IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

12 / 46
ドイツ編完!でも後半が今までと空気が違う話になってしまった。

ここの千冬さんは無限のフロンティアでも普通に戦えそう。



STAGE12

そこは地獄だった。

 

燃え盛る炎、瓦礫の山、それらに囲まれた中に青白いオーラを立ち昇らせる大きな翼を持つ白い全身装甲のISがいた。その姿はまるで騎士のようで白騎士はその両手に誰かを抱きしめ絶叫を上げていた。

 

白騎士に抱きしめられている女性の顔はよく見えないが白騎士に何かを呟くと白騎士の頬を触り、そして力尽きた。抱きしめていた女性をゆっくりと地面に下ろした白騎士は立ち上がる。すると力尽きた女性から蛍火のようなものが抜け出ると白騎士の周りを回ると中へ吸い込まれるように入っていく。

 

「皆、死んだ・・・・・・■■■も■■■も・・・・・・アンタが殺した」

 

どこかで聞いた声が白騎士から聞こえる。

 

「■■・・・・・・俺の命をくれてやる。だから・・・・・・アイツを殺すための力を寄越せ!!」

 

声に応えるかのように青白いオーラが一際輝き、放出される。そして白騎士が右手を横に振るうと、光り輝く刀が現れる。刀を構えると翼から光の粒子を放出し踏み出し飛んだ。宙に浮かび自身を見下ろす背に後光のような輪を持った深淵のような蒼色の全身装甲のISに向かって。

 

それは凄まじい剣戟。修羅の如き勢いで振りぬかれる太刀筋は全て蒼い魔神へと吸い込まれていく。しかし、蒼い魔神にその刀は届かない。見えない何かで全て防がれている。

 

「何で破れない!!」

 

焦る声に蒼い魔神は応えず虚空から一本の剣を取り出す。柄に宝玉が埋め込まれた大剣。それを振るう。白騎士は咄嗟に刀で受け止めるがまるで紙切れのように吹き飛ばされる。地面に叩きつけられ二転三転と転がりながらも立ち上がる白騎士。だが一撃を受けた刀身は半ば程から砕け、装甲もヒビが入ったり欠けたりしている。震える足を拳で叩き、何とか立ち上がる白騎士。

 

「まだだ・・・・・・まだ死ねない!」

 

しかし、装甲は修復されていく。いやその修復速度はすでに再生だ。装甲が再生し終えると折れた刀身も再生され、再び背中の翼から粒子が放出され、光の翼となると一度羽ばたかせてから空中へと舞い上がる。しかし、敵は静かに、ただ呟いた。

 

「やっぱり届かなかったね。・・・・・・もう飽きちゃったから死んでいいよ。■■■■」

 

その言葉と共に胸部装甲が開き、尋常じゃないエネルギーが集まって行く。そのエネルギーは魔神の全長を超え、極大の光の球となる。その光の弾は急速に圧縮されていき。

 

「発射♪」

 

無邪気な声と共に放たれたエネルギーは終焉を告げるように全てを飲み込んで行く。

 

「■■■■ーーーーーーー!!!!」

 

そして、光に飲まれた白騎士は消えて行く。怨敵の名を叫びながら、散り一つ残らずに。

 

「今回もダメだったか~でもいつか必ず私を倒しにくるんだよ?■■■■」

 

・・・・・・魔神はそう残すと手を翳し、空間に生まれた孔へと入っていくと世界から姿を消した。その後、世界は振動と共に崩壊を始めていった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

酷く悲しい夢を見た気がする。何もかも失くし、修羅となり戦い続け、そして信じていた相手に殺される夢。

 

「また・・・・・・失うのか?」

 

嫌だ。もう嫌だ。あんな悲しみを味わうのは。まるで胎児のように体を丸める。

 

“何も怖がらなくていいんだよ?”

 

そう声が聞こえた。

 

“大丈夫。君のことは私が守るから……”

 

その声に俺は。

 

「でも、怖いんだ。俺が無力なばかりに……」

「なら、私もお前を守ってやろう。背中は任せろ!」

「ちょっ!?ラウラちゃん!!そんな大きな声を出したら……!!」

「んあ?」

 

意識が急激に覚醒していく。ゆっくりと目を開けると何故かアリスに膝枕された状態でラウラがドヤ顔でこっちを見ていた。

 

「おお!起きたか」

「……なんでお前たちは俺の部屋にいるん?」

 

確かカギはかけた筈だが?

 

「知らなかったのか?私は隊長として部下の部屋を開けられるマスターキーを持っているからな」

「プライバシー侵害ぃぃぃぃぃっっっっ!!!!」

「あははははは…ごめんね?」

 

ドイツ最終日はそんな感じで絶叫から始まった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「「本当にお世話になりました」」

 

ドイツの空港でお世話になったグレッグさんたちに頭を下げる。ちなみに黒ウサギ隊の面々も総出でお見送りしてくれている。おかげでかなりの大人数なのだが民間の空港ではなく軍が使用する場所なので注目されなくてすむ。といっても軍服姿の人間が数十人もいれば普通は近づかないよな。

 

「いや、何、君には世話になったからね」

「普通にISで暴れただけな気がしますが」

 

それもそうだなと笑うグレッグさん。言っておいてなんだけど少しは否定して欲しかったんですけどね?

 

「アハハハ。それよりラウラちゃんは何処にいったんですか?」

 

苦笑していたアリスがキョロキョロと見回す。そう言われれば朝の一件以来見てないな。

 

「隊長ならもう直ぐ来られますよ」

 

クラリッサさんが笑顔で応えると。やけにロビーの入り口付近が騒がしい。不思議に思い覗いてみると。

 

「ま、まて・・・・・・さ、流石に恥ずかしい!!」

「大丈夫ですよ!隊長!」

「大丈夫かどうかは私が決める!た、頼むから放してくれ!マリア!!」

 

黒ウサギ隊の制服に身を包んだ栗色の髪の女性に引っ張られて連れられて来るのは銀髪の人形と表現したくなるほどのものだった・・・・・・

 

「・・・・・・誰?」

「いやラウラちゃんでしょ?」

 

思わず出た呟きにアリスがつっこむ。いやわかってはいるんだけどさ。ねぇ?

 

「み、見るなっ!秋!アリス!は、恥ずかしいっ!」

 

赤らめた顔を見られたくないのか両手で必死に隠しながら、恥ずかしそうにするラウラ。その姿はゴスロリ調の服になっていた。

 

「ラウラちゃん似合ってるのにね?そんなにいや?」

「こんなヒラヒラな服は着たことがないし、本当に似合っているのか?」

「ああ、似合ってはいるが……?」

 

なんで、そんな恰好で?首を傾げる俺の前では黒ウサギ隊の面々に説得されてうやく落ち着いたのか、ラウラは深呼吸を一つし俺のほうへと歩き出す。

 

「・・・・・・コホン。織斑秋」

 

俺の目の前までくると咳払いを一つしてからラウラが意を決したように俺の名を呼ぶ。その顔はまだ赤みがあるが目は真剣になっていた。

 

「ん?どうした」

 

だから茶化すことなく俺も視線をラウラに合わせる。

 

「お前に礼を言いたくてな」

「そんなものいらないぞ?」

 

言われるようなことはしてないしな。むしろ思いっきりボコった身としては申し訳ないと思う。

 

「そんなことはない。お前には感謝している。VTシステムから戻ってこれたのは…やり方はともあれ、お前のおかげだからな」

 

そう微笑んで言われればこれ以上余計なことは言うのは無粋だろう。

 

「・・・・・・わかったよ。ありがとうな。ラウラ」

「礼はまだしてないぞ?」

 

微笑を浮かべたかと思うといきなり顔を真っ赤にしたラウラがキョロキョロと視線を彷徨わせてから。

 

「こ、これが礼だ!う、ううう・・・・・・受け取れ!!」

 

そういうとピョンっと効果音が付きそうな跳びかたで俺のほうに飛び込むラウラ。そして両手を俺の首に回し、顔を近づけ、そして感じたのは”頬”に柔らかい感触・・・・・・。

 

「ッ!?」

「なっ?!」

「ほ~?」

「「「「「おしい!!そこは唇じゃないと!!」」」」」

 

外野がやかましいが、いやいや何故にキスがお礼?!

 

「・・・・・・ん。どうだ?秋、私の初めてだぞ?」

 

ゆっくりと離れるラウラ。

 

「お前には色々暴言も吐いてしまったし、正直どうすればいいか分からなかったが……」

 

そこでラウラが見た相手はクラリッサさん。……クラリッサさん?顔が引きつってますよ?

 

「クラリッサが「秋殿にはお礼に隊長の初めてを上げますと言えば絶対大丈夫です!」と言われやってみたんだが?」

 

不思議そうにするラウラに俺はクラリッサさんに笑顔を向ける。

 

「ヒィ!?」

 

いやだなぁ~なんでそんなに顔を青くするんです?どうして逃げようとするんですか?

 

「そうですよ~。逃げないでください」

 

目から光を無くしたアリスがクラリッサさんを捕まえていた。

 

「「さあ、少しお話しましょうか?」」

 

こうして俺のドイツ短期留学は諸悪の根源を討ち滅ぼし終わった・・・・・・

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「やっぱり日本までは時間がかかるな」

 

空港で伸びをし、凝り固まった筋肉をほぐしながら荷物を受け取る。ちなみに時刻は既に夜の九時を回っている。行きもそうだったが帰りも忙しい。

 

「そうだね。帰国してから直ぐに学校かと思うとちょっと憂鬱だよ。せめて一日くらいは休みが欲しかったな~」

「そうか?私は楽しみで仕方がないぞ。学校とは軍学校とまた違うそうだからな」

「アリスの言うことも分かるけどさ。にしてもラウラ?頼むから一夏に合っても初回ビンタはするなよ?」

「当たり前だ。もうあんなことはしない」

「そうかい。それならいいけどな」

 

荷物を持って三人揃って歩く。

 

ってちょっとマテや。

 

「「うん??」」

 

ピタッと立ち止まる俺とアリスの二人。そんな俺たちに気付かずに先を歩いていく人物。しかし、俺たちがついてこないことに気がついたのかこちらに振り返る。

 

「どうした?二人とも?」

 

どうしてこの場にいるはずのない人間の声が聞こえる?そして先ほどから俺の視界に映る小首をかしげ不思議そうにしている一見すると完成された人形のような外見を持つ銀髪眼帯ゴスロリ少女はドイツで別れたばかりじゃなかったか?

 

「さっきから何をブツブツいっている?」

 

・・・・・・オーケー。俺、そろそろ現実逃避はやめるんだ。いい加減覚悟を決めようぜ?現実を見るんだ!!自分で自分に言い聞かせながら俺はゆっくりと目の前にいる人物を見る。

 

「どうしてお前がここにいる?ラウラ?」

 

ドイツで別れたはずのラウラがそこにいた。

 

「言ってなかったか?私も学園に転校することになった。一応、マオ・インダストリーへの出向命令も受けている。それに善は急げというのだろう?だからついでに乗ってきた」

「い、いつの間に・・・・・・」

「昨日、ハウ社長直々に通達された。司令からも辞令として言われた」

 

淡々と答えてくれるラウラにため息を吐く。ハウ姉わざと教えなかったな。今頃、悪戯が成功した子供のように笑っているだろう人物にいつかステークの一撃を撃ち込んでやると誓いながら、IS学園まで三人で向かうことにした。それにしてもやけに展開が速いな?まるで台本があるかのように話が進んでいる気がする。

 

「気のせい…だよな?」

 

今朝の夢と言い、なんとなく言い表せない物が胸中を巡っていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「じゃあ私はラウラちゃんを事務室まで案内してくるね」

「すまないな。アリス。では明日会おう。秋」

 

必要書類を提出する必要があるというラウラをアリスが連れて行く。なんだかんだ言いながらもあの二人は仲がいいんだよな。

 

「さて、俺も帰りますか」

 

バッグを担ぎなおし、約一週間ぶりの寮の自室へと向かう。ついでに今回の一件に絡んでいる一夏をどのように料理しようかと考えながら歩いていると、近くのアリーナから夜間用ライトが点灯されているのが見えた。

 

「この時間にまだアリーナを使ってる奴がいるのか?」

 

たしか、許可があれば問題はないはずだがそれでも腕時計を見てみれば今は夜の十時を回っている。訓練にしてはちょっと遅すぎじゃないだろうか?

 

「う~ん…行ってみるか…」

 

なんとなく気になり、俺はアリーナへと向かうことにした。中に入ってピットゲートから外に出ると。

 

「フッ!ハッ!シッ!」

 

そこにはIS用の近接ブレードで素振りをする姉貴の姿があった。流石にいつものスーツ姿ではなくトレーニングウェアに着替えているが。そんな姉貴を俺はじっと見つめる。姉貴がやっているのはただの素振り。俺たちが小さい頃から姉貴がずっと繰り返してきた鍛錬。それを見て少しだけ安心をした。やっぱり姉貴はISを捨てたわけじゃない。そう思うと言い様もない高揚感が湧いて笑みが浮かぶ。俺の目指すものはまだ消えていない。それがとてもうれしかった。

 

「怪我をしたと聞いていたんだがな?どうやら無事なようだな」

 

近接ブレードを地面に突き立て俺の方へ視線を向ける。相変わらずの口調ではあったが俺を心配していたと顔が語っている。

 

「なんとかね。そうだ。姉貴。俺と勝負してくれよ?」

 

愛用のグローブをはめ、軽く腕を振ってから半身を出し、拳を構える。いきなりだけどこんなチャンスはめったにない。ドイツで姉貴の事を聞いてから俺はどうしても姉貴と戦いたいと思っていた。あの事件以来、姉貴とこういう話をするのを避けていたし弱い自分を見せたくなかったからな……

 

「勝負?戦ってどうする?」

「貴方の強さを改めて知る為に、俺が何処まであなたに近づけたのかを知る為に」

「ふ。いいだろう・・・・・・来い。そして知れ。お前が挑む相手が誰なのかということを」

 

そういうと近接ブレードを地面から引き抜き、居合抜きのように構える姉貴。それは一度だけ見たことがある構え。その構えから放たれる一撃は光の如く目にも留まらぬ速さで相手は斬られた事にすら気付かず倒される。正しく一撃必殺の構え。それは俺が憧れ決して手に入れられない物。

 

「これが我が秘奥にして究極の一太刀・・・・・・」

 

ゆらりと陽炎のように揺らめく姉貴。姉貴から発せられる気の密度が上がった。少しでも弱きになれば即座に斬り捨てられる。しかし俺にも磨き上げてきた拳<けん>がある。一度は悪鬼に身を落とし折れたこの拳。それを立ち直るきっかけを与えてくれた少女のおかげで一から鍛え直し、より強靭となった拳は二度と折れない。例え折れたとしてもまた鍛え上げる。それが俺の拳。俺だけの拳だ。

 

「嬉しいよ。姉貴。だからこそ俺も見せるよ・・・・・・剣の才能がなかった俺だけど、その分鍛え上げたんだぜ?」

「!!」

 

俺の構えは左手を前に突きだし右腕は後ろへと引く。右腕から渾身の一撃を繰り出すための構え。姉貴の目が一瞬、見開かれるが笑みを浮かべる。

 

「そうか・・・・・・お前なりに答えを見つけようとしているのだな。ならば行くぞ。秋」

「ああ。姉貴。見せてやる!俺の一撃を!!」

 

全身から気を練り上げ、それを足へと向ける。そして同時に地面を蹴る。蹴った瞬間にその速度はトップスピードに。そして互いの一撃を放つ。

 

「せいやぁぁぁぁぁ!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

勝負は一瞬の交差、刹那の時で終わった。千冬は驚嘆の目で途中から折られた近接ブレードを見つめ、そして込み上げる喜びを押さえながら折れた近接ブレードを下す。見事な一撃を放った弟へ声をかけようと振り返ると。

 

「い、いたい・・・・・・腕が・・・・・・もの凄く・・・・・・」

「当たり前だ。大馬鹿者」

 

右腕を押さえ、うずくまる弟の姿を見てため息をつく千冬だった。

 

結局、やっぱり俺の負けだった。姉貴は引き分けだというが姉貴が量産型の剣ではなく雪片を振るっていたら、俺はこの拳を届かせる前に斬られて終わっていた。この拳はまだ届かない。だが次は勝つ!

 

新たな誓いを立てながら今は、アリーナのグラウンドで姉貴に右手の手当てをしてもらっている。

 

「あ~やっぱり勝てなかったか」

「当たり前だ。そんな簡単に弟に勝たれてはモンド・グロッソ優勝者の名がなくし、姉として情けないだろ?」

 

そう言う姉貴だったが何故か嬉しそうだ。俺はそんな姉貴の顔を見つめている。むう。やっぱり姉貴は笑っているほうがいいと思う・・・・・。

 

「どうした?秋?」

「え?いや?なんでもない」

 

まったく俺は兄貴みたいなシスコンじゃない筈なんだけどな。

 

「ふ。嘘をつくな。お前は分かりやすい」

 

クスクスと笑いながら俺の額を指でつつく姉貴。というか本当に珍しい。あの姉貴がここまで楽しそうに笑うなんて・・・・・・。

 

「それよりドイツはどうだった?」

「楽しかったよ。姉貴が鍛えたラウラは強かった。それに互いに強さについて少し分かった気がするよ」

「そうか・・・・・・ボーデヴィッヒがか。お前と関わったならあいつも変われるだろうな」

 

遠い目をする姉貴は何かを思い出しているのかやはり楽しそうだった。そんな姉貴を見ていると俺も嬉しくなる。だからだろうか?俺は頭の中で鳴る警鐘に気がつかずに。

 

「ところで」

 

全くのノータイム。挙動すら見せずに俺の頭を鷲掴みにした姉貴。

 

なんかミシミシ言ってるーーーー!?!?!

 

「ドイツでボーデヴィッヒといい感じになっていたと報告を受けているが?どういうことだ?ん?」

 

先ほどまでの笑顔が嘘のように低く冷たい声を出す姉貴。それに合わせるかのように周りの温度が下がる。まるでここだけ極寒の地になったようだ。

 

「あ、姉貴?」

「・・・・・・秋。詳しく教えろ。姉には知る権利がある」

 

あ、あの?姉貴?なんでそんなに黒いオーラが出てるの?どうして目から光が消えてるの?そして俺を片手で持ち上げられるのは何故?

 

「どうした?言えない事でもしてきたのか?」

 

め、めっそうもございません!慌てて首を横に振りたいが姉貴のアイアンクローが痛すぎて首が振れない。

 

結局、あのプレッシャーに勝てず、俺はドイツでの出来事を話した。ええ。あんな恐ろしい姉貴を見たのは初めてです。

 

「そうか。そういうことか・・・・・・」

 

話を聞き終えた姉貴は真剣な顔で何かを考え込んでいる。

 

「あの?姉貴?」

「・・・・・・ナルホドナー」

「へ?」

 

唐突にカタコトな科白を呟いた姉貴は困惑する俺をおいてアリーナから出て行ってしまった。

 

一体全体なんなんだ????

 

わけも分からず俺は一人首を傾げていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

アリーナでの一件とハウから報告(結構盛ってる)と称して聞かされたドイツでの話から千冬は内心焦っていた。

 

「(まずいな。ボーデヴィッヒの奴も落とされかけているじゃないか・・・・・・只でさえ弟どもは無意識に女を引き出すというのに)」

 

普段の二割り増しで目つきを鋭くした千冬は自室へと急ぎ入るとドアにはしっかりカギをかけ、備え付けの冷蔵庫を開けると中に入っている缶ビールを取り一気に飲み干し、充電していたスマホを取るとある番号を呼び出す。

 

『ハロ、ハロー!久しぶりんぐだね!ちーちゃん!何か様?さあさあ束ちゃんに何でもいってごらん?ハリー!ハリー!ハリー!』

「緊急事態だ・・・・・・」

『!?』

 

電話に出た人物も千冬の様子に息を飲む。

 

『ど、どーしたの!?ちーちゃん!!いっくんやあっくんに何かあったの?それとも箒ちゃん!!あ~束さんは心配だよぅ~!!』

 

全然心配してないような声だが千冬は気にせず続ける。

 

「一夏と箒は問題ない。むしろあの二人は早くくっつくべきだと思う」

『あ~・・・・・・みたいだね~最近、箒ちゃんがね?毎日電話をくれるんだけど内容がいっくんに関する事ばかりで・・・・・・』

 

もうお腹一杯だよ~束さんは!と電話の先の人物は怒っているようだったが二本目・・・・・・どころか三本目の缶ビールを飲みだした千冬は聞いてない。むしろさらに目つきが悪くなっている。

 

『まあ、箒ちゃんと一緒に仲良くいっくんをワケワケしようと思っているんだけどねぇ~?』

「それは好きにしろ」

『アレ?本当にどうしたの?ちーちゃん。いつもなら怒るのに?』

「一夏は構わない。昔から箒のことを気にかけてたからな。それに私も箒のことを妹のように思っている。箒なら一夏を任せられる」

『うんうん!箒ちゃんはかわいいよね~ちーちゃんの気持ちは分かるよ』

「だが・・・・・・秋に女ができるのは・・・・・・納得がいかない。どうしてかわからないんだがな。これが」

『な、なんかキャラが違うよ?もしかして・・・・・・動揺してるの?ちーちゃん?あっくんにも彼女ができて?』

「そんなわけないだろ?この私が動揺だと?掃除、洗濯、料理、マッサージと家事万能にしてさりげない気遣いも出来る完璧主夫の弟たちに彼女が出来て私の面倒を見てくれなくなったらどうしよう?とはちっとも思っていないぞ?物凄く寂しいなとも断じて思っていない」

『・・・・・・あれ~?私も人のこと言えないけど。ちーちゃん?それは人としてどうかと思うよ?』

 

いつもの冷静な千冬ではなくなった事に電話先の人物もいつものペースが取れなくなってきている。むしろその人物の後頭部にでっかい汗が浮かんでいるような気がする。

 

「一夏は仕方がないとしてもだ。秋は簡単にはやらんぞ?特に凰鈴音!主に私の今後の生活のために!!」

『ま、まあいいか。新しいちーちゃんが見れたと言うことで束さんは満足だよ~』

「そうだな。ところで束?聞きたいことがある」

『うんうん!なんだい?ちーちゃん!この天才にしてみんなのアイドル!篠ノ乃束さんに何でも聞いてくれたまえよ!』

「弟は姉のものだな?大事な弟に付く虫は斬り捨てて構わんよな?」

『あ、アレーーーーー!?!?全然大丈夫じゃないよ!!落ち着いてよーーー!!いつものクールなちーちゃんに戻って!!』

「問題ない。私は落ち着いている。心はマグマのように澄み渡っているし、頭の中は烈火のごとく静かだ」

『全然大丈夫じゃないよぅ!?ツッコミがいないじゃん!!誰かこの状況をなんとかしてぇーーー!!!』

 

結局、千冬の暴走は千冬が酔いつぶれるまで続いたのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ハハハ……なんか今回の世界は混沌としてるねぇ~」

 

ようやく酔っ払って眠りに付いた千冬からの電話を切った篠ノ乃束は楽しいのか楽しくないのかよく分からない笑顔を浮かべる。端末を放り投げると軽く伸びをし。

 

「今までにないイレギュラーばかりだし。今回はもしかするともしかするかもねぇ?」

 

さあ踊ろう。もっともっと世界を盛り上げるために。最高に楽しい幕引きを目指して。

 

「ふふふ。今度こそ私を止められるかな~?」

 

そして天才は哂う。本当におかしそうに無邪気に笑い転げるのだった。

 

・・・・・・しかし、その数十秒後、もう定例となった妹からの電話に居留守を使うか否かを本気で考えるが今の妹なら自分の居場所を探し当ててきそうなので涙を流しながら某極道モノの着メロが鳴り響く端末を取る。

 

「あ~・・・・・・も、もすもす?ひねもす?」

『姉さん!出るのが遅いじゃないか!』

「え、えっと・・・・・・ゴメンね?箒ちゃん。でもね束さん、思うんだ?一応、指名手配犯にこう頻繁に連絡するのはどうかと?」

『何を言っているんだ?姉さん。指名手配なんて本当に形だけじゃないか。……今でも身分を隠しながらも技術提供が必要な所にはしているしISのせいで生まれてしまった孤児たちの為の施設を作ったりしていることを私は知っている。それを政府も知っているから連絡先を知っている私に無理やり連絡先を聞かないし電話をしていても黙認している。それに姉さんもそう簡単にバレないようにしてくれているのだろう?それと“家族”に電話するのになんで許可をもらわないといけないんだ』

「…箒ちゃん」

『姉さんは私の自慢な姉だよ。父さんも母さんも姉さんのことを心配していた。姉さん。またみんなでご飯でも食べよう?』

「そうだね。うん!束さん頑張っちゃうよ~!」

『それで、今日は一夏と模擬戦をしたんだが……』

「(箒ちゃん!?今までの流れが台無しだよ!!)」

 

そして、やっぱりノロケの内容になり天才は物凄く真剣に妹と距離を取るべきかを考えていた。

 




日常って難しい。

そしてようやく束さんが出てきました。箒さんとの仲は原作とは違って良好ですが自分と姉を一緒にされたり比べられたりするのは嫌い。理由は姉や自分の事を知らずに好き勝手言うな!という感じです。

ところでようやくPS4が返ってきたのでMDを買おうかと思っています。でもそうすると登場キャラが増えそう…

ご意見、ご感想をお待ちしています!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。