IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

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うぅ…福音戦に入れなかった…

今回から少し話が重くなります。いつものようにやらかした感が満載ですが、この作品の、謎に迫る部分が多く出ますのでご容赦いただければと思います。


STAGE30

「では現状を説明する」

 

旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷に集められたのは教師陣と俺たち専用機持ち、さらに北村さんたちPT部隊、ギリアムさん、ラミアさん、ロブ、ついでに束さんがそろっていた。

 

薄暗い大座敷には束さんが用意した空間投影ディスプレイが浮かび、操作をしている。

 

「四時間前、ハワイ沖にて停泊していた軍艦からアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代軍用IS『銀の福音<シルバリオ・ゴスペル>』が強奪され、僚艦を沈めた後に逃亡。追跡していたアメリカ・イスラエル両軍のIS部隊を撃墜したという連絡があった」

 

そう黙々と説明する姉貴。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はこちらの方へと進路を取っている事が分かった。これが一時間前の情報だ。流石にここを戦場にするわけにはいかん。よってここから二キロ先の空域で迎撃することが学園上層部によって決まり、先ほど通達があった。福音がその空域に到達する時間は五十分後と予想される」

 

隣に立つ一夏が唾を飲み込む音が聞こえる。

 

「教員は学園の訓練機を使用して空域、海域の封鎖を行う。よって福音の迎撃はお前たち専用機持ちが当たることになる。北村少佐、ギリアム少佐そちらには何か?」

「こちらにも連絡は来ているが…俺たちはまだ日本の所属扱いだからな、上が二か国によって抑えられているそうだ。今回の件に関して許可が出ない限りPTを出すことができないのが現状だ」

「俺たちの方も現在似たようなものだ。委員会としては今回の強奪事件に対し介入したいのだが、開発に係った二か国のトップが機密だと許可を出さないらしい。アラスカ条約でISを兵器として使用しないという条項がある以上、向こうとしては軍用ISの存在とそれが奪われた事を内密に処理したいというのが本音だろうがな」

 

北村さんもギリアムさんも苦々しい表情をしている。俺はそれを聞いて一つの疑問が浮かび質問することにした。

 

「質問です。何故、国のPT部隊や国際IS管理委員会のほうが出張れないのに俺たちは戦闘行為が許可されたんですか?」

 

自分でも不思議ではあった。専用機を確かに任されているがどう考えても経験不足な学生たちが当たる事案とは思えない。特に相手は軍用ときた。つまりいつもの様な試合ではなく死合だ。いや、命の危機を感じた戦いは別に初めてではないが……

 

「……IS学園は表向き日本が主導になっているが実際は各国の政治や軍事などの絶妙なバランスの上で成り立っている。IS学園に各国が干渉できないようになっているのもそう言った事情があるからだ。でなければIS学園はどこの国の軍隊よりも圧倒的な軍事力を保有する機関になってしまい下手すれば一国が過剰な戦力を手にすることになってしまうからな。だからIS学園は基本的に中立の立場にあるし各国の問題には関わらない。しかし今回のような緊急事態に対しては学園上層部の判断によっては解決に動く場合もある。まぁ、そんな事自体、異例なことだがな」

「分かりました」

 

俺の質問に答えてくれた姉貴に頭を下げる。

 

「では作戦会議を始める。意見があるものは挙手するように」

「はい」

 

手を挙げたのはアリスだった。

 

「目標ISの詳細なスペックデータと両軍IS部隊との戦闘データの提示を要求します」

「分かった。ただしこれらは二か国の最重要軍事機密だ。決して口外はするな。情報が漏えいした場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」

「了解です」

「スペックと映像出すよ~」

 

束さんの呑気な声と共に映像が映し出される。そこにはISとは思えない異形が映し出された。機械と植物が融合したような姿と言った外見をしている。これを見て人間が強奪したと考える奴はいない、そう感じるくらいだ。

 

「これが…IS?」

「バカな…アレは」

 

映像に映し出された異形は銀の翼から大量の光弾を撃ち出すと包囲していた米軍のIS部隊を攻撃していた。その攻撃は全方位へと弾幕を張っており、次々と各ISへダメージを与えていく。近接ブレードを装備した一機のISが接近戦を仕掛けるが福音は銀の籠手を装備した左腕からビーム刃を生み出し、近接ブレードを切り裂いた後、その変化は起きた。

 

「「「「「「な!?」」」」」」

 

右腕が割け、まるで巨大な獣の口のように変化すると退避しようとしていたISへと突出し……

 

「食ってやがる…」

 

音声はないが映像の動きからISの装着員が泣きわめいているのが分かる。右腕が変化した口が動く度に装着員の体が飲み込まれていく。そして完全に食われた。その後はもう酷いありさまだった。記録を取っている者以外が攻撃をするが異形にはまったくダメージが入っていない。そして次々に右腕に食われていく。最後に残されたのはこの映像を記録していた者。異形の左腕から伸びた蔦に貫かれたのか映像が揺れる。そして迫る右腕…結局、他の装着員と同じ結末をたどった。そこで映像が終わった。

 

「いや…ありえないだろ!なんだよこれ!?」

 

一夏が叫ぶのも無理はない。強奪されたIS?そんなもんじゃないだろ?なんだよアレは!!

 

「おい。ギリアム…アレを学生に相手させるわけにはいかん」

「ああ。アレの相手は俺たちがするべきだ。早急に上にかけ合わなければ」

「俺のほうも上に申告しよう」

「織斑先生。この映像は?」

 

ギリアムさんの質問に姉貴は首を振る。

 

「いや、そちらの方へは言っていない筈だ。こちらも相手をするのだから情報提供位しろといって漸く渡してきたものだ」

「こんな映像見ればそんなこと言っている場合ではない事くらいバカでも分かるぞ」

「だが、俺たちが見れたことは幸運だと思うべきだろう。これなら委員会としても動ける」

「ああ。幸いというべきか日本の領域内に戦闘区域が入るからな。こちらとしても動く口実にはなる」

 

北村さんとギリアムさんが頷き、端末で連絡を取り始める。ラミアさんも映像を睨むように見ていたがギリアムさんへと近づき何かを相談しているようだ。俺はそれを眼で追っていると。

 

「…あれはアインストだよ」

「え?」

 

アリスのつぶやきが聞こえ、顔をそちらに向ける。その時、アリスの目が赤く輝いたように見えたが、すぐに青色に戻ってしまい気のせいかと思った。

 

「秋君…お願い。手を握っててくれるかな?」

「あ、ああ」

 

アリスが出したその手は小刻みに震えていた。俺はその手をしっかりと握る。こんな様子のアリスは初めて見た。

 

「ん…ありがとう…」

「気にすんな。それよりも…アインストって言ったよな?」

「うん」

「知ってるのか?」

 

その問いに俺の手を握る強さが強くなる。

 

「…知ってる」

 

そう呟くアリス。良く見れば体も震えている。

 

「…秋君もよく知ってるはずだよ?」

「…?……ッ!…ああ。思い出したわ」

 

アリスの言葉でアレによく似た存在を俺は思い出した。俺がシステム・ベーオウルフに飲み込まれている時に出会った平行世界の俺。体の半分がアレと似た状態になっていた。

 

「(つまり、平行世界の俺はアレと同じ存在になりかけたか、なったか、と言ったところだな)」

 

それに“俺”は言っていた「こちらの世界にはまだアイツがいる」と。それはアインストの事じゃないのか?そして「その身に種を宿している」という言葉。それは俺の体にはアインストの種が宿っているということになる。

 

「(それが本当なら…?)」

 

そこで俺は隣を見る。未だに震えているアリス。彼女もアインストの種を宿している?訳が分からない。一体、種ってなんなんだ?そういえば少し前に聞こえた声。

 

『…コレカラアイニユコウ』

 

つまり、アイツの目的は俺とアリス!?

 

俺は得体のしれない恐怖に襲われる感じがした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「少佐」

「ああ。アレは間違いなくアインストだ」

 

ラミアが周りに気付かれないようにギリアムに言う。

 

「ですがアインストは私たちが大本を倒したことにより消滅したはずですが…」

「イェッツトとも違う。見た目は完全にISに寄生したアインストのようだが」

 

彼らはこの世界に来る前の自身の世界でアインスト達と戦ったことを思い出した。女王蜂と呼ばれていたアインストの大本に当たる存在を倒し、アインストは全て消滅したはずだった。

 

「…俺たちもレーツェルたちと合流するべきかもしれんな」

「アルフィミィなら何か知っちゃっていたり?…ゴホン、失礼しました」

「フ……知っちゃっていたりするかもしれんな」

 

ラミアに答えながらもギリアムは思案する。

 

「(この世界に来てから俺たちのPTや特機は起動することが出来なくなった。となれば戦力として考えられるのは篠ノ之博士が作ったISとこちらの世界で生まれたPTのみだろう)」

 

そこで千冬や他の教員たちと話や指示を出す束をみる。

 

「(篠ノ之博士をただの天才と言うにはおかしな点がいくつもある。…まさか彼女は“叡智”に触れたのか?とすれば彼女はいずれ“太極へ至る者”になる可能性がある訳だが……)」

 

そう考え束を見ていたギリアムに気が付いたのか束はギリアムを見て首をかしげる。

 

「(今は様子見しかないか)」

 

そこでギリアムはラミアへと視線を移した。故に気が付かなかった。束がニヤリと黒い微笑を浮かべた事に。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

今回の作戦は簡単に行ってしまえば銀の福音、いやもうアインスト・ゴスペルと呼ぼう。そのアインスト・ゴスペルを撃墜することだ。しかし問題はその方法だ。映像を見ただけで分かっていることは翼から放たれる光弾は一発一発は威力が少ないようだが弾幕と言っていいほど大量に放たれる。そしてそれをかわしても左腕から伸びる蔦。シールドエネルギーをあっさりと貫通しISの装甲を貫いている事から当たればただでは済まないだろう。そして一番問題なのは右腕…

 

「どの距離にも対応できるオールラウンダーの化け物か…」

「うん。私たちの戦力だとほぼ近距離特化が多いから、まずはあの翼を破壊することから狙うべきだと思う」

 

俺の呟きに答えたのは簪。彼女も空間投影ディスプレイを見ながらキーボードを叩く。

 

「そうですわね。遠距離からの攻撃となるとわたくしとラウラさん、シャルロットさん…後はアリスさんも加わってもらいたいのですが?」

「…私は今回前衛に出るよ。福音をセシリアちゃん達へ行かせないようにしないといけないし」

「それもそうですわね…」

「そうだ。皆、超高感度ハイパーセンサーは使えるよね?」

 

束さんの問いに俺と一夏以外が頷く。

 

「俺は使った事ないけど?」

「俺もだな?」

「あんたたちは普段から高速戦闘しているでしょうに…」

「そうだね。孤狼のハイパーセンサーは特殊だから問題ないし…いっくんの白式はっと…うん、こっちも最適化されているから問題ないね」

 

鈴が呆れ、束さんが片手間に見てくれた。片手間とはいうがその作業はとても速い。さすがというべきか。

 

「それで、まずは遠距離の攻撃で福音を足止めしつつ、スラスター兼特殊兵装である『銀の鐘<シルバー・ベル>』を破壊。そして接近戦組が仕留めるというわけだな」

「ああ。俺が懐に飛び込んで零落白夜で決める」

 

箒に一夏が答える。

 

「うし!なら俺はあの右腕を破壊するか!」

 

右拳を左掌にぶつけ気合を入れた時だった。弾かれるたように一夏、箒、鈴、姉貴が揃って俺を見た。

 

「お前…行くつもりか!?」

「戦闘領域は海上だぞ!?」

「撃墜されて海に落ちたらどうするのよ!?」

「織斑弟…無理するな…無理に参加する必要はない」

 

めっちゃ心配されました。いや、確かに海…というか水は怖いし、落ちたらどうなるか分からないけどさ…

 

「だ、大丈夫だって!俺も戦える!!」

 

そう言うが何故か皆、微妙な表情になっている。

 

「まあいいじゃん。最悪、私が助けるよ」

 

そんな空気を壊すかのように、にぱっと笑顔で束さんが答える。

 

「姉さん。その時は頼む」

「まかされた~」

 

箒に頼まれ束さんは手を上げる代わりにウサミミが動いた。

 

「そ、そうだ。マオ社から孤狼用のアサルトブースターが届いてたんだっけ?この作戦できっと役に立つから装着しとかない?」

 

ポンと思い出したようにアリスが言う。それを聞いた姉貴はアリスに問う。

 

「ブロウニング。量子変換にかかる時間は?」

「それは大丈夫です。展開した孤狼に装着するだけの代物ですから」

「使い捨てなのか?」

「はい。私のファントム用のもあったはずなので一緒に装着します」

「分かった。すぐに始めろ」

「了解です」

「なら俺も手伝おう」

 

アリスの返事にロブが答え、俺たちは大広間を出て浜辺へ移動する。

 

「先に行っていてくれ!忘れ物をした」

 

ロブに言われ、二人で浜辺へ移動する。そこには短時間であったため回収しきれなかった資材の中でも大型のコンテナが置いてあった。その中にあるマオ・インダストリーのロゴが入ったコンテナを開ける。その中に収められていたのは一見すると戦闘機の様なシルエットを持った部品だった。

 

「これか…よしさっそく」

 

孤狼を展開しようとすると裾を掴まれ、振り向くとアリスが弱気な表情で尋ねてきた。

 

「怖くないの?」

「……どういう意味だ?」

「君は見たんだよね?アインストになった“自分”を…」

 

その問いに俺の目は見開かれる。どうして彼女はそれを知っているのか?!

 

「な、なんで?」

「私も知っているから…今までは平気だったの。因子の活性なんてほとんどなかったし、君が一度システムに取り込まれた時に因子を活性化させたけど短時間だったら大丈夫なんて思ってた。でも今度は違う。アインストと戦う…それに」

 

どんどん声に力が無くなっていき自分の体を抱きしめるようにして言うアリス。

 

「俺だって怖いさ」

「え?」

「“俺”と相対した時、否定はしたさ。自分はお前にならないって…でもこれから戦う相手に感じているのは恐怖だ。俺も“俺”のようになるのかもしれない。そう思うと行きたくはない。でもそうはいかないだろう?」

 

アイツは人を喰っていた。映像では見知らぬ他人。でも今度は自分の知り合いかもしれない。

 

「行かないで後悔するくらいなら、行って戦うほうがマシだ。それにあいつを倒さないと俺は前に進めない気がする」

「…私は今まで向き合っていたようで向き合っていなかったんだよ…結果が良かったから気にしてなかっただけで。でも、浜辺で声を聴いて、あの映像越しなのにわかっちゃったの!体が震えて止まらないの!あのアインストが間違いなく私を生み出したものだって分かるから!」

 

アリスを生み出した?アレが?

 

「どういう意味だ?」

「私は九年前に飛行機事故にあったの」

「よく無事だったな…」

「そうだね。私以外に生存者はいなかった。でもね?私覚えてるの…事故直後に私の体は飛行機の残骸に胴体を潰されて下半身を失った筈なの」

 

は?

 

「その時、生きたい、死にたくないって強く思っていた。その時、声が聞こえたの」

「声?」

「君も聞いたでしょ?アインストの声」

 

頷く俺。アリスは空を見上げて続ける。

 

「『種をまく』、『サンプルの一つ』って。そして気が付いたら失っていた筈の下半身が再生した状態で飛行機の残骸の傍で倒れていて、当時ゲシュペンストMk-Ⅱの可動試験をしていたハウ社長が事故に気付いて救助してくれたの。その後はハウ社長が後見人になってくれて今に至るって訳」

「…まて。お前がそれでアインストの種を受け取ったっていうなら俺はいつ、どこで受け取ったんだ?俺は事故に合った記憶はないぞ?」

「……それは……」

 

言葉に詰まるアリス。

 

「何か知ってるのか?」

 

俺の問いにうつむくアリス。俺はそれを肯定と受け取りアリスの肩を掴んだ。

 

「教えてくれ」

「…でも」

「どんな事実でも受け入れる。お前が言い淀むっていうことは碌な真実じゃないんだろ?」

 

そう言うがアリスはうつむいたままだった。俺はもう一度問いかけようとして。

 

「ブロウニング」

「お、織斑先生…」

「姉貴?」

 

こちらを、いやアリスを睨むように見ている姉貴がそこにはいた。

 

「織斑弟、ブロウニング。作戦開始まで時間がない。早くしろ」

「姉貴は何か知っているのか?」

「……なんのことだ?」

「アインストについてだ!」

「……今は関係ない。作戦に集中しろ」

 

そう言って背中を向ける。それは姉貴がこれ以上しゃべる気がないということだろう。

 

「分かった。ならこの作戦が終わったら聞かせてもらうぞ」

 

それに答えず去っていく姉貴の背中を見続けた後アリスへと向き直り。

 

「ご、ごめんね…私、余計なことを…」

「アリス。いや、ありがとうな?お前だって話したいわけじゃないだろうに…とにかく今は作戦を終わらせることだけを考えよう」

「…うん」

 

いつも笑顔でいるアリスがここまで弱気になっている姿を見るのは初めてだった。少し悩んでからアリスを抱きしめる。

 

「ふぇ?!」

「何かあったら…俺が何とかしてやる。絶対だ」

「あ、ありがとう…頑張るよ。私も」

「そっか」

 

離してから拳を突出し。

 

「じゃあ、行くぜ?」

「うん!」

 

その拳にアリスが合わせるように拳をぶつけた。

 

「あ!私を抱きしめた事、鈴ちゃんには内緒にしといてあげるね!」

 

いつもの笑顔でそういうアリスに俺は下手なことをしたかな?と頭をかくのだった。

 

浜辺に集まったのは俺たち専用機持ちのみ。すでにISは全員が展開している。北村さんたちは許可が下り次第出られるようにPTを準備している。

 

『全員、準備はいいな?』

 

ISのオープン・チャンネルを通じて姉貴の声が聞こえる。

 

「「「「「「はい!」」」」」」

『よし。作戦の概要を伝える。まず、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒは事前に打ち合わせした狙撃場所にて待機。織斑弟、ブロウニング、凰は目標を狙撃班の範囲内に留める様に攻撃を開始。篠ノ之、更識、布仏は領域に到達次第、特機の攻撃力を生かして目標へ攻撃。そして織斑兄。お前が確実に止めをさせ。福音に人が乗っているとは思えん。確実に破壊しろ』

 

そこで姉貴は一度言葉を切る。そして

 

『……全員、無事で帰ってこい』

「「「「「「了解!」」」」」」

『では、作戦開始!』

 

姉貴の号令と同時に俺たちは出撃した。

 

アサルトブースターを装着した俺の孤狼とアリスのファントムに牽引されるようになっているのは機体の性質上、エネルギーを温存したい一夏の白式・雪風と他の機体に比べると速度に劣る鈴の甲龍。その後ろにはラウラのシュヴァルツェア・レイブン、シャルのヴァイスリッター、セシリアのブルー・ティアーズがついてくる。そして海面を走るのは箒のグルンガスト零式、簪のグルンガスト弐式、布仏の弐式・改。

 

「(戦力は十分な筈だ…なのになんだ?この感覚)」

 

胸の奥に湧く不安。アインスト・ゴスペルに近づく度にその感覚は大きくなっていく。

 

「(それでもやるしかない!)」

 

俺は自身にそう言い聞かせながら拳を握りしめた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ソレはこちらに向かってくる者達に気が付き、その場に止まった。

 

「サンプルが揃った…今が芽吹きの時」

 

緑色の目が細まり、その先を見る。

 

「その進化、我が見定める。古き王はいない。故に我が新たな王となり新たな世界を作る。その為の種子、そして因子…」

 

両手を広げ、ソレは続ける。

 

「さあ、こちら側の始まりの地に住む者達よ。新たな宇宙にふさわしい生命体へと至れるのか見せてもらおう」

 

そして、ソレは彼らが来るのを待ち受けることにした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『…百邪が目覚めた』

 

蒼い光が暗闇に灯る。

 

『…アレは我らが滅ぼしたはず』

 

白い光が暗闇に灯る。

 

『否、似ているが…』

 

赤い光が暗闇に灯る。

 

『だが、百邪なら倒さねばならん』

 

緑の光が暗闇に灯る。

 

『『『『それが我らの使命』』』』

 

光が少しずつ形を変えていく。

 

『ならば、我らも新たな体を得ねば…』

『百邪の近くに破邪の強念を持つ者もいるようだ…』

『その者たちが人界の守護者たるものか…』

『見定めてみるか…』

 

そして、四つの光はそれぞれが姿を変える。

 

青い光は翼を持った龍へ、白い光は白き虎に、赤い光は炎の翼を広げた鳥に、緑の光は蛇の尾を持った亀の姿に。

 

だが、そのどれもが真面な形を保っていなかった。それでも四体は力強く鳴き声を上げ、姿を消した。

 




今回は敢えて多くはいいません。

次回をお待ちいただければと思います。

感想、意見をお待ちしています。

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