IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

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クロスオーバー要素が濃くなってきたかな?そんな今話です。


STAGE16

謎のIS乱入事件の解決から時は遡りMk-Ⅱ改と甲龍の修理が終わった頃……

 

「パーツ交換終了!」

「全システムオールグリーン!」

「エネルギー補給終わっています!」

 

ピット内で作業をしていた人たちの声が聞こえ、俺と鈴は同時に立ち上がった。

 

「んじゃ、リベンジ行きますか?」

「ハン、アンタはおとなしく休んでたら?」

「あ?んなこと出来るかよ」

「そ。ならせめてあたしの邪魔だけはしないでよね!」

 

どこかまだ不機嫌ですという鈴の言葉にイラッとしながらもこればかりは行動で示すしかないだろう。そう思い緩めていたISスーツを着直しMk-Ⅱ改へ向かおうとした時だった。

 

「え~い!」

「ぐっ!?」

 

首筋に衝撃。ネックガードがあるので痛いですんだが…

 

「何すんだ!布仏!」

 

下手人に向き直ると手刀を構えながら不思議そうな顔をする布仏がそこに居た。

 

「あれ~?おかしいな?これで気絶するはずなんだけど?」

「ふざけんな!お前、それって素人がやるのは危険なんだぞ!!」

 

確かに漫画とかで首筋に手刀を当てて気絶させるのはあるがあれは真似してはいけない例だ。

 

「む~…素人じゃないもん!今まではこれで気絶させてたもん!あっきーが普通じゃないんだよ!!」

「なんで半ギレしてますかねぇ!?」

 

キレたいのはこっちだ!

 

「…だから、えい♪」

 

そう笑って俺に向けたのはスプレーボトル。それが何を意味するのか一瞬分からなかったが布仏が散布したことで理解した。否、理解させられた。

 

「ギャー――――――!!!???目が――――――――!!!!????」

 

所謂、催涙スプレーと言われるものをかけられ床を転がる。

 

痛い!目が!鼻が!皮膚が焼けるように痛い!!

 

「ほ、本音!?」

「あ、あんた何してんのよ!?」

「あばよ~とっつあ~ん!ゲシュちゃん借りてくよ~!」

「ま、待ちやがれ!」

 

痛みで目が開けられないが布仏はMk-Ⅱ改を奪ったのは理解できた。しかし、現在、俺以外は使えないように設定している。解除には時間がかかるはずだ。それまでに回復して布仏を引き摺り下ろす!

 

「あ~……あたしは出るわ。箒、悪いけど後は任せるわ」

「あ、ああ…任された」

 

唖然とする二人の声が聞こえるが今は一刻でも回復し布仏を捕まえる事が先決だ。鈴が去る音が聞こえ、その後に甲龍がピットから飛び出した。

 

「ふふ~ん。これくらいの設定解除は朝飯前なのだよ~」

 

と、どうやら自分でも動かせるようにロックを解除した布仏が俺が回復しきる前にピットから出て行ってしまった。

 

後で覚えておけよ!!布仏!!

 

「大丈夫か?秋」

「大丈夫じゃないけど大丈夫…」

 

顔を洗い、箒が用意した点眼薬でようやく目が楽になった。布仏に対する怒りはあるがピットに設置されているモニターを見れば俺よりもうまくMk-Ⅱ改を扱っている。いや、マジで。その事実に結構凹む。

 

「しかし、あの本音があそこまでISを上手く扱うとはな」

「ああ、機体のポテンシャルを熟知しているようにみえるな」

 

ラッシュと言いブーストの使い方と言い本当に何者なんだ?

 

「本音ちゃんはある意味天才だからね。当然よ」

 

そう声が聞こえ、振り返るとそこには水色の髪をした女性が。

 

「アンタは…?」

「IS学園最強の二つ名を持つIS学園の生徒会長…更識楯無先輩だ」

 

箒の言葉に笑みで返す更識先輩。ただその手に持つ扇子には『勤勉感心』と書かれていた。

 

「それで?布仏が天才って言うのは?」

「あの子はね。いつ、どんなISに乗ってもまるで自身の専用機のように扱えるの。でも代償としてあの子が本気で動かすとISが持たないのよね。だから彼女は能力が高いけどそれ故に専用機は与えられないし、代表候補からも外れてしまった」

「確かに、一回の出撃でISがオーバーホール寸前まで行ってしまえばコストが悪すぎる。しかしIS自体に自己修復機能があったはずですが?」

「その自己修復のおかげでISが完全大破まで行かないで済んでるのよね」

 

そこまで行くアイツの全力って……

 

「それにしても流石マオ社の新型ね。本音ちゃんの動きにもついていけてるわ」

 

モニターを見ながら感心する更識先輩。ただその口元で広げられている扇子には『本音ちゃん!ステキ!』と文字が変わっていた。多分突っ込んだら負けなんだろうな…

 

『箒!そこに居るか?』

「織斑先生?はい、いますが…」

 

モニターが切り替わり姉貴が姿を見せた。

 

『そこに秋、楯無もいるか…ならちょうどいい。お前たちにジャミング装置の破壊を頼みたい』

 

姉貴によるとそのジャミング装置はアリーナの外部に設置されているそうでそれがあるせいでシステムを取り戻すのが難しい事が分かったそうだ。それを破壊できれば一気にシステムを取り戻すこともできるだろうとの事だった。

 

『本来なら教員が向かうべきなのだがな…その装置に近づくとISの展開も出来なくなると情報が来た。そしてジャミング装置には数名の兵士が守りについている。情けないことにISが使えなければ教員も一般人より少し動けるくらいのレベルでしかない。だが、お前たち三人なら生身でも十分戦える。すまないが頼む』

 

「分かりました。私で良ければ」

「ええ。先輩として後輩にだけ危険な目に合わせる分けには行きませんから」

「うし!じゃあ早く行きますか!」

 

俺たちは互いに頷くと教えられた地点へと向かった。幸いにもジャミング装置が置いてある個所はアリーナの隅。資材を運ぶための通路で資材搬入が済んでしまえば人はほとんど通らない場所だった。避難もほとんど済んでいたのと箒の物理的障害突破のおかげでその場所にたどり着いた。

 

「……分かりやすいな」

 

思わずこぼれた呟き。床に建てられた筒状の機戒とそれを守る様にアサルトマシンガンを持った兵士。ただこの兵士の頭部は赤いバイザーで覆われているがどことなく人間味を感じないという違和感を覚えた。

 

「さて、どう制圧します?先輩」

「秋君と箒ちゃんは接近戦が得意なのよね?」

「ええ。この距離なら縮地で十分届きます」

「俺も縮地は会得してるからいけるな」

 

俺たちが隠れている角から装置まで十メートルちょい。問題はなさそうだ。

 

「お姉さん二人が頼もしくてちょっと泣けるわね…なら私が二人が装置にたどり着くまで援護します」

 

俺たちの答えに引きつった笑みを浮かべる先輩だがすぐに表情を改めると何処からともなく苦無を取り出し構える。

 

「じゃあ、いくわよ?」

 

先輩の問いに箒は刀を構え、俺は専用のグローブをはめた拳を構える。

 

「行って!」

 

角から飛び出した先輩が苦無を投げる。その数、八。同時に俺と箒も飛び出す。襲撃に気付いた兵士たちが気づき、銃を構えるが苦無が銃へあたり、落とすまで行かないがもう一度構えるまで少しの時間が生まれる。そこへ箒が現れ。

 

「疾ッ!」

 

兵士たちの銃を斬って回る。なびく髪と相まってその姿は風の如く、兵士たちの間を駆け抜けていく。そんな箒に兵士たちの集中が向いたところで先頭に居た一人目にかかと落としを喰らわせ、着地と同時に地面へと叩き付けられた兵士を踏み台に跳躍。近くに居た二人の兵士へ右足で蹴りを入れ壁に叩き込む。そこで漸く、兵士たちが落ち着きを取り戻し、襲い掛かってくるが。

 

「覇ッ!」

 

震脚。通路が凹み、衝撃でバランスを崩す兵士。その顎へ掌底を叩き込み吹き飛ばす。もう片方から襲うとしていた兵士には頭部のヘルメット横に苦無が三本突き刺さり崩れ落ちようとしていたので左ストレートを叩き込んで倒した。

 

「これで五。残り三」

「いや、これで終わりだ」

 

そういう箒が残りを片付けたようだ。刀を収めている足元に三人の兵士が倒れている。

 

「じゃあ、こいつを壊すか」

 

残っているのは装置だけ。俺は拳を握りしめ装置を全力で殴りつけた。思っていたよりも抵抗を感じずあっさりと壊せたことにより任務完了。姉貴に報告を入れてここから去ることに。あとは学園の教師陣たちに任せることにする。

 

「うん。二人が本当に頼りになってお姉さん嬉しいやら悲しいやら…」

「そうですか?師匠でしたら一太刀で終わらせていた筈です」

 

何やら思い出したのか目をつむりため息を履く箒。お前の師匠って親父さんじゃなかったか?でも太刀筋は篠ノ之道場の物とは違ってるし…

 

「ま、まあ箒ちゃんは置いといて秋君は我流なのね?」

「そうですね。色々混ざってます」

 

黒歴史時代にボクシングやらなにやらと色々な格闘技を覚えていたので決まった型は持っていない。

 

「そう。なら今度、お姉さんの幼馴染を紹介してあげる」

「幼馴染ですか?」

「ええ。強いわよ?私よりもずっと…」

 

学園最強の先輩を超える人か…合ってみたい。

 

「さて、戻りましょう?アリーナの状況も気になるし」

 

先輩に促され帰ろうとした時だった。掌底を食らわせておいた兵士が起き上がり飛びかかってきた。その相手は……

 

「「先輩!」」

 

俺と箒が構えようとした刹那、先輩は笑った。

 

「如月流古武術・機神拳!」

 

裏拳が兵士の顔に直撃しそのバイザーが砕け散る。そして先輩が繰り出す連続蹴り。

 

「止め!」

 

そして浮かび上がった敵が眼前に落ちてくる瞬間に合わせて突き出される正拳突き。ただそれだけの動作で兵士は全身がズタボロになっていた。

 

「これが私の幼馴染が使う武術よ?」

 

そういう先輩だったが、右手が赤くなっており顔にも痛みをこらえているのか脂汗が浮かんでいた。

 

「分かりましたから治療しましょうか?」

「お願いできる?」

 

ちょっと涙目でそう言うなんともしまらない先輩だった。

 

ピットの方へ戻ると一夏を初め、アリーナで戦っていた奴らが戻ってきていた。まだISを解除していないところを見ると帰還したばかりなのだろう。

 

「おい!秋!メイがいるぞ!!」

「は?メイ?」

 

少し興奮気味な一夏に首を傾げると。

 

「久し振り。秋」

 

そう微笑む懐かしい顔があった。

 

「よ、メイ。お前もIS操縦者だったのか?」

「ええ。私がこういうの好きなの知っているでしょ?」

「そういやそうだったな」

 

昔からメイは無類のロボット好きだった。ISが発表された当時のテンションは凄まじかったのを覚えている。それにしても。

 

「お前のISはなんで大型の鋏なんだ?」

「ああ?スタッグビートルクラッシャーのことね。最初は貴方と同じステークを付ける予定だったんだけどね…」

 

そこで俺を見て、ため息をつく。

 

「私じゃ扱いきれなかったのよ。というかよくあんな武器使えるわね?」

「そうか?俺には普通に扱える武器なんだけどな?」

「ふん。鋏なんてメイにお似合いじゃない?使えないと判断したらなんでもすぐに切っちゃうメイには」

 

そういって間に入ってきたのは鈴。気のせいか不機嫌さが上がった気がするが?

 

「そうね。リンリンみたいになんでもかんでも振り回すことしかできない脳筋には扱えない武器よね?」

 

声のトーンが落ちたメイの返し。なんだろう。凄い逃げたいんだけど。

 

「「あぁん?!」」

 

互いに胸倉をつかみにらみ合う。こいつらこんなに仲悪かったけ?俺がどうしたもんかと二人を交互に見ているとメイが何かに気が付いたのか鈴を上から下へとみて、また上に視線が戻る。

 

「って鈴?貴方……フッ!」

「オイ!今、どこ見て笑った!!」

「落ち着け!鈴!!」

「あら?ごめんなさい。まったく成長してないようでつい」

「メイ!お前も煽るな!」

 

メイが鈴の一部を見て鼻で笑い、キレた鈴を一夏が羽交い絞めにしている。どんどんピット内がカオスになっていく。止めてくれそうなセシリアに簪は我関せずと整備課の人たちと話をしている。ラウラは訳が分からないのか首を傾げ、箒と先輩は苦笑している。だめだ。ストッパーがいない。そう思っていると。

 

「いつもは冷静のメイも幼馴染の前だと違うんだね」

「私もびっくりしたよ。あんな一面もあるんだね~」

「お、アリス…そっちは?」

 

ISを解除したアリスともう一人の子がやってきたので尋ねると。

 

「僕はシャルロット・デュノア。君の孤狼と同じハロウィン・プランで作られたカスタム機“ヴァイスリッター”の専属操縦者だよ」

「俺は織斑秋。秋でいいぜ。あそこの兄貴とかぶるから」

「うん。秋って呼ぶね!ところで秋に聞きたかったんだけど…」

 

俺の後方二人とは違い太陽のような笑顔を浮かべるシャルロット。

 

「どうして孤狼を使おうと思ったの?僕も一回テストで乗ったけど、普通の人間じゃ真面に扱えないでしょ?」

 

そう尋ねてくるシャルロットに不思議に思いつつも答える。

 

「いや、使うも何も用意されていたしな。最初はトンだ欠陥品だ!って思ったんだけどさ、でもMk-ⅡやMk-Ⅱ改と乗ったけどやっぱ物足りないんだよな…孤狼はきっと俺に足りなかった何かを持っているのかもしれない。それにあいつは相棒だしな。孤狼を俺以外に使われるのは我慢ならない」

 

これは本心だ。最初はとんでもない欠陥品だと思ったがアルトと共に戦ってきてやっぱりあいつは俺の相棒なんだと思わされた。Mk-Ⅱ改は確かに良い機体だ。だけど俺が俺として戦えるISは孤狼だけだ。

 

「そっか…僕もね。最初はヴァイスのことが好きじゃなかったんだよ?装甲は薄いからどんな攻撃も回避しなきゃならないし、その為により高い機動性を得るために新型のテスラドライブが積まれたんだけどそれから生まれた高速機動もなれなくてつらかったしね。だけど秋と同じように僕もヴァイスを誰かに使われるのは嫌だし共に戦うならヴァイス以外は考えられない」

 

そこで言葉を切ったシャルロットは俺に手を伸ばし。

 

「君とならきっといいコンビが組めそうだよ!よろしくね?秋」

「ああ、よろしくな……あ」

 

出された手を取り握手を交わした所で俺は見つけた。見つけてしまった。ハンガーにMk-Ⅱ改を固定しこっそりと去ろうとしている狐を。

 

「まてぇやあああああああ!!!!布仏ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「ヒィ!?見つかっちゃったよ~~~~~!!!」

 

一気に加速した布仏を俺は全力で追いかけた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

秋が本音を追いかけて行ってしまった後、アリスは隣のシャルロットをジト目で見る。

 

「シャルちゃん?今のどういう意味かな?」

「別に?僕が思っていたような人だったなって…」

「秋君に会ったことないよね?」

「アルトが送ってくる戦闘データを見ただけだよ。でも、すごいよね?扱いがピーキー過ぎて国家代表の人すらも投げ出したISに乗って戦っているんだもん」

「それはそうだけどね…」

「僕がね、アリス。ヴァイスリッターを扱えるように頑張れたのは彼の戦闘データを見ていたからなんだ。最初の戦闘からドイツでの戦いまで格上相手でも諦めずに戦う姿や扱いづらい筈の孤狼を自分の物にするべく努力を続ける彼の姿を追いかけている内に…」

「なるほど。好きになっちゃったんだ?」

「う、うん」

 

意地悪く言うアリスに照れながらも頷くシャルロット。そんな様子を見てアリスは。

 

「敵はいっぱいいるよ?一番は鈴ちゃんみたいだけど…」

「負ける気はないよ?僕は彼女にも、アリスにもね」

「…私だって負けないから!」

 

二人の少女が誓いを新たにしている中……

 

「誰か二人を止めてくれ!!」

 

ISで戦闘を始めようとしている鈴とメイを必死に抑えている一夏の叫びがピット内に響いた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

あの後、布仏を捕獲した俺はお仕置きを決行。といってもやったのは足つぼマッサージだが。どうも胃腸関係が不調だったようで激しく悶えていたが無視した。終わった後にぐったりして動かない布仏を見た時、ちょっとばかりやりすぎた気がするが…俺は悪くない。うん。お仕置きを終えた俺がピットに戻るとメイとシャルロットはハウ姉のほうに向かったそうで疲れ切った一夏が箒と一緒に鈴を連れて食堂に行くことにしたらしい。残っていたアリスとラウラが教えてくれた。

 

「秋君。悪いんだけどMk-Ⅱ改を整備室に運んでもらえる?データ取りと本音ちゃんが使ったからパーツの消耗具合をみたいんだよね」

 

そういう黛さんに俺は二つ返事で承諾。ついでに簡単なメンテを教わることにした。

 

「そういうことなら喜んで!」

「お姉さんたちが鍛えてあげよう!」

「お、お手柔らかに…」

 

そんなこんなで整備課の皆さんから指導を受けながら一連の作業を手伝いようやく終わった。流石に疲れた。軽く伸びをし、凝り固まった筋肉をほぐしながら整備室をでる。時計を見ると時刻は十時を回っている。夕飯を食うのも忘れるくらい忙しかった。でも整備課の人たちの凄さも体験出来て良かった。今度は俺自身で最低限のメンテが出来るようにならねば。

 

「あ~き~!」

「うおっ!?」

 

な、なんだ?!敵か?それとも幽霊か!?

 

いきなり抱きつかれ、軽くパニくる。

 

「プ、アハハハハハハ!」

「り、鈴?」

 

振り返るとそこにいたのは鈴だった。

 

「いきなりなんだよ…びっくりするだろ」

「なによー。アンタが夕飯になっても帰ってこないって一夏から聞いたから探してたのよ?」

「う・・・・・・」

 

それは確かに俺が悪い。一夏に心配させたようだ。

 

「そうだ・・・・・・はい。お弁当」

 

そういって鈴が差し出したのはかなり大き目のお弁当箱だった。

 

「弁当?」

「うん。夕飯にも顔を出さなかったならおなか減ってると思って・・・・・・ね」

「・・・・・・ありがとう」

 

礼を言いながら受け取り、折角だからと近くのベンチに腰掛ける。そして風呂敷を解き、二段重ねの弁当の蓋を開けると。

 

「酢豚か?」

 

酢豚が良く詰められており二段目にはご飯がこちらもいっぱい敷き詰められていた。

 

「そうよ?約束どおり作ったのよ」

 

どう?と言う鈴に俺は返事をせず、箸を持って手を合わせる。

 

「いただきます」

「召し上がれ」

 

俺は静かに酢豚の肉を取り口に入れる。そして暫らく租借し飲み込む。

 

「美味い」

 

あの頃よく食べていた酢豚と同じ味がした。嬉しそうに頷く鈴に感謝しながらひたすらと弁当を食べる。鈴は一心不乱に弁当を食べる俺を見ている。

 

「ごちそう様でした」

「はい。どういたしまして」

「久しぶりに食ったよ。やっぱり鈴のとこの酢豚が一番だな・・・・・・おじさんのレシピか?」

「・・・・・・うん。お父さんの味を思い出しながら作ったの・・・・・・秋には言ってなかったけど、うちの両親ね。離婚したの」

 

突然の話に驚き、箸を止める。しかし鈴の雰囲気から何かを言うべきではないと感じ、鈴の独白を黙って聞くことにした。

 

「どうして離婚したのかもよく分からない。いつから仲が悪かったのかも分からないの・・・・・・ほんと急だったのよ」

「・・・・・・そうか。難しいな」

「うん」

「今もおじさんとは?」

「会ってない。母さんが親権を取って中国に戻ってからはそれっきり・・・・・・」

 

鈴の話を聞いて思い出すのは仲がよかった鈴の両親。正直、今、話を聞いても俺には信じられない。だけど、そんな嘘を言う理由もないからやっぱり事実なのだろう。

 

「俺は・・・・・・いや、俺と一夏は両親の顔も覚えてねぇ」

 

俺の突然の話しに鈴は俯いていた顔を上げる。

 

「一夏も俺も両親が俺たちを捨てたと思ってるし、親代わりに一生懸命俺たちを育ててくれた姉貴にはとても感謝している。だから俺の家族は一夏と姉貴だけ…でもな」

 

黙って聞いている鈴の顔を見ながら続ける。

 

「俺は鈴も家族だと思ってる」

「え?ええ!!」

 

何故かボンッという音が鈴から聞こえた気がする。気のせいだろうが。

 

「だからな。一人で抱え込むな。俺を頼ってくれ。頼りないかもしれないけどな」

「そ、そそそそそんなことないわよ!?」

 

勢いよく首を振る鈴に苦笑しながら、それでも鈴の目をしっかりと見ながら俺は言葉を続けた。

 

「これだけははっきり言える。今の俺があるのは鈴のおかげだ。お前が居なかったら俺はずっと間違えたままだった。だから感謝している。お前がつらい時に俺は何もできなかった…だから今度は俺がお前を支える。これは俺の誓いだ。お前が俺に助けを求めるなら俺は絶対にお前を助けて見せる。それが俺にできることだと思うから」

 

気が付けば鈴の手を取りそう言い切っていた。

 

「・・・・・・」

「鈴?」

 

何も言わない鈴に何かやらかしたか?と不安に思っていると顔を真っ赤にしたまま鈴が倒れた。

 

「って鈴ーーーーー!!!」

 

結局、何故か気絶した鈴を背負い、無事に部屋に送り届けたが鈴の同室の子がすごくいい笑顔で引き取ってくれたのが気になった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コンコン。

 

夜も更けてきたIS学園の生徒会室。扉をノックした人物を中から呼ぶ声がした。

 

「はいは~い!あいてますよ~」

「お姉ちゃん。入るよ?」

 

扉を開き入ってきたのは簪。そして妹の来訪に驚く楯無。

 

「急にどうしたの?簪ちゃん?」

「弐式の整備とかが終わって帰ろうと思ったらまだ明かりがついてたから・・・・・・」

 

簪がそういうと楯無は笑って見せる。

 

「大丈夫よ。簪ちゃん。もう帰ろうと思ったところだから」

「・・・・・・お姉ちゃん。無理してるでしょ」

「え?」

「どうせ生徒会の仕事終わってないんでしょ?」

 

簪はそう言うと楯無の机の上からいくつか書類を取り、目を通していく。その中で生徒会長の許可がすぐに必要な物とそうでない物、生徒会長以外でも対応できる物と分けていく。その手際は素早く書類の山は仕分けされていく。

 

「簪ちゃん?手伝ってくれるの?」

「当たり前でしょ?いいから早く終らせて帰ろう」

 

簪の言葉に目じりに涙を溜めながら必死に仕事を再開する楯無。

 

「ところで・・・・・・本当は何を聞きたかったのかな?」

「別に。最近、お姉ちゃんがまた無理してるって聞いたから来ただけだよ?」

「ぐっ……虚ちゃんね」

「それより早く終わらせようよ。お姉ちゃんならすぐに片付けられるでしょ?」

「もう仕分け終わったの?」

「終わったよ」

 

そういう簪は生徒会長以外でも対応できる書類を見始め捌いている。

 

「本当に頼りになる妹なんだから~!」

 

感極まったのか簪に抱きつく楯無。しかし簪は。

 

「ウザい。早く終わらせて」

「……はい」

 

凄く冷たい目を向けながら一刀両断。楯無は泣く泣く仕事に戻った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「山田先生。何か分かったか?」

 

そこはIS学園の地下。教師の中でも限られたものしか入れず、生徒で入れるのは学園最強の称号である生徒会長くらいなものという厳重な場所だった。そこではIS学園に乱入してきた三体のISを解析していた。

 

「いえ、残念ながら残されていたゴーレムのISコアは破損が大きく、残りの二体は部品すら残っていない状態でした」

 

真耶がコンソールを弄りながら調査の結果を報告する。

 

「部品すら?四人の攻撃はそこまでだったのか?」

「いえ……」

「コードATA。Wシリーズが搭乗機に深刻なダメージを受けた際、機密保持のために発動させる自己消滅の特殊コードだ。これを使われると痕跡ひとつ残さない」

「誰だ!」

 

第三者の声に振り返るとそこに居たのは緑がかった銀色の長髪の美女。千冬に真耶が警戒するが美女は小脇に抱えていた封筒を千冬に差出し。

 

「私はラミア・ラヴレス。国際IS委員会の情報部に所属している者だ。今回の謎のIS襲撃について調査を任されここに来た。ここに書類もある確認してほしい」

「……確かに」

 

ラミアから受け取った書類に目を通した千冬が真耶を見て頷く。

 

「だが、今回の件はまだ報告していない筈だが?」

「情報部を甘く見ないほうが良い。必要ならば貴方が隠しておきたい情報も公開できる用意がある」

 

ラミアの言葉に千冬の目が細まる。しかしその空気を破ったのもラミアだった。

 

「すまない。余計な事を言って警戒させてしまったな。だが情報部の件は本当だ。今のところは貴方に任せているが…」

「分かった。こちらもそちらに信用されるよう努めよう」

「助かる」

「それで?どうしてそのコードが使われていると?」

「似ているからだ」

「似ている?」

 

千冬の問いにラミアが記録端末を真耶に差し出す。それを受け取った真耶が千冬に確認してから再生するとどこかの研究施設が映し出され、そこではゲシュペンストによく似た黒いISとライムグリーンのカラーリングに頭部のセンサーがゴーグル型をしている全身装甲のISと戦闘をしていた。

 

「これは?」

「我々、情報部が数日前にとある研究施設へ踏み込んだ時に敵対したISだ。このライムグリーンのISは量産型アシュセイヴァー。亡国機業の主力IS…いや疑似ISというべきか」

「疑似IS!?」

「詳しくは調査中なので言えん。だが問題はこの後だ」

 

ラミアの言葉に真耶が驚くがラミアに促されモニターを見ると行動不能にされたアシュセイヴァーが爆発。そして煙が晴れるとそこには何も残っていなかった。

 

「これは?」

「これがコードATAだ。威力は見ての通り。今回の件にもこれが使われている可能性がある。私がここに来たのは亡国機業とこのISの開発者とのつながりを調べるためだ」

「……分かった。こちらで判明したことはそちらにも知らせよう」

「そうしてもらえると助かる」

「あと、織斑先生。こちらも見て頂けますか?」

 

椅子をずらし、モニターの一部分を指す真耶。それを千冬とラミアが目を通す。モニターに映っているのはゴーレムの中核・・・・・・ISコアとは別のブラックボックスに刻まれた文字。

 

「・・・・・・“蒼き魔神が望む世界を我らは望む”・・・・・か」

「どういう意味でしょうか?」

「さあな・・・・・・今はまだ分からん。今はな。山田先生。このデータをコピーしてハウ社長に送ってくれ。ラヴレス。これはそちらにも回そう」

「え!?いいんですか!?そんなことをして」

 

驚く真耶に頷く千冬。

 

「構わんさ。ハウ社長ならな。この事は学園長も了承している事だ」

「わかりました」

「なるほど。こちらでもこの件に関して調査しよう」

 

コピーされたデータの端末を受け取ったラミアも確認を終えるとそういった。

 

「助かる。ラヴレス」

「ラミアで構わない」

「そうか。なら私の事も千冬で構わん。ラミア」

「分かった。千冬」

「私の事も真耶で構いませんよ!ラミアさん」

「分かった。真耶もよろしく頼む」

「はい!」

 

千冬は軽くため息をつきながら天井を見上げる。

 

「(この一件、やはりアイツが絡んでいるのか?でなければ“蒼き魔神”の説明ができん・・・・・・)」

 

千冬は静かに嘆息し、そして秋と一夏のこれからを考えると頭を痛めるのだった。

 

 




ラミアさんの言葉使いはこんな感じですかね?おかしな敬語も難しいですが。

さて次は日常編になると思います。

いつも読んで下さる皆さん、本当にありがとうございます!これからもがんばりますのでよろしくお願いします!!

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