また日常編を挟んでいよいよ銀の福音戦へ……
と、いいながら今回は二次移行した彼らの模擬戦です。
俺と一夏が引き分けで終わってしまったタッグトーナメント一年の部は結果的にはセシリアと鈴のタッグが優勝した。もちろん知らない人が聞けば専用機持ちが勝つのは当たり前だろうと思うだろうが一年の専用機持ちは優勝組以外、全員二回戦で敗退。セシリアと鈴のタッグの相手は全て量産型になり結果、残りの試合はハンデありで戦い抜いた。
「いや~今まで真面目に模擬戦繰り返しておいてよかったわ~」
「本当に、最初はハンデなんて在って無いようなものと思っていましたけれど実際はギリギリの戦いもありましたし…」
優勝が決まった後、二人は疲れたように言っていたが本当に見ごたえのある試合もあった。特に決勝戦。三組に所属している如月千歳と四組に所属しているネージュ・ハウゼンのコンビが酷かった。両者とも使用ISはラファールを使っており、前者は大量のミサイルやマシンガンなどの銃火器を搭載し、後者は銃剣を装備したレーザーライフルや爆薬を仕込んだ投擲用ダガーを使って仕掛けてきていた。この試合で凄かったのは如月千歳の使ったコンビネーション。ミサイルなどを撃ちこみながら高機動戦をしつつ相手に気付かれないよう爆薬を仕掛けたトラップを使い、ネージュ・ハウゼンはレーザーライフルのレーザーをミラービットを使って跳弾させた変則的射撃を行いつつ、ダガーを投げるだけでなく跳弾に合わせて爆弾のように使ったりと鈴やセシリアを十分に苦しませた。
いや、なんでこれだけ出来るのに専用機持ちじゃないんだよ。俺と一夏は同時に試合を見ていてそう思った。
それでも最後にセシリアはスターライトやBT兵器を囮にし、ハンドガンを両手に持っての接近戦で如月千歳を、鈴はいつの間にか搭載していたGインパクトステークでネージュ・ハウゼンを撃破していた。
さて、そんなトーナメントも一日の休みを挟んで二年の部の勝ち残った上位タッグの試合を見ることになったのだが一年の試合以上に濃くて面白かった。特に何度か模擬戦をしたことがあるセリア先輩、カチーナ先輩は模擬戦とはまた違った試合を見る事が出来た。二人そろってトーナメントでの使用機はゲシュペンスト(非全身装甲タイプ)を使って戦っていたのだが……。
「オラオラオラオラオラ!!!!!」
マウントポジションを取ってひたすらと顔を殴り続けるカチーナ先輩にドン引きですわー。相手、泣いてますやん。しかも無理矢理引っ張り上げてからひじ打ちから裏拳、膝蹴り食らわせて背負い投げって……俺でもしませんよ?もうプラズマステーク叩き込んで終わらせてあげてくださいよ……と思ったけど、よく考えてみたら、自分模擬戦でしこたまトンファーブレードで殴られてたわ。
「フフフフフ…どうしました?その程度ですか?セリアをもっと楽しませてください」
アサルトブレードをまるで刺突剣のように扱い、相手の手足を狙いシールドエネルギーを削り続け、相手が距離を取ろうとすると一気に踏み込んで箒顔負けの豪快な斬撃のラッシュを浴びせていたかと思うと空いている手にサブマシンガンを呼び出し、顔に突き付け撃ち続けるセリア先輩。いや、貴方の相手も泣いてますやん。しかもセリア先輩、顔がすごく…イイ顔になってますよ?超ドSじゃないですかーやだー。……うん。俺、知ってた。これは知ってた。
と、俺がキャラ崩壊起こすほど二年の方々はキャラが濃かった。出来る事ならあまり関わりたくない。本気でそう思ったがそんな色々な人たちとの模擬戦を行ったり、彼女たちの試合を見る事が出来て勉強になったのも事実。そうなれば……
「体を動かしたくなるってもんだよな」
「お前も大概だよな」
二年の部も終わり、普通にアリーナが使えるようになったため、一夏に付き合ってもらい空いたアリーナで久しぶりに互いに二次移行した相棒を纏って対峙する。しかし、俺の方は二次移行したという感覚は全くない。なんというかシステム・ベーオウルフが起動した時の姿と変わらないからな。しかしなんで変化したままなのか?アルトも分からないって言ってたし……
「一夏の白式ってさ、二次移行した後の方がウイング固定式になっているけど、そこんとこどうよ?」
「いや、何故か動きは良くなっているんだよな。見た目は動いてないけど、まるで風のように自由に動けるんだよな」
そう笑う一夏。確かに雪風になってからスラスターで動いているとは思えない滑らかな動きになっていたけどさ。しかも加速の前兆がスラスターと違って分かりにくい。おかげで一夏の踏込みが前のように読めなくなってやりづらくなった。それにやっかいなのはそれだけじゃない。
「分身とかしてたくらいだしな」
「あれ以降、全身装甲にもならないし、分身もできないけどな。あと胸部装甲が展開してビームが撃てるようになった。そういうお前は?」
こっちは右腕のリボルビングバンカー以外、また武装が変わって感覚が狂ってしまった。別に初めて使うわけではないのだがシステム起動時と違って何故か上手く扱えない。
「あ~なんか左腕が重くなって頭部も重い」
五連チェーンガンに小型のクレイモアユニットが付いたシールドが追加された。そして頭部のダレイズホーンは長さだけでなく幅もある。プラズマホーンとはまた違った扱いが出来そうだ。慣れるまで時間がかかりそうではあるが……
「そういやクレイモア付きの盾に、角も長くなってるしな」
「ドンドン重量が増してる気がするわ」
頷く一夏と二人で思わず笑う。こうしてみると二次移行もいい事ばかりじゃないな。
「まあいいや。一夏、やるか!」
バンカーを構えてみる。
「いいな!やるか!」
雪片を構える一夏。
俺は孤狼改め孤狼・極式を、一夏は白式・雪風をそれぞれ使いこなすために模擬戦を始めた。
「はぁ!」
後ろのX字のスラスターから緑色の粒子を吹き出し加速する一夏。その加速は孤狼の爆発的な加速と違い、身を切り裂きそうな鋭い風のように加速し雪片の刃を振るってくる。
「やろぉ!」
雪片の刃を新たに追加されたシールドクレイモアで防ぎ、バンカーをカウンターとして突き出す。しかし、一夏は半身をずらし、かわそうとした所でシールドクレイモアを展開し発射。
「喰らえや!」
「喰らうか!」
さすがに慣れたもので回避運動を取る一夏だったがシールドクレイモアは射程距離を犠牲にした分、拡散性があり初速も高くなるように調整してある。近距離で使うには申し分ない兵装に仕上がっている……ってアルトが言ってた。
「くそっ!やっぱりその武装はやっかいだな!」
クレイモアが被弾した箇所は丸みを帯びた装甲になった肩アーマー。しかし、どういう原理か分からんが装甲周辺に流れる風がシールドエネルギーと似た防御フィールドとなってそれほどダメージとなった様子はない。再び雪片を構え、飛び込んでくる。
「ここで下がったら負けだよな!」
俺も負けじと背中のスラスターを全開にして突撃。ダレイズホーンに電撃が発せられ青く輝く。そして俺のダレイズホーンと一夏の雪片が激しくぶつかり合う。
「「うおおおおおお!!!!!」」
一夏の方もスラスターを全開にし拮抗を続けていた。だが一夏はニヤリと笑うと。
「知ってるか?俺も武装が増えたんだよ!」
胸部装甲の一部が開き、その中にあるレンズ状の部品から放たれる高出力のビーム。搭載位置から俺の胸部へ直撃する。
しかし。
「ハッ!お前、忘れてんじゃねぇのか?こっちにはビームコーティングがあるってことをさ!」
「あ…」
「お返しだ!」
両肩のレイヤードクレイモアを展開。アヴァランチクレイモアよりも搭載量が増えたことにより、さらに広範囲へと攻撃できるようになったこの武装で終わらせる!
「それは読んでたぜ!」
だが、一夏はクレイモアの発射直前に力を緩め、俺の体制を崩すと俺を踏み台にして跳躍。踏み台にされた俺は地面へとクレイモアをばら撒いただけでなく、スラスターを吹かした状態だったのでそのまま地面に突っ込み自爆した。
「さて、ようやく温まってきたな…ギアを上げるぜ!」
上空へと上がった一夏はそういって腕を振るうと白式・雪風は光に包まれ、その姿を全身装甲へと変えていた。一方、自爆行為になって自身のシールドエネルギーを大きく削ることになってしまった俺はなんとか立ち上がりダメージなどを簡単にチェックしながら新しく追加されていたコマンドを実行した。
「なら、こっちもシステム・ベーオウルフ起動!」
俺の言葉が起動合図となりシステム・ベーオウルフが起動する。するとISコア、プラズマリアクターの出力が大幅に上昇し機体表面を紫電が奔るのと共に機体の色が赤から青へと変色する。同時に頭の中でスイッチが入るような感覚がした。頭の中がスッキリしていく気がする。
「今の俺は負ける気がしねぇ!」
「上等だぜ!」
腕を引く俺と雪片を構える一夏。そろって踏み込むタイミングを計っているとハイパーセンサーに接近する熱源反応が表示される。
「中々面白いことをしているじゃないか?二人とも」
「秋?パートナーを置いていくのはどうかと思うんだけどな?」
肩に零式斬艦刀を担いだ箒のグルンガスト零式とシャルのヴァイスリッターが現れた。
「正直に言うとだな。あの試合は不完全燃焼だったんだ。今度は零式と共に戦いたくてな」
「僕もね、負けっぱなしっていうのは嫌なんだよね。だから付き合ってよ」
二人は互いに頷くと俺たちにそれぞれの武器を構える。
「「戦ってもらうぞ(よ)!!」」
二人の宣戦布告に俺と一夏は互いに頷き、肩を並べる。
「「いいぜ!相手が誰であろうと」」
「撃ち貫くのみ!」
「斬り散らすのみ!」
同時に飛び出し、俺は箒へ、一夏はシャルへと向かっていった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ふん。まったく…」
四人が乱戦へと入るのを管制室から覗いているのは仕事を片付けていた千冬。
「一夏はまだ太刀筋がまっすぐすぎる」
振るう刃をシャルロットにかわされた一夏を見て呟く。返す刃で追撃を試みるがそのすべてをかわされていた。
「秋は決めようとするときは必ず大降りになる癖が直っていない」
箒と激しい打ち合いを繰り広げていた秋が大きく腕を引いたのを見て箒は一気に後退すると胸部からの熱線ハイパーブラスターを放った。それを持ち前の加速力でかわし、また距離を詰めて打ち合いを始める。
「デュノアはどの距離もそつなくこなせるオールラウンダーではあるが、代わりに決め手に欠けているな」
オクスタンランチャーでビーム、実弾を使い分けた射撃に距離が詰まるとプラズマカッターやM950マシンガンを使っての接近戦。しかし相手が二次移行した白式では決定打にならない。これはどちらかと言えば白式の新たな防御能力が係っているようではあるが……そんなもの戦闘では関係ない。突破できなければ倒されるだけだ。
「そして箒。あの斬艦刀の扱いからして篠ノ之の剣術の面影はほとんど残っていないな。二の太刀いらず…とはよく言ったものだが、まだまだ甘い」
身の丈を超える斬艦刀の一撃は当たれば脅威だが今のところは秋が上手く回避し続けている。
四人の戦いを観戦しながらそれぞれを評価していると。
「あ、先輩!ここにい……ひぃ?!」
副担任であり後輩の真耶が千冬を見て後ずさった。
「……なんだ?」
「い、いえ……うわー先輩があの笑顔を浮かべている時はヤバい時だ」
「聞こえているぞ」
「ご、ごめんなさい!」
謝る真耶を見て失礼な後輩だと思うが。
「そうか……笑っていたか……」
そっと手を口に当て呟く。道理でさっきから体が熱いわけだ。
「ふふふ、少し私も体を動かしたくなってきた」
「あ、相手はしませんよ?」
「構わん。今の私が使って無事に済むISは学園にはないからな。ところで何か用があったんじゃないのか?」
「あ!そ、そうです!今回の一年生のタッグトーナメントの評価リストについて何ですが」
「そうか…なら早く済ませるとしよう」
「早く終わっても相手はしませんからね!」
「分かっているさ」
真耶とそんなやり取りをしながら管制室を後にする千冬だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ビームと実弾を交互に撃ちだせるようになった五連チェーンガンでシャルを追い詰めていく。
「くっ!ヴァイスの装甲じゃ……」
「当たらなければってやつか!」
高速機動でかわしながら反撃してくるシャル。
「一夏ぁぁぁぁぁ!!!」
「箒ぃぃぃぃぃぃ!!!」
完全に足を止め切り結ぶ夫婦。乱戦になったり一対一になったりとよく戦況が変わりながらも中々に楽しい時間だった。
「だが、そろそろ終わりにしようか!」
「いいね!」
「ふん。構わん」
「ああ。これで決めるぜ!」
俺の言葉を皮切りに皆が一斉に武器を構え、互いに決着をつけるべく、最後のカードをきる。
「レイヤードクレイモア!」
「オクスタンランチャー・Eモード!」
広範囲にばら撒かれる大量のクレイモアを高出力ビームで薙ぎ払うシャル。さすがに何度も使ってきている武装なだけに対応もされてしまっている。だが俺にはもう一つ。とっておきがある。それは拡張領域に入ったままの武装。
「ブーストハンマー!」
呼び出し思いっきり回すことで遠心力と鉄球に付いているブースターの加速を加えて威力を上げたハンマーがシャルへと向かっていく。しかしシャルは。
「甘いよ!」
スラスターを吹かしかわすとこちらにオクスタンランチャーを向ける。
「射程は短いけどその分威力はあるよ!」
連射されるBモード。それに対し俺も脚部スラスターを使い、地面を滑る様に移動しながらフレキシブルスラスターとTDウイングを跳ね上げ。
「ならこいつだ!」
全スラスターを使い加速。撃鉄を上げバンカーを構える。
「貰った!」
「させない!」
突き出される腕に合わせるようにプラズマカッターを突き出すシャル。結果、クロスカウンターのようになったわけだが俺のバンカーは腕が交差したことによりわずかにズレ、ヴァイスリッターの装甲を先端がかすった程度になり、プラズマカッターは鎖骨部分へと突き立てられたがシールドエネルギーを削りきるまでには行かなかった。
「引き分け…かな?」
「いや、俺のシールドエネルギーの方が残量が少ないからな。俺の負けだ」
軽く両手を上げるとシャルはクスリと笑い。
「秋は自分の負けをしっかりと認められて凄いよね」
「そうか?」
「うん。そう思うよ」
「そういうもんかね?」
「だって…ほら?」
そう言ってシャルが指を指す方を見ると。
「私の一撃の方が早かった!」
「い~や!俺の方が早かった!」
箒と一夏が下でISを解除しどちらのシールドエネルギーが先に尽きたのかについて言い合っていた。
「はぁ~…帰ろう。行くぞ。シャル」
「いいの?」
「夫婦喧嘩に構うだけ損しかない」
「あははは……」
喧嘩している二人を残して俺たちはアリーナを後にした。
自室に戻りシャワーを浴び終え、一夏が戻ってくるまでアルトと話をしていた。
「で?データは取れたか?」
今回の模擬戦でアルトにはデータ収集に専念してもらっていた。孤狼の変化はよくわかっていない点が多いので少しでもデータを集めておかないといけない。
《はい。今回の模擬戦で極式の稼動データは取れました。申し訳ありません。サポートできず》
「構わないさ。お前がデータをしっかり取って修正してくれるおかげで助かっているよ」
《お褒めに預かり恐悦至極です。秋》
「ん?マスターって呼ばないのな?」
《はい。私は貴方の相棒ですから…ダメでしょうか?》
「いや、いいさ。そのほうが堅苦しくないし……。改めてよろしくな!アルト」
《はい!秋!》
そう言って話をしているとドアがノックされた。
「開いてますよ?」
「お邪魔するわね」
「何かようか?鈴」
入ってきたのは鈴だった。入ってきた鈴は少しばかり視線を彷徨わせると俺を見て訪ねてきた。
「ねぇ?来週の日曜、空いてる?」
「ああ。特に予定は入ってないぞ?」
俺がそう答えると鈴は笑顔で告げた。
「じゃあ、デートしましょう!」
え~私の描写力が低いためわかりづらいかも知れないので少し補足を。
一夏の二次移行した雪風の全身装甲時の姿はぶっちゃけ、風の魔装機です。風の魔装機神ではないですよ?
孤狼は秋がシステムを一応制御できたので定着したという感じです。
後、また遅くなるかもしれませんが次話もよろしくお願いいたします。
ご意見、ご感想をお待ちしています。