モッピーようやく出番らしい出番が…
そんな訳で二十話をどうぞ!
先日の学年個人別トーナメントがタッグトーナメントに変更になったという知らせがされてから俺は再び入学初日のような目に合うようになった。
「お願い!秋君、私と組んで!!」
「何を言ってるのよ!秋君は私と組むの!!」
教室内ではもちろんのこと廊下が学食でもこういった申し込みが多数。正直断るのも面倒になってきたが丁寧に断る。どうも一学年の大半が俺と組もうと迫ってきているらしい。コレが一人や二人なら少し嬉しいとか思うのだろうが、生憎、廊下いっぱいに広がった状態で地響きが聞こえるような状態で追い掛け回されれば恐怖のほうが先に来るってもんだ。
「(こんなことなら一夏みたいに直ぐ決めればよかった!)」
そう一夏は既にパートナーを組んでいた。相手は箒。決めた理由は箒以外に背中を任せられる奴はいないと惚気られた。かなりイラッとしたがまあいい。そこは我慢だ。なら俺は鈴と組めばいいじゃないかと言われたが俺は首を横に振った。何故なら俺は鈴と戦いたかったからだ。あの対抗戦では乱入騒ぎがあった為、決着をつけられなかったからな。
「(そしたら鈴の奴、既にセシリアと組んでたんだよな)」
鈴やセシリアも同じ事を考えていたらしく、宣戦布告された。ただ、俺の誤算は鈴だけでなくラウラもリベンジしたいとかでアリスと組んでいたことだ。布仏は簪と組むって言ってたし・・・・・・。あと俺が知っていて組んでくれそうな人は・・・・・・。
「ねぇ?何で僕に組んでくれって言わないのかな?」
考え事をしていた俺をジト目で見るのはシャルロット。もちろん、最初は考えた。だが俺は出来る事ならシャルロットとは組みたくなかった。何故なら。
「ちなみに優勝したら?」
「もちろん。秋と同室を望むよ?」
そう笑顔で言われた。
「(だから嫌なんだよ!)」
そう、何故かこのトーナメント一年の部のみ優勝者には副賞として俺か一夏どちらかと相部屋になることが出来る権利か学食無料パスのどちらかを選べるのだそうだ。そのせいで一夏や俺と同室になりたい女子たちから相方になれと言われたり、あの手、この手で提出書類にサインさせられそうになったりとした上、そうはさせるかとそれを阻止すべく動いている女子たちによる戦いが陰で起こっているとは黛先輩からの情報だった。それを聞いたとき。
「(あの時の噂ってコレだったのか!!)」
何時かの学食での布仏が俺たちに確認しようとした時の出来事を思い出し、俺は後悔した。もちろん、真相を知った俺は姉貴に文句を言いに行った。そしたら……
「優勝しろ。死んでも優勝しろ。それ以外は許さん。もし優勝できなければ……」
目から光が無くなった姉貴にそう言われた。また山田先生によればどうもこれには生徒会長が絡んでいるらしく今度は生徒会室へと直談判しに行ったら。
「ちょっと待ってて。今お仕置き中だから」
「んー!んんーーー!!」
ロープで縛られた上に猿轡をかまされ床に転がされている生徒会長とレンズが光っていて目が見えない更識が居たのでドアを閉めた。その後。
『あれほどイベントを独断で動かすなって言ったでしょ!』
『人を景品にするなんてもってのほか!』
『……だから、生徒会長権限をそんなことに使うな!!』
等の声が聞こえ、先輩のくぐもった悲鳴も聞こえてきたので俺は会長には何も言うまいと決めた。代わりに今度、更識には何か奢らせてもらう。
「で?結局どうするの?」
「……悪いが部屋の移動は勘弁してください」
「ふぅ…いいよ。僕だって無理強いはしたくないし…ラウラと一緒に過ごすのも楽しいしね」
「じゃあ、なんであんなこと言ったんだよ?」
「う~ん……面白そうだから?」
「おい」
「冗談だよ。その代わり、優勝したら臨海学校の買い物に付き合ってね?それと!いい加減シャルって呼んで!秋だけだよ?僕をそう呼ばないのは…」
「まあそのくらいなら?」
「ふふふ。約束だよ」
こうしてシャルロット、いやシャルとコンビを組むことになった俺はいろんな意味で負けられない戦いに臨むことになった。
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「・・・・・・・・・・・・」
箒は一振りの刀の前で静かに瞑想をしていた。その刀は剣を教えてくれた父のものではなく姉に連れられていった先で出会った男性から託された物だった。
「師匠・・・・・・」
静かに目を開き、刀の柄を握り、鞘からゆっくりと抜刀する。その男性が教えてくれたのは剣に対する心構え。しかし箒にとってその男性との出会いは消して忘れることが出来ないものだった。ISが発表され騎士事件が起こった当時の自分は姉に対していい感情は持っていなかった。姉がISなんてものを発表しなければ自分は家族と一夏や秋と別れなくてすんだ。それだけでなく姿を眩ましていた筈の姉はいきなり現れて、政府の人間たちの前で自分を連れて飛び出した。その時も自分勝手な姉に対して憎悪しか感じなかった。結局、中学に上がるまでの二年間連れ回されたのだが、その間も姉に対する憎悪は増していくばかりだった。そんなときだった。その男性と出会ったのは。
「師匠。私は・・・・・・ようやく答えが見つかりそうです」
最初は一夏とのつながりを失いたくなくて続けていた剣道。しかし、段々と自分の中に眠る憎悪のはけ口として竹刀を振るっていた。嫌で仕方がなかったが姉にお願いし名を変え、姿を変えては全国の剣道の試合に参加させてもらい試合で相手を一方的に倒していく。それが自分の中で暴力を振るってしまった嫌悪と相手がひれ伏す姿に快感を覚える感情が渦巻き、試合が終われば反省するもまた同じことを繰り返してしまうそんな日々。それを突然、現れた男性に言われたのだった。
『お前はその剣に何を込めている?お前の太刀は何の為にある?』
そういわれた時、箒はこう返した。
『・・・・・・強く在る為、強くなりたいから、剣を振るう。それがいけないことですか?』
今、思えばなんと浅はかだったか・・・・・・。当時を思い出し箒は苦笑する。その後、男性は黙って二つの木刀を取り出し一振りを箒へ手渡し残りを構える。
『ならば俺に打ち込んで来い!お前の剣を俺に見せてみろ!』
そう言われた箒は男性をいい的だと思い打ち込もうとするが・・・・・・一歩も動けなかった。男性から発せられる気に足がすくみ動けなくなっていた。男性の姿が何倍にも大きく見える。結局、箒は一歩も動くこともできず男性の気迫に飲まれて気絶した。目が覚めた時、男性は箒の傍におり目が覚めた箒を見て安心したように笑みを浮かべそして話し出した。
『強さと力は別のものだ。お前が何のために剣を取るのか・・・・・・それが分からなければ、手に入れた力は自分と周りを傷つけるだけだ。剣は己の心を写す鏡・・・・・・お前の剣にあるのは憎悪という名の闇しか見えん』
男性はそう話す。
『お前には剣の才能がある。お前が真の意味で剣の道を目指すのならば俺の時間が許す限りお前の相手を務めよう。これもまた何かの縁だろうからな』
微笑を浮かべながら大きな手で頭をなでる。そこに今は合えない父の面影を見た箒は頭を下げた。自身が剣を振るう理由をもう一度確かめる為、そしてこの人の太刀筋に自分が目指すべき道が見えたから。箒と男性は師弟となり修行を共にした。師匠の剣は示現流の剣で自然とその型を真似る様になっていた。そして色々教わるようになってまず変わったのは視野を広く持てるようになり、ゆとりが心に生まれた。師匠と剣を合わせる度に自分に足りないものが分かり、それを埋めるように努力した。自分が一歩ずつではあるがしっかりと前を向いて歩けているのが実感できた箒の心には闇が晴れ、しっかりと光が差し込んでいた。約一年半の間、師匠との修行はとても楽しかった。けど別れは突然だった。
『すまんな。箒。俺はそろそろ行かなければならん』
『ど、どうしてですか!!師匠!?』
『友が・・・俺を信じて待っている友の下へと俺は行かなくてはならん。そんな顔をするな。箒。この一年半でお前は見違えるようになった。もうお前に“憎しみの剣”はいらないだろう。後は自分の信じる剣を見つけろ』
『・・・・・・はい!』
『いい顔になったな。これは餞別だ。我が師から譲り受けた刀だ。これからはお前が持て』
差し出された刀に箒は驚き、師匠を見る。
『もらえません!師匠の大切なものを!!』
『ならば、いつかお前だけの剣を見つけたとき、俺に答えを持ってその刀を返しに来い!それまで預けておく』
『はい!必ずやお返しいたします』
『うむ!』
師匠と別れてからは剣を持つ理由を考えながら剣を振るっていた。その中で気がついた。心のどこかで姉を避けていた箒はしっかりと姉と向きあってみようと。そう思うようになって気が付いたのは毎晩、あの姉が悪夢にうなされ眠れていないという事。本人に問いただしても笑うだけで心配するなと言われるだけ。ならばせめて妹である自分は姉の味方でいてやろうと思うようになっていた。だから自分にISの適正があると分かった時、姉に頼み込んだ。
ISの勉強をさせてほしいと・・・姉をもっと知ってみたくなったから。
そして中学に上がる頃、やらないといけない事があるという姉と別れ、大切な人たちとの絆でもある剣道を続けながらIS学園に入学するために頑張り続けた。姉も色々教えてくれたこともありISについても理解は出来ているつもりだ。適性は低かったが最近は零式と共に日々猛進したせいか上がってきていると思う。
「明日から始まるトーナメント・・・・・・零式は使うことが許されなかった。だが、一夏の足手まといにはならん。私の強さは、我が剣は・・・・・・」
愛しき人達を守るためにある!
チンッと刀を鞘に収め、台に戻すと一礼し箒は部屋を後にした。
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ついに始まったタッグトーナメント。その来場者は予想を遙かに上回り、先ほどまで俺達を含めた生徒たちは誘導や会場の整理に追われていた。
「しかし、凄い数だな・・・・・・」
着替えを行っている一夏の呟きに俺は更衣室に付けられているモニターを見る。そこには観客席の様子が映っていた。そこには各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々の顔ぶれが一堂に会していた。
「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ来ているらしいからな。まあ俺には関係ない」
「そうだな。おい秋、今回は、お前に勝つからな!覚悟して置けよ!」
「悪いな。一夏。今回も俺が勝つさ」
互いにニヤリと笑みを浮かべる。そして軽く互いの拳をぶつけあうと俺は先に更衣室を後にした。更衣室を出て、試合前に調整を行おうとピットに行くために廊下を歩いていると専用のISスーツを着ているシャルが俺を見つけ、手を振りながら駆け寄ってくる。
「秋、対戦表を見た?」
「いや?まだ見てないけど・・・・・・まさか一回戦であいつらの誰かと当たるのか?」
「ううん。みんな、最初はバラバラだったよ」
「そうか・・・・・・」
「残念だった?」
クスクス笑うシャルに頭をかきながら俺は続ける。
「そう言うわけじゃないけどな・・・・・・ま、いいか。それじゃあシャル。よろしくな」
「うん!任せて!!」
シャルと一緒にピットへと向かう。後は自分のパートナーを信じて進むだけだ。
結果からいうと俺たち専用機組みは無事に全員一回戦を突破した。俺たちの相手は三組の人たちだったのだが、試合開始直後に俺がアヴァランチクレイモアを展開し、広範囲にばら撒く。反応が遅れた一名は全身にベアリング弾が直撃し撃破。ベアリング弾をかろうじて避けたもう一名はシャルの狙撃によって打ち落とされ、そこに距離を詰めた俺によるプラズマホーンの一撃で終わった。こっちの被害はゼロ。ただ、終わった後、相手の女の子たちが怯えた目で見てくるのには泣いた。
「さて、二回戦は・・・・・・」
一回戦を振り返り若干凹みつつもモニターに表示されているトーナメント表を確認する。
「僕たちの相手は簪と本音だね・・・・・・」
「二人とも特機を使用するからな。あの攻撃力に防御力は強敵だな」
「一回戦の映像だと簪はブーストナックルとマキシブラスター、本音は接近してからの連打で終わらせてるね」
シャルが空間投影ディスプレイを弄りながら呟く。一回戦の映像を再生してもらっているが正直参考にならない。何故なら更識はまだ全力をだしていない。そして布仏もまた模擬戦ですら本気を見せていないのだから。
「どっちにしてもやることは変わらない。勝つだけだ」
「もちろん」
で、他の奴らは?トーナメント表を見てみると一夏と箒はラウラとアリスとの対戦。鈴とセシリアは俺たちのクラスの連中が相手のようだ。しかし、よく見れば鈴たちとは決勝までは当たらず、一夏たちのほうは勝った方が次で俺たちの試合で勝った方と当たることになる。
ちょっと不公平だ。
まあ、騒いでも仕方がないので先に行われる一夏と箒の戦いでも観戦させてもらうとしよう。
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「箒、準備はいいか?」
白式を纏った俺はパートナーである箒を見る。
「ああ。問題は無い」
今回、マオ社から借りているグルンガスト零式は専用機ではないという理由から学園側から使用許可が下りなかった。その為、純国産の量産型ISである打鉄を纏った箒だったが試合前の瞑想を終え閉じていた目を開く。それだけで箒の気配が変わった。その気配は武士。それも発せられる気は日本刀のように鋭い。それなのに傍に立つ俺には物凄く心地いいものだった。
「それより・・・・・・本当に零式斬艦刀を持っていくのか?」
「当たり前だ。零式は諦めるがコイツは私の魂だ。こいつだけは使わせてもらう」
俺の目線の先にあるものを見て箒が微笑む。
「・・・・・・というか何処にあったんだ?そんなもの?」
「試作機の貸し出しの時に見学していたらハウ社長から私に見せたい武器があると言われて見せてもらったんだが・・・・・・一目見たときから心奪われた」
斬艦刀を見る箒の目はまるで恋する乙女のようで・・・・・・ちょっとだけ斬艦刀に嫉妬してしまった自分が情けない。
「わかった。だけど相手は、ラウラとアリスだ」
「無論、油断などしない。行くぞ。一夏!」
「ああ。箒!見せてやろうぜ。俺たちが揃えば敵がいないって事を!!」
互いに頷き、ピットゲートから飛び出すと、目の前には既に全身装甲へと切り替えていたアリスのゲシュペンスト・ファントムと、同じようにゲシュペンストというよりは孤狼の面影がある全身装甲となったラウラのシュヴァルツェア・レイブンが降り立っていた。俺たちも二人に合わせるように地面へと降りる。
「なんというか、やっぱり箒ちゃんが持っているだけで孤狼と対峙する時よりも威圧感があるよね。ソレ」
「幾度かの模擬戦で見たとはいえ、簡単に勝てるとは思えんな。故に全力で挑ませてもらう!」
二人の視線が見ているのは箒が持っている斬艦刀だった。その刀はISの近接ブレードの約三倍の長さを持ち、刃の厚みは五倍。峰や柄尻、鍔の部分に小型のスラスターが付いた一見すると出刃包丁に見えるものだった。二人も模擬戦でなんども見てはいるが今回の箒はいつもと纏っている空気が違う。そのせいか斬艦刀に存在感が増しているのだろう。
「うん。グルンガスト零式の零式斬艦刀。その一太刀は名前の通り戦艦すら切りさくという業物。なんか箒ちゃんに渡しちゃいけない物を渡しちゃった気分だね」
アリスの解説に俺は思わず頷いていた。
「今回は残念ながら零式を使うことは出来なかったがこの零式斬艦刀を使う以上、負けるわけにはいかない!」
箒はそう言いながら零式斬艦刀を片手で二、三回振るうと示現流で有名な蜻蛉の構えを取る。その構えから一撃で決めるつもりなんだろう。
「さて、一夏君!箒ちゃん!手合わせ願います!」
「「おう」」
そんな中、試合開始のアラームが鳴り響いた。
「行くぜ!」
大型ウイングスラスターを吹かし、俺が向かうのはエネルギー大型ブレードである“グラン・プラズマカッター”を抜いたアリス。秋にISを教えていたという事から一回戦ってみたかった相手だ。箒にムリをいって一対一にさせてもらった・・・・・・のだが。
「性能なら白式のほうが上だけどね!私のファントムをスペックだけで判断すると大ケガするよ!!」
《行くぜ!サマーボーイ!》
「油断なんかできる訳ないだろうが!」
振り下ろされた一撃を雪片弐型で受け流し、自身を回転させながら雪片を振るう。しかしアリスはスラスターを吹かし急上昇しかわすとナイトファウルと呼ばれていた銃を呼び出し撃ってくる。
「さ、見せてもらうよ!今までの特訓でどれだけ強くなったのかを!」
「秋からアリスの強さは聞いてるからな!胸を借りるつもりで挑ませてもらうぜ!でも俺が勝つけどな!!」
「うん!私がISの戦い方をその身に刻んであげるよ!」
全身装甲な為、顔は見えないがアリスはきっと笑っている。銃撃をかわしながら接近し振るうもまるで太刀筋が読まれているかのように回避するアリスに俺はウイングスラスターを吹かしながら必死に喰らいつく。本当にスペック以上の性能だ。アレで第二世代型なんて信じられるか?
「こっちだって負けるか!」
「甘いよ!」
何度目かの雪片とグラン・プラズマカッターがぶつかり合い火花を散らす。白き騎士と幻影の戦いは始まったばかり・・・・・・。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
上空でアリスと一夏が戦闘を繰り広げたのに対し、地上では箒が構えたままラウラとのにらみ合いが続いていた。
「(たかが打鉄・・・・・・だが、相手はあの箒だ。迂闊に動けば斬られるな)」
ラウラは冷や汗を流していた。箒とは打鉄や零式での模擬戦を何度かしたことがあった。最初は黒星を重ねていた箒だったが動きが徐々に良くなり最近では距離を離していたにも関わらず箒の踏み込みの鋭さから肝を冷やす事が何度もあった。特に零式を扱うようになってからはラウラが負けることも増えてきた。そして今、箒は完全に待ちの体勢を取っている。だが、少しでも下手な動きをすれば一瞬のうちに斬られる自分の姿が見えてしまっていた。それだけの気迫が今の箒からは感じられた。
「来ないのか?ラウラ?」
「行けば斬られるだろ?」
「ふふ。さあな?」
軽い舌戦。それでも互いに隙を伺い続けている。だが、それも長くは続かなかった。
「!!」
先に動いたのは箒。瞬時加速で一気に近づき、零式斬艦刀を振るう。その一撃は見事だった。
「(早い!?)」
その踏込から打鉄とは思えない速度で迫り、振り下ろされる斬艦刀にラウラは紙一重でかわす。しかし、かわせたと思っていた斬艦刀は左肩に装備されているヘヴィ・レールカノンをまるでバターのように両断した。その結果に自身の読みが甘かったことをラウラは痛感する。
「だが、振り切ってしまえば簡単には動けまい!!それならばただの的だ!」
斬艦刀は地面へとその刀身の半分を埋めている。故に直ぐにそれを引き抜き、自分へと攻撃することは出来ないと判断したラウラは両肩のツインソリッドカノンを起こし、箒へと向かって攻撃する。
「っ!」
「ファイア!」
放たれる弾丸。しかし、箒はその表情とは違い慌てずに峰と刀身のスラスターを噴射し、埋まっていた刀身を地面から引き抜くとその腹でツインソリッドカノンを受け止め防ぐ。さらに箒はまるで野球のバッターのように斬艦刀を振りかぶると・・・・・・。
「斬艦刀・・・・・・」
次に起こるであろう出来事にラウラはまさか…と顔を青ざめる。
「大車輪!!」
斬艦刀を思いっきりブン投げた。轟音を立てながら迫ってくる斬艦刀。さすがのラウラもその鉄塊を受け止めるのには勇気が必要だし、AICで止めようにも、驚愕と迫る恐怖に気持ちが乱れて初動に必要な集中ができない。流石の高性能AIが付いているとはいえ、そこはまだ解決できていない弱点でもあった。だからラウラが取った行動は一つ。
「仕方あるまい・・・・・・!」
シュヴァルツェア・レイブンに搭載されているアームドユニットは元々強襲用として作られた追加装備でテスラドライブやプラズマジェネレーターなどを搭載しそのスラスター出力は孤狼にも引けを取らない。そのスラスターで一気に上昇。斬艦刀を交わすと右背後ラックの集束荷電粒子砲を起動させると箒に向け構える。
「これで!」
トリガーを引くと赤黒い閃光が箒に向かって放たれる。しかし、箒も交わされることは想定済みだったのか、脚部スラスターを使いながら地面を駆けるとブーメランのように戻ってきた斬艦刀を掴む。そして柄尻や刀身のブースターを使いそのまま駆け抜けながら姿勢を変え、上空にいるラウラを追って一気に上昇。次々と放たれる閃光を直撃スレスレで回避しながらラウラへと迫り、下段で構えていた斬艦刀を振り抜いた。
「貰った!」
「チィ!?」
下から降りぬかれた斬艦刀に集束荷電粒子砲が斬られる。だが、ラウラとてやられっぱなしではいない。集束荷電粒子砲はパージし腕部、脚部に内蔵されているワイヤークローを射出し、巧みな操作で箒を追い詰めていく。
「くっ!?このワイヤーブレード・・・・・・斬艦刀では捌ききれない?!」
刀身を使って器用に防いではいるが、ラウラのワイヤーブレードは搭載されているAI“ヴォルフ”のサポートもあり、ドンドン鋭さを増し、斬艦刀の大きさ故に被弾が目に見え始めていた。
「(マズイ・・・・・・シールドエネルギーが残り少なくなった。ブーストエネルギーも後、一回が限度・・・・・・)」
箒の額に汗が滲んでくる。
「量産型のISでよく其処まで粘れるな!」
ラウラは両腕に内蔵されているロシュセイバーを展開し、ワイヤーブレードと組み合わせながら接近戦を挑んでくる。対し雄たけびを上げ、斬艦刀を巧みに振り回しで攻勢にでる箒。
二人の決着の時は近づいていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
雪片とグラン・プラズマカッターが何合も打ち合い続ける。
「大分、白式の扱いに慣れてきたみたいだね?」
「お陰でね!というか・・・・・・余裕ありすぎじゃないか!?」
クスクスと笑みを浮かべているであろうアリスにつっこむ。こっちはかなり疲労困憊だっていうのに・・・・・・。
「私としてももう少し付き合って上げたかったけど・・・・・・」
はい?
「ギアを上げるよ!」
そういった瞬間、アリスの姿が消える。いや、消えたように見えるほどの高スピードで動いている。
「ほら!ほら!」
投擲された二本のビーム刃を持つ鎌<プラズマ・サイズ>が迫る。
「くそ!」
威力はあるが自身のシールドエネルギーを使ってしまうために出来る限り使わないようにと思っていた零落白夜を発動。雪片弐型が展開し現れた光刃で投擲されたプラズマ・サイズを斬り捨て、アリスへと瞬時加速。上段の構えのままアリスへと接近。
「はぁぁぁぁっ!!」
「残念。動きが単調すぎて丸分かり!!」
振り下ろした雪片弐型ではなく腕をアリスに掴まれる。
「フェイントもない瞬時加速を見切るのは簡単なんだよ?そしてその零落百夜の弱点も調べれば分かる。何せ有名だからね」
そうアリスが教えてくれる。そんな中、ファントムの胸部装甲が両サイドにスライドし中に隠されていた砲口が姿を現す。
「(ヤバイ!?)」
「この距離、外さない!ニュートロン・ブラスター!」
白式のハイパーセンサーに警告音が鳴り響くが両腕をがっしりと掴まれて振り払えない以上、一夏はアリスのわき腹へと蹴りを叩き込む。
「放せ・・・よ!」
「グッ・・・・・・!私の勝ち!」
蹴りによってアリスの腕は離れたがそれよりも早く放たれたニュートロン・ブラスターが一夏を飲み込む。
「うわああああああああああっっっっ!?!?」
《ショウダウン!俺たちの勝ちだ》
ハーケンの勝利宣言にバイザー内で息を吐くアリス。だが、そこへ予期もしない声が聞こえた。
「残念だったな。今回はチーム戦なんだ!」
「え?」
《アリス!サムライガールだ!》
ハーケンの声にアリスが気づいた時には斬艦刀を振り上げた箒が目前まで迫ってきており・・・・・・。
「チェストーーーーーーーーーー!!!!」
箒の斬艦刀がアリスのファントムを切り裂く。そしてそれにより絶対防御が働き、アリスのシールドエネルギーはゼロになった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
時間は遡り、ラウラと対峙していた箒は一か八かの賭けに出ていた。
「(この状況を打破するために・・・・・・師匠の技を使う!)」
斬艦刀を蜻蛉の構えで構えた箒。
「行くぞ!ラウラ!!」
それは宣言。次の一撃で決めるという宣言だった。
「来い!」
対し、ラウラは両腕のロシュセイバーを構える。
「斬艦刀・・・・・・」
箒の手が斬艦刀を強く握り締め、一気に踏み込む。その一歩は瞬時加速ではなく瞬歩。
「悪いが勝たせてもらう!」
ラウラが突撃。
「牙壊!」
ドンッ!という音と共に箒が瞬歩からの瞬時加速。さらにそこへ斬艦刀の全スラスターを使った加速でラウラとの距離を詰める。ラウラがロシュセイバーを振り抜く刹那に箒が斬艦刀で切り裂き、絶対防御を起こし決着が付いた。
その後、上空で一夏が敗れたのを見た箒が、打鉄の全エネルギーを使い瞬時加速。アリスへと渾身の一撃を叩き込み決着のブザーが鳴り響いた。なお、打鉄の残りシールドエネルギーは五だったという。正にギリギリの勝利だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「凄い試合だったな」
「うん・・・・・・箒が量産機で専用機に勝っちゃった」
今の試合をモニターで見ていた俺たちはこの結果に唖然としていた。いや、箒が強いのは知っていたけどまさか量産機で勝つとまでは思わなかった。きっとこの結果に驚いているのは俺たちだけじゃないだろう。というより他の生徒はやる気に満ちてるだろうな。ハンデのおかげもあるかもしれないが量産機でも勝つチャンスがあるのだから。
「箒の持つ零式斬艦刀・・・・・・あれの一撃はきっと孤狼の装甲でも絶対防御を起こさせる代物だね」
「ああ。まともに喰らえば負ける」
「僕のヴァイスリッターじゃ一瞬で終わっちゃうよ・・・・・・」
項垂れるシャルの頭に手を乗せ。
「おい、優勝目指そうって言ったんだ。弱気になんな」
「そうだね。まずは本音と簪に勝つことを考えよう」
「そういうこった」
頷くシャル。俺はシャルの頭を少し乱暴になでてから手を退かす。
「秋!何すんの!」
「緊張がほぐれただろ?」
「もう!」
そういいながら髪を直すシャルを無視し俺は壁に寄りかかると腕を組み、目を瞑る。
俺たちも負けていられないな。
前回でも書いていますが今回のタッグ戦、専用機組のタッグはハンデとしてシールドエネルギーが半分になっています。こうでもしないと量産型に勝ち目がないと思ったので。
モッピーに斬艦刀は絶対に似合うと思うんだ。中の人つながりだとセシリアさんですが…
ではまた次回、お会いしましょう!ご意見、ご感想お待ちしています!!