければそれが国家の軍事力になる。だからその力を振りかざす。だけど考えてみて欲しい。力は所詮力だ。使うものによってそれは変わる。目の前の女子は圧倒的な暴力を受けたことがないんだと思う。力を行使するものはその力が周りに及ぼす影響を考えなければならない。それがこの女子には分かっていない。まあ俺も強く言えないとこがあるんだけどな。
「えっと・・・・・・セシリア・オルコットさんだっけ?確かイギリスの代表候補生の?」
「あら?貴方はわたくしを知っていますのね?」
知ってるも何も自己紹介のときに散々自分で言っていたくせに・・・・・・。
「なあ?秋?代表候補生ってなんだ?」
そんな中、頭に疑問符を浮かべた一夏が尋ねてきた。しかも基礎中の基礎を・・・・・・聞き耳を立てていたであろうクラスの女子数名がずっこける中、俺はうんうんと頷き前々から自作していたあるものを抜き放った。
スパーン!!
「いたっ!何すんだ?!っというか何処から出したそのハリセン!!」
「気にするな。俺は気にしない。まあいいけど、さっきの反応から大体予想できたことだしな・・・・・・」
一夏専用シバキハリセン・改をしまうと説明を始める。
「代表候補生っていうのは文字通り、国家代表IS操縦者の候補生のことだ。もちろん国の代表なだけあってエリートだ」
「そうですわ!それにしても貴方はこちらの方と違って勉強されていますのね」
意外そうに俺を見る女子。俺は肩をすくめ。
「一応基礎知識はね。それに今は情報なんて簡単に手に入るさ」
実際は代表候補生の情報なんて簡単に手に入らないのだが、しかしネットというのは恐ろしいものでIS操縦者が女性なのをいいことに裏では色々なサイトがある。その中には世界の美人のIS操縦者とかで写真と一緒に簡単な情報が出回っていることもあった。まあ目の前の女子“セシリア・オルコット”の情報は知らないが・・・・・・。ちなみにこの話は俺がISを動かせると知った友人が資料として提供してくれたものなのだが、誰にも話す気はないし俺自身そのサイトに行くこともないだろう。
「そうでしたの・・・・・・なら!わたくしと同じクラスという奇跡・・・・・・幸運という現実を理解していただけますわね?」
胸に手をやり自慢げにいうオルコット。ああ、ダメだ。段々イライラしてきた。
「・・・・・・幸運ね。代表候補って言うだけだろ?それに候補止まりで落ちる人間のほうが殆どって話だ」
「・・・・・・なんですって?」
先ほどとは一転。額に血管マークを浮かび上がらせそうなほど怒りの形相で俺を睨むオルコット。その後ろでは一夏が額に手をあて「やっちまった・・・・・・秋の奴」とつぶやいていたが俺は聞こえないフリをする。
「事実を言ったまでだよ。むしろ、国の代表ならもっと態度に気をつけるんだな?アンタの評価がそのままお国の評価に繋がるんだぜ?」
「侮辱しますの?このセシリア・オルコットを」
「どうとでも取れよ。俺はアンタみたいに只、自慢するだけの奴が嫌いなんだよ」
「・・・・・・っ!貴方!!」
キーンコーンカーンコーン。
ヒートアップする俺とオルコットを止めたのは授業開始の鐘の音だった。
「・・・・・・また後で来ますわ。逃げないことね。よくって!」
「一昨日きやがれ!」
結局、売り言葉に買い言葉で終わった。
「なあ秋。お前のその気に入らない相手にはとことん突っかかる癖はやめたほうがいいぞ?」
「・・・・・・分かってるよ」
「いいや。分かってない。まあ気持ちは分かるけど・・・・・・謝っておけよ?」
「・・・・・・努力するよ」
一夏のほうを見ずにそう答える。そんな俺を見てやれやれと呟く一夏だった。
「それではこれより実践で使用する各種装備の特製について説明をする」
教壇に立ち説明をするのは山田先生ではなく姉貴。どうやら姉貴の講義は重要らしくあの山田先生もノートを持って講義に参加している。
「ああ、その前に来月行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
ふと思い出したように言う姉貴に俺と一夏は首を捻る。対抗戦?代表者?なんとなくISバトル関係って言うことは分かるのだが。
「クラス代表というのはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会の出席・・・・・・まあクラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないのでそのつもりで」
姉貴の説明にクラス内がざわめく。なるほど・・・・・・つまりクラス代表が強ければ強いほど評価は高まり強い発言権が得られるのだろう。確か生徒会長はIS学園最強の称号だと聞いたな。
「まあ、なる奴はご苦労様だ」
「一夏・・・・・・他人事に言ってるけど下手すれば俺たちのどっちか選ばれるかもしれないぞ?」
「はぁ?なんで?」
「只でさえ男のIS操縦者は珍しい・・・・・・それだけで選出理由にされそうだし、姉貴も言ってただろ?向上心を生むためだって」
「ああ。でもそれが関係あるのか?」
疑問顔で尋ねられ俺はため息を一つ。
「あるよ。代表者になればIS戦も自然と多くなるだろうし、行事などで係わり合いになることも多い。ようは接点も多くなるだろうし、もし生徒の中の専用機持ちが入ればその関係者たちが俺たちに接触する口実を作れるし・・・・・・まあそこまで考えているか分からないけど。どっちにしてもクラス代表になったら果てしなく苦労するだろうな」
「・・・・・・俺はお前を推薦するからな!」
「・・・・・・なら俺は一夏を推すね」
自分で言っておいてなんだが誰がそんな面倒ごとをやるって言うんだ?ごめん被る!しかし世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばかりだ。
「「・・・・・・・・・・・・」」
現在、前にあるディスプレイには俺と一夏の名前。さらに言えばその下には数字が書かれており、同じ数字だった。
「「(マズイ・・・・・・非常にマズイ。このままでは俺に決まってしまう!!)」」
額に浮かぶ汗を拭えず、なんとか相手に押し付けられないかを二人揃って真剣に考えていたその時だった。
「待ってください!納得いきませんわ!!」
バンッと大きな音が聞こえ、振り返ってみるとそこには立ち上がったオルコットがいた。
「(そうだ!コイツに押し付けよう!!)」
正しく天啓といわんばかりの考えに自然と口の端がニヤリと釣りあがる。
「そのような選出認められません!大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!?」
おいおい。そこまで言い切りますか?
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までISの技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
・・・・・・あ?コイツ黙って聴いてればいけしゃあしゃあと・・・・・・。
オルコットの演説に机の下で思わず持っていたシャーペンを折ってしまった。悪い。一夏。どうやってもアイツに謝るのはムリだわ。
「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」
一応、深呼吸してみるがゴメン。無理。むしろ完璧キレた。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと事態、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」
ブチン。
「っだとテメェ!!」
「!!!」
机に拳を叩きつけ、勢いよく椅子から立ち上がる。
「さっきから黙って聴いてれば好き勝手言いやがって!テメェの国はよそ様の事を貶すことしかできねえのかよ!」
「なっ!」
もう止められないし止まる気はない。
「秋の言うとおりだ!イギリスにだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
隣で座っていた一夏がオルコットのほうに体をむけ、ムッとした顔で言う。
「あっ、あっ、あなたがたね!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「「したのはそっちが先だろ!この金髪ドリルが!!」」
「なんですって!決闘ですわ!」
俺たちの挑発?にバンと机を叩くオルコット。よし!これで問題なくぶん殴れる!!
「上等だ!ぶっ潰す!」
「おう。いいぜ。四の五の言うより分かりやすい」
・・・・・・ん?
「いや、一夏。ここは俺に譲るだろ?」
「何言ってんだ?これは俺が受ける決闘だろ?」
俺と一夏。二人揃って顔を見合わせ、譲るように言うが互いに譲らない。そして、少し間を置くとゆっくりと一夏も立ち上がり互いに笑みを浮かべながらも無言となる。互いに笑みを浮かべてはいるが目は笑っていない。
「ちょ、ちょっと?!あなたがた?!」
俺と一夏の不穏な空気を感じたのか何故か慌てるオルコットの言葉など耳に入らず、俺は静かにナックルガード付のグローブをはめ拳を握り、ファイティングポーズを取る。
「悪いが一夏にはやれねぇな。アイツは俺の獲物だ」
「冗談。俺だってアイツに言いたいことがある」
どこからか取り出した木刀を構える一夏。
二人揃ってジリジリと間合いを計っていると。
「やめんか。馬鹿者ども」
ゴゴツン!!
「「~~~!!」」
あまりの衝撃に涙目になりながら今の一撃を与えた人物を見る。
「さて、オルコットの意見も分からずでもないが・・・・・・まずはこの二人の決着をつけてから改めて勝負を行うというのはどうだ?」
俺たちを叩いたのであろう出席簿を手で叩きながら姉貴がオルコットのほうを見る。
「あ、はい・・・・・・」
それに対し、毒気を抜かれたような顔をしているオルコット。
「お前たちもいいな?織斑兄弟」
「「(ブンブン!!)」」
逆らえば分かっているな?という目つきで睨まれれば頷くしかあるまい。俺たちはそろって頷く。そりゃもう残像が残るくらいの速さで。
「では、勝負は一週間後。織斑兄弟はそれまでに用意をしておくように。それでは授業を始める」
手を叩き、場を締めてから姉貴の授業が始まった。
「(一週間か・・・・・・)」
正直に言えば俺と一夏の実力は生身で言えば互角。だが今回はISバトル。これは互いに未経験だ。
「(どっちにしても勝ってオルコットをぶん殴る!)」
軽く拳を握り締め、少しでも有利に立てるように今は授業に耳を傾ける。
そして俺は出会う。共に歩むことになる鋼の相棒と・・・・・・。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ご意見、ご感想をお待ちしています。
ツッコミどころ満載ですが・・・