「さて、秋。それがお前の専用機“孤狼”だ」
姉貴に言われ、俺が見ているのは俺の専用機ということでピットに届けられた一機のIS。
「・・・・・・姉貴?このISの開発者は馬鹿なのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
そこは否定して欲しいぜ。姉貴。
俺から視線を逸らし黙り込む姉貴に内心で突っ込みながら俺は現実を見るように自身のISを見る。そこには赤と黒で配色された鋼鉄の塊が鎮座していた。まず目に入るのがハッチが付いた固定式の両肩、意味もなくあんなものが付いているとは思わないのできっと固定武装なのだろう。さらに左手には大型のマシンキャノンが装着されており、そしてなにより俺と姉貴が思わず黙ってしまう原因が右腕にあった。
「・・・・・・あの大きさのパイルバンカーってシールドだけじゃなくて絶対防御もぶち抜くよね?」
そう右腕にはあからさまにバランスおかしいんじゃね?と思う巨大な杭打ち機、所謂パイルバンカーが装着されていた。
「とにかく機体は用意できた。後は向こうのピットで一夏のISもお披露目になっている頃だろ。思う存分やりあってこい」
ニッと笑みを浮かべる姉貴に頷きながら俺は孤狼のコックピットに乗り込むと背後から包み込むようにインナーアーマーが装着され、その上から重厚なボディアーマーが取り付けられる。両腕、両足、腰が次々とフィッティングされ固定されると最後に頭部を包み込むようにフルフェイスが装着され、ハイパーセンサーなどのシステムが立ち上がる。それと共に広がる一体感。
「(・・・・・・悪いな。一夏。今回は俺が勝つぜ!)」
そして、俺は孤狼をピットゲートに運び、合図を待つ。
『ではこれより、織斑一夏対織斑秋の特別試合を行う!両者フィールドに出ろ!』
姉貴の声に頷き、俺は軽く息を吐き。
「織斑秋!孤狼出るぜ!!」
背後のスラスターを吹かし飛び出していった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
話は一週間前に戻る。
「ISを動かす?」
「うん。いくらなんでももう少し稼動させてみたいでしょ?」
目の前の女子の言葉に俺は眉根を寄せる。
「それよりアンタは一体?」
「あ、そういえば自己紹介をしてなかったね。私は一年三組所属アリス・ブロウニング。もちろん専用機持ちよ」
「で?そのISはどうするんだよ?動かすにしても許可が下りなきゃダメなんだろ?」
「ううん。学園側じゃなくて企業から持ってきたISを使うから問題ないよ」
「いや、大アリだろ?」
「大丈夫だよ。企業のISっていっても、君の専用機開発を行ったのはウチの企業だからね。それにこれから使ってもらうのは君の専用機の元になったISだから」
そして最後に放課後に迎えに行くねと言われ、事実、放課後に迎えにきたブロウニングにつれられ歩いていくと。
「着いたよ。さ、入って」
ブロウニングに案内されたのは第五アリーナのピット。そこの奥にあるIS専用のハンガーに鎮座していたのは。
「量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ?」
青色の塗装を施された他のISにはない独特のフォルムを持つ鋼鉄の鎧。俺が使ってみたいと思っていたISがそこに鎮座していた。
「そ。今、起動手続きをするからちょっと待ってて」
そう言うとブロウニングはハンガーのそばにあるコンソールを弄る。その間に着替えてきてと言われ、渡された水着のようなISスーツに着替えてくると作業を終えたらしいブロウニングが待っていた。
「じゃ、そこに腰掛けるように乗って」
「こうか?」
「そ。背後のフレームに背中を預けるように」
ブロウニングの指示に従いながら言うとおりにすると。
「お?」
全身を包み込むようにアーマーが閉じられ、各種システムが最適化されていく。最後にハイパーセンサーが起動し空間ウインドウが開き、システム起動を告げる。
「なんか変な気分だな。馴染みすぎる。試験で使った打鉄よりも自分の体って感じがするな」
右腕を持ち上げ、手を握ったり開いたりを繰り返す。
「(馴染む・・・・・・ね)さあ、動かしてみよう」
「おう!」
ピットから滑る様にアリーナに出る。背後のスラスターを吹かし、俺の動かすMk-Ⅱは空へと舞い上がる。そんな俺の様子を下で見ていたブロウニングは左腕に装着されている黒い腕輪-真ん中に赤い菱形の宝石が付いている-をひと撫でしてから呟いた。
「じゃあ、特訓開始」
ハイパーセンサーが捕らえた呟きと一瞬の悪寒に咄嗟に横に跳ぶ様に移動する。そして、それは正しかった。
《警告・敵IS接近》
視界の端をすり抜ける一本の大剣とそれを扱う漆黒の戦乙女。
《検索・特殊プラズマ兵装〈グランプラズマカッター〉と確認》
「なっ!?」
「ふふん。お見事」
改めて向き直るとそこに居たのは。
《検索・操縦者アリス・ブロウニング。ISネーム『ゲシュペンスト・ファントム』戦闘タイプ万能型。特殊兵装有り》
「ゲシュペンストだって!?Mk-Ⅱじゃないのか?」
「Mk-Ⅱとはちょっと違うかな?さて続きをやろうか?」
今、自分が装着している量産型Mk-Ⅱとよく似たISと言ってもこっちは全身装甲なのに対しブロウニングが纏っているのは一般的なISになっている。色は黒を基調としており、頭部にはゲシュペンストを思わせるヘッドギア、ショルダーアーマーや脚部パーツに増設されたスラスター。左手には二本の筒が装備され、右腕にも何かが装着されている。さらに背後にもウェポンラックが付いており何らかの武装があると思わせる。
「考えている場合?」
《警告・敵IS攻撃態勢に移行》
「くっ!」
そんな考えさせてくれる時間を与えるはずもなくブロウニングは右手に持つグランプラズマカッターを上段に構え、突撃してくる。こちらはスラスターを全開にし急上昇。相手から距離を取りつつ直ぐにMk-Ⅱの武装を確認する。流石に無手のまま挑むのは分が悪すぎる。
表示された一覧には左腕のプラズマステークと射撃武器のM950マシンガン。少ないように思えるがカスタマイズされていないMk-Ⅱのカタログによればこれが基本武装なのだ。
「(まずは牽制!)」
マシンガンを選択、右手に現れた粒子が銃の形を作り、出来たものを掴むとこちらに向かってくるブロウニングに向け、トリガーを引きマシンガンを連射する。しかし、サイドスラスターを使いブロウニングは流れるような弾幕をあっさりと回避していく。
「甘いな~。そんな簡単な射撃じゃ目を閉じてても避けられるよ。じゃあ今度はこっちから行くよ!!」
《警告・敵ISの攻撃行動を確認。ロックされています》
「っ?!」
ブロウニングが微笑むとグランプラズマカッターのプラズマ刃を消し、左腕のマウントに戻すとすぐさま残りの二本の棒を右手の指と指の間で掴み、抜き取ると鎌のようなプラズマ刃を展開する。
《検索・特殊プラズマ兵装〈プラズマサイズ〉と一致》
ハイパーセンサーが直ぐに情報を提示してくる。
「いけっ!」
時間差で投擲される二本のプラズマサイズを見て、迎撃しようとマシンガンを構える・・・・・・が。
「(いや、迎撃できる訳ないか)」
自分の射撃の腕前で迎撃できるかを考え、やめる。
「なら叩き落すまで!!ステークセット!!」
左腕のプラズマステークがセットされ、ステークに放電が起きる。
「行くぜ!!」
「えっ?!」
先に飛んできたプラズマサイズを右手で叩き落し、自身のエネルギーを一旦スラスター内部で溜め、背後のスラスターから一気に吐き出す。そして爆発的な加速を得た俺は投擲されたもう一つのプラズマサイズを紙一重でかわし。思いっきり左腕を振りかぶり、必殺の一撃を叩き込む。
「ジェットマグナム!!」
プラズマエネルギーを纏った拳を突き出す。それは吸い込まれるようにブロウニングに向かっていく。
「まだまだ甘いよ!」
「な?」
笑みを浮かべたブロウニングが放った蹴りが拳を蹴り上げ、胴体ががら空きになり、そこにいつの間にか展開されていたグランプラズマカッターが突き出され回避できず装甲を切り裂く。
《バリアー貫通、ダメージ152。シールドエネルギー残量、448。実体ダメージ、レベル中》
「プラズマサイズを叩き落したり、回避したのは凄いけど。よく瞬時加速〈イグニッションブースト〉を使えたね?」
「瞬時加速?」
「・・・・・・もしかして知らないで使ったの?」
ブロウニングの問いに俺は頷く。俺はただアイツよりも早く動ければと思っただけだ。そしたらさっきの加速が出来た。
「アハハハ・・・・・・感覚で使ってたんだ」
苦笑しながらも何やら頷くブロウニング。するとプラズマ刃を消したグランプラズマカッターを左腕に戻す。
「うん。今日はここまでにしとこうか」
「え?」
「だってもうアリーナの使用時間が終わっちゃうし」
テヘッと笑うブロウニングに脱力しつつ、ピットに戻った。
「じゃあ、これから一週間毎日続けるから」
ニッコリと笑うブロウニングに俺は悪魔を見た。そして始まるのは実践という名の地獄の猛特訓だった。
そして話は冒頭に戻る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
勢いよくピットを飛び出した俺を待っていたのは双子の兄、一夏。
ではなく。
ズガァァァァァァァンッ!!
アリーナの壁だった。
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
アリーナを占めるのは静寂。
「・・・・・・だ、大丈夫か?秋」
「だ、大丈夫だ」
壁にめり込んだ上半身を引き抜き、頭を振る。あまりの出来事に空中で待機していた一夏も心配だったのか傍まで降り立ち声をかけてくる。
「なんという加速だよ・・・・・・軽くスラスターを吹かしただけなのに」
結果はご覧の通り、壁に激突という有様だった。自分でも何を言っているのか分からないがMk-Ⅱと同じように軽くスラスターを使っただけなのにまるで瞬時加速のように爆発的な加速をした孤狼。ピットを出た瞬間にはもう壁しか見えなかった。
「一夏続けようぜ?」
「続けるって・・・・・・大丈夫なのかよ?」
立ち上がる俺を見てため息混じりに心配する一夏。
「シールドエネルギーも減ってない、エネルギーもある。やれるだろ?」
「ああ・・・・・・そうだな。やろうぜ!秋!」
「おう!」
拳を握り、右腕に装備されているステークを引くように構える。それを見て一夏も兵装の近接ブレードを展開構える。
「やるぞ。孤狼」
「行くぞ。白式」
赤き鋼鉄と白き騎士が再びアリーナに立つ。そして二機は同時に動く。
しかし・・・・・・
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
再びアリーナを包み込む静寂。原因はやっぱり。
「・・・・・・なんでさ。どうしてぶつかるんだよ・・・・・・」
「これで五度目だぞ?秋」
一夏の言うとおり俺は既に五回も壁に激突。何故か俺は孤狼を制御できないでいた。何でだ?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「何をしているんだ。馬鹿者」
ピットでリアルタイムモニターを見ていた千冬が片手で顔を覆いながら呟く。その顔が若干赤くなっている。
「どうしたんでしょう?秋君。さっきから動作をするたびにブーストしちゃってまったく制御できてませんけど」
「制御できてない訳じゃないんですよ。ただあの加速力がMk-Ⅲの特徴でして、まだ感覚がつかめないからどうしても踏み込みすぎちゃうんでしょうね」
真耶に答えるのはアリス。ただしいつものIS学園の制服ではなくマオ・インダストリーのロゴが入ったスーツを着ている。
「あれがか・・・・・・?いくらブラックアウト防御があるといっても代表クラスの操縦者でも気を失うほどの加速だぞ?」
「ええ。並みの操縦者なら加速するだけであばらを骨折するかもしれませんね。ですがMk-Ⅲはタイプで言うなら突撃殲滅型。相手がどんなに強固な装甲や特殊兵装を持っていてもそれを上回る圧倒的な攻撃力・加速力で接近・撃破・急速離脱。それがMk-Ⅲのコンセプトですから」
「しかし使いこなせなければ意味がない・・・・・・それに使っている武装もまた一癖ありそうだな」
「そればかりは秋くんを信じるしかありませんね。でもMk-Ⅲの武装は秋くん以外には扱えないと思いますけどね」
全員がモニターに注目する。そこに映っているのは未だにまともに動かすことに出来ない秋とどうしたものかと頭をかく一夏だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「うらっ!」
「くっ!?」
すでに試合は30分が過ぎていた。結局、孤狼の加速を扱うことが出来ず、どうせこの加速を扱いきれないならと俺はステークを前に構えたまま突撃するという戦法を取っていた。まあ開き直ったともいえるが・・・・・・。
「たくっ・・・・・・んな戦いありかよ」
「ありだよ。どうせまともに動かせないんだ・・・・・・突撃あるのみ!」
「そうかよ!」
案の定やりづらいのか回避を続ける一夏だったが、近接ブレードを構えなおし、攻撃の姿勢を見せる。
「おおおおっ!」
ブレードを構えたまま加速し、刃を振りおろす。それをステーク受け止め、左手の三連マシンキャノンを一夏の腹に向け、撃つ。
「うわっ!」
前面に展開されたエネルギーシールドにマシンキャノンは防がれるが何発かはシールドを抜き、白式の装甲を破壊していく。
「いいのか?ISバトルはシールドエネルギーがゼロになったら終わりなんだぜ?」
そうISバトルはどちらかのISのシールドエネルギーを先にゼロにしたほうが勝ちとなる。しかし、シールドエネルギーを貫通するほどの攻撃力があれば装甲まで達することも出来る。そんな場合は装着者を守る為に絶対防御と呼ばれるものがISのコアによって判断され発動されるのだが、これは通常よりも多めにシールドエネルギーを消費する。(ただし装着者に危険が及ばないと判断されれば絶対防御は発動しない)しかもこの絶対防御も完璧ではないらしく、中には絶対防御すらも突破して装着者にそのままダメージを与えることも可能なのだ。つまり上手くやれば死なない程度に相手をいたぶることか可能だということだ。
「分かってるよ!おらっ!」
と一夏から再び振るわれるブレードをステークで受け止める。が、一夏はそこからがら空きだった右わき腹に蹴りを叩き込んでくる。
「しまっ!?」
体制が崩れたところを一夏のブレードが孤狼の装甲を浅めだが切り裂く。しかし、今度は俺が一夏の腕をつかみお返しと蹴りを放つ。それを受けて一夏の体が横にくの字に折れ曲がる。本当ならさらにもう一撃叩き込みたいが、今までの経験(兄弟喧嘩)から一夏がカウンターを狙っている気がして追撃できない。昔から一夏はそう言うところが上手かった。
「(ちっ。一旦、距離を取るか)」
そう判断すると左腕のマシンキャノンで弾幕を張りながら後退。どうやら一夏の武器は近接ブレードしかないようで接近するのを諦め、守りの態勢をしながら後退して行く。
さて、どうしたものか・・・・・・。
距離を取ったことで一回戦略を組みなおす。シールドエネルギーはまだ余裕があるが扱いきれない孤狼の加速力ゆえに決定打を撃つことができない。せめてこの加速を自由に使いこなせれば・・・・・・。
「こうなったら一か八か。賭けてみるか?負けても失うものはないしな」
それに分の悪い賭けは嫌いじゃない!
スラスターを吹かし加速。一夏もブレードを構えるが。
「俺のほうが早い!!」
さらに踏み込むべく加速する。ドンッ!という音と共に一夏と俺の距離を詰める。
「ぐぅっ!?」
急激な加速に骨が軋み、肺が押しつぶされそうな感覚を覚えるが俺は思いっきりステークを振りぬく。
「やらせるかーーーー!!!」
しかし一夏も負けまいとブレードを振り下すがお互いのシールドを削り相打ちとなる。そのまま立つ位置が入れ替わり、急速反転しながら右腕のステークを突き出すが同じように反転していた一夏もブレードを振るっていて簡単に切り払われる。だが、それすらも予想済み。一夏のISには射撃武器がないのでマシンキャノンを撃ちながら再び距離をあける。
「なぁ秋。お互いそろそろ決めないか?」
シールドエネルギー残量を見れば既に100を切った。あと一回か二回攻撃を受けるか。絶対防御が発動されれば俺の負けが決まる。
「そうだな。そっちは残りのシールドエネルギーも少ないだろ?」
「それはお互い様だろ?」
「確かに」
ニヤリと笑みを浮かべ、俺はステークを、一夏はブレードを構える。そして同時に飛び出し、互いの得物がぶつかり合ったその瞬間だった。アリーナを赤と白の光が包み込んだ。
《フォーマットとフィッティングが終了しました》
「「へ?」」
突然、モニターに表れた文字に二人揃ってマヌケな声を出してしまう。しかし、次の瞬間、意識に直接データが流れ込む。目の前に次々と空間ウインドウが開きデータが表示されていく。さらに中央に確認のボタンが現れ、押すと表示されていたデータが整理されていく。しかし変化はそれだけではなかった。纏っていたISの装甲が粒子化し再構成されていく。
「なるほど“初期化”と“最適化”ね・・・・・・」
装甲に受けていたダメージすらも回復し新しく形成されたISの装甲。それは重厚でありながらも洗練された装甲に変わり、新たに幾つかの武装も追加されていた。
「頭部兵装のヒートホーン、両肩のスクエアクレイモア・・・・・・なるほど、接近特化の武装か。確かにこれらの武装は俺向きだ!」
どうやら俺だけじゃなく一夏のほうも一次移行が終わったようだ。白の騎士はより洗練された姿に変わっていた。一番目を引くのは非固定式の大型ウイングスラスターだ。放たれる光の粒子が光の翼に見える。
「これは雪片・・・・・・?」
「!!!」
一夏が呟いた言葉。雪片。それは姉貴が使用していたISに装備され、振るっていた刀と同じ名前だ。そうか一夏のISは姉貴の力を受け継いでいたのか。姉貴に憧れ、その背中を追っていた弟としては雪片を受け継いだ一夏に少し嫉妬する。
「あ、秋・・・・・・」
「気にするなよ。俺じゃあ、その刀は生かせない。だからお前が振るったほうが姉貴も喜ぶさ」
「そうか」
「そうだ」
くつくつと二人で笑う。どうやら俺たちは本当に姉貴が好きらしい。まああの姉貴だからなのかもしれないが・・・・・・。
「じゃあ続けようか?」
「そうだな。やろうぜ!」
「姉貴と同じ刀を使うんだ・・・・・・無様な姿をさらすなよ?」
「ずっと壁に激突しているお前に言われたくねぇよ」
「そりゃそうだ」
一夏は感触を確かめる為に軽く振るってから雪片(正確には雪片弐型らしい)を構えなおす。すると雪片弐型の刀身が展開し白い光の刃が現れる。
「行くぞ!秋!!」
「ああ、来い!一夏!撃ち貫く!」
刀を振り上げ、ブーストしてくる一夏。対しリボルビングステークを構え、突撃。赤と白の閃光が幾たびも激突し宙を舞う。お互いにもうシールドを使うわけには行かないので、その攻防は激しくなっていく。
「(どうせだ。やってみるか!)」
それはブロウニングとの特訓でものにすることができた瞬時加速。これを使えばたとえ代表候補生といえど遅れを取らない。しかし、これが使えるのは一度のみ。外せば、敵に読まれ、逆にカウンターを取られるからここ一番というとき以外は使用しないほうがいいとブロウニングは教えてくれた。
「(行くぜ。瞬時加速!!)」
一夏よりもさらに早い加速。ハイパーセンサーが捉える一夏の驚愕の顔。自身に襲い掛かる殺人的なGに耐えながら、振りかぶったリボルビングステークを突き出す。だが、一夏も雪片弐型を振り下ろす。それを咄嗟に頭部のヒートホーンで受け流す。絶対防御の発動を狙っていたのだろう一夏の顔に驚きと焦りが生まれる。その一瞬が命取りだった。
「獲った!!」
さらに踏み込むべく加速。突き出したリボルビングステークが一夏のシールドに突き刺さり、突破。ステークが白式の胸部装甲を捉え、俺はそのままリボルビングステークを振りぬいた。
「(・・・・・・トリガー引き忘れた)」
本来ならトリガーを引いてステークを叩き込むのだが、今回はそれを忘れ、ただステークで殴っただけだった。
「うわああああああっ!?」
孤狼の加速で得たステークの一撃は白式の残りシールドエネルギーを奪い取り、振りぬいたことで吹き飛ばされる一夏。しかし、俺に一夏を見る余裕はなく全神経を着地へと向ける。
ズドーーーーーーン!!
ズガァァァァァァンッ!!!
一夏が地面に落ちる音にかき消されるようにまるで激突するように地面を削る孤狼。片膝を付いてはいるがなんとか姿勢を制御し着地することができた。
『試合終了。勝者!織斑秋!』
ブザーと共に聞こえるコールの中、孤狼の装甲がスライドし余熱を吐き出す。俺はゆっくりと立ち上がるとアリーナの席を軽く見回し目的の人物を見つけた。
アリーナで戦いを見ていたオルコットにゆっくりと右腕をあげ、指をさす。
「待たせたな。オルコット。次はお前だ!」
言葉が届いたのかわからないがハイパーセンサーに映ったオルコットの顔は少し青ざめていた。
それが俺からの宣戦布告だった。
ご意見、ご感想をお待ちしています。