久し振りの朝のSHR。副担任の山田先生が教室に入ってくるなり笑顔で告げた。
「今日は皆さんにお知らせがあります!なんと転校生がいます!」
そして扉を開け、入ってきたのは銀髪に左目に眼帯をつけている少女。少女は山田先生に頭を下げ、教壇に立つとクラスメイトを見回し自己紹介を始めた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。ワケがあり途中からの転入となってしまったがよろしく頼む」
そういってラウラは頭を下げた。その様子に俺はほっと胸を撫で下ろしたのだが・・・・・・。
「それと最初に言っておく!そこにいる織斑秋は私の相棒だ。私の許可なく引き抜くことは許さん!」
しっかりと俺を指差し、文句あるかといわんばかりのラウラの顔に俺は机に突っ伏し。
「安心しろ。お前にそんな権限はない」
遅れて入ってきた織斑先生がボーデヴィッヒにつっこむ。
「教官!さっきぶりです!」
「私はもうお前の教官ではない。ここでは織斑先生と呼べ」
「はっ!千冬義姉さま」
「お前、人の話聞いてないだろ!」
ズバンッ!!
ラウラの頭に振り下ろされた出席簿がいい音を奏でた。顔を手で覆いながら姉貴は小さく「どうしてこうなった?こんな愉快な性格だったか?」と呟いていたのが聞こえた。対するラウラは首をかしげると「敬うべき年上の女性にこう言うのが日本の常識だと社長から聞いていたのだが?」と呟いていた。
犯人はアンタか!ハウ姉!!どうやらラウラの声は姉貴も聞こえていたらしく苦い表情をしながら人前で舌打ちをしていた。そういえば昔よくハウ姉と束さんのイタズラの被害にあっていたのは姉貴だったな…
「そ、それではボーデヴィッヒさんは後ろの席へ・・・・・・」
カオスな空間を引き戻すように引きつった笑みで促す山田先生にクラス全員が内心でよく頑張ったと拍手を送る。そうだね。同じ教壇に居て二人に挟まれるような立ち位置だ。今度、なんかお菓子でも差し入れしてやろう。それとも胃薬がいいだろうか?
「む?相棒の隣はダメなのか?」
「ボーデヴィッヒ。さっさと移動しろ。授業が始められん」
「・・・・・・分かりました」
どこか納得できないという表情でラウラが渋々歩いていく。そんなラウラの様子にクラスメイトは俺へと視線を向けながらニヤニヤと笑みを浮かべるのだった。
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「どうして私の援護をしなかった?相棒としての自覚が足りんのだ!」
頬を膨らませ剥れるラウラ。時間は既に昼休み。俺は学食でAランチ(豚の角煮定食)を五つ頼み食べていた。ちなみにラウラも同じものを頼んでいる。流石に数は一つだが。
「出来るか!というか俺はお前の相棒じゃないぞ!?」
「ほう?人にあんなことをしておいてそう言うのか?」
「人聞きの悪いことを言うな!お前を助けるためにこっちは結構必死だったんだぞ!?」
「私は忘れないぞ。お前と心がつながったあの瞬間を」
「あれはただのコンビネーション攻撃だろうが!!」
ドイツの出来事は一応、秘匿情報だろうに……。なんで自信満々にいうかね?そして周りを見れば顔を赤くしながらもこちらを伺い見る女子生徒。イカン。このままだと俺は社会的に抹殺されかない。
「へー。相棒なんて呼ばれてんのね」
「でしょ?ラウラちゃんて面白いよね?」
声が聞こえたほうに視線をやるとお盆にのせたラーメンを持った鈴と苦笑を浮かべながらBランチ(カルボナーラとスープにサラダのセット)を持ったアリスがそこにいた。
「隣いいわよね?」
「ああ」
食器を退かし、横に移動すると二人も席に座る。そして鈴とラウラの視線が交差する。
「・・・・・・お前は?」
「私は凰鈴音。中国の代表候補生よ」
その瞬間、二人の間に火花が散った…ように視えた。
「私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。ドイツの代表候補だ。よろしくたのむ。凰」
「鈴でいいわよ?そのかわりあたしもラウラって呼ばせてもらうから」
「分かった。鈴」
互いに笑みを浮かべると握手をしているのだがなんか空気が重い気がする。
「何コレ?」
「さあ~秋君は知らなくていいんじゃない?」
フォークにカルボナーラを絡ませながら呆れた眼でこちらを見ながら言うアリス。本当になんなんだ?まあ考えるだけ無駄か。仕方がないので目の前にある昼ご飯を黙々と食べることにする。
「本当に鈍感だね。一夏君はそうでもないのに」
「なんか言ったか?」
「別に~」
アリスの態度にため息を吐きつつ、意気投合したのか仲良くなっているラウラと鈴を見て少しだけ平和だな~と思ってしまった。
「あ、そういえば今日の放課後にMk-Ⅱ改が第三整備室に搬入されるって」
「分かった。見に行く」
「うん。私は用事でいけないから」
「……また、俺が係るのか?」
「そうそう君ばっかり厄介事は行かないよ。今日はただの打ち合わせ。なんと!私のファントムがパワーアップします!」
ふふーん!と胸を張るアリスにラウラと鈴も気になったのか会話に入ってきた。
「何?パッケージでもつけるの?」
「ふむ?私も気になるが?」
「う~ん…まだ秘密っていうか、その打ち合わせなんだよね~。秋君が頑張ってくれたおかげで色々データも取れたしね。楽しみだよ♪」
楽しそうなアリスと鈴、ラウラの三人でしばらくIS談義に華を咲かせていた。俺は聞いてるだけしかできないけどな!
午後の授業も問題なく終わり放課後になるとさっそくMk-Ⅱ改が搬入されている筈の第三整備室に行くことにしたのだが……
「お前もそこに用があるんだな?」
「ああ。白式をメンテするんだよ」
そう、一夏が付いてきた。
「え?お前メンテ出来るの?」
「ふ…出来ない」
「…おい」
「今、それを勉強中なんだよ!!」
一夏の話だとセシリアとの模擬戦中に白式の調子がおかしくなり整備課の人たちに見てもらおうとなったんだそうだ。そこで意外にも布仏(最初、のほほんさんとか言うからわからなかった)が「知り合いが整備できる」ということになりそこで出会った人に見てもらい勉強中なんだとか。しかし俺が気になるのはその出会った人物の話をする一夏の目が泳いでいることだ。
「(これは何かあったな…)」
そう直感めいたものがあった。
第三整備室に着くと一夏は扉を開き中に入っていく。中を除いてみるとIS整備用のハンガーが三台置いてあり、そのうち二台に展開済みのISが置いてあった。
「簪~?いるか~?」
一夏曰くその人物は『更識簪』というらしい。整備の腕が高く一度見てもらったら白式が使いやすくなったらしい。その人物は一夏の声に気が付き。
「今日も来たんだ?」
「おう!実はスラスターの調子が……」
「また勝手に設定弄ったんじゃ?」
「そ、そんなことしてないぞ?」
「何故どもる?」
「うっ!?」
なんか打ち解けてるな?なんとなくややこしくなってそうだと思ったんだけどな?
「ふっふ~ん!あっきーも遂に整備室に用があるようになったんだね~」
「あ、自分、IS取りに来ただけ何で」
背後からかけられた声にそう答え行こうとすると制服の裾を捕まえられた。
「あっきー酷~い!なんで私を無視するの~!」
「していない。だから離せ。布仏」
「本音って呼んでよ~!」
「へいへい」
裾を掴んでいたクラスメイトの布仏本音に向き合う。
「ところで布仏はどうしてここに?」
「む~名前で呼んでって言ってるのに~」
「あっきーって呼ばなかったらね」
「もうー。私がここにいるのはかんちゃんと一緒にあっきーのMk-Ⅱ改を調整していたからなのだ!」
えっへん!と胸を張る布仏にものすごく不安を感じた俺だったが。
「大丈夫。本音の腕は保障する」
いつの間にか傍にやってきた更識。
「あ~……初めまして」
「初めまして。さあ、フィッティングを始めよう。私も暇じゃないから」
「えへへ。かんちゃんもね自分の専用機が完成したからそのチェックに忙しいんだよ」
そこで布仏が見たのはハンガーに収められている一台のIS。力強いフォルムを持ったその外見は一言でいうのならばスーパーロボットだった。
「これどこで作ったんだ?」
「アメリカのテスラ・ライヒ研究所」
「そこにね~かんちゃんのお師匠さんたちがいるの」
「師匠たちが居なかったら私は一人で作ろうと思っていた」
そういってそのISを撫でる更識は自慢げに話してくれるのだが一つ疑問が。
「でもなんでアメリカなんだ?更識ってアメリカの代表候補生じゃないよな?」
「……それは一夏のせい。詳しくは彼に聞いて。さあ、そろそろ始めよう」
そこで更識は話を切ると赤と黒の配色がされたMk-Ⅱ改の元に向かって調整を始めるのだった。
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それから一週間もの間、アリーナで起動させては整備室で調整の繰り返しだった。Mk‐Ⅱ改は孤狼に比べると扱いやすくはあった。さらに拡張領域も多く試験用ということで多くの武器が後付武装として搭載されており、それらを試しつつ一夏やセシリアと模擬戦を繰り返し、クラス対抗戦を迎えたのだった。
「なあ。秋。鈴に勝てそうか?」
心配そうな顔をしながら尋ねる一夏。本来なら対抗戦参加者以外はピットに入れないのだが一夏は特別に入ってきている。まあ一夏以外にもセシリアやアリス、箒にラウラとかなりの人数がいるのだが。
「やるからには勝つさ。幸いMk-Ⅱ改のパッケージは接近戦仕様だしな・・・・・・それよりもアリスは代表じゃないのか?」
そう、何故か三組のアリスが一組の俺のピットにいるのが不思議だ。専用気持ちなら対抗戦に出るのかと思っていたが?
「私は違うよ?最初は私が代表に選ばれそうだったんだけど譲っちゃった」
「な、何故ですの!?クラス代表になれば生徒会での発言権が強くなるのでしてよ?」
「これでも企業の装着者だからね。社長から呼び出されたりすれば行事にも参加できなくなっちゃうから」
「確かにそれでは困りますわね」
アリスの発言に驚くセシリア。アリスの理由に納得していたが。といかクラス代表にそう言う特典があったのか・・・・・・。
一人納得し頷く俺を横目にラウラがため息を吐く。
「相棒?まさか何も知らずに代表になったのか?」
「なりたくてなったんじゃない」
遠い目をしながらMk-Ⅱ改の最終調整をこなす。搭載されているAIもアルトほどではないが十分サポートしてくれている。
「にしても一回戦でいきなり鈴とあたるとはな」
「ああ、運が向いているのかもな…何、拳を撃ちこんでくるさ」
心配してくれる箒にいつものように右手を握り締め突き出す。そんな俺を見て笑みを浮かべ。
「そうか。なら行って来い!そして勝って来い!」
凛々しい笑みと共に送り出してくれる。それに俺も返す。
「ああ。任せろ!」
仲間たちに見送られながら俺は通常展開していたMk-Ⅱ改を全身装甲に移行させピットを飛び出した。
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ピットから飛び出してくる赤と黒の全身装甲のIS。自身の専用機“甲龍”のハイパーセンサーによる情報だとIS名は量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改。表示されているデータには両腕にダブルプラズマバックラー、膝にプラズマステーク、両足と背後に高機動スラスターユニットを装備と出ている。
「(タイプは接近戦型か・・・・・・でもアイツの専用機じゃないわよね?)」
一夏から聞いていた秋の専用機“孤狼”とは違うことに鈴は首を傾げる。
『それでは両者、規定の位置まで移動してください』
アナウンスに促され二人は移動する。
「秋。どんな事情があるか知らないけど。専用機じゃないから負けました。なんて言わないわよね?」
約五メートルの距離を保っている。鈴はオープンチャンネルで秋へと声をかける。
「言うか!安心しろよ。無様な真似は見せないさ」
「そう。それを聞いて安心したわ」
「そうか・・・・・・なら」
『それでは両者、試合を開始してください』
秋の声を遮るようにアナウンスが流れ、ビーッとブザーが鳴り響く。
「行くぜ!」
秋の声と同時にMk-Ⅱ改の背後にある高機動スラスターユニットから青白い炎が吹き出し踏み込んでくる。
「(確かに早い。でも視える!)」
想像していた以上の速度で突っ込んで来る秋だったが何とか目でおえている鈴は甲龍の武装である双天牙月を両手に呼び出し、迎撃する。
「おりゃっ!」
これでも代表候補生。訓練の中で高機動戦闘は既に経験している。だから秋の動きに合わせカウンターとして右手に持つ双天牙月を振るう。しかし。
「あめぇ!」
秋は右腕のバックラーで双天牙月を弾くと左拳を打ち込んでくる。それをもう一つの双天牙月の腹で受け止めながら後退。だが秋もスラスターを吹かし追撃を仕掛けてくる。
態勢を立て直し双天牙月を振るうと秋は右手に一本の実体剣“アサルトブレード”を取り出すとそれを使って斬撃を防ぐ。その攻撃に少し違和感を覚えた鈴だったが気にせず一気に攻勢へ出る。連結させた双天牙月をバトンのように回しながらの連撃をアサルトブレードで捌き切る秋は本当にIS操縦歴一か月なのかと鈴に思わせた。
「ここまでついて来れるなんて……さすがね!秋!!」
「はっ!そういうお前こそ、よく捌くじゃねぇか!」
「冗談。こんなの余裕よ!」
「そうかい!ならギアを上げるぜ!!」
秋はそういうとアサルトブレードを格納すると今度はIS用のハンドガン“Gリボルバー”を両手に構え。
「風穴開けてやるぜ!」
撃ちだされる弾丸を防ぎながらも後退しつつ。
「(くっ!秋の奴、なんで不慣れな射撃を?でもこれはチャンスね)」
鈴は内心で舌打ちをしつつ両肩部の非固定式武装を起動させる。
「さあ!龍の咆哮!止められるものなら止めて見せなさい!!」
チャージの済んだ鈴の甲龍の武装が秋へその牙を突き立てた。
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な、何が起こったんだ?
鈴のIS“甲龍”の肩部にあるユニットが開いたかと思うと行き成り衝撃に襲われた。それも連続で。俺はとっさに鈴の正面から離れるが謎の攻撃は続きダメージを受けていた。
《検索完了。今の攻撃は甲龍に搭載されている第三世代型兵器・衝撃砲“龍咆”です》
「衝撃砲?」
《はい。空間兵器と言われるものの一種で空間自体に圧力をかけて砲身を生成。それによって生じた衝撃を砲弾として利用しているものと思われます》
Mk-Ⅱ改のAI“イクス”の説明に呻く。
「つまり見えない兵器か・・・・・・」
《その通りです》
見えない兵器ほど厄介なものはないと言える。一応、衝撃砲の原理からすればハイパーセンサーで空間の歪みを検知してからよければいいが、実戦でそんなことしている暇はない。つか人間の反応速度で回避できるか!
「なら…手は一つだな」
右手に呼び出すのは小型のミサイルランチャー。
「射撃は苦手なんだけどな!!」
鈴に向かって引き金を引き六発のミサイルが放たれる。
「そんなもの!」
しかし、その全てのミサイルは鈴に迎撃されるが俺の狙いはミサイルを当てる事ではない。破壊されたミサイルから大量のスモークが溢れ、鈴の周りを覆っていく。
「煙幕?…まさか!?」
「そのまさかだよ!」
空間に圧力をかける兵器ということは空間は歪むわけで、そこに煙幕があれば?
「見えない兵器の姿が見えるってわけだ!」
煙幕の一部が歪む。そこから弾道を予測し。
「ぶん殴る!」
ダブルプラズマバックラーをぶつけ。合計六本のプラズマステークに電撃が纏わりつく。それを構えながら一気に踏み込み。
「させるかっ!」
衝撃砲が飛んでくるが煙幕のおかげで発射のタイミングが分かる。ならかわせる。
煙幕の中に突っ込み、鈴のいる場所に向かって。
「ジェットマグナム!」
右拳を繰り出した。しかしその拳が鈴に当たることはなかった。
「甘い!」
「がっ!?」
逆に双天牙月の連撃を受けてしまった。大幅に削られるシールドエネルギー。
「どうしてかわされた?」
俺の呟きに双天牙月を肩に担いだ鈴はつまらなそうに答えた。
「別に特別なことは何もしてないわよ?ただ、あんたの事だから突っ込んでくるだろうって思ったのよ」
「そうかい!」
全スラスターを使って距離を詰めようとするが再び龍咆の攻撃にさらされ俺はとっさに回避する。煙幕は既になく、俺に出来ることはアリーナ中を動き回る事だった。
「秋!いい加減にしなさいよ!」
いきなり鈴が叫んできた。
「さっきからアンタらしくない戦いばっかりしてあたしを舐めてるの!」
俺らしくない?
「本気で来ないなら……噛み砕いてやるわ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ふむ・・・・・・あの馬鹿、何を遊んでいる?」
試合をモニタリングしていた千冬は顎に手をあて考え込んでいた。
「秋君の動きは悪くありません。少なくとも孤狼を使っている時と比べても劣っているとは・・・・・・」
山田先生が眉根を寄せる。
「いや、相棒、本来の動きはあんなものではない」
「ボーデヴィッヒさん?」
同じくモニターを見ていたラウラが呟く。それはかつて秋と孤狼と戦った者としての意見。
「そうだね。いくら高機動パッケージに換装しているといっても孤狼の加速まではいかないし、それに一番の問題は秋君が自分の戦いをしていないってことかな?」
ラウラに続くようにアリスが言うと山田先生は何かに気がついたように目を見開く。
「そういえば、さっきから色々な武器を使っているみたいですね」
「おそらく、あいつは対抗戦という場にもかかわらず試すと言えば聞こえがいいが実際は自分のスタイルを忘れて遊んでいるにすぎん。それに気が付かないままならこの勝負、凰の勝ちだ」
千冬の説明にピットにいる全員が黙ってしまう。だが一人だけ違った。
「大丈夫さ。秋はきっと勝つ」
「一夏?」
一夏は真っ直ぐにそういい、尋ねた箒に振り返ると笑みを浮かべ。
「あいつは自分が言った事は絶対に曲げない。あいつが勝つって言ったんだ。だから勝つ」
そう言いきる一夏を見て千冬は静かに笑みを浮かべる。
「そうだな。ここはアイツを信じて見守るとしよう」
そして再びモニターに視線を戻すと試合に動きがあった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「俺の……本気?」
《マスター。次はどの武器を使いますか?》
イクスの問いに俺は考えていた。武器を使う?そういえば、俺の戦闘スタイルは剣や銃を使う事じゃない。
「でも孤狼と同じ戦い方は無理だ。なら俺の俺自身の戦い方をする」
孤狼を使っている俺の戦いかたではなく俺自身の戦いを・・・・・・。今はこの四肢全てが俺の武器だ。そう思った時、俺には見えた気がする。勝利への道ってやつが。
「どうやら本気の秋と戦えそうね。ようやく楽しめる戦いになりそうよ!」
地面へと降りた俺に合わせるように降りた鈴は嬉しそうに呟く。そんな鈴に俺も思わず笑みを浮かべる。
「わりぃな。待たせた」
「別にいいわよ。でも簡単に勝てるとは思わないことね」
勝気な笑みを浮かべる鈴に感謝する。そして改めて思う。
やっぱり鈴にはかなわねぇな。
心の奥で言葉にし構えを取る。両手を前に出し、拳を構える。
「イクス。もう武器はいらない。その代わり、スラスターと各プラズマステークをアクティブに」
《了解》
「こっから無茶をするぞ」
《サポートはお任せください。ご武運を》
さあ、こっからが本番だ!行くぜ?鈴。今からやるのはただの喧嘩だ!
一気に踏み込む。それに鈴も反応し双天牙月を振り下ろしてくるがそれを左手で払う。
「ッ?!」
そして、もう一歩踏み込み、完全にインファイトの距離にはいると腰を落とし、上半身を傾け、がら空きになった左わき腹に向かって低空から鈴の顎に向かってアッパーを繰り出す。ボクシングの技の一つであるスマッシュを参考に繰り出す一撃。しかし鈴もそれに反応し上半身を逸らすことで交わす。
「悪いな!まだ左が残ってる!」
「!!」
だが、それも読んでいた。右腕を戻すのと同時に引いていた左拳を思いっきり顔へと叩き込む。
「ッ?!」
「浅い?」
顔面をとらえたように見えたが、どうやら浅かった。驚異的な反射力でバックステップし威力を逃がしていた。
「ホントに遠慮なく打ち込んでくるわね!」
鈴の悪態が聞こえる。だが、俺はこれ以上距離を開ける気はない。追撃する。
「そう何度も!!」
合体させていた双天牙月を分離させ、二刀モードにした鈴。両肩の龍砲で弾幕を張ってくる。だが俺は避けない。ボクシングのピーカブースタイルのまま、スラスターを全開にしながらつっこんでいく。
「もう限界の癖に!!いい加減墜ちなさいよ!」
「うるせぇ!鈴!てめぇが墜ちろ!」
龍砲の威力が上がるが、プラズマバックラー、そして肩アーマーや装甲の一部に当たるが絶対防御は発動しない。しかしシールドエネルギーは確実に減ってきている。つまりこの一撃が決まらなければ俺の敗北。
「なら撃ち抜くだけだっ!!!」
「させない!」
お互いの距離が互いの必殺の一撃まで迫った時だった。
《警告!高エネルギー反応確認!回避してください!》
イクスの声と背中を奔る悪寒にとっさに攻撃を止め鈴に抱きつき瞬時加速に入る。
「ちょっ!」
「黙れ!」
抵抗しようとする鈴を黙らせアリーナ中心から離れると極太のビームが天から降り注ぎ、轟音と共にソレは来た。
「「「・・・・・・」」」
煙が晴れるとそこにいたのは異形のモノ。頭部まで覆う黒いスーツに両肩、両腕には馬鹿でかいビーム砲。顔の部分には穴のようなセンサーが六つ。それはまさしく異形のISだった。しかし、それだけではなかった。異形のISの横にもう二体。両腕が異様に長い白いIS。頭部の目の部分には小型の丸いセンサーが三つずつ取り付けられていた。三体のISは確かに人の姿をしているがその姿にどこか違和感を覚える。
そんな中、三体のISがこちらを捉えた。
「これってもしかしなくても大ピンチってやつ?」
「かもな」
鈴の軽口にそう答えるしかなかった。
というわけで対抗戦改め無人機戦です。原作のゴーレム以外にもおまけがついてきますが、次回、あのユニットが参戦します。
なおチラッと出た簪の専用機は打鉄弐式じゃなくなっています。理由はこれからの事を考えると戦力的に厳しいかなと……
また伏線を張りながら月曜までに次話を出せればと思います。
ご意見、ご感想お待ちしています!