IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

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※活動報告にて連絡がありますのでそちらもよろしくお願いします。

副題:エントリヒレジセイア戦後その1

色々明かされる話にもなっています。読まれる方にとっては不快に思われるかもしれませんので先に謝罪させていただきます。申し訳ありません。


STAGE36

エントリヒレジセイアとの戦闘が終わり、疲弊しきった千冬達はクロガネへと向かっていた。今後の方針を話し合う為でもあったが意識不明の織斑一夏が運ばれていることも理由の一つだった。

 

「これがクロガネ……」

「ようこそ。我らが艦へ」

 

レーツェルの誘導でハンガーへたどり着くと千冬達がISを待機状態にする。だがレーツェルたちはハンガー内に増設されたISサイズ用のハンガーへ移動しそこで胸部ハッチを開き、降り立つ。

 

「我々の機体は疑似ISだからな。待機状態には出来ないのだ」

「疑似ISはあくまでいくつかの機能を使用できるようにしたものだからね。量子格納なんて機能は流石につけられなかったみたいだね」

 

ゼンガーの説明に何故かドヤ顔の束。

 

「それより、この巨大兵器はなんなんだ?」

 

千冬が見上げたのはゼンガー達が使っている疑似ISと同じ姿をした巨大ロボットたち。その中にはハウのマオ・インダストリーで作られたISと同じ物もあった。

 

「それに関しては説明させてもらう。だが、あの子たちは大丈夫か?」

 

レーツェルの視線を追えば超機人たちと融合した新型機を扱っていた簪たち。ISが解除された後、床に座り込んでいた。

 

「なんか…すごく……怠い…」

「お腹へった~」

「なんというか気力を吸い取られた気がしますね」

「できれば休みたいですわ」

 

四人の返事にレーツェルは頷くと。

 

「まずは休憩したほうがいいだろう」

「そう…ですね」

 

巨大兵器達に驚いたとはいえ流石に素のままで話し合うのは不味いと千冬は咳払いをし言葉づかいを正した。そんな千冬にレーツェルは苦笑し。

 

「ならば、こちらで部屋を用意しよう」

「助かります」

 

そんな千冬達にハウが近づく。

 

「なら、すまないが進路をテスラ研に取ってもらえないか?」

「ハウ?」

「さすがにクロガネやスノードロップをさらし続ける訳にはいかないだろう?テスラ研ならこの二隻を収容することは可能だ。全員のISも整備しないとな」

「なるほどな。了解した」

 

ハウの提案にレーツェルは頷き、艦長へ指示を出す。

 

「なら、私は先に鈴ちゃんの様子を見てくるよ。大丈夫だとは思うけどね」

「束…凰は助かるのか?」

「もちろん。この束さんを信じなさい!」

 

千冬に笑顔でそう返した束がさっと手を振るとワームホールが生まれる。

 

「じゃ、後でね」

 

そう言い残し、束が消える。そこをしばらく見つめていた千冬だったがハンガーにやってきたクロガネクルーたちの助けを借りて彼女たちを休める事にした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「(ここは?)」

 

満ちた液体の中で鈴は目を覚ました。しかし、それは意識を取り戻したというだけで体の方は上手く力が入らない。自分の状況を確認しようと視線だけ動かすと。

 

「目が覚めたか?凰鈴音」

 

カプセルの外から手元の端末を見るのをやめてこちらを見ているのは白衣を着た篠ノ之束。だがその外見は自分が見た束と違いウサミミをつけておらず、さらに何処かダル気だった。

 

「(貴方は?)」

「ああ…無理にしゃべらなくていい。いくら記憶を引き継いだといっても“その体”はまだ一度も動かしていないんだ。発声器官も真面に機能していないだろう」

「(…どういうこと?)」

「ふむ?不思議か…?そうだな。どこから話すべきか。まず私の名前からだな。私は“因幡束”このクローンプラントの管理者を務めている。まあ下の名前から察してもらえるだろうが私は篠ノ之束のクローンの一人だ」

「(クローン!?)」

「ほう?もう驚くという表情ができるか?中々の回復速度だ。さてクローンの話だが、さして不思議な話ではなかろう?あの天才ならクローン位作れる」

「(何の目的でクローンなんて?)」

「簡単な話だ。全ては“外なる神”を倒す為。何故、そんな目的を持つようになったのか…少し昔話をしよう。篠ノ之束は天才だった。誰にも考え付かない理論を思いついたり、その時代では考えられないオーバーテクノロジーを一人で作り出せるほどにね。故に一人で全てをどうにかできる。それを微塵も疑っていなかった……だからか、彼女は世界に受け入れられなかった。理解者もいなかった…両親も妹も、そして親友でさえもね。それは彼女にとってどれだけの地獄か、けして認められない世界で孤独に生きる。それは君たちが思う以上に辛いものだった。だから最初はただ世界を変えることが目的だった」

 

肩を竦めて語る因幡束。

 

「ああ、勘違いしないで欲しい。篠ノ之束が望んだのは世界征服ではない。あくまで自身を理解して受け入れられる世界だ。その為にISを開発、発表したわけだが、その結果は君も知っての通りだ。そして加速度的に狂っていく世界に絶望し見切りをつけ“世界”を壊した篠ノ之束に待っていたのは死ではなく、“やり直し”だった。だが、その世界は前回とは少し異なる世界だったのだが、篠ノ之束は前の世界と変わらず進み続け、結局、その世界もまた篠ノ之束が終わらせた。そしてまたやり直し。これを延々と繰り返してきた。その中で篠ノ之束は漸く気が付いたんだ。天才と言えど一人では限界がある…と。ならどうすればいいか。答えは簡単だ。自分を増やせばいい。その結果がクローンプラントだ。といってもただのクローンではない。そんなものに価値はないからな。ここで生まれるクローンは全て篠ノ之束の記憶、知識、能力を引き継ぎ、生まれてくる。そして、世界中に散らばり紛れ込む。そこであらゆる生活を行い、経験を積みその分野を極める。それが出来たら、再びクローンプラントにて“統合”を行い、それまでの全てを引き継いで新たな篠ノ之束たちが生まれてくる。完全なスペシャリスト集団の誕生だ」

「(そんなの…)」

「正気だと思えない…か?」

 

因幡束の問いに頷きたい鈴だが体はまだそこまで動かせない。

 

「そうだな。私もそう思うよ。こんなこと正気の沙汰とは思えない。普通なら自分の手に負えなければ他人に頼ればいい。だがそんな簡単なことすら気づかない愚か者だったのさ。まあ幸いというか、世界に散らばる様になったおかげでその点も改善されてきているのだけどね。しかし、問題なのはそこではない。君は不思議に思わないかい?」

「?」

「どうして篠ノ之束はやり直しをさせられるのか…」

 

そう言われて鈴は考えるがそんなもの分かるはずもない。それは因幡束も分かっているのだろう。苦笑しながら続けた。

 

「あれは何回目だったかな…クローンプラントを必ず作る様になってからだから…まあいいか。その時には地球では得られることもなくなったからと単身でISによる外宇宙への進出を行った時だった筈だ。篠ノ之束は神に出会ったんだ」

 

因幡束は語る。外宇宙に向かっていた筈なのに気が付くとその存在がいたと。ひび割れた空間から全身を黄金の鎖で雁字搦めにされた存在が上半身を乗り出しその鎖を引きちぎろうとしていたと。そして、それを防ごうとするかのように戦う悪魔がいたと。

 

「神々の戦いというのはああいうのを言うのだろうね。そして神は悪魔の一撃で再び亀裂の中に押し戻され、その余波で吹き飛ばされた篠ノ之束は不思議な場所に居た。そこで彼女は触れたのさ。“黒の英知”にね」

 

おかげで因果律の番人に目をつけられたが、この世界の真実を知ることが出来たと因幡束は息を吐く。

 

「…この世界は神が封じられる前に自身を復活させるための贄とするべく作り出した箱庭なのさ。あらゆる因子を集め、自身の復活を行う為だけに必要なものをそろえる。そのためだけに作られた。それがこの世界の真実。その中枢にして鍵として選ばれたのが篠ノ之束。彼女はその神の復活の為の駒だったのさ。彼女が人と違うのは鍵とするべくその神が手を入れたからさ。もちろん、そんなことを篠ノ之束が望むはずもない。さらに彼女を愕然とさせたのは自分も含めて、この世界のすべてが神が復活の為に描いたシナリオ通りに動く人形だというふざけた事実。篠ノ之束がISを発表することも、織斑一夏がISを動かしたのも全て因子を集めるために神が描いたシナリオ」

 

そこで因幡束は軽く息を吐く。

 

「しかし、神の計画は狂いだした。やり直しを続けるうちに神のシナリオから篠ノ之束はその輪から外れることができた。だから決意したのさ。こんなクソッタレな世界を壊し、その神を倒すとね。そこから篠ノ之束の戦いが始まったわけだ。そんな中で気が付いたのさ。神が自分を復活させるために必要な因子を集めるならばその逆に神を滅ぼす因子もあるんじゃないかとね。何度も同じ世界を繰り返しつづけ…ようやく、今の世界にその可能性を見つけたわけだ。篠ノ之束が知らない人物の登場に、別世界からの来訪者。彼女は歓喜した。これはあの神を倒すための最大のチャンスなのではないかとね」

 

鈴を見る因幡束はニヤリと笑う。

 

「だから、篠ノ之束は君を助けた。このクローンプラントのルールを捻じ曲げてまで」

「(ルール?)」

「このプラントを手に入れる事が出来れば…まぁ、厳密には少し違うが不死を得られるからね。しかも複数の人物の記憶や能力を統合し超人を生み出す事や自身が超人になることもできる。そんな施設があることを知れば手に入れたい輩はたくさんいるだろうさ。だから、篠ノ之束以外のクローンは生み出せないようにプロテクトをかけた。それを解除するにはどこかに居るたった一人の篠ノ之束だけが知っている解除コードを入力すること。この解除コードはご丁寧に定期的に記憶統合をするたびに持ち主が変わる。誰に移ったかも分からない」

 

そこで言葉を切ると因幡束は鈴を見る。

 

「だけど、今回は例外らしくてね。ここに半死半生の君が運ばれてきた時には既に君の新しい身体がこのカプセルで作られていた。私も驚いたよ。管理者たる私に気付かれることもなく君が作られていたんだからね。だがそのおかげで君は助かった。いや、正確に言うならば、今の君は凰鈴音のクローンだ。そこに死ぬ前の凰鈴音の全てをコピーした」

 

そういって頭を指で叩く。

 

「それと残念だがオリジナルの凰鈴音は既に死亡したよ。むしろ記憶の引き継ぎが終わるまで命が持ったことに生命の素晴らしさを感じたね。あと勝手で申し訳ないが遺体はこちらで処分した。君も見たくはないだろう?下半身が完全につぶれた自分の体など。さて、これで話は終わりだ。もう少ししたらカプセルから排出される。その時にまた会おう」

 

そう言うと因幡束は去っていく。鈴はそれをただ見送るだけだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

クロガネの医務室で未だに意識を回復させない一夏を傍で見守るのはマドカだった。

 

「早く目を覚ませ。愚弟が」

 

そう呟き、一夏の顔を見ていると医務室の扉が開き、姿を見せたのは。

 

「お前は?!」

「医務室だ。静かにしろ。篠ノ之箒」

 

箒だった。マドカの姿に驚き大きな声を出した箒にマドカは半眼で注意した。

 

「……そうだな。すまない」

「まあ座れ」

 

椅子を差し出し促す。それに礼をいい座る箒は一夏の手を取り握ると額にくっつけ。

 

「すまない。一夏。秋だけでなくアリスもシャルロットも助けることが出来なかった…」

「なんだ?そんなことを言いに来たのか?」

「何?」

「アインストだけでなく亡国機業もいた中で三人の犠牲で済んだんだ。むしろ相手を撤退に追い込めただけで上出来だろう?」

 

マドカは箒にそう笑って見せる。

 

「(さあ、どう返す?篠ノ之箒)」

「そんなことを言うな…三人で済んだなんて言うな…」

 

静かに、だが力強く言い返す箒にマドカは内心驚く。篠ノ之箒はもっと短気で激情に刈られやすい人間だと思っていたからだ。

 

「私は諦めていないぞ。三人は必ず助けて見せる」

「…助けられる保証はないだろう」

「そうだな。だが…」

 

そこで真正面からマドカを見据えた箒はこういった。

 

「例え分の悪い賭けだろうと勝算があるなら賭けてみる価値はある。例えそのかけ金が命だとしても」

「…分の悪い賭けは嫌いじゃない…か」

「ああ。アイツの口癖だ」

「まったく…愚弟どもは変に影響を与える奴らだ…」

 

椅子から立ち上がったマドカは医務室を出ようとする。そこへ箒は声をかけた。

 

「一夏を助けてくれて礼を言う。ありがとう」

「……私は織斑一夏を殺そうとしているんだぞ」

「それでも、だ。お前が何者なのかはあえて聞かない。今はな」

「マドカだ」

「?」

「織斑マドカ。それが私の名前だ」

「そうか…マドカ。改めて感謝する」

 

マドカはそれに答えることなく医務室を後にする。

 

「おい。何でお前は一夏を助けた」

「シュンヤか…」

 

先の廊下で待っていたのはシュンヤだった。壁に背を預け立っている彼はいつものような強気は見えず何処か苛立っていそうだった。

 

「あそこで見殺しにしたところで私の気が済むわけではない。それだけだ」

「気が済むとかの問題なのかよ!」

 

壁を強く叩くシュンヤにマドカは聞き返す。

 

「ならお前は気が済んだのか?織斑秋を倒して」

「あ?…ああ、気がすんだよ」

「嘘だな。なら何故そんなにイライラしている?」

「イライラなんかしてねぇよ!」

「なるほどな。それがお前の素か」

「ああ?」

 

腕を組み何処か勝ち誇ったようにマドカは続ける。

 

「いつも冷静に振る舞っていたのはお前が偽った姿で今のように、チンピラ風情に言うのがお前の素だと言ったんだ」

「そういうお前はいつもの空気を読まない行動は素じゃないのかよ?」

「何を言っている?私は空気は読めるぞ」

「…えぇ?」

「なんでそんな不満げなのかは知らんが…決着は付ける。織斑一夏、織斑千冬とはな…だが、最近思うんだが…」

「?」

「あいつらを殺したら、私は何をすればいいんだろうな?」

「何を言って…?」

「隊長やゼンガーさんたちと一緒にクロガネにいてお前は思わないのか?自分たちの復讐は何になるんだろうってな」

「…………それは」

「レーツェルさんが話してくれたアーチボルドという輩との因縁に比べれば私の復讐などたかが知れているのではないかとそう思ってしまってな」

「それを言ったら。それこそ俺たちの存在意義が!俺以外に失敗作として処分された兄弟たちに顔向けできねぇ!」

「そうだな。私は、自分を捨てた織斑千冬に復讐したかった…自分がここに生きていると認めてほしかった…それだけだったんだ」

「…お前、もう復讐とかする気ねぇだろ?」

 

ずるずると壁に寄りかかったまま床に座り込むシュンヤの問いにマドカは少し考え……

 

「亡国機業に居た頃よりこだわってはいない。だが許す気もない」

「そうか…」

「お前は後悔しているのか?」

「分からねぇ。でもアイツは言った。『因子を持っていない。故に用はない』ってな。俺たちが生み出されたのはアイツが関係あるのは分かってる。だげど、俺たちはアイツに取り込まれるためだけに生まれたのか?」

「それこそ知るか。結局、お前は何を悩んでいるんだ?」

「俺はどうすればいい?」

「お前はどうしたいんだ?ああ、それと私は救出戦に参加するぞ。救出戦があれば…だけどな」

「あ?なんでだよ?お前には関係ないだろう?」

 

そう尋ねるシュンヤにマドカはふふんと鼻をならし。

 

「決まっている。織斑秋を助けるためだ」

「だから何でだよ?お前、アイツには興味が無かったろ?」

「愚弟を助けるのに理由が必要か?」

「はぁ?愚弟だ??」

「今、ここに織斑千冬がいる。せっかくだ。私も決着をつけてくる」

「ちょっと待てって!」

 

歩き出すマドカを慌てて追いかけるシュンヤ。そんなシュンヤにマドカは。

 

「アイツの言うとおりだ。私は私の道を行く。織斑千冬のクローンではなく織斑マドカとして生きるためにな」

「…自分として生きる…為?」

「そうだ。一人の人間として生きるために復讐ではなくけじめをつける。それが今の私の戦いだ…これがな!」

 

そう笑った。そのマドカの意思を聞いたシュンヤは……

 

「……もしかして今の隊長のマネか?」

「っ~~~~~」

「いや、そんな赤面して涙目になるくらいなら態々言わんでも…」

「黙れ!この愚弟その三!」

「ぐっ!!」

 

腹部に一撃を叩き込まれ、その場に崩れ落ちたのだった。それからしばらくして意識を取り戻したシュンヤはクロガネの天井を見つめながら。

 

「すっきりしねぇな……なぁ?ソウルゲイン。俺はどうしたらいいんだろうな?」

 

ペンダント状の待機状態になっているソウルゲインに問う。だがもちろん返答などなくただキラリと光るだけだった。

 

「答える訳ないか……」

「そう思っているうちは、な」

「っ!?隊長!?」

 

突然聞こえた声にシュンヤが起き上がるとアクセルがそこに居た。

 

「お前にとってISとはなんだ?」

「……道具です」

「そうか。ならお前はそれ以上強くはなれんな」

「…………」

「お前が何に後悔を抱いているかは知らん。だが、ここで腐っていても始まらんだろう。お前が何になりたいのか、どうありたいのか、その先に進む覚悟を持って立ち上がるなら俺の力をお前に与えてやる」

 

そういって差し出された手をシュンヤは取った。

 

「俺は…先に進みたいです。もう一度、織斑秋と向き合う為に…」

「いいだろう。なら俺がもう一度鍛えなおしてやる」

「お願いします!」

 

そんな二人の様子を影から見ていたアルフィミィは静かに微笑を浮かべていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

バシャァ……

 

「ゲホ、ゲホゲホ…」

 

突如、ハッチが開き外に放り出された鈴はあたりを見回す。そこには自分が入っていたのと同じカプセルが最低でも二十はある通路の様な場所だった。

 

「本当にクローンなんだ」

 

立ち上がりカプセルの中を見て見ればそこに入っていたのは裸体の篠ノ之束。その事実に改めて、自分がクローンだということを理解させられた。

 

「おや?もう立ち上がれるんだね~」

 

背後から聞こえた声に振り返るとそこに居たのはエプロンドレスを纏いウサミミをつけた人物。

 

「やあ、鈴ちゃん。体の調子はどうかな?」

「篠ノ之博士…」

「まあ、間に合って何よりだよ。さすがの束さんでもあの状態からの再生治療は時間がかかるからね。それに間に合ったとしても戦えない身体になってたよ」

 

そう笑う束に鈴はうすら寒い物を感じながらも助けてもらった事に変わりはないと自分に言い聞かせる。

 

「助けて頂いてありがとうございました…」

「いいってことよ~。それよりお願い聞いて欲しいんだけど?」

「お願い?」

「うん。あるISに乗ってもらいたいんだよね」

 

ついてきてと言う束に鈴は。

 

「その前に服を貰えませんか?」

 

流石に全裸で歩くのは嫌だった。

 

「ここだよ」

「ここは…?」

「ん?篠ノ之。もう連れてきたのか?」

 

見慣れたIS用ハンガー。そこに置いてあったのは紅い全身装甲型のIS。その前で端末を弄っていたのは因幡束。

 

「やあ!いなばん!久しぶりだね!」

「いなばんはやめてくれないか?」

「いいじゃない!同じ束さんじゃないか!」

「それでも私はそこまでテンション高めになれないよ」

 

そう言いあう二人の束に鈴は一夏と秋を思い出す。

 

「ってそうだ!篠ノ之博士!秋は?!」

「束さんでいいよ?…あっくんはね。アインストに取り込まれて、ちーちゃん達と戦闘。その後撤退したよ」

「そ、そんな……」

「君のIS“甲龍”もアインストに取り込まれた。専用機を奪われた君は下手すれば中国政府から帰還命令が出て、投獄。下手すれば極刑もありえる」

「!!」

 

篠ノ之束、因幡束から告げられたことに鈴の顔が青くなる。

 

「そ、それだけは!」

 

秋に会う為、血反吐を吐く思いでISを扱い、代表候補まで上り詰めた鈴にとってその現実は受け入れたくないものだった。

 

「そうだよね~。嫌だよね~?なら、取り返さないとね?」

「取り返す?」

「そうだ。奪われたものは取り返す。簡単だろ?」

「その為の新しい力を鈴ちゃんに授けよう」

 

そう言って紅いISへ視線をやる。。

 

「ガルムレイド。次世代用の試作型エンジンを搭載した試作機だ。ただ、そのエンジンの出力が安定しなくてね」

 

ガルムレイドと呼ばれたISを見上げながら因幡束が話す。

 

「そうなんだよね。クーちゃんはその調整ができるんだけど、操縦をしながらってのは無理でね」

 

篠ノ之束が引き継ぐ。それに頷き因幡束が続ける。

 

「そこでこのISは二人で扱うISにした。一人は動力安定に専念しもう一人が操縦する」

「クーちゃん…クロエ・クロニクルと一緒にガルムレイドの訓練をしてもらうからね。クーちゃんなら動力を安定させることができるから」

「もしかして、あたしに色々喋ったのは…?」

「もちろん、このプラントを見たんだ。協力してもらうよ」

「ああ。“外なる神”を倒すためにね」

 

まったく同じ笑みを浮かべる二人に鈴は軽く息を吐いた後、頬を叩き気合を入れる。

 

「我思故我在…いいわ。あたしだってこのままじゃいられない!ガルムレイドに乗ってあげるわ!」

「感謝するよ」

「うんうん♪じゃあさっそくクーちゃんを連れてくるね!」

「(秋…待っててね。必ず助けに行くから!その為に…)」

 

ガルムレイドを前にし鈴は拳を握りしめる。

 

「使いこなして見せるわ。アンタをね!」

 

決意を新たにするのだった。




鈴「ところで…なんか以前のあたしに比べて…あるんですけど?」
因「ん?ああ…なんか増量してあるみたいだな?」
鈴「な、なんで?」
因「…中学生に負けて八つ当たりしたことあるんだろ?」
鈴「!?!?」
兎「私は何でも知っている~♪」

こんなやり取りがあったとかないとか……


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