IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

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インフルB型からなんとか立ち直り、書き上げたので投稿します。


STAGE31

目的の海域で銀の福音を狙撃できる位置へと降り立ったセシリアは新装備を展開する。

 

「サイドアンカー地面に撃ちこみ完了…試作型超高出力レーザーキャノン“スター・ノヴァ”展開完了」

 

この装備は今回の試験運用で用意された代物。ぶっつけ本番で使用するのもどうかと思ったがセシリア自身、ブルーティアーズの弱点でもある火力面が低い事が今回の作戦で足を引っ張りかねないと思っている。その為、この装備を使うことを決めた。

 

「ホロスコープ展開。……スター・ノヴァ、バレル展開。さあ、始めますわよ」

 

自身の全長よりも大型のキャノンを構えてハイパーセンサーと同調させることでより精度の高い狙撃が行えるスコープで捉えるのは今回のターゲット。引き金に人差し指をかけ、軽く息を吐く。全意識を狙撃へと傾ける。

 

「皆さんの準備が終わり次第攻撃開始ですわね」

 

一方、空中で待機しているのはシャルのヴァイスリッターにラウラのシュヴァルツェア・レイブン。互いに新装備を今回の作戦で導入していた。

 

「シャル。準備はいいか?」

「うん。今回は僕も新装備、パルチザンランチャーを用意されていたからね。ラウラは?」

 

シャルロットがそう言って見せるのはオクスタンランチャーの後継型“パルチザンランチャー”。こちらも今回の試験運用で用意された武装。最大の特徴は砲身が上下に展開することで高出力モードであるXモードが使用可能になる事。さらにヴァイスリッター自身も各所のスラスターが追加され、OSも最新のものにアップデートされている。短時間の改装ではあったがヴァイスリッターの各性能は上がっている。問題はほとんど試運転していない事だが、それを言い訳にするわけにはいかない為、移動中にフィッティングを行い、最終調整を今行っていた。

 

「私もGスマートガンの試験運用をする予定だったからな。今回の作戦で使わせてもらう」

 

そう言ってラウラが見せたのはグラビトンライフルを改良し運用しやすくした武装“Gスマートガン”。集束、連射と使い分けられ、先端の銃口下部にはビーム刃発信機が取り付けられている。また機体の動力と直結させることで威力を上げることが出来る。ただ試作武装なため、少し大型ではあるが固定武装の集束荷電粒子砲に比べれば取り回しやすい利点がある。さらにアームドベースにはEバッテリーとマイクロミサイルユニットが追加されている。機体性能は変わらないが継続戦闘能力と火力が底上げされている。

 

「セシリア。準備は整っているな?」

『ええ。こちらは問題ありませんわよ』

 

セシリアの返事に頷き、ラウラは前線へ通信をつなげる。

 

「こちらは準備完了だ。いつでも始められるぞ」

『了解!』

『こちらも確認した』

 

通信からの返事はアリスと箒。

 

「カウント5からスタートだ」

 

ラウラの言葉にシャルロットがパルチザンランチャーを構える。

 

「4」

 

セシリアの構えるスター・ノヴァの銃口にエネルギーが集束していく。

 

「3」

 

ラウラの構えるGスマートガンをターゲットへ向ける。

 

「2」

 

三人が息をのむ。

 

「1」

 

ターゲットを捉える。

 

「0」

 

同時に火線が放たれ、銀の福音へと向かっていった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

後方からの攻撃が始まった。緑やピンク、漆黒の光が俺たちの横を通り抜け、元・銀の福音ことアインスト・ゴスペルへと向かっていく。

 

「行くぜ!皆!」

「「「了解!」」」

 

既に俺やアリスは機体からアサルトブースターをパージし加速。一夏はパージされたアサルトブースターを使い上昇、待機する。それをハイパーセンサーで確認しながら自身の役目を果たすためにアインスト・ゴスペルを見る。そこへ後方からの射撃が高い精度を持ってアインスト・ゴスペルへと直撃。

 

「なっ!?」

 

していなかった。機体周囲に展開されたエネルギーフィールドに後方支援組の攻撃は防がれた。それらは後方支援組も確認していたようで。

 

『効いていませんの?!』

『チッ!』

『なら、僕は前に出るよ』

『了解した。私も向かう。セシリア、ここはいいか?』

『ええ。構いませんわ。わたくしはここで福音の足止めをいたします』

 

オープン・チャンネルから聞こえる声を他所にアインスト・ゴスペルに接近していた俺は五連チェーンガン、アリスはナイトファウル、鈴は龍咆でアインスト・ゴスペルを中心に円を描く様に攻撃を仕掛ける。しかしエネルギーフィールドに阻まれ効果があるように感じられない。そしてアインスト・ゴスペルはその場に佇んだまま。

 

「ちまちま面倒ね!秋!アリス!接近戦仕掛けるわよ!」

 

業を煮やした鈴が龍咆を撃ちながらも双天牙月を取り出し両手に構える。

 

「仕方ねぇな。このフィールドを破らない限りダメージはなさそうだからな」

 

鈴に頷き、バンカーを構える。しかしアリスは。

 

「…………」

 

何処かためらっているように見えた。それに気が付いた鈴がアリスへ声をかけようとした時。

 

「待たせたな!」

 

箒を筆頭に簪、布仏が海上を滑る様に向かってきている。

 

「離れろ!三人とも!!」

 

箒が叫び、俺たちが距離を開けると三機はそろって胸部装甲にエネルギーを集め。

 

「ハイパーブラスター!」

「「マキシブラスター!!」」

 

高出力の熱線。そこで漸くアインスト・ゴスペルに動きが見られた。背中のスラスターを吹かし、その場を離れる。だがその先に居たのは双天牙月を両手に構えた鈴。

 

「待ってたわよ!福音!」

 

繰り出される双刃の連撃に左腕から蔦を伸ばし防戦へと入るアインスト・ゴスペル。

 

「後ろがら空きだぜ!」

 

その背後に飛び込み、バンカーを叩き込む俺。吹き飛ばされるアインスト・ゴスペルへ双天牙月を叩き込む鈴。再び吹き飛ばされたアインスト・ゴスペルへ飛びかかったのは零式斬艦刀を振りかぶった箒。

 

「チェスト―――――!!」

 

斬艦刀のスラスターが全開になり強力な一撃を叩き込まれたアインスト・ゴスペルは海面へと叩き落された。

 

「決まったか?」

「いや、手ごたえが感じられない」

 

俺の言葉に箒が変えす。追撃をかけようと俺がバンカーを構えた時だった。

 

「この地でもまた繰り返されるのか…お前たちはその力を持って『門』を開くのか?」

 

アインスト・ゴスペルがそう問いかけてきた。

 

「門?」

「そうだ。この地に開かれたかの門は今は閉じている。だが、お前たちのその力…いずれあの門を開く可能性へと至る」

「何を言って?」

 

俺が眉根を寄せ尋ねる。しかしアインスト・ゴスペルは気にせずしゃべり続ける。

 

「否、既に古の記録に…叡智に触れた者もいる。我が我でいる理由もその者の行いが故だ」

「どういう意味?」

 

アリスも気になったのか尋ねる。

 

「叡智に触れた者に振り回されるお前たちではこの宇宙の静寂と秩序を乱すだけ。この世界のすべてが未熟のままだ。よってお前たちはこの先に進む価値なし。我が種子を受け継ぎし者たちよ。新たな生命へと至り、新たな宇宙の生命体となれ」

 

そう言われた瞬間、悪寒が奔る。本能が告げる。ここに居ちゃダメだと。

 

「古きもの、対を成さぬ者では失敗した。ならば今度は対を成す者で試そう。始まりの地にて知恵の実を食らった人間たちよ。我がアインストの種子をもって新たな生命体へ至るがいい!」

 

そうアインスト・ゴスペルが叫ぶのと同時に放たれた波導。それを受けた俺は内側から湧き出るものに塗りつぶされた……

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「がああああああああああああああああ!!!!!!!!」

「いやあああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

上空で待機していた俺が見たのは秋とアリスが頭を抱え悶える姿だった。福音から圧力を感じたが二人以外は少し気圧されたぐらい。でも二人は違った。

 

「いや!いやいやいやいやいやいやいやいや!!!入ってこないで!私が…私じゃなくなる!!!」

「あああああああああ!?!?!頭が割れる!!!俺はお前じゃない!!俺は…お前にならない!!?」

《秋!しっかりしてください!》

《アリス!くっ!何が起きていやがる?》

 

特にアリスの様子が酷い全身装甲が解除され、通常のISと同じような装甲になっている事で表情が見える。目を見開き、涙を流しながら喘いでいる。気のせいかその瞳は赤く輝いているようだが。

 

「くっ…今いくぜ!」

 

作戦とか言っている場合じゃない。二人を速くここから遠ざけないと。

 

そう決意し背中のスラスターを吹かし向かおうとした時だった。

 

「ふふふ。様子を見に来てみれば面白い物がみれそうね?」

 

突如、声が聞こえ、聞こえたほうへ振り返るとそこにはいつの間にか仮面をつけた黄金のISがいた。

 

「なんだ!お前は!!」

 

雪片を抜き構える。だが相対して分かる。

 

「(こいつ…強い)」

「どうやら力量差は分かるくらいは分別があるようね…私は亡国機業のスコールというものよ。よろしくね?」

「亡国機業?」

「ええ。まあ分かりやすく言えば…悪の秘密結社っていったところね」

「悪いけど、今は弟たちを救う方が大事なんでね」

 

逃げられるとは思っていないがスコールと名乗った女性から距離を取ろうとした。

 

「あら?つれないわね?もう少しお姉さんの相手をしてもらえるかしら?」

「!!!」

 

いつの間にか背後にいた。いや前にもスコールがいる…と思ったら歪んで消えてしまった。

 

「ふふふ。あっちは残像よ」

 

クスクスと上品そうに笑うがこっちはそんな余裕がない。だがやらないといけない。

 

「いいぜ。相手してやるよ!」

 

瞬間、全身装甲へと姿を変えた俺のISを見てスコールは。

 

「いいわね。元気な男の子は好きよ?」

 

両手に炎を宿し戦意を上げていく。だから俺は叫ぶ。

 

「箒――――!!二人を頼んだ!!」

 

一番信頼できる人に。そして俺の戦いが始まった。

 

一方、一夏に頼まれた箒はアリスへと組みついていた。秋の方は鈴が向かったからだ。簪と本音は未だ嫌な気を発したままの福音へと戦いを挑んでいる。二人がおかしくなったのは間違いなく福音のせいだと判断したからだ。

 

「落ち着け!アリス!!」

 

暴れるアリスへ声をかけるがアリスの瞳に光は宿っていない。箒の声が届いていないのは明白だった。

 

「こうなったら気絶させてでも!」

 

零式の拳をアリスの腹部へ叩き込む。

 

「ガッ?!」

 

ガクッと意識を失ったアリスを抱え、この空域から離脱しようと反転すると急にあたりが暗くなり始める。

 

「なんだ?」

「逃がすわけにはいかん」

 

福音がそう呟く。その呟きをハイパーセンサーが拾い、箒がアリスを担いだまま振り向くと。

 

「な…?!」

 

宙にいくつもの岩が浮かんでおりそれが円を描いている。それはまるでストーンヘンジのようになっていた。そこから現れるのは福音に似た姿を持った異形の生物達。動物の骨のような外見をしたものに、植物の様な姿をしたもの、鎧を纏ったもの等、多数の外見を持った者がそのストーンヘンジから現れる。その数は五十。そして一斉にこちらへ向かって攻撃を仕掛けてきた。

 

植物の様な姿をした者達が赤い宝玉からビームを撃ち出してくる。

 

「くっ!」

 

アリスを担いでいる為、箒は片手で零式斬艦刀を扱う事になった。しかし、それでは彼らの攻撃に対処しきれない。箒が焦り、わずかにその刃を鈍らせた瞬間に鎧姿の者たちが箒へと群がる。彼らは腕を飛ばしたり、胸部からビームを撃ち出すなどの攻撃を仕掛けてきた。それらを防ごうとした時だった。

 

「しまった!?」

 

攻撃があたり零式斬艦刀を手放してしまう。

 

「くっ…ハイパーブラスター!」

 

熱線で焼き尽くすもその射線から逃れた者たちが向かってくる。そしてついに取りつかれ始め、箒はアリスごと海面へと叩き付けられてしまった。しかし、彼らは箒に興味はないのか二体がアリスを両脇から抱えるとその場から離れようとする。

 

「待て!アリスを離せ!」

 

残った鎧たちを剥がしながら箒が叫ぶ。だがそこへ骨姿の者たちが左腕の巨大な腕を振りかぶり零式へと攻撃を仕掛けてくる。そして箒は海中へと引きずり込まれていった。

 

「もっぴー!」

 

福音へと向かっていた本音が箒の様子に気が付く。

 

「本音!行って!」

「行ってくる!」

 

計都瞬獄剣を構えた簪が本音にそういうと本音は踵を返し、加速する。

 

「計都凶殺戟!」

 

柄を伸ばし刃が形成された戟を構え鎧たちの元へ飛び込むと横薙ぎに一閃、破壊する。しかし敵はまだ大量にいる。

 

「うぅ~いっぱいいるよ~」

 

箒を助け出したいが敵のど真ん中へと飛び込んでしまった本音も箒の二の舞へとなりかけたその時だった。

 

「マトリクス・ミサイル!ファランクス・ミサイル!全弾発射!」

 

声と共に本音の周囲に大量のミサイルが前方と上空から降り注ぐ。

 

「本音!ここは私が受け持つ!」

 

ヘヴィ・リニアライフルとリニアライフルを両手に持ち砲撃するラウラがいた。

 

「らうっち~!お願いね!!」

「任せろ!」

 

ラウラにお願いし、本音は海中へと入る。その中では箒を蔦で動きを封じ海中に引きずり込もうとする植物の様な敵と身動きが取れない箒へ攻撃を続ける骨の様な敵。本音はそれを確認すると背中にマウントされているドリルユニットを左腕に装着。

 

「ドリルブーストナックル!」

 

左腕が勢いよく射出される。狙うは箒をからめ取っている蔦。海中である為、その威力がいくらか軽減されてしまってはいるが蔦を引きちぎることは問題ない。そして実際に蔦はドリルブーストナックルで引きちぎられる。

 

「助かった…いい加減離れろ!!」

 

攻撃を加えようと接近してきた骨の様な敵の頭を掴むとそのまま握りつぶした。そして彼女はそのひと振りを抜くことに決めた。

 

「護式・斬冠刀・紅…私に力を貸してくれ!」

 

手に呼び出すは白塗りの鞘に納められた日本刀。抜刀と同時に周囲に居た敵を切り捨てた。水の中で振るったその刃は抵抗を感じさせない速度で振り抜かれており、本音が拍手をしていた。

 

「やったね!」

「うむ。早く上に戻ろう」

「うん」

 

箒と本音が海上へと戻るとそこではラウラが孤軍奮闘を続けていた。

 

「ラウラ!今いくぞ」

「おまたせ~」

 

箒が抜刀した斬冠刀を本音が計都凶殺戟を構えてラウラの元へと合流するべく突撃していった。

 

「この!」

「この距離なら!」

 

計都瞬獄剣を振りかぶった簪と合流したシャルロットがパルチザンランチャーのBモードで攻撃を仕掛けていた。しかし福音はカノンモードに切り替えた銀の鐘で周囲に弾丸をばら撒き簪を近寄らせず、シャルロットの攻撃はエネルギーフィールドを貫き装甲へとダメージを与えるがすぐに再生してしまう。

 

「ダメ。通らない」

「自己再生持ちとかって卑怯だよね」

『お二人とも射線から離れて!』

 

セシリアの声に二人が福音から離れるとスター・ノヴァの砲撃が福音へと直撃する。

 

「む?」

「「通った?!」」

 

今まではエネルギーフィールドに阻まれていた砲撃がフィールドを貫いた。しかし、ダメージはすぐに再生してしまう。

 

「…お前たちは理解しているのか?その力が…静寂を乱すということに…」

「お前の言っている事は分からないよ!」

「同感。貴方から感じる気配は嫌な気配。それだけで今は十分!」

 

セシリアからの砲撃に合わせるようにシャルロットはパルチザンランチャーのリミッターを解除する。

 

「パルチザンランチャーXモード!」

 

銃身の上下が展開し高密度のエネルギーが銃口に溜まっていく。

 

「発射!」

 

放たれた高出力ビームはフィールドを貫き、福音の装甲を焼いていく。

 

「今が好機!計都瞬獄剣・本命殺!」

 

それぞれが放てる最高の威力を持った攻撃が福音を襲う。簪も、シャルロットも、手ごたえを感じていた。故に隙が出来ていた。

 

「!!」

 

最初に気が付いたのは簪。念能力者としての彼女が感じたのは異様な念。シャルロットへ逃げるように声をかけようとしたその時。

 

「え?」

 

煙の中から勢いよく突き出されたものがシャルロットをヴァイスリッターごと貫く。それは蔦だった。福音が左腕から伸ばして攻撃に使用していたものから数が増えたそれがシャルロットを貫き引き寄せる。そして煙がはれるとそこには銀の翼を大きく広げ二回りほど大きくなった異形がいた。

 

「シャル!」

『シャルロットさん!!』

 

四肢を貫かれたシャルロットから返事はない。そして異形がその大きな咢を持った右腕をシャルロットに向ける。

 

「この者の機体にも因子が纏わりついている。あの二人とは違ったサンプルだ…興味深い」

「く、させない!」

「無駄だ」

 

先ほどまでとは威力が違う弾丸が翼から放たれ、簪を襲う。

 

「ぐううううっ!?」

 

それを念動フィールドで防いだ簪だがその隙に異形の周囲に空間が開き現れた一体の鎧。鎧はその胴体を開き、シャルロットを内部へと取り込むと再び空間に穴をあけその中へと入っていく。そして同じようにいつの間にか鎧に取り込まれていたアリスも空間の中へと入っていく。

 

「残るサンプルはあと一つ」

 

異形が向ける視線の先には鈴に呼び掛けられる秋がいた。秋は頭を抱えたまま動けないでいるようだ。そんな秋の様子を確認すると異形は動き出す。その動きは決して早いものではなかったが、ダメージが大きい簪は動けず、援護に徹していたセシリアも高出力モードで撃ち続けていたため、スター・ノヴァがオーバーヒートを起こしていた。移動する為には各部の追加装甲を解除しなければならない為、こちらもすぐに動けない状態になっていた。

 

「我が半身よ」

 

秋へと声をかける異形。鈴は秋をかばうように前に立つ。

 

「秋になんの用よ!」

「ただの人に用はない」

 

鈴の問いにそう返す異形はその右腕を鈴へと向ける。鈴も双天牙月を構えるが周囲を取り囲むように異形の僕たちが出現する。海上で戦闘をしていた三人の元にも霧が現れそこからまた大量の僕たちが現れ始めていた。スコールと斬り合っていた一夏はその様子に気が付き、スコールの相手を止めようとするが炎を纏った鞭に進路を妨害される。

 

「ダメよ?女性の相手をしている時によそ見は」

「どけ!お前の相手をしている暇はないんだよ!」

 

そして僕たちによって動きを封じられた鈴の目の前で秋も他の二人と同じように鎧へと収納されようとしていた。

 

「秋――――!」

「誰でもいい!道を切り開いてくれ!!」

 

鈴と一夏の叫び。シャルロット、アリスと連れて行かれ、秋も異形の手に落ちようとしている。それを助けることができない無力な自分たちはこの場に居ない誰かに、来るはずもない援軍を切に願った。そうでもしなければ自分たちは全滅する。それを理解してしまったから。

 

「その役目は私に任せてもらおう!」

 

その声に応えた者がいた。聞こえた声の方へ視線をやれば猛スピードで海上を滑る様に駆けてくる黒いISが一機。そのISは両手に大型の二丁のライフルを装備している。

 

「トロンベよ、今が駆け抜けるとき!!」

 

トロンベと呼ばれたISの攻撃は凄まじかった。二丁のライフルを凄まじいスピードでなおかつ正確に撃ちながら異形達の間を駆けていき、箒たちの包囲網を崩す。そしてまるで道があるかのように踵のローラーで宙を駆けあがると今度は鈴の包囲網を崩す。ほんの数秒の出来事で異形の僕たちは大半を失い瓦解する。

 

「…何の因果か再びアインストと会い見えることになろうとはな」

 

トロンベの操縦者が呟き、秋の方へライフルを向け、一発撃ちこむと収納しようとしていた鎧の異形が大破し孤狼が飛び出す。

 

「大丈夫か?少年」

「あ、ああ…」

 

トロンベのパイロットからの声に頭をふりながら答える秋を見て鈴が息をつく。しかし敵がいなくなったわけではない。ライフルを構えるトロンベと双天牙月を構える鈴は静かに異形と対峙していた。

 

一方、トロンベが駆け抜けていった海上では再び霧から異形の僕たちが現れる。

 

「まったくどれだけいるんだ…」

「ほんとだね~」

 

ロシュセイバーを展開し悪態をつくラウラといつものように返しながらもその言葉に力が無くなってきた本音に対し箒は力強く答えた。

 

「どれだけいようとも、私は戦う!愛するものを、友を守る、我が剣は誰かを護る剣だ!」

 

目の前に現れた異形達へ斬艦刀モードへと紅を変えた箒が構えた時、その声は聞こえた。

 

「よく言った!箒!」

「その声は?!」

 

海中から飛び出したのは箒が持つ斬艦刀によく似た大剣を持った鎧武者。

 

「我が名はゼンガー!ゼンガー・ゾンボルト!!悪を断つ剣なり!!」

 

口上と共に振りかぶった大剣を加速し異形達へと向かっていく。

 

「我が一刀は、雷の煌めき!」

 

そして箒たちを越え、ゼンガーは横に大剣を薙ぐ。

 

「斬艦刀・雷光切り!」

 

そして薙いだ勢いを利用し、振り上げてから一気に振り下ろした。たった二撃で今しがた出現した異形達は爆散し消えていった。

 

「我に断てぬものなし…」

 

ゼンガーが大剣を振るうとその剣は日本刀サイズへと変わっていた。

 

「し、師匠!」

「話は後だ。箒よ。今は…」

 

駆け寄る箒をそう制止させると銀の翼を生やす異形を見据えるのだった。




というわけで、ようやく箒の師匠登場。

ええ、予想道理のお方です。

なお現在の福音は下半身が人型で銀の翼をもったアインストレジセイアをイメージしていただければ…

出来るだけ早く次話を上げたいと思います。
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