IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

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今回はちょっと難産でした。

理由はあとがきで。

では二十二話をどうぞ。


STAGE22

O.O.ランチャーを構えたMとリボルビングステークを構えたSの戦いが始まった。

 

「前に戦った時はどっちの勝ちだったか、覚えているか、S」

 

O.O.ランチャーから撃ちだされる実弾を脚部スラスターとホバーを駆使して回避するSのゲシュテルベン・改。

 

「確かお前がサイレント・ゼフィルスを手に入れた時だったか…勝ったのは俺だろ?」

「ああ、そうだ!だからこそ、このヴァイスセイヴァーでお前を倒す!」

「こっちはいい迷惑だ!」

「つれないことを!同じ存在だろうに!!」

 

ヴァイスセイヴァーの胸部から発射される多弾頭ミサイル“ファイア・ダガー”が放たれ、Sに向かうがゲシュテルベン・改の左腕に装備されている三連マシンキャノンで撃ち落とす。

 

「それは否定しない。だがな!」

 

ゲシュテルベン・改の両肩に装備されているマイクロミサイルコンテナ『スクエア・クラスター』を展開し発射する。大量の面を制圧する小型のミサイルがMを襲う。

 

「ふん。だが、なんだ?所詮お前はオリジナルのコピーにすぎん!だからお前は“出来損ない”なんだ」

 

O.O.ランチャーの折りたたまれていたバレルを展開し高出力ビームでミサイル群を薙ぎ払う。爆炎の中から飛び出してきたゲシュテルベン・改が拳を振るう。

 

「ふん。怒り…か。単純さもオリジナル譲りだな?」

 

Sの拳を受け止めたM。

 

「テメェ…ぶっ殺すぞ!」

 

Sの怒号にMはフルフェイスの奥でニヤリと笑う。

 

「そうだ!お前も私と同じだ!だからこそお前のオリジナルたる織斑秋を狙っているのだろう!」

 

右手に取り出したレーザー・ブレードで斬りかかるMにSはメガ・プラズマカッターを抜き、迎え撃つ。

 

「そういうお前は織斑一夏をいや、お前のオリジナルである織斑千冬を狙っているのだろう!」

「ああ、そうだ!私はアイツを、アイツらを殺す為に存在している!私という存在を“無かったもの”としているあの二人をな!!」

 

Sの問いにMから殺意が漏れる。互いに切り結びあいながら高速戦闘を続ける。

 

「だからと言ってやられてやるわけにはいかねぇな!」

 

SはMを蹴り飛ばしてから右腕のステークをセット、背後に装備している高機動ブースターが展開し加速。右腕を引く。

 

「威力は保証してやる!」

「喰らうか!ソリッド・ソードブレイカー!」

 

ヴァイスセイヴァーの背部ユニットから八つの閉じた鋏の様な形状をした攻撃ユニットが切り離され射出。攻撃ユニットが展開しレーザーを撃ち出す。接近していたゲシュテルベン・改へ迫るがそれらを瞬時加速ですり抜ける。

 

しかし。

 

「何!?」

 

発射されたレーザーが曲がりゲシュテルベン・改を背後から襲った。

 

「これがBT兵器を扱うものの到達点、偏向射撃だ。味わえてよかったな?」

 

MはO.O.ランチャーを動きが止まったゲシュテルベン・改に向け撃ち続ける。弾丸が当たり装甲が破壊されていくゲシュテルベン・改。

 

「……ならお前も味わって行け」

 

Sの呟き。

 

「なに?」

「ステークの味をな!」

 

破壊された高機動ブースターを切り離すとその下に装備されていた本来のブースターが姿を見せた。そしてゲシュテルベン・改のツイン・アイに光が灯る。

 

「ブースト!」

 

瞬時加速で再びヴァイスセイヴァーへと襲い掛る。

 

「このくたばりぞこないが!」

 

Mの叫びに呼応したソリッド・ソードブレイカーがゲシュテルベン・改へ襲い掛る。しかし、次々とソードブレイカーが体に突き刺さっても止まらず、距離は詰められ、その右腕はヴァイスセイヴァ―の胸部に叩き込まれる。

 

「全弾、もってけ!!!」

「ぐうぅぅぅぅぅ!?!?」

 

絡み合うように地上へと落ちた二体のISは装甲が解除され二人の男女が地面に横たわる。

 

「…一つ聞いていいか?何故、お前は俺に仕掛けてきた?襲撃前だぞ?」

「…襲撃?何の話だ?」

「は?」

 

Mの返事にSは呆気に取られながらも尋ねた。

 

「お前もテスラ研の襲撃メンバーじゃないのか?」

「知らんな。私は何も聞いていない」

「マジかよ……」

 

そこでSは起き上がると頭を抱えた。

 

「おやおや?作った覚えのないISコアにイギリスから奪われた筈のISコアの反応があるから来てみれば……」

「「!!」」

 

そこに居たのは不思議の国のアリスの格好をした女性。

 

「まさか、君たちだったとはねぇ?これも運命だと束さんは思うんだけど、君たちはどう思うのかな?」

「篠ノ之束……!!」

 

Mは腰の裏にあるホルスターからハンドガンを抜き取ると束に向けて発砲する。しかし、弾丸は束の前で不可視の何かに遮られ地面へと落ちる。

 

「くっ…」

 

苦虫をかみつぶしたようなMに束は笑みを深めるとMへと手をかざし。

 

「オイタがすぎるんじゃないかな?玩具風情が」

 

冷たく睨み吐き捨てるように言うと突如、Mの体にかかる重い負荷。地面へへばりついたMに束は近づき、待機状態のヴァイスセイヴァーを取る。

 

「か、返せ……!」

「ダメージレベルBって所か…そっちの君もISを出して」

「…どうするつもりだ?」

「どうするって…修理するんだよ」

 

決まってるでしょ?そういう束にSは待機状態のゲシュテルベン・改を渡した。

 

「素直でいい子だね~…こっちはダメージレベルAか。うんうん、ついでだし束さんが修理ついでに改良してあげよう」

 

そういうと空間にディスプレイとキーボードを展開しヴァイスセイヴァーとゲシュテルベン・改をその場で修理し始める。

 

「何?」

「コレ、あの子が仕上げたんだよね?相変わらず細部の詰めが甘いね。これじゃ合格点は上げられないかな?」

「Wはアンタの弟子だろ?」

「う~ん…そうなのかな?覚えが良かったから助手にでもなるかな~くらいに思ってたんだけど…見込み違いだったかな?」

 

どうでもいいけど。

 

そう続ける束の顔は本当に興味がなさそうだった。

 

「そういうところは似てるよ。アンタとWは」

「そりゃそうでしょ?あの子はこの大天才、束さんの貴重な遺伝子から生まれたんだから!それなのにどうしてあんなスペックが低いのになっちゃったかなぁ~まったく束さんの極上の遺伝子の無駄遣いだよ」

 

そう言い切る束にSは舌打ちし、いまだに束が発している重力に押しつぶされそうになっているMに気が付き。

 

「いい加減、Mを開放してくれないか?死ぬぞ?ソイツ」

「あ、忘れてた」

 

そう言って再び手をかざすとMの体にかかっていた重力は解除される。しかし、Mは起き上がらずただ、束を睨むだけ。

 

「はい。君のは修理終わったよ」

 

そういってMに待機状態のヴァイスセイヴァーを投げる。

 

「君のはもう少し待っててね~。手に入れたはいいけど扱いに困ってたものを試してみるからさ」

 

束の言葉にSは嫌そうに顔をしかめ、内心で思いついたアイデアを人体実験で試すその態度もそっくりだと呟いた。

 

それから数分たらずで。

 

「これで完成♪」

 

キーボードのエンターキーを押し、黒い腕輪をSに放り投げる。

 

「じゃ、束さんはこれで行くから。まあ、君たちが何をしようが構わないけど…」

 

そこで言葉を切った束は二人をしっかりと見据え。

 

「君たちは君たちなんだからさ。人生楽しみなよ?こんなクソッタレの汚れた世界でもあんがい価値あるものが見つかるものさ」

 

そういうと空間に穴を開きそこへ入っていった。

 

「あれが“天災”か……」

「そして…俺たちの親でもある…か…最悪だな」

 

Mの呟きにSが嫌そうに言う。

 

「それには同意だ…」

 

Mは暗くなった夜空を見ながら呆れたように答えた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

タッグ・トーナメント 二日目。

 

俺たちの試合は第一試合の為、早めにアリーナに来ていた。

 

「前回の反省を生かして拡張領域いっぱいに武器を詰め込んできたよ」

 

俺は孤狼の設定を更識と一緒に弄っているとシャルがやってきてそういった。

 

「ん?詰め込んだって扱えないと意味ないんじゃ?」

「秋は知らない。大量の武器を持ったシャルの怖さを」

 

更識が遠い目でそう呟く。

 

「そういえば秋と模擬戦する時はヴァイスの基本武装しか使ってないからね」

「うん。ヴァイスの機動性とシャルが使う高等技術“砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)”は脅威」

「何それ?俺知らないよ?」

 

なんとなく俺ってハブられてない?

 

《マスターですから》

 

アルト?フォローになってないから。

 

《すいません》

 

いいよ。気にしてないから。

 

「ところで秋は簪と何してたの?」

「あ?ああ、スラスターの設定を弄ってた」

「出力が高くて足回りのスラスターバランスが狂ってる」

《調整は怠ってはいなかったのですが…》

「アルトは悪くない。悪いのは微調整をサボっていた秋のせい」

「返す言葉もございません」

「アルトは優秀。でも自分の力をしっかり発揮するには日々の調整が必要。それをしないパイロットは大成しない」

 

更識の言葉が痛い。でも怠っていたのは事実なので作業に集中する。

 

「背部スラスターより足回りの調整を優先する。一夏との戦いでは小回りが利かないと」

「一夏のウイングスラスターは非固定式。角度を自由に変えられる上に小回りも効く。さらに接近戦の技量も上がっているから油断できない」

「確かに、秋の一撃は強力だけどバンカーを撃ちこむ時は大振りになりやすいから一夏との戦闘は分が悪いよね」

 

更識とシャルの言うとおり、今回の勝負のカギは俺が一夏とどう戦うかだ。最初の頃とは互いに大きく違ってきている。

 

「今回はハンデもあるから尚更気を引き締めないと」

「ああ、一夏も箒も一筋縄ではいかない。でもやるしかない!」

 

気合を入れるシャルと互いに頷き、調整が終わった孤狼を受け取り展開する。

 

「試合まで少し時間あるから慣らしておくわ」

 

それから一時間。いよいよ俺たちの試合が始まる。

 

『皆様、お待たせしました。これより学年別タッグ・トーナメント・一年の部・二日目、第一試合を始めます』

 

放送が流れる中、俺は孤狼を纏い、シャルもヴァイスリッターを展開していた。きっと向こうのピットでも二人がISを纏っているだろう。

 

《マスター。既にシールドエネルギーは半分になっています》

 

アルトの言葉に表示されたデータは確かに半分にされている。

 

「僕の方も半分になっているよ。わかってはいたけど結構厳しいハンデだね」

「それならこっちがやられる前に撃ち抜くだけだ」

「秋ならそういうと思ったよ。僕も全力を出し切るよ」

「よし、行くか」

「うん!」

 

互いにピットの配置につく。

 

『織斑一夏、篠ノ之箒ペア』

 

ハイパーセンサーに拡大された映像には一夏の白式と肩に零式斬艦刀を担いだ箒の打鉄がアリーナに現れ中央付近で停止する。

 

『織斑秋、シャルロット・デュノアペア』

 

ピットから飛び出した俺たちは互いにアリーナの中央にて対峙する。すると一夏が声をかけてきた。

 

「秋、お前とは決勝で戦えなかったのは残念だけどな」

 

一夏が雪片を呼び出し軽く振るう。対し俺も。

 

「いつ戦ってもかわんねぇ。一夏。今回も俺が勝つ!」

 

バンカーを一夏に向けて言う。

 

「いや、今度は俺が勝つ」

 

一夏はそういうと雪片を正眼で構えた。一方で担いでいた零式斬艦刀をおろした箒はシャルロットと向き合う。

 

「シャルロット…お前とは零式と共に戦いたかったがわが魂と共にある限り専用機だろうと斬り捨てて見せる!」

「僕も全力の箒と戦いたかったけど…ヴァイスと零式は相性が悪いからね…それでも負けないよ?」

 

箒と相対するシャルロットは手元でオクスタンランチャーを回転させている。言葉とは裏腹にシャルロットも箒との戦いを楽しみにしていた。

 

互いの間で高まる緊張。そして……

 

『試合開始!』

 

合図と共に俺は両肩のクレイモアを発射する。最初の位置なら十分に二人とも射程範囲内に入っている。だからこその一手。しかし。

 

「読めていたぞ!」

 

箒が一夏の前に割り込み、持っていた零式斬艦刀を盾にする。それで全てを防げるわけではないが大きなダメージにはならない。

 

「自身の武器を盾にするか?普通?!」

「これしきで破壊できるわが魂ではない!」

 

箒の宣言通り無傷の零式斬艦刀。そして一度振り払い上段で構え突っ込んでくる。

 

「そこぉ!」

 

横合いから両手に大型のリボルバー『HGリボルバー』を構えたシャルが箒を撃つ。しかし箒はそんなシャルに見向きもせず俺に迫ってくる。ダメージを覚悟の上か?いや、今度は一夏が箒を守る様に撃ちだされた銃弾を斬り払いする。

 

「秋!覚悟ぉぉぉぉっっっ!!」

「あめぇ!」

 

振り下ろされる零式斬艦刀に合わせてバンカーを突出す。別にこれで破壊するのが目的ではない。刃さえそらせればそれでいい。バンカーの切っ先と零式斬艦刀の刃がぶつかる。しかし零式斬艦刀の刀身につけられているスラスターが点火し。

 

「落ちろぉぉぉぉぉ!!」

「ぐぅぅぅ!?」

 

結果、質量の塊に殴られるような衝撃と共に俺は地上へと叩き付けられた。そこへ追撃する箒。

 

「ッ!」

 

スラスターを使い転がる様にその場を離れ、空中へ。そこでは一夏とシャルが戦っていた。

 

「やっぱり、シャルは強いな!」

「お褒めに預かり恐悦至極ってね!」

 

一夏とシャルが切り結んでいたかと思えばいつの間にかシャルはアサルトマシンガンを構えての近接射撃戦。そして一夏が距離を取るといつの間にかプラズマカッターを手に近接戦を仕掛けていた。その攻防はシャルが完全に主導権を握っていた。

 

「あっちは任せるか……」

「なら私と戦ってもらおうか!」

 

背後から迫ってくる箒にクイックターンで反転。背部スラスターを全開にし加速。

 

「上等!」

 

五連チェーンガンを撃ちながら箒へと迫る。そんな俺に箒はなんとその場で逆噴射し、自身の速度を大きく削りつつ、俺の動きに合わせるように回し蹴りを放ってきた。対し俺はフレキシブルスラスターと背部スラスターを上向きに変えつつ急下降。ついでとばかりにプラズマホーンを起動させ、迫ってきていたその足を斬りつけた。そして位置は俺が下に、箒は上になる。

 

この位置は都合がよかったが箒もそれが分かっているのか。

 

「クレイモアは使わせん!」

 

刀身のスラスターと打鉄のスラスターを使い、向きを変えながらも箒は零式斬艦刀を俺に振るおうとしてくる。だが俺にはその箒の背後の光景が目に入っていた。背後ではオクスタンランチャーを構えているヴァイスリッターがいた。そしてオクスタンランチャーから撃ちだされたビームが箒へ当たる。

 

「くっ!?しまった!!」

「オマケだ!」

 

体制を崩した箒へクレイモアを発射。それを箒は両肩の盾を前面へ移動させ、耐えようとする。しかしクレイモアはその盾を抉っていく。打鉄は防御力に定評があるISでその盾も破壊される前に再生されるのだが大量のクレイモアに加え。

 

「自慢の盾で俺のバンカーを防ぎきれるか、勝負だ!!」

 

連続でバンカーを撃ちこむ。そして打鉄の盾は破壊される。壊れた衝撃で破片が飛び散る向こう側では箒が零式斬艦刀を水平に構えていた。

 

「盾とついでに私もくれてやる!ただしお前も道連れだ!!」

「秋!!」

「げっ…」

 

箒の目に宿る決意。あいつは俺と相打ちになる覚悟を決めていた。背中にシャルの攻撃を受けながらも箒はためらわず突っ込んできた。

 

「零式斬艦刀!疾風迅雷!!」

 

残りの全スラスターを使い、まさかの瞬時加速で迫る箒。バンカーは全弾使い切ってしまい、クレイモアも展開が間に合わない。そして回避も間に合わず箒の突撃を身に受けた。再び地面へと叩き付けられ、あたりに砂煙が巻き上がる。上空に居るシャルはその光景を呆然と見ていた。

 

「すまない。一夏…奴を仕留めきれなかった」

 

砂煙が晴れ、呟いたのは零式斬艦刀を地面に突き立て片膝をついた箒だった。

 

《まさに紙一重…でしたね》

「武器は使えなくなったけどな……」

 

そう、俺はとっさに両腕を交差させ零式斬艦刀を防いだ。おかげで絶対防御は起きず首の皮一枚つながった状態となった。代わりにリボルビングバンカーも五連チェーンガンも破壊されてしまい使い物にならない。だが、箒はシールドエネルギーがゼロになった。シャルの援護のおかげだろう。だが箒が零式に乗っていれば間違いなく俺が倒されていた。

 

「大丈夫!?」

 

シャルに頷きで返し、箒のそばを離れる。

 

「一夏は?」

「あそこ」

 

シャルの指差す先には壁に蜘蛛の巣のようなもので貼り付けにされている一夏の姿だった。

 

「特殊弾の一つ『スパイダーネット』を撃ちこんで動きを封じたんだ。それで秋の援護に行けたんだよ」

「そうか。おかげで助かった」

「そうだ。よかったらこれ使って」

 

そういってシャルが俺に手渡してきたのは……

 

「何?この鉄塊?」

「ブーストハンマー」

 

その名の通り鎖が付いたトゲ付き鉄球だった。

 

「ひとまず使わせてもらうわ」

 

差し出されたブーストハンマーを受け取った時だった。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

スパイダーネットを引きちぎった一夏が俺たちを睨む。その形相は鬼の如く。いつもの一夏とはかけ離れた表情だった。

 

「…一夏?」

「また、また奪うのか…お前は!!」

 

なんだ?何を言ってる?

 

「もう、奪わせるものかーーーーー!!」

 

その叫びと共に一夏の白式は光を放ち、その形状を変えていく。

 

「嘘……二次移行してる?」

 

シャルの呟きは俺の耳に入らなかった。何故なら……

 

「あ、頭が、痛い…な、なん、なんだよ……急に!?」

《マスター!気をしっかり!!》

 

突如、頭痛に襲われアルトの声も頭痛を激しくするだけ。そんな中、白式の変化は終わっていた。全身白い西洋甲冑の騎士姿。しかし純粋な人というよりもどこか鳥をイメージさせる外見を持っている。特徴的だった大型のウイングスラスターはX字に展開されており、碧色の粒子が噴出していた。そして一夏の頭部を覆うヘルム。このヘルムも鳥をイメージさせる。そして黒かったツイン・アイに光が灯り、逆巻く風の中から一振りの刀を抜き取り振るう。

 

「その姿……」

 

何処か見覚えがあるような、そんな既視感を感じながらも頭痛が激しくなる中、ブーストハンマーを構えようとした時だった。

 

《因子の活性化を確認。これよりシステム・ベーオフルフを再構築。システム起動します》

 

低い電子音声と共に俺の意識は何かに引きずられるような感覚と共に落ちて行った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

シャルと戦っていた俺はシャルのリズムに完全に自分のペースを取れなくなっていた。

 

「やりにくいな!おい!」

 

接近戦をしていたかと思えばいつの間にか、その手に握られている銃身が短いアサルトマシンガンによる近接銃撃。距離を離そうとすると今度は非実体剣による接近戦。そしてまた近接銃撃と苦戦させられていた。

 

「一体どんだけ武器を詰め込んできたんだ?」

「ふふふ。いっぱい、とだけ言っておくよ」

「前から思ってたけどシャルって腹黒いよな?」

「なっ!?一夏!女の子に向かって腹黒いはないんじゃないのかな!」

 

距離を取ったシャルがオクスタンランチャーを構えて撃ってくる。しかしその全てを切り払う。

 

「……一夏や箒と戦うと自信が無くなっちゃうよ」

「そうか?」

「そうだよっ!」

 

不意打ち気味に撃たれた銃弾も反射的に雪片を振り抜き銃弾を真っ二つにする。

 

「だからなんで斬れるかな~?」

「なんでって…慣れ?」

 

いや、これくらい普通だろ?秋だって俺たちが振るう刃に合わせてバンカーを突きだして刃をそらしたり弾けるのだから。

 

「何?この兄弟?」

 

フルフェイスで分からないが絶対呆れてるよな、シャルの奴。

 

「さて、箒が頑張っているからな。俺も負けられないぜ!」

 

自分の必殺の零落白夜は自分のシールドエネルギーを使ってしまう為、使いどころが難しい。最近は展開にも慣れてきたせいか瞬時に展開して斬りつけるとかできるようになったがそれでも常時展開なんてできない。

 

「行くぜ!」

 

背中のウイングスラスターを全開にしシャルへと迫る。対しシャルは非実体剣を展開し雪片の刃を防ごうとする。

 

ここが勝負所だ!

 

非実体剣の刃に触れる瞬間に雪片を展開。零落白夜を発動する。

 

「えっ!?」

 

驚くシャルだが遅い!

 

エネルギーを無効化する特性を持つ零落白夜にビーム刃による非実体剣は相性が最悪だ。そのまま抵抗されることなくシャルに斬撃を浴びせられた。

 

「不味い!?」

「浅かったか!」

 

終わらせるつもりで放ったのだがどうやらシャルは自ら後ろに下がることでダメージを減らしたのだろう。もし俺がもっと早く動けたら、踏み込んでいたら終わりにできた筈だ。

 

もっと速ければ……

 

シャルが反転し離れようとする。逃がすわけにはいかない。シャルが秋と合流でもしたら分が悪くなる。だから俺は追いかけるがシャルのヴァイスリッターに追いつけない。

 

もっと速く、白式!お前の力はこんなものじゃないだろう!?

 

俺の思いが伝わったのかウイングスラスターがさらに展開し一気に加速する。

 

「引き離せないか…なら!」

 

両手にアサルトマシンガンを呼び出しこちらに撃ってくる。

 

「その程度!」

 

自身に当たればダメージが大きくなりそうな弾丸を切り払いながら進む。しかしシャルも高速で後退している。激しいドッグファイトが広げられているがこのままだと俺が負ける。

 

もっとだ。白式。もっと速く…風の如く疾風の如くだ!誰よりも速く、アイツよりも速く飛べれば俺の一太刀は千冬姉にも届く筈なんだ!

 

「また加速した!?」

 

互いの距離は縮まってきている。これなら届く!

 

俺は自然と左手を握ったり開いたりしていた。そしてシャルがリボルバーから撃ち出した弾を斬った時だった。

 

「は?」

 

眼前に広がる白い物体が俺に絡まり動きを阻害される。

 

「一夏のような高機動戦を得意とする相手にピッタリな弾丸なんだ。悪いけど僕も出し惜しみしてられないのさ!」

 

そういってシャルがどんどん撃ちこんでくる弾によって俺はいつの間にか壁に貼り付け状態になっていた。ご丁寧に雪片にも撃ちこまれていた。そして脱出するべくもがいている時だった。

 

「盾とついでに私もくれてやる!ただしお前も道連れだ!!」

 

え?

 

聞こえてきた声に一瞬、何を言っているのか分からなかった。ハイパーセンサーに映し出された映像には両肩の盾を秋に破壊された箒が零式斬艦刀を構えて突撃するところだった。

 

ヤメロ…

 

『■■■■!ただではやられない!貴方も道連れだ!』

 

そういって叫んで突撃するダレか……

 

ヤメロ…

 

「『すまない。一夏…奴を仕留めきれなかった』」

 

腕の中で力尽きるダレカ……

 

「あ、ああ…」

 

自然と口から言葉が漏れる。

 

また、奪われるのか……?一体、どれだけ俺から大切な者を奪えば気が済む……

 

許さない。

 

絶対に許さない!

 

「もう、奪わせるものかーーーーー!!」

 

俺は叫んでいた。あの蒼い魔神を…俺から全てを奪っていった怨敵を倒すために。

 

そして、俺の意識は飲み込まれていった。

 

気が付くと白い空間で少女と二人の女性に出会った。少女は白いワンピースを着ておりその眼に涙を溜めていた。もう一人の女性は白い鎧を纏っており顔は上半分がおおわれていた。こちらの女性は頭を横に振り俺を否定するようだった。そしてもう一人の女性は四対の翼を持つ、ドレスをまとった神々しく美しい女性の姿をしていた。その女性は静かにエメラルドの瞳で俺を見つめた後。

 

≪まだ、貴方には託せません≫

 

そう言われ、俺の意識は再び落ちて行った。

 




というわけでここにきてSやMの事、ベーオフルフ再び、一夏の二次移行と詰め込みすぎた感が……これらを後へとうまく繋げようとしたりとしていたらこんな感じに(汗

でも、仕方ないんです。そろそろやっておかないと…なのでごめんなさい!

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