少し短いですがキリがよかったので……
では、どうぞ!
上空では白と青の二つの閃光が幾度も激突を繰り返しては離れていた。
「秋ぃぃぃぃぃ!!」
鋭さを増した雪片の斬撃を頭部のダレイズホーンや右腕のリボルビングバンカーで捌きながら青く染まった孤狼は脚部の外側に現れたスラスターユニットが細かく動き、その加速力を落とさないまま移動を続ける。対する白式もまったく加速が落ちず互いにどんどんその速度は上がっていた。
だが、異変は起こっていた。
「お前のその感情は俺にとって不要な物だ」
「何を!」
「完全たる存在。俺は再び至る。その為にはお前は邪魔だ」
突き出されるバンカーをとっさに半身をずらしかわす一夏。しかしそこへ向けられたのはシールドクレイモア。
「これはかわせまい」
「っざっけんなー!!」
「無駄な抵抗を……だからお前は俺と違って至れなかった」
シールドクレイモアを蹴り上げてから、回転するように雪片を薙ぐ。その刃は孤狼の装甲を切り裂くが。
「再生している?!」
切り付けられた箇所が自己再生していく。自己再生自体はゴーレムとの戦いで見たことはある。だが、孤狼にマシンセルは使われていない。
「もういい。撃ち貫かれろ。それが正しい事だ」
「お前…」
「純粋な生命体である俺が……創る。新たな世界を……」
「何を言ってやがる!?」
「また…破壊…因子が……引き寄せる」
「お前……秋じゃないな!」
「秋?……俺は……一夏?……俺は…誰だ?」
「くそ!孤狼が変わってからおかしくなりやがって!」
雪片を正眼で構えた一夏は孤狼の赤く光るツイン・アイを見て軽く息を吐く。
「俺にも何がなんだが分からないけど、今はお前を元に戻す事だけを考える!」
そして再び激突する。
それを地上から見上げるのは二次移行した白式の一撃を受け、シールドエネルギーがゼロになったシャルロットと打鉄から降りた箒の二人。
「一夏の二次移行には驚いたが……秋は一体、どうしたというのだ?」
「秋の方はベーオウルフが起動しているんだ」
「ベーオウルフ?」
「僕も詳しいことは聞かされてないけど孤狼に搭載されているシステムで起動すれば大幅な機体性能が上がるって……でもあの変化は異常だよ」
そういうシャルロットは目を細め蒼く染まり姿を変えた孤狼を見る。そんなシャルロットの様子を見ていた箒は。
「一夏、秋…」
二人の戦いを拳を握りしめながら見つめていた。
一方、観客席では世界で公表されている二人の男性IS操縦者の勝負だけでなく確率が低いと言われている二次移行の瞬間を見れたことに歓喜の声が上がっているがこの戦いが普通の物でないことは彼らに近しい者達には分かっていた。
「ねぇ?お嬢様?」
「……本音の言いたいことは分かる。あのシステムは普通じゃない」
自分のことを名前ではなく“お嬢様”と呼ぶ時は彼女が裏の顔をしている時だと理解している簪は頷き続ける。
「現状、ISに搭載されているシステムであんな変化を起こせるのはドイツで見られた新型のVTシステムぐらいなもの。でも孤狼の変化はVTシステムとは全く違う変化が見られる。アレは誰かを模倣している訳じゃない。まるで二次移行のような変化。でもアレから感じるのは異質の念……」
「じゃあ、ちょっと調べてくるね♪」
「気を付けて」
「あいあ~い」
明るい声色と共に本音の姿が消える。それを見送ってから簪は考える。織斑兄弟がISを動かして以来、世界は新たな動きを見せ始めている。姉である楯無も表向きはいつもと変わらない様子ではあるがその裏では更識家当主として動いているのを虚から聞いている。
「(お姉ちゃんが“あの”薺さんに会いに行っているくらいだから、これから事態はもっと重くなるってこと?)」
日本には表には出ない裏御三家と呼ばれる家がある。更識家、布仏家、如月家。
裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部「更識家」十七代目当主である自身の姉、“更識楯無”、日本に属してはいるが必要とあれば相手が誰であろうと“処刑”を行い、名を出せばそれだけで戦争すら止められると言われる圧倒的な武力を持つ「如月家」。その十六代目当主にして修羅姫の二つ名を持つ“如月薺”、そして更識家に仕えながらも暗部として活動してきた暗部「布仏家」。当主ではないが十分優秀な本音が探りにいったのなら自分はいつでも動けるようにしておけばいい。既に姉には連絡を送ってある。
「それにしても、あの異質の念は何?秋や一夏に似ているけど、何かが違う。すごく気持ちが悪い。干渉するには弐式を展開しなきゃいけないし……」
簪が今できることを考えていると。
「信じて待っていろ。それがお前に出来る事だ」
「ハウ社長?」
ハウは簪に軽く挨拶をすると隣に座る。
「どうして貴方がここに?」
「あは~知ってそうな人物を連れてきちゃった!」
「本音~……」
簪が居る席は生徒たちや学園関係者のみ入れるエリアで外部関係者は入れない筈なのに本音が連れてきたようだ。
「何、気にするな。許可は貰っているし、この子がIS学園の最下層へ入ろうとしていたのを見かけたのでな」
そういって取り出したのは学園関係者が持つ許可証。
「本音?」
「うっ!?で、でもあそこ位しか情報を手に入れられそうな場所がなかったし……」
シュンとする親友に簪はため息を吐きながらも頭を撫でる。
「秋が心配なのは分かるけど……無茶はダメ」
「は~い…」
二人のやり取りを見ていたハウは咳払いを一つし。
「さて、秋はまだベーオウルフに勝てないようだな」
「その言い方だとまるでああなるのが分かっていて搭載したように聞こえますが?」
「そうだ。織斑秋の持つ因子、それを引出すことでISを強化。疑似的な移行を起こすシステムがベーオウルフだからな」
「ベーオウルフに勝てないというのは?」
「秋自身がシステムに飲み込まれていると言えるだろうな。それに破壊されていた筈の武装が自己修復されている。あのシステムに自己修復なんて機能はない。私たちが想定している以外の何かがシステムを通じて引き出されているのだろう」
「あっきーは大丈夫なの?」
「さてな。前回はねじ伏せたようだが今回はどうだろうな?まぁ私は大して心配していない。秋なら何とかしそうじゃないか?」
「無責任ですね」
「否定はしないさ」
簪の言葉に肩を竦めハウは二人の戦闘を見るが……
「(う~ん、まいったな。秋君の変化もベーオウルフだけじゃ説明つかないし、一夏君の二次移行もなんか普通じゃないし……こういう時に束がいれば説明してくれるんだけどな~でも束が細工しているって線も捨てきれないし……ヤバいな~これ終わったら絶対に千冬にお説教されるよね~……)」
内心でそんなことを考えていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
気が付けばドイツで出会ったあの黒い存在が俺の前にいた。
“またあったな”
「ふん!」
反射的に目の前の存在へ拳を叩き込むと距離を開け、俺は再び構えを取る。しかし殴ったという感覚はなく向こうもダメージを受けた様子はない。
「またお前か!しつこいんだよ!」
“お前が不完全である限り俺はお前の前に現れる”
「いやだから不完全ってなんだよ」
目の前の存在は前に会った時と変わらず『俺と一つになれ』としつこい。
“お前は疑問に思ったことはないのか?”
「何をだよ」
“なんで俺が現れるのか、だ”
「不完全だからだろ?」
“なら、なんで不完全か考えたことはあるか?”
「人間なんて不完全な物だろう?」
俺の問いに目の前の存在は小さく笑う。
“大きな意味でいえばそうかもな。だけどな、お前が不完全って言う意味では違う。お前には余分な物が多いんだよ”
そこで思い出す。前はこんなふうにしゃべっていたか?もっと静かに話していた筈だ。
“それは簡単だ。お前の中の因子が活性化して俺とつながり始めたんだ”
「人の思考を読むな」
“読んだわけじゃないさ。俺には分かるんだよ”
そういうと目の前の存在の姿がだんだんとはっきりしてきた。そこに居たのは……
「俺?」
「ああ。そうだ。漸く認めてくれたんだな」
体の半分が異形となっている俺だった。右半身が植物の様なものに変わっている。
「認めたわけじゃねぇけど……どういうこった?その姿?」
「“力”を手に入れたのさ……もうひとつの可能性として選ばれ、始まりの地のひとつにて至った新たな進化!そう!俺は新たな生命体へと至ったんだ!!」
「で?ご高説賜ってるところ申し訳ないけど俺が不完全っていうのは?」
「まだ、分からねェのか?お前は俺だ。俺はお前だ。そしてお前も俺と同じように種を受け取っている。だが、お前はまだそれを芽吹かせていない!だから俺を受け入れて、人間という殻を破って見せろ!そうすればお前は俺という完全な存在になれる!!」
怪しく光る赤い眼を持つ“俺”に俺はため息をつくしかなかった。
「つまり、俺が不完全ていうのはお前にならなかったからか?」
「そうだ。同じように力を求めているのに、その身に種を宿しながら、不純物を取り除けば新たなる高次元の生命体へと進化できるのに、だ!」
「じゃあ、不完全のままでいいわ。何度でもいうぞ?」
俺は左掌に右拳を打ち付け“俺”を睨む。
「確かに力は欲しい。でもな、そんなわけのわからねぇ存在になってでも欲しいわけじゃねぇ!お前と俺は違う!」
「!!」
大きく振りかぶった拳を顔面へと叩き込み。
「お前は既に俺とは違うんだよ。だから因子とやらに引きずられて俺に接触してきたんだろ?俺を取り込んでこちらの世界に干渉する為に」
「何故だ……何故、受け入れない…?」
「そっちの俺がどうして受け入れたのか分からないけど……俺は一人じゃ至れないって知ってるからな」
それを教えてくれた幼馴染に心の中で礼を言う。
「(鈴。お前には感謝してもしきれないよ)」
「分からない…何故?」
「そうか。そっちの俺は一人だったんだな」
「俺は…完全な…」
「だから、人間は完全になんてなれねぇよ。もし完全だなんて思っているならお前は間違えたんだ」
「俺が…間違えた?……不完全?」
倒れたまま起き上がらない“俺”に近寄り手を伸ばす。
「ほれ」
「何のつもりだ?」
「いつまでも付きまとわれても面倒だからな。来いよ。俺とお前の違いを見せてやる」
“俺”はゆっくりと異形の手を伸ばし……
「未来は、また、過去に、負ける……か」
そういって俺の手をはねのけた。
「お前は、俺になるな……」
赤く輝いていた瞳は元に戻り静かに笑った。
「たりめーだ。黙って見てろ」
「そうするわ。そうだ…一つ教えてやる。こちらの世界にはまだアイツがいる」
「あいつ?」
「まだ本格的には目覚めていないがアイツもお前を求めるだろうよ。何せお前の……」
そこまで言ったところで“俺”は崩れていった。
「また意味深な言葉を……」
謎が深まった。一体、俺にどんだけ秘密があんだよ……自分の事なのにさっぱりだ。そんなふうに考えていた時、光が差し込んできた。
「漸く戻れるな」
戻ったらひと眠りしたいわ。
軽く伸びをし光の指す方へ歩き出す。
そして……
「終わりだぁぁぁぁぁ!!!」
「ぬおわぁぁぁぁ!?!?!」
行き成り眼前に振り下ろされる刃をとっさにバンカーで受け止める。
「え?何々?!?!」
《マスター!気が付きましたか!》
「アルト?!説明!」
《現在、一夏と戦闘中です!》
「オーケー!把握!」
目の前にいる全身装甲のISはどうやら一夏らしい。そういえば今はタッグトーナメントの最中だったか。確か一夏が二次移行したら俺も頭痛がして……
「考え事とは余裕だな!秋!」
「お前こそ態々話しかけるなんて余裕なこって!」
「お?その反応…どうやら正気に戻ったみたいだな?」
「心配かけたようで!お礼にしこたま撃ちこんでやんよ!」
「いらねぇーよ!もう少し遅ければ終わらせてたのにな」
「そうかい。なら俺はベストタイミングで戻ってこれたってわけだな!」
軽口をたたき合いながらも二次移行した白式は以前よりも速く、さらに風のように舞いながらこちらに鋭い斬撃を浴びせてくる。しかし俺にはその太刀筋が見えていた。太刀筋に合わせてバンカーを振るいそらしていく。
《シールドエネルギー残り二十!》
「おうよ!」
両肩のレイヤードクレイモアを開き撃ち出す。今のクレイモアなら簡単にはかわせないだろう。
「くっそぉぉぉ!」
しかし、それを雪片で切り払っていく一夏。だが全てを防げるわけではない。被弾も多いが致命傷とはいかなかったようだ。ならば俺の次は決まっている。
「ハンマーアクティブ!」
《リボルビングバンカー!セット!》
「撃ち貫く!」
突撃し突き出したバンカーが一夏を捉え撃ちこみ吹き飛ばすが、一夏はとっさに雪片でバンカーをそらしていた。またも致命傷になる一撃を捌かれた事に俺は舌打ちをする。
「負けるかよ!」
背中のX型のスラスターを噴射し体制を整えた一夏は両足を広げ、雪片を逆手に持ち、左手を下にかざすように構える。それは今までに見たことがない構えだった。
「白式・雪風!お前の力を俺に貸してくれ!!」
一夏の叫びに呼応するかのように白式・雪風の足元に広がる緑色の環状型幾何学模様。それは何処か魔法陣のようにも見える。そして白式・雪風を激しい風が包み込み、機体が赤く染まっていく。
《白式の熱量上昇?これは?》
「行くぜ!」
アルトの呟きをかき消すように一夏が叫びながら突っ込んでくる。その姿はぶれていき幾つもの白式・雪風が俺を囲んでいた。
「おいおい…いつから分身なんてもんが使えるようになったんだよ?」
《センサーが全てを本物と認識しています!?》
「刃を生み出す幻影!」
その全ての白式・雪風の持つ雪片が展開し白い刃が現れる。それは零落白夜の光だ。それを見て冷や汗が流れる。
「アルト!全弾ばら撒くぞ!」
《了解!》
レイヤードクレイモアにシールドクレイモアを展開。五連チェーンガンも使う。今のアイツに出し惜しみをしている場合じゃない!
「零落白夜・幻影斬破!」
「発射!」
撃ちだされたクレイモアと弾丸と一夏たちが放つ無数の斬撃がぶつかり合った結果。
『試合終了!』
ブザーと共にシステム・ベーオウルフは停止し青く染まっていた装甲は赤色へと戻り、一夏の方も全身装甲が解除され形状が変わった通常展開の白式へとなっていた。
「どっちが…」
「…勝ったんだ?」
《マスター…残念ですが…》
アルトの声にハイパーセンサーが表示しているシールドエネルギーはゼロ。それは俺の敗北を意味している。
「負けちまったか」
負けたのは悔しかったが一夏たちならいいかと思えた。こいつらが優勝すれば俺に被害は出ないだろうし。
しかし……
『ただいまの勝負、引き分け!』
「「「「は?」」」」
意外なアナウンスに俺たちは全員ポカンとしてしまった。
その後、アリーナの大型モニターにて決着の瞬間の映像と共に説明があったのだがどうも俺に一夏の刃が当たった瞬間に零落白夜の効果で一夏のシールドエネルギーがゼロになったのだそうだ。普通の零落白夜なら問題なかったのだそうだが今回一夏が使ったのは二次移行に進化した状態。最後の幻影を生み出した分、余計に消費していたらしい。
それ……自滅じゃん。
解説の内容に崩れ落ちた一夏を俺とシャルと箒が呆れた眼で見たのは言うまでもない。
こうして俺たちのタッグトーナメントは二日目で終了した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「うう~ん……まさか、この時点で二次移行するなんて、束さんの目をもってしても見抜けなかったね~」
そこは篠ノ之束のラボ「吾輩は猫である(名前はまだ無い)」。束がそこで見ているのは秋と一夏の戦闘。
「今まで何巡もしてきたけど、どこの世界でも二次移行できたのはもっと先だったし、それにこんな全身装甲にはならなかったはずなんだけどね?」
椅子の背もたれに寄りかかりながらしばらく宙を見ていた束はふと何かに思い当たり、傍に置いてあったキーボードを引き寄せ打ち込んでいく。そしてお目当てのデータを見つけるとニヤリと笑みを浮かべ笑い出した。
「あはははははは!なるほど!なるほど!あの時のいっくんか!いや~いいところまで行けたから少し期待してたんだけど……まさか世界を移ってまで干渉してくるなんて……」
モニターに映し出される白い全身装甲のISを指でつつき。
「でも、邪魔はいけないな~もうお前のターンは終わったんだから、この世界のいっくんに付きまとっちゃいけないな。あ~でも……もう少し様子を見てみようかな?ダメだったらまた終わらせればいいだけだし」
そうしようそうしようと笑いながらモニターを消す。そして椅子から立ち上がると一角に置いてあるカプセルに近づき、その中身に話しかける。
「それにしてもあっくんの変化は何処から来たんだろうね?君なら何か知ってるのかな?」
『…………』
「相変わらずだんまりか~まあいいや、君を調べても面白くもなかったし、欲しがってた奴らに渡してやろうっと」
『…………』
カプセルをコツンと軽く叩くと束はその場を去って行った。それからしばらくしてカプセルの中で動きがあった。軽く身じろぎし、そして……
『…ルーツ……インシ……ハジマリノチ……サンプルヲ……』
その声を聴いたものは誰もいなかった。
うん。今回も色々とぶっこんでいるね。
読んでくださっている方の中にはもう秋の正体にたどり着いた人もいるかもしれませんね。
さて、今回も受け入れる体制はできてますよ?
さあ、ご意見、ご感想をお待ちしています!
後、一週間で一話投稿を頑張るつもりですが……遅れたらすいません(土下座